私の宝石を探して

ひちゅ

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25.表裏一体

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この世界において薬草リーフは重要な品だ

傷を治すことはもちろん病気や厄除けにも使われるからだ。扱いはエルフの一族が特に秀でており加工されたものは高値で取引されているが、一般家庭にも普及できるよう調整されたものが出回ったりもしている。

「おにーちゃん!そっちは抜いちゃだめっ」

未だ成長中の薬草を間違えて引っこ抜こうとした私は、ケニィの家にお邪魔していた。



***



怪しい占いや人には言えない趣味を抱えた者達が訪れるような裏路地で営業している安宿を渡り歩いていれば嫌でも自分の噂は広がった。貴族特有の育ちの良さと目立つ容姿をしているため本人が望まぬともいらぬ敵を呼び寄せる、なのに猫目キャッツアイやアルデの目を掻い潜ることが出来たのは単純に財力だ。
情報提供を行うにあたって相場の3倍ほどの金を握らせ自分の事を聞いてきて人物に対して何も見ていないと答えるよう口止めした。

それも長くは続けられない

身バレ、もしくは連れ戻される前に隣国に旅に出ようかと考えていた時にケニィと出会った。
裏路地を抜けると鮮やかな薬草畑が広がっており木で出来たかわいらしい家に住んでいたらしく、途方に暮れているように見えた私を招いてくれた。
それからは何も聞かずに薬草畑を管理するための小さな小屋を住処として提供してくれている。

「ふぅ、思ったより生え放題なんだな」

「エルフはしょくぶつとあいしょうがいいです!ぼくハーフだけど、ママとおなじなんです!」

えへへ、と嬉しそうに笑うケニィは驚くほど薬草を育てる手際が良かった。
ご両親いわく小さな頃から植物と触れ合うことが好きだった彼は見事エルフの血の能力を目覚めさせ大人も舌を巻く程の知識と作業を身につけていた。居候の身なので何かお手伝いを、と思い畑で雑草を抜いたりしているが逆にケニィの邪魔をしているのではないかと不安になる。

「エルフって凄いな、薬草は育てるのが難しいと聞いていたのに。ここはどれも良質だ」

「はいっ!じまんのリーフですっ!みんなもまもってくれるからあんしんです」

「みんなって?」

「このあたりのひとたちですっ」

裏路地には貧しい人たちが集まりやすい、頻繁には医者や薬を買いに行けない人にベリー家は無償で薬草を渡していた。その代わり裏路地の一番奥にある薬草畑とベリー家の事を裏路地一帯が一丸となって守り隠しているそうだ。
エルフの子供というケニィも最悪人攫いに目をつけられそうだが、今まで一人でお使いに行けていたのもそういう事情があるからだった。

いつもの様に夕方まで仕事を手伝った後はベリー家でシャワーを借りて食事をし、小屋に戻った。
ケニィも一緒ついてきたという事は絵本を読んで!とおねだりされるのだろうな、と思い戸を閉める。

「あのね、おにーちゃんにずっとききたいことあるの...」

「うん?何かな?」

「おにーちゃんのおなまえは、サナンなの?」

「・・・。」

「あぅ、エルフはにんげんとちがうんだ。おにーちゃんは、いつものおにーちゃんとちがういろにみえる...」

「ふーん。な~んだ...分かってたんだ」

「ぼくまだこどもだから、ママみたいにじょうずにちからをつかえない...だからみえる」

人間には見えない、コアの輝きが

「ふしぎないろ...いままでとちがうむらさきいろにみえる。どうしておにーちゃんのコアのいろがちがうの?」

「ケニィは優しいから特別に教えてあげよっかな~...誰にも言わないって約束する?」

「するーっ!おにーちゃんみたいにいろがかわるひと、はじめてみたー!なんでー?」

「ふふ、ケニィみたいな子は好きだよ。」

破ったら、薬草汁リーフスープ飲ーます。
子供の頃から馴染みのある脅し文句を言いながらケニィを膝の上に乗せて秘密を話はじめた、生まれた時からずっと変わらない。誰もが気付かなかった、自分自身でさえ騙し続けた輝きの話を。



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