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双葉のクローバー
とある女子高生との出会い
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学校のクラスの雰囲気にも慣れ、新しい友人もできた。病院に行くことも一つの日課として定着しつつも、退院に向けて部屋のレイアウトや自宅での介護生活に向けての準備も少しずつ進んできた。しかし、何か僕の心には隙間風が吹いていた。虚無感とは違う。特に性格的にダチ友とうぇ~いなんて柄でもない。それに帰りの電車、バスには「特別な友達」がいる。ならこの隙間風はなんなのだろうか。
「女じゃな」
ザシコが小指を立ててポッキーを食べている。
「あのなぁ、女子がいたら多分僕は溶けていなくなってると思うぞ。男子校だから生きているという側面もあるのに」
自分で言いつつ情けなくなってくる。学校では殆どいじめなどなく、嫌な奴はいるけどそれ以上に良い奴がいて、うまく住み分けができてるのが男子校の利点だと思う。そして、そこに安らぎを覚えてる僕としては、女子が介入してくるということは、青春やラッキースケベなどのイベント発生率が上がると同時に女子を巡る戦いや、そこから派閥みたいなものができ、何処かに所属していないと安心して学校生活を送れない日々を過ごすことになるであろう事は目に見える。さらにさらに、陰口で女子から「キモい」なんて言われた日にはズボンを下ろしてしまうかもしれない。恐ろしい。
「女以外だったら他に何がある?本音を言うてみ?金が欲しいわけじゃなかろうて。友達もおる。それにお主の心は温かいからの。母君がいなくなって、介護も無くなってしまえ!なんて冗談でも言ったり愚痴ったりしない性格なのも承知じゃ」
僕はなんだか恥ずかしくなった。照れによるものなのか、褒められ慣れてないからなのか。
「じゃ、じゃあなんだっていうんだよ!」
「女じゃな!」
(あぁ、答えは変わらないわけね)
「な、ならこの心の隙間風は女子で埋めるしかないということ??んなアホな。今、僕は最高のバランスの上で生活している自負がある。そこに例え魅力的な女性が現れたとして積極的に介入するつもりはない!!バランス重視!!」
僕は手をポッケに入れザシコと距離を取るため早歩きでその場から離れようとした。
「お~い」
早歩きで置いてきぼりにしたと思われるザシコがいつのまにか頭に乗っている。
「なに??」
「別に女子高生から逃げるように早歩きせんでもええじゃろが」
「………女子高生??」
「ん?ああ、ほら。あそこにおる女子高生。ほらほら、足元が覚束ない感じの」
ザシコが指を刺した方向には、確かに綺麗な肌をしたミディアムヘアーの可愛い女子高生がフラフラと右へ左へと身体を揺らしている。僕の頭の中には
(助けなくては!)
という気持ちと
(声をかけたりうっかり肌に触れたりしたりしたらこのご時世、セクハラとか痴漢とかあらぬ疑いがかけられ、人生が崩壊してしまい、終いには親父の仕事や母の介護に影響が及んでしまうのでは……)
そう考えつつも、いつの間にか女子高生を優しく抱えていた。そこからは頭ではほとんど考えていなかった。
「大丈夫ですか!?顔が赤いので熱中症かもしれません。すぐそこに日陰があるベンチがあるのでそこまでお連れします!」
女子高生は少し驚いた顔をしつつも、キツいからだろうか、少し笑みを溢し
「お願いします」
と言った。人生初めてのお姫様抱っこなはずなのに嬉しくない。どちらかと言うと使命感でメラメラ燃えていた。彼女をベンチに横たわらせてから
「すぐに戻るので安心してください」
と言い残して、コンビニで女性用Tシャツ、水分補給用のペットボトル、塩飴、タオルを購入し、彼女の元に戻った。そのあとは
「僕はあなたに一切手出ししておりません。何もいやらしいことしません。」
という言葉を何回も発しながら下敷きで彼女を仰いでいた。
彼女はその発言にクスクス笑っていたが、笑えるレベルにまで回復したんだと勝手に解釈をして一人安堵の表情を浮かべた。
「これとかの代金は、後でちゃんとお返しますね!」
「いえいえ、助けたのは自分の正義感みたいな感情からでありますし、それにお金をもらったらやってやった感がするから……いいです!!」
彼女は少しビックリした表情をした後、少し顔を俯き加減に小さい声で
「ホントに……??」
と呟いた。その時の顔は見えなくてよく分からなかったが、何か、何かあるんだろうと察して、あえて返事はしなかった。
「じゃあ………ありがとう!!」
うん、シンプルが一番だなっ!勝手に一人で納得して彼女に
「それじゃ、帰ってからゆっくり休むんですよ~」
と言いながら手を振って帰ろうとした直後、後ろから軽くタックルされた。後ろを振り返るとザシコと目が合った。ザシコはニヤっとした後「ポンッ」と消えた。その消えた煙の向こう側に、まだ熱中症が治ってないのであろうに、立っている彼女の姿が見えた。
「えええええと、その、その、えっと。た、助けてくれてありがとう。もし良かったらなんですけど、お礼がしたいから………アドレス交換してくれませんか??」
僕の目から光が消えた。
(タスケタ?アリガトゥ?これは御礼参りしたいからアドレス寄越せみたいな??)
僕の身体中から湯気が立ち昇っていた。
「無理ならいいんですっ、あははは………」
するとさっき消えたであろうザシコが僕の頬にコークスクリューを決め、僕の意識を正常にした。ナイスプレーだぜ!
「あ、え~と、僕の名前は二木真人(ふたぎ まこと)!縦濱高校二年!」
「わ、私は花雲雪見(はなぐも ゆきみ)!緑黄ヶ丘女子二年!よろしく!」
「よ、よろしくお願い致します」
僕は深々と頭を下げた。
「そ、そんな畏まらなくても!!」
雪見は笑っていた。
帰り際、アドレスを交換してすぐに雪見から
「助けてくれてありがとう!カッコ良かったです!またお話ししましょうね!」
とメールが来た。僕は
「もちろん!その前に体調を万全にしてくださいねっ!」
と一応気遣いができる男スタンスでメールを送った。少しヴェルニー公園を散歩していたら胸の隙間風が治っていた。いつの間にか頭にはザシコが。
「な、女じゃろ?」
と得意げに言っていた。
「女じゃな」
ザシコが小指を立ててポッキーを食べている。
「あのなぁ、女子がいたら多分僕は溶けていなくなってると思うぞ。男子校だから生きているという側面もあるのに」
自分で言いつつ情けなくなってくる。学校では殆どいじめなどなく、嫌な奴はいるけどそれ以上に良い奴がいて、うまく住み分けができてるのが男子校の利点だと思う。そして、そこに安らぎを覚えてる僕としては、女子が介入してくるということは、青春やラッキースケベなどのイベント発生率が上がると同時に女子を巡る戦いや、そこから派閥みたいなものができ、何処かに所属していないと安心して学校生活を送れない日々を過ごすことになるであろう事は目に見える。さらにさらに、陰口で女子から「キモい」なんて言われた日にはズボンを下ろしてしまうかもしれない。恐ろしい。
「女以外だったら他に何がある?本音を言うてみ?金が欲しいわけじゃなかろうて。友達もおる。それにお主の心は温かいからの。母君がいなくなって、介護も無くなってしまえ!なんて冗談でも言ったり愚痴ったりしない性格なのも承知じゃ」
僕はなんだか恥ずかしくなった。照れによるものなのか、褒められ慣れてないからなのか。
「じゃ、じゃあなんだっていうんだよ!」
「女じゃな!」
(あぁ、答えは変わらないわけね)
「な、ならこの心の隙間風は女子で埋めるしかないということ??んなアホな。今、僕は最高のバランスの上で生活している自負がある。そこに例え魅力的な女性が現れたとして積極的に介入するつもりはない!!バランス重視!!」
僕は手をポッケに入れザシコと距離を取るため早歩きでその場から離れようとした。
「お~い」
早歩きで置いてきぼりにしたと思われるザシコがいつのまにか頭に乗っている。
「なに??」
「別に女子高生から逃げるように早歩きせんでもええじゃろが」
「………女子高生??」
「ん?ああ、ほら。あそこにおる女子高生。ほらほら、足元が覚束ない感じの」
ザシコが指を刺した方向には、確かに綺麗な肌をしたミディアムヘアーの可愛い女子高生がフラフラと右へ左へと身体を揺らしている。僕の頭の中には
(助けなくては!)
という気持ちと
(声をかけたりうっかり肌に触れたりしたりしたらこのご時世、セクハラとか痴漢とかあらぬ疑いがかけられ、人生が崩壊してしまい、終いには親父の仕事や母の介護に影響が及んでしまうのでは……)
そう考えつつも、いつの間にか女子高生を優しく抱えていた。そこからは頭ではほとんど考えていなかった。
「大丈夫ですか!?顔が赤いので熱中症かもしれません。すぐそこに日陰があるベンチがあるのでそこまでお連れします!」
女子高生は少し驚いた顔をしつつも、キツいからだろうか、少し笑みを溢し
「お願いします」
と言った。人生初めてのお姫様抱っこなはずなのに嬉しくない。どちらかと言うと使命感でメラメラ燃えていた。彼女をベンチに横たわらせてから
「すぐに戻るので安心してください」
と言い残して、コンビニで女性用Tシャツ、水分補給用のペットボトル、塩飴、タオルを購入し、彼女の元に戻った。そのあとは
「僕はあなたに一切手出ししておりません。何もいやらしいことしません。」
という言葉を何回も発しながら下敷きで彼女を仰いでいた。
彼女はその発言にクスクス笑っていたが、笑えるレベルにまで回復したんだと勝手に解釈をして一人安堵の表情を浮かべた。
「これとかの代金は、後でちゃんとお返しますね!」
「いえいえ、助けたのは自分の正義感みたいな感情からでありますし、それにお金をもらったらやってやった感がするから……いいです!!」
彼女は少しビックリした表情をした後、少し顔を俯き加減に小さい声で
「ホントに……??」
と呟いた。その時の顔は見えなくてよく分からなかったが、何か、何かあるんだろうと察して、あえて返事はしなかった。
「じゃあ………ありがとう!!」
うん、シンプルが一番だなっ!勝手に一人で納得して彼女に
「それじゃ、帰ってからゆっくり休むんですよ~」
と言いながら手を振って帰ろうとした直後、後ろから軽くタックルされた。後ろを振り返るとザシコと目が合った。ザシコはニヤっとした後「ポンッ」と消えた。その消えた煙の向こう側に、まだ熱中症が治ってないのであろうに、立っている彼女の姿が見えた。
「えええええと、その、その、えっと。た、助けてくれてありがとう。もし良かったらなんですけど、お礼がしたいから………アドレス交換してくれませんか??」
僕の目から光が消えた。
(タスケタ?アリガトゥ?これは御礼参りしたいからアドレス寄越せみたいな??)
僕の身体中から湯気が立ち昇っていた。
「無理ならいいんですっ、あははは………」
するとさっき消えたであろうザシコが僕の頬にコークスクリューを決め、僕の意識を正常にした。ナイスプレーだぜ!
「あ、え~と、僕の名前は二木真人(ふたぎ まこと)!縦濱高校二年!」
「わ、私は花雲雪見(はなぐも ゆきみ)!緑黄ヶ丘女子二年!よろしく!」
「よ、よろしくお願い致します」
僕は深々と頭を下げた。
「そ、そんな畏まらなくても!!」
雪見は笑っていた。
帰り際、アドレスを交換してすぐに雪見から
「助けてくれてありがとう!カッコ良かったです!またお話ししましょうね!」
とメールが来た。僕は
「もちろん!その前に体調を万全にしてくださいねっ!」
と一応気遣いができる男スタンスでメールを送った。少しヴェルニー公園を散歩していたら胸の隙間風が治っていた。いつの間にか頭にはザシコが。
「な、女じゃろ?」
と得意げに言っていた。
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