81 / 129
四葉のクローバー
その時は突然に
しおりを挟む
ここ数日、夏なのにクーラーを止めてもいいかなと思うくらい涼しい朝が続いていた。世の中は少し慌ただしかった。テレビでは「高校生が相次いで自殺か!警察は周囲の状況から自殺みて捜査をしています」との報道が流れている。それも六日連続らしい。ここ最近、テレビはおろか、ネットすら見てない自分に気づいた。午前から病院に行き、母と話したりして、家に帰れば食事か部屋でザシコと作戦会議。親父はというと、疲労で風呂に入った後はすぐ就寝していた。テレビがついていれば見たのだろうが、残念ながらついていなかった。というよりも、つける理由がなかった。テレビで報じられていたその「事件現場」は、奇しくも「奈央さん」が身を投じた場所であった。
「ザシコ、これって……」
「うむ、動きよったな。しかし、自殺か……とにかく幾つか確認せねばならないことがあろう」
僕はザシコが何を確認すれば良いか言わずとも分かった。
雪見に電話をしてみた。
「もしもし、真人君!?どうかしたの?」
「ふ~。よかった。無事そうだね(といってもこの鎖で異変とかあったら何かしらあるらしいから、それで分かるんだけども)。そういえばニュースのことなんだけど……」
ほんの少し間が空いた後、雪見は言った。
「うん、自殺した人達、みんな私達を虐めてた人達だね……言ってみれば『主犯格』かな……」
「六人『も』か……。いや、六人『しか』かもしれない」
「ねぇ、真人君。実はね、交友関係の線で、警察官が聞き込みできたの」
「何でまた……はぁ、そういう事……なのか」
「うん……」
恐らく友人のからの聞き込み調査から「怨みを買うようなことをしてたか」とかそんな質問をされたんだろう。すると何人かから、「中学生の時に、今回『自殺した』子達からイジメを受けていた子達はいた」との情報があった。そしてイジメられていた子達の一人が同じ場所で自殺していた。そりゃ、誰だって残りのイジメられていた子達はどうなったか気になる。警察ならそこから情報を割り出すのなんて朝飯前であろう。そして雪見の所に辿り着いた。こんなところだろうな。
「ねぇ、真人君……私って酷い女だよね!?」
「なんでさ」
「一応同級生だよ!?しかも数日で六人も亡くなってる。それなのに『可哀想』とか『悲しい』とか……涙すら出てこないの……」
「ざまあみろ、だね」
僕は雪見に電話越しで言った。雪見は僕の予想外の言葉に、言葉を詰まらせていた。
「雪見、誰だってそう言うと思うけどなぁ。特にイジメられていたのなら尚更。この世で自分の死で泣いてくれる人なんて身内くらいさ。何故同級生だからといって感傷的にならなければいけない?それは『イジメられていたか』、『イジメられていなかったか』なんて関係ないんじゃないかな。寧ろイジメてた奴等が死んでも『ざまあみろ』と思わないと悲観的になってる雪見。君が酷い女なら世の中の人達は殆どが酷い人達になってしまうよ(笑)」
「真人君は優しいなぁ」
「逆だよ逆。雪見が優しすぎるんだ」
「えっ、だって心配して電話してきてくれたの真人君だけだし、励ましてくれるし……」
自分はこの時、物凄く恥ずかしくなった。気にしてなければ何ともないが、気にし出すともう無理なあの現象だ。
「い、いや、あの、え~っと、だから大丈夫かなぁっと。違~くもない、う~」
「ふふふふっ」
電話越しから雪見の笑い声が聞こえた。恥ずかしさは変わらないが、安心感を得ることができた。
「と、とにゃかく、ふ~っ。ゴホン。とにかくだね、無事で何より!!それと、今度、またあのお地蔵様のところへ行けるかな?」
(こんな状態じゃ逆に行き辛いか、もっと配慮をすれば良かった)
そう後悔していると
「うん、行こう。今回の亡くなった人たちの分も含めて。この前花束落としちゃってクシャクシャになっちゃったし。そうね……自殺の件で騒がしそうだから三日後かな……」
「分かった三日後、いつもの場所で。あとはメールするね」
「真人君」
「ん?何?」
「ありがとうね」
「いえいえ、じゃあね!」
「うん、じゃあね」
そして電話を切ろうとした瞬間、僕は
「ちょっと待って!切っちゃダメだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と大声を上げた。
「ザシコ、これって……」
「うむ、動きよったな。しかし、自殺か……とにかく幾つか確認せねばならないことがあろう」
僕はザシコが何を確認すれば良いか言わずとも分かった。
雪見に電話をしてみた。
「もしもし、真人君!?どうかしたの?」
「ふ~。よかった。無事そうだね(といってもこの鎖で異変とかあったら何かしらあるらしいから、それで分かるんだけども)。そういえばニュースのことなんだけど……」
ほんの少し間が空いた後、雪見は言った。
「うん、自殺した人達、みんな私達を虐めてた人達だね……言ってみれば『主犯格』かな……」
「六人『も』か……。いや、六人『しか』かもしれない」
「ねぇ、真人君。実はね、交友関係の線で、警察官が聞き込みできたの」
「何でまた……はぁ、そういう事……なのか」
「うん……」
恐らく友人のからの聞き込み調査から「怨みを買うようなことをしてたか」とかそんな質問をされたんだろう。すると何人かから、「中学生の時に、今回『自殺した』子達からイジメを受けていた子達はいた」との情報があった。そしてイジメられていた子達の一人が同じ場所で自殺していた。そりゃ、誰だって残りのイジメられていた子達はどうなったか気になる。警察ならそこから情報を割り出すのなんて朝飯前であろう。そして雪見の所に辿り着いた。こんなところだろうな。
「ねぇ、真人君……私って酷い女だよね!?」
「なんでさ」
「一応同級生だよ!?しかも数日で六人も亡くなってる。それなのに『可哀想』とか『悲しい』とか……涙すら出てこないの……」
「ざまあみろ、だね」
僕は雪見に電話越しで言った。雪見は僕の予想外の言葉に、言葉を詰まらせていた。
「雪見、誰だってそう言うと思うけどなぁ。特にイジメられていたのなら尚更。この世で自分の死で泣いてくれる人なんて身内くらいさ。何故同級生だからといって感傷的にならなければいけない?それは『イジメられていたか』、『イジメられていなかったか』なんて関係ないんじゃないかな。寧ろイジメてた奴等が死んでも『ざまあみろ』と思わないと悲観的になってる雪見。君が酷い女なら世の中の人達は殆どが酷い人達になってしまうよ(笑)」
「真人君は優しいなぁ」
「逆だよ逆。雪見が優しすぎるんだ」
「えっ、だって心配して電話してきてくれたの真人君だけだし、励ましてくれるし……」
自分はこの時、物凄く恥ずかしくなった。気にしてなければ何ともないが、気にし出すともう無理なあの現象だ。
「い、いや、あの、え~っと、だから大丈夫かなぁっと。違~くもない、う~」
「ふふふふっ」
電話越しから雪見の笑い声が聞こえた。恥ずかしさは変わらないが、安心感を得ることができた。
「と、とにゃかく、ふ~っ。ゴホン。とにかくだね、無事で何より!!それと、今度、またあのお地蔵様のところへ行けるかな?」
(こんな状態じゃ逆に行き辛いか、もっと配慮をすれば良かった)
そう後悔していると
「うん、行こう。今回の亡くなった人たちの分も含めて。この前花束落としちゃってクシャクシャになっちゃったし。そうね……自殺の件で騒がしそうだから三日後かな……」
「分かった三日後、いつもの場所で。あとはメールするね」
「真人君」
「ん?何?」
「ありがとうね」
「いえいえ、じゃあね!」
「うん、じゃあね」
そして電話を切ろうとした瞬間、僕は
「ちょっと待って!切っちゃダメだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と大声を上げた。
0
あなたにおすすめの小説
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わり、転校してきたのは、初恋の相手だった——。
鬱々とした気分で二学期の初日を迎えた高須明希は、忘れかけていた記憶と向き合うことになる。
名前を変えて戻ってきたかつての幼馴染、立石麻美。そして、昔から気になっていたクラスメイト、河西栞。
親友の田中浩大が麻美に一目惚れしたことで、この再会が静かに波紋を広げていく。
性と欲の狭間で、歪み出す日常。
無邪気な笑顔の裏に隠された想いと、揺れ動く心。
そのすべてに触れたとき、明希は何を守り、何を選ぶのか。
青春の光と影を描く、"遅れてきた"ひと夏の物語。
前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章
後編 「青春譚」 : 第6章〜
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 180万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/4:『こうしゅうといれ』の章を追加。2025/12/11の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/3:『かがみのむこう』の章を追加。2025/12/10の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/2:『へびくび』の章を追加。2025/12/9の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/1:『はえ』の章を追加。2025/12/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/11/30:『かべにかおあり』の章を追加。2025/12/7の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる