あの日の後悔と懺悔とそれと

ばってんがー森

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無慈悲なゴング

命の使い方

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僕は命を使うことは嫌いだ。漫画、アニメ、小説、命を使うということは必ず「死」が待っているからだ。ましてや僕には守るべき大切な人がいる。そう易々と簡単に命を捨てるわけにはいかない。臆病者だと言われてもチキンだと言われても構わない、お母さんを守れれば。そう思ってたはずだった。でもそれは違った。体裁よく逃げる手段を見つけ、全てお母さんにおっかぶせていただけなのかもしれない。僕は一度たりとも戦おうとすら、いや、ファイティングポーズを取ってさえいなかった。

「仲間がなんとかやってくれるだろう。これまでもそうだ。なんだかんだ解決してくれたじゃないか。今回の件だってザシコの婚約だろ?僕に何の関係がある……」

でもザシコは自分の事であろうが他人であろうが全力で戦っている。




今度は……



「できるかできないかじゃない、やるんだ!!」

そう自分に言いきかけせている時、そこに聞き覚えのある声と、これでもかと筋肉を見せつけるようなレインボーカラーのタンクトップ男が現れた。電話の時の男に違いなかった。

「はぁ、強い奴を倒したら強い奴が現れる、常識だろうが。なあ、おい。」

筋肉ムキムキなのにモデルウォーキングをしている気持ち悪い。しかも勝手に部屋に入ってくる。だが、明らかに強い。素人の僕でも分かる。しかも全力ではないにしてもあのザシコと神三体を退けた奴だ。勝てるはずがない。しかし、不思議と落ち着いていた。有りとあらゆることを投げ出す勇気は僕にはないが、状況が状況だ。選択肢がない事が、逆に迷いを打ち消した。

「全てを投げ出さなければならない。そしてやる事は単純明快、あぁ、楽だ」

静かに目を閉じ、カッと眼を見開き、小指から順に指を折り、拳を握り構えた。

「マコ、場所を閉じるぞ!」

ザシコは雪見の時と同じ様に梅雨細波を使って敢えて神3体と空間を切り取った。

「ありがとう。この命、自分に託してやる。『破帝 柳紫櫻(ハテイ リュウシオウ)』」

そう呟くと辺りが無作為に紫の稲光を発し、敵の腹に拳を振り上げた。一発一発が軽いのが自分でも分かる。でも一発で倒そうなんて思ってもいない。

「軽いねぇ……人間ごときがここまでやるなんて褒めてやるよ。だがな、そこまでなんだなぁ~」

豪場はまだ自分が優位になっていると思っている。奢り、放漫、自信。場合によってはとても良い精神状態を作り上げるが、今この瞬間は違う。

「……ザシコ」

僕はそう言うと、僕の後ろからザシコが梅雨を豪場に切りつけようとし、豪場は不思議な形状のナイフをザシコに切りつけようとした。その瞬間、どこからともなく菖蒲さんが現れ、指で二人の刃物を止めた。

「ん~、見てるだけでいるつもりだったけど、疼いちゃって結界から侵入してきちゃっ☆お二人さん、かなり熱いねぇ~。あ、そうそう、二木君、カッコよかったぜ。あの技、何??」

何食わぬ顔で僕の方に話しかけるが、二人はそうはいかない。

「はぁ?誰だよアンタ」

「そうじゃ菖蒲!邪魔するでない!!」

すると菖蒲さんはまるで釈迦如来像の様に眼を半開きに豪場にこう言った。

「黙れよ、今話しをしているんだ。少し場を読めよ。」

この言葉を発すると同時に、まるでこの場で動いたら瞬殺されるのが、簡単に想像できそうな、そんな空気に包まれ、豪場は冷や汗が止まらなかった。逃げようにも刃物は止められ、何しろ体が動かない。僕は何故菖蒲さんが敢えて戦いに参加しないのか少しだけわかった様な気がした。



「さて二木君、早速で悪いけど終わりにしようか」
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