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1章 レインボードラゴン
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1章 レインボードラゴン
ふと目が覚めた。
『ここはどこだ?』
どうやら俺は地面の草の上に寝転がっている。
上を見ると、右にうっそうとした森が覆い被さり、左に高い断崖絶壁がそそり立つ。 森と断崖の間を真っ蒼な空が縦に伸びて、隙間から太陽のまぶしい光が顔を照らしていた。
『うっ!』
頭が割れるような痛みが走り、触ると手に血が付く。 頭をケガしていた。
すぐ横に大きな石があって、血が付いている。 そこで頭を打ったのだろう。
『いって~~っ······あれ??······あ~~う~~え~~······???』
声が出ない?!
『なんで?······あ~~~』
やっぱり声が出ない。
『どうなっているんだ? それにどうしてこんな所に? もしかして、崖から落ちたのか?···いやいや、あんな高い所から落ちたら普通死ぬだろ·········ちょっとまて·········』
俺は頭の痛みに耐えながら上半身を起こした。 その時、更なる自分の異変に気がついた。
『まてまて!·········俺は······誰?』
記憶がない!!
『頭を打って記憶が飛んだのか?······う~~~~ん······』
思い出そうとするが、やはり何も思い出せない。
自分の顔を触ってみる。
『うん! 男だよな。 短髪でゴツゴツしているし、腕も結構筋肉がついているし······あそこも···ある』
ちょっとズボンの中をのぞいてみた。
『しかし年齢もわからないな······ガキではないが、おっさんでもなさそうだ』
自分の服を見る。
『普通の町人の服装だな······』
綿の襟付きのブルーのシャツに、ベージュの綿のパンツだ。 なにげに汚れていてあちらこちらが破れて、けっこうボロボロだ。
貧乏な農民なのか?
ポケットを探るが、何も入ってないし、剣やナイフも携帯していない。
『この森で武器がないのはマズいな······って、それは知っているんだ······なぜ?』
とにかく立ち上がろうと手を着くと、グニュッと何かが手に当たった。
『なんだ?』
振り返るとそこには······
『ド···ドラゴン?? それも······虹色??!』
小さめの猫くらいのサイズの七色に輝くドラゴンが倒れていた。
『もしかして、俺の下敷きになったのか?······そうか、お前おかげで俺は助かったのかもしれないな』
命の恩人のドラゴンを触ってみると、息はある。 特に大きなケガをしている様子もない。
優しく抱き上げ、骨が折れていないか触ってみたが、とりあえず大丈夫そうだ。
『よかった···しかしこれが噂に聞くレインボードラゴンか······キレイだな』
って、どこの噂? モヤモヤしているが、ドラゴンは見た事がある気がする。
どこで?·········
『······まあいいか。 知ってる事は知ってるし、忘れた事はそのうち思い出すだろう』
その時、キュゥ~と、ドラゴンが目を覚ました。
クリっとした大きな金色のキレイな瞳をしている。 どうやらまだ子供のようだ。
『おっ! 目を覚ましたぞ。 大丈夫か? と言っても聞こえないか』
キュイ
まるで聞こえたように返事をした。
『可愛いい······しかし、まだ動けそうにはないな』
俺はドラゴンをそっと懐に入れてから、頭の痛みをこらえて立ち上がった。
『さて···どこに行くか······とりあえず、のどが乾いたな』
すると、少し先でチョロチョロと水が流れる音がした。
『おっと。 水だ』
音がするほうに向かうと、小さな湧水があった。 今、出てきたみたいに、草の間からきれいな水が流れ出ている。
すぐに口をつけてガブ飲みする
『うまい! お前も飲め』
ドラゴンを懐から出し、水の前に下ろしてやった。 しかし動けないようで水まで首が届かない。
水をすくって手の中に溜めてドラゴンの口元に運んでやると、美味しそうに水を飲んだ。
『うまいか。 そうか······可愛いなぁ』
見ているだけで心が温まる。 この子供のドラゴンがやたら可愛く感じてしかたがない。
ドラゴンが満足したようなので、再び懐にそっと入れた。
頭がズキズキ痛む。 とりあえず湧き水で頭の血を洗い流したら、ほとんど痛みがなくなった。 大した傷ではなかったようだ。
ついでに水溜りに映った自分の顔を見てみた。
16~17歳の見慣れない顔がある。 黒髪、黒い瞳。 不細工ではないが、ずば抜けて男前という訳でもない。
ちょっと残念。
『さて······とにかく歩くか』
街や村がどこにあるのかわからない。 むやみに歩いても仕方がないが、ここにじっとしているよりはましだ。
とりあえず崖に沿って歩いた。 左側にはうっそうとした森が続くが、崖沿いには低い下草しか生えていないので歩きやすい。
かなり高い切り立った崖だが、はるか先の方で崖が低くなり、そこから登れそうになっているのが見える。
高い所に登れば町か道が見えるかもしれない。
とりあえず、そこに向かう事にした。
他に行く当てもないし。
その時、森の中でゴソゴソと音がした。 何かがいる。
足元に落ちている枝を拾い身構えた。
藪の中から数頭のゴブリンが顔を出した。
肌の色は緑色で鼻や耳が尖り禿げた頭に帽子のような物を被っている個体もいる。
胸の辺りまでしか背の高さはなく小さいが、手には武器を持っている。 大きな木槌を持つ者や、どこで調達したのかゴブリンには大きめの人間の武器を持つ者もいる。
そして続々と出てきたゴブリンは、10頭以上はいる。 棒切れで相手をするのはちょっと辛い。
『剣さえあればこんな奴らは何でもないのに······』
右手で枝を構えた。 そして、左手で支えている服の中にいるドラゴンは大丈夫かと目線を下げた時、自分の腰に剣がぶら下がっているのが見えた。
『あれ? 確かに剣は持っていなかったのに···まあいいか』
今は深く考えている暇はない。 枝を投げ捨て、スラリと剣を抜いて構える。
2頭同時にかかってきた。
少し右に移動し、右側の奴を袈裟懸けに切り下し、左足を下げて体を開いてもう1頭を左から上に切り上げた。
それで勝負は決まった。
ゴブリンたちはそそくさと逃げていった。
『もしかして俺って凄腕の剣士かも』
どう動けばいいか体が覚えている。 恐怖もなく簡単に倒せた。
『大丈夫か?』
心の中でドラゴンに声をかけ、頭を撫でるとキュイと返事をした。
間がいいのか、それとも俺の心の声が聞こえているのか?
しかし、本当に可愛い。 見た目も可愛いが、何というのか······生まれたばかりの小鳥が始めて見た物を親と思うっていうやつ?
違うな···それは逆か······母親ってこんな気持ちで子供を見ているのか···みたいな?
『ハハハ、 父親じゃなくて、母親かよ』
思わず笑うとドラゴンも笑ったように見えた。
『お前、本当に俺の言葉が聞こえているみたいだな。
そうだ、[お前]じゃなんだから、名前を付けよう。 何がいいかな······おっ! いい名前を思いついたぞ。
お前は今から[レイ]だ。 レインボードラゴンのレイ。 どうだ?』
キュィ
レイは嬉しそうに鳴いた。
『ハハハハハハ! 気に入ったか·········って、やっぱり聞こえているのか?』
キュイ
『そうか! 聞こえているのか。 まっ、理由なんて考えても分からないから気にしない事にしよう。 話し相手ができてうれしいぞ』
グゥ~~キュルキュル
おっと。 これはレイの鳴き声ではなく俺の腹の音だな······
『忘れていたけど、腹減った。 何か食い物でも落ちていないかな』
その時、頭の上からポタポタと、目の前に何かが落ちてきた。 こぶし大の果物リンガだ。
どこから落ちてきたのかと見上げたが、リンガの木はない。
まあ、いいか。 3個落ちてきたので2個は俺が食べ、1個はレイに食べさせてあげた。
レイは美味しそうに食べる。
ドラゴンって草食?······食べているからいいか。
しかし、目に見えて元気になってきている。 初めは頭も上げられない状態だったのに、今は俺の胸元から首を出してキョロキョロしている。
さすがドラゴンだ。 何がさすがなのかは分からないけど······
ここは湧き水が多い。 喉が渇いたと思ったら、いい具合に湧き水がある。
ちょっと都合が良すぎる気もするが、ないよりいいので気にしない事にした。
ふと目が覚めた。
『ここはどこだ?』
どうやら俺は地面の草の上に寝転がっている。
上を見ると、右にうっそうとした森が覆い被さり、左に高い断崖絶壁がそそり立つ。 森と断崖の間を真っ蒼な空が縦に伸びて、隙間から太陽のまぶしい光が顔を照らしていた。
『うっ!』
頭が割れるような痛みが走り、触ると手に血が付く。 頭をケガしていた。
すぐ横に大きな石があって、血が付いている。 そこで頭を打ったのだろう。
『いって~~っ······あれ??······あ~~う~~え~~······???』
声が出ない?!
『なんで?······あ~~~』
やっぱり声が出ない。
『どうなっているんだ? それにどうしてこんな所に? もしかして、崖から落ちたのか?···いやいや、あんな高い所から落ちたら普通死ぬだろ·········ちょっとまて·········』
俺は頭の痛みに耐えながら上半身を起こした。 その時、更なる自分の異変に気がついた。
『まてまて!·········俺は······誰?』
記憶がない!!
『頭を打って記憶が飛んだのか?······う~~~~ん······』
思い出そうとするが、やはり何も思い出せない。
自分の顔を触ってみる。
『うん! 男だよな。 短髪でゴツゴツしているし、腕も結構筋肉がついているし······あそこも···ある』
ちょっとズボンの中をのぞいてみた。
『しかし年齢もわからないな······ガキではないが、おっさんでもなさそうだ』
自分の服を見る。
『普通の町人の服装だな······』
綿の襟付きのブルーのシャツに、ベージュの綿のパンツだ。 なにげに汚れていてあちらこちらが破れて、けっこうボロボロだ。
貧乏な農民なのか?
ポケットを探るが、何も入ってないし、剣やナイフも携帯していない。
『この森で武器がないのはマズいな······って、それは知っているんだ······なぜ?』
とにかく立ち上がろうと手を着くと、グニュッと何かが手に当たった。
『なんだ?』
振り返るとそこには······
『ド···ドラゴン?? それも······虹色??!』
小さめの猫くらいのサイズの七色に輝くドラゴンが倒れていた。
『もしかして、俺の下敷きになったのか?······そうか、お前おかげで俺は助かったのかもしれないな』
命の恩人のドラゴンを触ってみると、息はある。 特に大きなケガをしている様子もない。
優しく抱き上げ、骨が折れていないか触ってみたが、とりあえず大丈夫そうだ。
『よかった···しかしこれが噂に聞くレインボードラゴンか······キレイだな』
って、どこの噂? モヤモヤしているが、ドラゴンは見た事がある気がする。
どこで?·········
『······まあいいか。 知ってる事は知ってるし、忘れた事はそのうち思い出すだろう』
その時、キュゥ~と、ドラゴンが目を覚ました。
クリっとした大きな金色のキレイな瞳をしている。 どうやらまだ子供のようだ。
『おっ! 目を覚ましたぞ。 大丈夫か? と言っても聞こえないか』
キュイ
まるで聞こえたように返事をした。
『可愛いい······しかし、まだ動けそうにはないな』
俺はドラゴンをそっと懐に入れてから、頭の痛みをこらえて立ち上がった。
『さて···どこに行くか······とりあえず、のどが乾いたな』
すると、少し先でチョロチョロと水が流れる音がした。
『おっと。 水だ』
音がするほうに向かうと、小さな湧水があった。 今、出てきたみたいに、草の間からきれいな水が流れ出ている。
すぐに口をつけてガブ飲みする
『うまい! お前も飲め』
ドラゴンを懐から出し、水の前に下ろしてやった。 しかし動けないようで水まで首が届かない。
水をすくって手の中に溜めてドラゴンの口元に運んでやると、美味しそうに水を飲んだ。
『うまいか。 そうか······可愛いなぁ』
見ているだけで心が温まる。 この子供のドラゴンがやたら可愛く感じてしかたがない。
ドラゴンが満足したようなので、再び懐にそっと入れた。
頭がズキズキ痛む。 とりあえず湧き水で頭の血を洗い流したら、ほとんど痛みがなくなった。 大した傷ではなかったようだ。
ついでに水溜りに映った自分の顔を見てみた。
16~17歳の見慣れない顔がある。 黒髪、黒い瞳。 不細工ではないが、ずば抜けて男前という訳でもない。
ちょっと残念。
『さて······とにかく歩くか』
街や村がどこにあるのかわからない。 むやみに歩いても仕方がないが、ここにじっとしているよりはましだ。
とりあえず崖に沿って歩いた。 左側にはうっそうとした森が続くが、崖沿いには低い下草しか生えていないので歩きやすい。
かなり高い切り立った崖だが、はるか先の方で崖が低くなり、そこから登れそうになっているのが見える。
高い所に登れば町か道が見えるかもしれない。
とりあえず、そこに向かう事にした。
他に行く当てもないし。
その時、森の中でゴソゴソと音がした。 何かがいる。
足元に落ちている枝を拾い身構えた。
藪の中から数頭のゴブリンが顔を出した。
肌の色は緑色で鼻や耳が尖り禿げた頭に帽子のような物を被っている個体もいる。
胸の辺りまでしか背の高さはなく小さいが、手には武器を持っている。 大きな木槌を持つ者や、どこで調達したのかゴブリンには大きめの人間の武器を持つ者もいる。
そして続々と出てきたゴブリンは、10頭以上はいる。 棒切れで相手をするのはちょっと辛い。
『剣さえあればこんな奴らは何でもないのに······』
右手で枝を構えた。 そして、左手で支えている服の中にいるドラゴンは大丈夫かと目線を下げた時、自分の腰に剣がぶら下がっているのが見えた。
『あれ? 確かに剣は持っていなかったのに···まあいいか』
今は深く考えている暇はない。 枝を投げ捨て、スラリと剣を抜いて構える。
2頭同時にかかってきた。
少し右に移動し、右側の奴を袈裟懸けに切り下し、左足を下げて体を開いてもう1頭を左から上に切り上げた。
それで勝負は決まった。
ゴブリンたちはそそくさと逃げていった。
『もしかして俺って凄腕の剣士かも』
どう動けばいいか体が覚えている。 恐怖もなく簡単に倒せた。
『大丈夫か?』
心の中でドラゴンに声をかけ、頭を撫でるとキュイと返事をした。
間がいいのか、それとも俺の心の声が聞こえているのか?
しかし、本当に可愛い。 見た目も可愛いが、何というのか······生まれたばかりの小鳥が始めて見た物を親と思うっていうやつ?
違うな···それは逆か······母親ってこんな気持ちで子供を見ているのか···みたいな?
『ハハハ、 父親じゃなくて、母親かよ』
思わず笑うとドラゴンも笑ったように見えた。
『お前、本当に俺の言葉が聞こえているみたいだな。
そうだ、[お前]じゃなんだから、名前を付けよう。 何がいいかな······おっ! いい名前を思いついたぞ。
お前は今から[レイ]だ。 レインボードラゴンのレイ。 どうだ?』
キュィ
レイは嬉しそうに鳴いた。
『ハハハハハハ! 気に入ったか·········って、やっぱり聞こえているのか?』
キュイ
『そうか! 聞こえているのか。 まっ、理由なんて考えても分からないから気にしない事にしよう。 話し相手ができてうれしいぞ』
グゥ~~キュルキュル
おっと。 これはレイの鳴き声ではなく俺の腹の音だな······
『忘れていたけど、腹減った。 何か食い物でも落ちていないかな』
その時、頭の上からポタポタと、目の前に何かが落ちてきた。 こぶし大の果物リンガだ。
どこから落ちてきたのかと見上げたが、リンガの木はない。
まあ、いいか。 3個落ちてきたので2個は俺が食べ、1個はレイに食べさせてあげた。
レイは美味しそうに食べる。
ドラゴンって草食?······食べているからいいか。
しかし、目に見えて元気になってきている。 初めは頭も上げられない状態だったのに、今は俺の胸元から首を出してキョロキョロしている。
さすがドラゴンだ。 何がさすがなのかは分からないけど······
ここは湧き水が多い。 喉が渇いたと思ったら、いい具合に湧き水がある。
ちょっと都合が良すぎる気もするが、ないよりいいので気にしない事にした。
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