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33章 魔法攻撃
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33章 魔法攻撃
翌朝早く、俺とアニエッタは馬で出発した。 もちろんフェンリルもついてきてくれる。
街を出るとレイとミンミは姿を現し、二人で楽しそうに並んで飛んでくる。
俺たちが走る馬の周りを飛んだり、二人で競争するようにビュン! と飛んでいったり、リスや小鳥を追いかけて遊んだりして、片時もじっとしていない。
しかしそれが楽しくてたまらないようだ。
そして、そんなレイたちを見ているのも楽しい。
しかし、なんとも平和で幸せな時だろう。
空は晴れ渡り······と言いたいところだが、曇っている。
しかし、久しぶりの郊外の空気は澄んでいて清々しい。 隣町まではほとんどが田畑か草原で、見晴らしもよく、遠くに見える山々には少し靄がかかっているのがまた美しい。
······きっと土砂降りでも美しく思うだろう。
なぜならば横にはアニエッタがいる。
時々並走しては、顔を見合ってほほ笑み合う。
彼女もなかなか乗馬の名手のようだ。 騎馬姿がとても凛々しい。
乗馬用にスカートの下に足首で絞られたパンツをはいているのだが、それがまた捲れた時に少し色気を感じさせて、そそられ······じゃなくて、可愛い!
町に着くと、馬から降りて引いて歩き、とりあえず二人ともフードを被った。 ただでさえフェンリルがいて目立つのに、これ以上詮索されたくないからだ。
ガドルに教えてもらった古本屋の場所はすぐにわかった。 所狭しと本が積み上げられていて、カビ臭く埃っぽいが、独特の本の香りが読書好きではない俺でも不思議と心を落ち着かせる。
真っ白なヒゲを生やした老人が、ガドルの話をするとすぐに注文してあった本を数冊出してくれた。
分厚い本をカバンに入れて馬の鞍に縛りつける。
しばらく街並みを見て回ったが、美味しそうな屋台が出ていたので、そこで簡単な昼食を取ってから早々に帰途につくことにした。
◇◇◇◇◇
しかしせっかく二人の遠出なので、そのまま帰るのはもったいない。
「少し休んでいこうか」
「そうね。 思った以上に早く戻ってきましたからゆっくりしていきましょう」
アニエッタは俺の提案にすぐに賛同してくれた。
景色のいい小高い丘の上で馬を降りた。
曇ってはいるが丁度良い気候で、馬で走らせてきて汗ばむ俺たちには爽やかな風が気持ちがいい。
そこに生えている木に馬をつなぎ2人で肩を並べて草の上に腰かけた。
フェンリルは気を利かせて少し離れた馬の近くで寝転がり、例のごとくレイとミンミは飛び回って遊んでいる。
「遠くに行くなよレイ!」
「は~~~い!」
本当に分っているのやら······疲れ知らずなんだから。
「フフフ······本当にあの二人は仲がいいですわね。 いつもミンミはレイちゃんの事ばかり話すの。
今までお友達がいなかったから、本当に嬉しいみたいなのよ」
「ルーアとは遊ばないのか?」
「ルーアちゃんはお姉さん過ぎて、遊んだりすることはないわね」
「あぁ······二百歳も離れていると、遊ぶことはないか······」
「フフフ、そうね。 でもルーアちゃんの前で二百歳という話しはしない方がいいと思うわ」
「あ······レディーに歳の話しは御法度ですね」
「そういう事です。 フフフ」
「ハハハハハ!」
俺は空を見上げてそのまま寝転がった。
「気持ちいいなぁ」
「本当ね。 少しくらい曇っている方が、日差しが強すぎなくて過ごしやすいわ」
女性はお肌が焼けるのが気になるのだろう。
「そういえば、アニエッタはどこに住んでいるんだ? ガドル先生の所には、急遽呼ばれたのだろう?」
少し前から2人の時はお互いに敬語を使わない事にしようと決めた。
この方が親しく感じるだろ?·········うふ。
「さっきの街からもう少し北に行ったところにある小さな村よ」
「ずっとそこで?」
「ええ。 そこの人達は人竜族の事をよく知っていて、私達も居心地がいいの」
「へぇ~~、他にもそんな場所もあるんだな。 スーガの故郷の人たちも人竜族のことを知っていると言っていた。 それじゃぁご両親もそこに?」
「うん」
「ご両親は人竜族?」
「そうよ」
「でも竜生神ではないのだよな」
この国で竜生神は5人しかいないと聞いている。
「残念ながら······でも二人ともとても仲がよくて、いつも幸せそうなのよ」
「アニエッタを見ていると、幸せな家庭で育ったことがよくわかるよ」
「あら······そう? フフフフ」
アニエッタは少し顔を赤らめて、幸せそうに笑った。
その時、フェンリルが急に起き上がり耳をピンと立てた。
『シーク!! 殺気だ!!』
それを聞いて嫌な予感がした俺は、馬も一緒に囲むように大きな多重結界を張った。
その瞬間、ズドドーーン!!と、いう地響きと共に目も開けていられないような真っ白な閃光に包まれた。
「きゃぁぁぁぁっ!!」
「わぁっ!」
結界内で大丈夫と分かっていても、アニエッタを庇うように抱え込む。
馬たちが驚いていななき、棹立ちになり、縛られた手綱で折れそうなほど木がしなる。
爆音と閃光で、しばらく目と耳が効かない。
ゆっくりと目を馴らすと、俺が張った結界の周りの土がえぐれ、草が丸焦げになっていて煙が上がっているのがわかった。
『フェンリル! 大丈夫か?!』
フェンリルは一点を見つめたまま立ち上がった。
『助かった! 結界を一度解け! 殺気の後を追う!』
一度結界を解くと、フェンリルは飛んでいった。
さすがフェンリルだ。 瞬時に殺気の気配を掴んだようだ。
念のためにもう一度結界を張る。
「アニエッタ! 大丈夫か?!」
アニエッタは耳を塞いで丸くなって震えている。
俺は優しくアニエッタを抱きしめた。
「大丈夫だから······もう大丈夫だから······」
その時、ふと思い出した。 レイとミンミが結界の外だ!!
『まずい!! レイ!! レイ!! 聞こえるか!! ミンミ!!』
返事がないので探索魔法でレイたちを探す。
見つけた! 200メルクほど先の草の上に少し離れて二人が倒れていた。
「アニエッタ、ミンミが!」
それを聞いてアニエッタは我に返る。
「あっ!! ミンミ!!」
「少し先で倒れている。 立てるか?」
アニエッタは立とうとするが、どうやら腰が抜けていて立ち上がれそうにない。 仕方がないので、そのまま抱き上げてレイたちの所まで飛んでいった。
先にミンミの前にアニエッタを降ろす。 ミンミに触ってみると息はある。
「アニエッタ、ミンミの回復をできるか?」
「はい!」
気丈に回復を始めたので、ミンミは彼女に任せて俺はレイの元に走った。
「レイ!!」
気を失っているがレイも息があった。 急いで回復魔法をかける。
「レイ! 戻って来い! レイ! 起きろ!!」
しばらくするとゆっくりとレイが目を開けた。
「······マー?」
「よかった!! もう少しじっとしていろ」
そのまま回復魔法を続け、レイが完全に回復したところでやっと手を止め、レイを抱きしめた。
「よかった······よかった······」
「マー? 何があったの? 僕、よく覚えていないんだけど」
「雷魔法の攻撃を受けたんだ」
「マーは大丈夫だったの?」
「うん。 ごめん······俺は結界を張ったから······レイまで結界に入れられなくてごめん」
「離れていた僕たちが悪いんだよ。 それに、治してくれたからもう······あっ!! ミンミは?!」
レイはあわててミンミを探す。
「あそこにいる」
俺が視線を向けた先ではアニエッタがミンミを抱きしめていた。
急いで二人の元に駆け寄った。 ミンミを抱きしめているということは、回復が終わったのか? それとも········
「アニエッタ! ミンミは?」
「大丈夫」
アニエッタはホッとしたのか涙でグチョグチョになった顔を拭こうともせずに、半泣き笑いをしてみせた。
良かった!
アニエッタの腕の中から元気になったミンミが飛び出した。
「レイ! 大丈夫だった?」
「うん! ミンミも大丈夫そうだね。 良かった」
可愛らしくドラゴン二人で抱き合っている。 回復が間に合って良かった。
本当に良かった。
そこへフェンリルが戻ってきた。
「どうだった?」
「殺気はすぐに消えて、分からなくなってしまった······とにかく戻ろう」
アニエッタがいまだに震えていて一人で馬に乗せるのは危険だったので、俺の前に乗せて、もう一頭の馬は引いていく事にした。
いつまでも俺の前で震えるアニエッタを片手で抱きしめ、耳元で「大丈夫···もう大丈夫」と、何度もささやくうちに、ようやく落ち着きを取り戻してきたようだった。
翌朝早く、俺とアニエッタは馬で出発した。 もちろんフェンリルもついてきてくれる。
街を出るとレイとミンミは姿を現し、二人で楽しそうに並んで飛んでくる。
俺たちが走る馬の周りを飛んだり、二人で競争するようにビュン! と飛んでいったり、リスや小鳥を追いかけて遊んだりして、片時もじっとしていない。
しかしそれが楽しくてたまらないようだ。
そして、そんなレイたちを見ているのも楽しい。
しかし、なんとも平和で幸せな時だろう。
空は晴れ渡り······と言いたいところだが、曇っている。
しかし、久しぶりの郊外の空気は澄んでいて清々しい。 隣町まではほとんどが田畑か草原で、見晴らしもよく、遠くに見える山々には少し靄がかかっているのがまた美しい。
······きっと土砂降りでも美しく思うだろう。
なぜならば横にはアニエッタがいる。
時々並走しては、顔を見合ってほほ笑み合う。
彼女もなかなか乗馬の名手のようだ。 騎馬姿がとても凛々しい。
乗馬用にスカートの下に足首で絞られたパンツをはいているのだが、それがまた捲れた時に少し色気を感じさせて、そそられ······じゃなくて、可愛い!
町に着くと、馬から降りて引いて歩き、とりあえず二人ともフードを被った。 ただでさえフェンリルがいて目立つのに、これ以上詮索されたくないからだ。
ガドルに教えてもらった古本屋の場所はすぐにわかった。 所狭しと本が積み上げられていて、カビ臭く埃っぽいが、独特の本の香りが読書好きではない俺でも不思議と心を落ち着かせる。
真っ白なヒゲを生やした老人が、ガドルの話をするとすぐに注文してあった本を数冊出してくれた。
分厚い本をカバンに入れて馬の鞍に縛りつける。
しばらく街並みを見て回ったが、美味しそうな屋台が出ていたので、そこで簡単な昼食を取ってから早々に帰途につくことにした。
◇◇◇◇◇
しかしせっかく二人の遠出なので、そのまま帰るのはもったいない。
「少し休んでいこうか」
「そうね。 思った以上に早く戻ってきましたからゆっくりしていきましょう」
アニエッタは俺の提案にすぐに賛同してくれた。
景色のいい小高い丘の上で馬を降りた。
曇ってはいるが丁度良い気候で、馬で走らせてきて汗ばむ俺たちには爽やかな風が気持ちがいい。
そこに生えている木に馬をつなぎ2人で肩を並べて草の上に腰かけた。
フェンリルは気を利かせて少し離れた馬の近くで寝転がり、例のごとくレイとミンミは飛び回って遊んでいる。
「遠くに行くなよレイ!」
「は~~~い!」
本当に分っているのやら······疲れ知らずなんだから。
「フフフ······本当にあの二人は仲がいいですわね。 いつもミンミはレイちゃんの事ばかり話すの。
今までお友達がいなかったから、本当に嬉しいみたいなのよ」
「ルーアとは遊ばないのか?」
「ルーアちゃんはお姉さん過ぎて、遊んだりすることはないわね」
「あぁ······二百歳も離れていると、遊ぶことはないか······」
「フフフ、そうね。 でもルーアちゃんの前で二百歳という話しはしない方がいいと思うわ」
「あ······レディーに歳の話しは御法度ですね」
「そういう事です。 フフフ」
「ハハハハハ!」
俺は空を見上げてそのまま寝転がった。
「気持ちいいなぁ」
「本当ね。 少しくらい曇っている方が、日差しが強すぎなくて過ごしやすいわ」
女性はお肌が焼けるのが気になるのだろう。
「そういえば、アニエッタはどこに住んでいるんだ? ガドル先生の所には、急遽呼ばれたのだろう?」
少し前から2人の時はお互いに敬語を使わない事にしようと決めた。
この方が親しく感じるだろ?·········うふ。
「さっきの街からもう少し北に行ったところにある小さな村よ」
「ずっとそこで?」
「ええ。 そこの人達は人竜族の事をよく知っていて、私達も居心地がいいの」
「へぇ~~、他にもそんな場所もあるんだな。 スーガの故郷の人たちも人竜族のことを知っていると言っていた。 それじゃぁご両親もそこに?」
「うん」
「ご両親は人竜族?」
「そうよ」
「でも竜生神ではないのだよな」
この国で竜生神は5人しかいないと聞いている。
「残念ながら······でも二人ともとても仲がよくて、いつも幸せそうなのよ」
「アニエッタを見ていると、幸せな家庭で育ったことがよくわかるよ」
「あら······そう? フフフフ」
アニエッタは少し顔を赤らめて、幸せそうに笑った。
その時、フェンリルが急に起き上がり耳をピンと立てた。
『シーク!! 殺気だ!!』
それを聞いて嫌な予感がした俺は、馬も一緒に囲むように大きな多重結界を張った。
その瞬間、ズドドーーン!!と、いう地響きと共に目も開けていられないような真っ白な閃光に包まれた。
「きゃぁぁぁぁっ!!」
「わぁっ!」
結界内で大丈夫と分かっていても、アニエッタを庇うように抱え込む。
馬たちが驚いていななき、棹立ちになり、縛られた手綱で折れそうなほど木がしなる。
爆音と閃光で、しばらく目と耳が効かない。
ゆっくりと目を馴らすと、俺が張った結界の周りの土がえぐれ、草が丸焦げになっていて煙が上がっているのがわかった。
『フェンリル! 大丈夫か?!』
フェンリルは一点を見つめたまま立ち上がった。
『助かった! 結界を一度解け! 殺気の後を追う!』
一度結界を解くと、フェンリルは飛んでいった。
さすがフェンリルだ。 瞬時に殺気の気配を掴んだようだ。
念のためにもう一度結界を張る。
「アニエッタ! 大丈夫か?!」
アニエッタは耳を塞いで丸くなって震えている。
俺は優しくアニエッタを抱きしめた。
「大丈夫だから······もう大丈夫だから······」
その時、ふと思い出した。 レイとミンミが結界の外だ!!
『まずい!! レイ!! レイ!! 聞こえるか!! ミンミ!!』
返事がないので探索魔法でレイたちを探す。
見つけた! 200メルクほど先の草の上に少し離れて二人が倒れていた。
「アニエッタ、ミンミが!」
それを聞いてアニエッタは我に返る。
「あっ!! ミンミ!!」
「少し先で倒れている。 立てるか?」
アニエッタは立とうとするが、どうやら腰が抜けていて立ち上がれそうにない。 仕方がないので、そのまま抱き上げてレイたちの所まで飛んでいった。
先にミンミの前にアニエッタを降ろす。 ミンミに触ってみると息はある。
「アニエッタ、ミンミの回復をできるか?」
「はい!」
気丈に回復を始めたので、ミンミは彼女に任せて俺はレイの元に走った。
「レイ!!」
気を失っているがレイも息があった。 急いで回復魔法をかける。
「レイ! 戻って来い! レイ! 起きろ!!」
しばらくするとゆっくりとレイが目を開けた。
「······マー?」
「よかった!! もう少しじっとしていろ」
そのまま回復魔法を続け、レイが完全に回復したところでやっと手を止め、レイを抱きしめた。
「よかった······よかった······」
「マー? 何があったの? 僕、よく覚えていないんだけど」
「雷魔法の攻撃を受けたんだ」
「マーは大丈夫だったの?」
「うん。 ごめん······俺は結界を張ったから······レイまで結界に入れられなくてごめん」
「離れていた僕たちが悪いんだよ。 それに、治してくれたからもう······あっ!! ミンミは?!」
レイはあわててミンミを探す。
「あそこにいる」
俺が視線を向けた先ではアニエッタがミンミを抱きしめていた。
急いで二人の元に駆け寄った。 ミンミを抱きしめているということは、回復が終わったのか? それとも········
「アニエッタ! ミンミは?」
「大丈夫」
アニエッタはホッとしたのか涙でグチョグチョになった顔を拭こうともせずに、半泣き笑いをしてみせた。
良かった!
アニエッタの腕の中から元気になったミンミが飛び出した。
「レイ! 大丈夫だった?」
「うん! ミンミも大丈夫そうだね。 良かった」
可愛らしくドラゴン二人で抱き合っている。 回復が間に合って良かった。
本当に良かった。
そこへフェンリルが戻ってきた。
「どうだった?」
「殺気はすぐに消えて、分からなくなってしまった······とにかく戻ろう」
アニエッタがいまだに震えていて一人で馬に乗せるのは危険だったので、俺の前に乗せて、もう一頭の馬は引いていく事にした。
いつまでも俺の前で震えるアニエッタを片手で抱きしめ、耳元で「大丈夫···もう大丈夫」と、何度もささやくうちに、ようやく落ち着きを取り戻してきたようだった。
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