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101章 フェンリル様!
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101章 フェンリル様!
街の中心辺りに数十匹の虫がいた。 その虫を追ってきた馬に乗った兵士たちが応戦している。
鎖を投げて捕まえてから殺そうというのだろうが、その鎖の間を虫は巧妙にすり抜ける。
長い槍を持っている者もいるが届かない。 弓で射るが、矢が2~3本刺さっても、平気で飛び回っている。
虫たちは隙間を縫って人間や馬を捕まえては殺していく。 どうやら餌として捕食するためではなく、殺す事が目的のように見える。
ここにいる虫の半分以上が蜂だ。 毒がある上に人間を簡単に挟めるほどの大きなアゴがある。 オーガでも苦戦していたのに、人間に敵う訳がなかった。
周りにはかなりの数の兵士と馬が、無残な姿で倒れている。 周りの家は窓や扉を硬く閉ざしているが、チラチラと人影が見える。
事の成り行きを見守っているのだろう。
フェンリルは炎魔法を分散追跡魔法で放った。 ドンドンドンドン! 次々に虫が爆発していく。
炎魔法を放つと同時に風魔法を下から噴き上げると、爆風が相殺し合って対象相手以外への被害が少なくて済むし、消費魔力もそれほど使必要ない。
こういう場合を想定してみんなで練習したお陰で、二次被害を出さずに済んだ。
何があったのか分からずに呆けている兵士たちに向かってフェンリルは叫ぶ。
「まだ息のある者を連れて、急いで建物の中に入り、治療するように!」
今度は周りの家から、ポツポツと顔を出したり不用意にも出てきたりする者がいる。
「まだ安全ではない! 街中にまだ多くの虫が潜んでいる! 兵士を家の中に入れてやってくれ! その後しっかりと戸締りするのを忘れないように!」
しかし、街の人達は虫がいないことを確認するとわらわらと表に出てきた。
フェンリルが今しがた言った事は聞いていなかったように、フェンリルに向かって手を振り歓声を上げる。
「「「ワァ~~~ッ!」」」
その中にフェンリルの名前を知っている者がいた。
「フェンリル様だ!! フェンリル様が助けて下さった!!」
「「ワァ~~~ッ! フェンリル様!!」」
これはダメだとフェンリルは首を振る。
そして間近にいる兵士に「すぐに建物の中に入るように」と、念押しをしてから「フェンリル様ぁ~~!」という声を後に飛び立った。
その後、数か所で虫を退治し、ニバール国内の虫がいないのを確かめてから戻って行った。
◇◇◇◇
「なぁなぁ! あれってシークと一緒にいた狼のフェンリルだよな!」
ヨシュアに話しかけてきたのは、モスの矢を渡す担当をかって出てきたBクラスのフラゾだ。 訓練で仲良くなっていた気さくな男だ。
今は虫の数が少なくて、少し余裕がある。
「シークさんとフェンリルさんだろ?!」
「すまんすまん。 フェンリルさんは大きい時でもせいぜい馬くらいの大きさでシークさんを乗せて飛んでいたのを何度か見た事があるが、あんなに大きくなるのか?
6メルク以上あるんじゃないか? それに鎧まで着てチョーカッケーんだけど!!」
「じつは······俺も始めて見た。 ハハハハハ」
ヨシュアは笑って誤魔化す。
大きくなることは知っていたが残念な事に以前、スタンリー兄弟の店の前でレイとフェンリルが大きな姿になったらしいのだが、見逃した。
今回は見ることが出来て、じつは感動しているのだ。
カッコよかったぁ~~!!
そんな事は知らずにフラゾが続ける。
「しかし、フェンリルさんの魔法ってスゲ~な。 すぐ目の前で爆発したのに火の粉も爆風も、吹き飛んだ虫のカスさえも飛んでこなかった。
昇級試験で魔法を見た時は、普通に飛び散っていたように見えたんだけどなぁ?」
それはなと、マルケスがフィンに矢を渡しながら答えてくれた。 今は6匹ほどの虫が遠巻きにこちらをうかがっている。
「フェンリルはザラ先生やスーガと一緒に、けっこう色々と研究して練習したようだぞ。 敵に強くて味方には優しい魔法を目指すと言って、張り切っていた。 ああ見えて優しいんだ。 フェンリルは」
「「へぇ~~」」
ヨシュアとフラゾが感心している。 ヨシュアなどは一度フェンリルに手を咬まれているから、実は少し怖い。
みんなが気を抜いて雑談していると、フィンが叫んだ。
「おい!! あっちから6~7匹が来るぞ!! 見ろ! あのデカいのは、クワナタじゃないのか?」
クワナタは、大きなアゴと、甲羅のような硬い外羽のため、矢が刺さりにくく凶暴だ。 まだこの辺りにも、まるでクワナタを待っていたかのように数匹の虫がたむろしている。
一斉に来られると厄介な事になる。
「気を引き締めろ!! 来るぞ!!」
大弓を構えた時、ドンドンドンドン! と、炎と共に虫たちが爆発していく。
みんなが一斉に空を見上げると、ドワーフ山脈の方に飛んでいくフェンリルの後ろ姿があった。
街の中心辺りに数十匹の虫がいた。 その虫を追ってきた馬に乗った兵士たちが応戦している。
鎖を投げて捕まえてから殺そうというのだろうが、その鎖の間を虫は巧妙にすり抜ける。
長い槍を持っている者もいるが届かない。 弓で射るが、矢が2~3本刺さっても、平気で飛び回っている。
虫たちは隙間を縫って人間や馬を捕まえては殺していく。 どうやら餌として捕食するためではなく、殺す事が目的のように見える。
ここにいる虫の半分以上が蜂だ。 毒がある上に人間を簡単に挟めるほどの大きなアゴがある。 オーガでも苦戦していたのに、人間に敵う訳がなかった。
周りにはかなりの数の兵士と馬が、無残な姿で倒れている。 周りの家は窓や扉を硬く閉ざしているが、チラチラと人影が見える。
事の成り行きを見守っているのだろう。
フェンリルは炎魔法を分散追跡魔法で放った。 ドンドンドンドン! 次々に虫が爆発していく。
炎魔法を放つと同時に風魔法を下から噴き上げると、爆風が相殺し合って対象相手以外への被害が少なくて済むし、消費魔力もそれほど使必要ない。
こういう場合を想定してみんなで練習したお陰で、二次被害を出さずに済んだ。
何があったのか分からずに呆けている兵士たちに向かってフェンリルは叫ぶ。
「まだ息のある者を連れて、急いで建物の中に入り、治療するように!」
今度は周りの家から、ポツポツと顔を出したり不用意にも出てきたりする者がいる。
「まだ安全ではない! 街中にまだ多くの虫が潜んでいる! 兵士を家の中に入れてやってくれ! その後しっかりと戸締りするのを忘れないように!」
しかし、街の人達は虫がいないことを確認するとわらわらと表に出てきた。
フェンリルが今しがた言った事は聞いていなかったように、フェンリルに向かって手を振り歓声を上げる。
「「「ワァ~~~ッ!」」」
その中にフェンリルの名前を知っている者がいた。
「フェンリル様だ!! フェンリル様が助けて下さった!!」
「「ワァ~~~ッ! フェンリル様!!」」
これはダメだとフェンリルは首を振る。
そして間近にいる兵士に「すぐに建物の中に入るように」と、念押しをしてから「フェンリル様ぁ~~!」という声を後に飛び立った。
その後、数か所で虫を退治し、ニバール国内の虫がいないのを確かめてから戻って行った。
◇◇◇◇
「なぁなぁ! あれってシークと一緒にいた狼のフェンリルだよな!」
ヨシュアに話しかけてきたのは、モスの矢を渡す担当をかって出てきたBクラスのフラゾだ。 訓練で仲良くなっていた気さくな男だ。
今は虫の数が少なくて、少し余裕がある。
「シークさんとフェンリルさんだろ?!」
「すまんすまん。 フェンリルさんは大きい時でもせいぜい馬くらいの大きさでシークさんを乗せて飛んでいたのを何度か見た事があるが、あんなに大きくなるのか?
6メルク以上あるんじゃないか? それに鎧まで着てチョーカッケーんだけど!!」
「じつは······俺も始めて見た。 ハハハハハ」
ヨシュアは笑って誤魔化す。
大きくなることは知っていたが残念な事に以前、スタンリー兄弟の店の前でレイとフェンリルが大きな姿になったらしいのだが、見逃した。
今回は見ることが出来て、じつは感動しているのだ。
カッコよかったぁ~~!!
そんな事は知らずにフラゾが続ける。
「しかし、フェンリルさんの魔法ってスゲ~な。 すぐ目の前で爆発したのに火の粉も爆風も、吹き飛んだ虫のカスさえも飛んでこなかった。
昇級試験で魔法を見た時は、普通に飛び散っていたように見えたんだけどなぁ?」
それはなと、マルケスがフィンに矢を渡しながら答えてくれた。 今は6匹ほどの虫が遠巻きにこちらをうかがっている。
「フェンリルはザラ先生やスーガと一緒に、けっこう色々と研究して練習したようだぞ。 敵に強くて味方には優しい魔法を目指すと言って、張り切っていた。 ああ見えて優しいんだ。 フェンリルは」
「「へぇ~~」」
ヨシュアとフラゾが感心している。 ヨシュアなどは一度フェンリルに手を咬まれているから、実は少し怖い。
みんなが気を抜いて雑談していると、フィンが叫んだ。
「おい!! あっちから6~7匹が来るぞ!! 見ろ! あのデカいのは、クワナタじゃないのか?」
クワナタは、大きなアゴと、甲羅のような硬い外羽のため、矢が刺さりにくく凶暴だ。 まだこの辺りにも、まるでクワナタを待っていたかのように数匹の虫がたむろしている。
一斉に来られると厄介な事になる。
「気を引き締めろ!! 来るぞ!!」
大弓を構えた時、ドンドンドンドン! と、炎と共に虫たちが爆発していく。
みんなが一斉に空を見上げると、ドワーフ山脈の方に飛んでいくフェンリルの後ろ姿があった。
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