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Chapter I Side Nell & Lucien Youth
Side Nell & Lucien Youth IV 汚辱と清め
しおりを挟む男が満足げに出て行き、部屋に再び沈黙が落ちる。
ルシアンは、煙草に火をつけながらネルの方を振り返った。
「あ。お前のこと忘れてたわ」
――態とらしい声だった。
ネルは震え、唇を噛んでいた。ルシアンはゆっくり近づき、しゃがみこんで顔を覗き込む。
「……で? 何か言いたいことあるなら言えば? まさか、興奮しちゃった? 俺を抱きたくなっちゃったの?」
「ふざけるな……!」
ネルが吐き捨てると同時に、ルシアンの足がネルの股間を軽く蹴った。
「一人前に痛がるなよ。ついてないくせに」
ネルの頬に朱が差す。怒りか、羞恥か、自分でもわからない。
ルシアンはガウンを脱ぎ捨て、全裸をさらした。
「じゃあ奉仕でもしてもらおうかな。俺の身体、隅々まで舐めろ。上手にできたらご褒美やるよ」
「な……っ」
「俺が裸になってんのに、なんでお前が一丁前に服着てんの? 脱げよ」
ネルの顔が一気に熱を帯びた。しかし、従うしかなかった。こないだ胸元を見られただけでも心臓が潰れそうだったのに、今度は全裸。震える指でボタンを外すたびに、羞恥が刺すように襲う。
そんなネルの内心を知ってか知らずか、ルシアンの視線は、刃物のように無遠慮だった。
「はは、やっぱ坊ちゃんは綺麗な身体してんじゃん。淫売の体を舐める童貞ボンボン、笑えるぜ」
「……っ!」
ネルがひざまずくと、ルシアンは脚を投げ出し、挑発的に笑った。
「まずは足からだ。舌で全部、きれいにしてみろ」
指の間や足首を舐めていくネルを見下ろしながら、ルシアンは煙草をくゆらせる。細長い脚は女のようにしなやかで、しかし骨張っていた。触れる舌の下から浮き出す腱や筋が生々しい。
「もっと上まで。脚の付け根まで舐めろ」
ネルが腿の内側へ舌を這わせると、ルシアンは吐息を漏らしながら胸のあたりを指先で示した。
「次はここだ。……ちゃんと見ろよ、胸なんてない。女に見えても、ないんだ。わかったら舐めろ」
その言葉にはどこか自嘲的なものが感じられた。指示通りに鎖骨から肋骨へ舌を這わせる。浮き上がった肋の線は、まるで「胸があるはずなのに抜け落ちた場所」を強調していて、ネルの頭を混乱させる。そこに乳房がない事実が、むしろ忘れ物をした気分にさせる。
「……ぎこちねえな。童貞丸出し」
ルシアンが笑い、長い指でネルの金髪を掴む。その腕はしなやかで、モデルらしい細さと無駄のなさを持っていた――なのに、どこか不健康な影を纏っている。
「……いい子だ。ほらしゃぶれよ」
ルシアンは腰を引き寄せ、躊躇うネルの唇に自身を押しつける。
かつては不自然でしかなかったそこに「男の証」があることも、今となっては彼の美貌を引き立たせる装置のようにしか思えない。異様に中性的な肢体の中で、それだけが決定的に異物であり、だからこそ視線を奪う。
「あんたみたいな上品な坊ちゃんが、淫売の股ぐら舐めてんの笑えるんだけど?」
「必死に舐めてんのに全然感じねぇよ。もっと舌使えよ」
「舐めながら濡れてんのバレバレ。変態ボンボン」
罵られるたびに胸が疼く。叩き落とされているのに、どこかで安堵すらしている――支配される心地よさ。「優等生」でも「レディ」でもない自分が顕になっていく。家でも学校でも決して得られなかった感覚。
「ま、初めてにしちゃ悪くなかったな。ご褒美やるよ」
やがてルシアンはネルをベッドに押し倒した。ルシアンが身を翻し、ネルの腰を掴むと、強引に脚を開かせた。逆さまに重なり合う体勢。視界にはルシアンの腰と、荒々しく脈打つそれが嫌でも近づいてくる。
次の瞬間、熱と湿り気がネルの秘部を襲った。
「……へぇ」
舌で割れ目をなぞりながら、ルシアンがわざとらしく感嘆する。
「女のここって、こんなふうになってんだ。濡れるってのは知ってたけど……洪水みたいに溢れてんじゃん。女は皆こうなの? それともお前が特別エロいの?」
ネルは羞恥に身をよじった。声にならない声を洩らすが、その動きすらもルシアンの舌を深く受け入れる形になる。
「逃げんなよ」
太腿を押さえつけられ、さらに広げられる。
「ほら、もっと脚開け。舐めにくいだろうが」
命じられるがまま、脚を震わせて広げる。恥辱で涙がにじむ。ルシアンの舌は容赦なく襞を這い、奥を探り、吸いつく。濡れ音がいやらしく部屋に響くたび、ネルの背筋が震えた。
「すげえな……舐めるたびにびちゃびちゃ音立てやがる。お前、ほんといやらしい身体してんな」
そして――堪え切れなかった。
波が一気に押し寄せ、ネルは掴んでいたシーツを握り潰すようにして、声を噛み殺した。
「……っ、あ、ぁああ――!」
視界が白く弾ける。ネルは初めて、自分が人前で「女」として絶頂してしまったことを思い知らされる。
荒く息をつく彼の顔に、ルシアンの影が覆い被さった。次の瞬間――。
温かく、生臭い液体が頬から口元にかけて降りかかる。
「っ……!」
突然の刺激に目を見開くネルを見下ろし、ルシアンはにやりと笑った。
「先イっちまうとか、男娼の俺より淫乱だな、お前」
羞恥と敗北感で涙がこぼれるのに――心臓は狂ったように脈打っていた。
ネルは震えながら顔を拭うことすらできない。
その姿にさらに追い打ちをかけるように、ルシアンがふっと声を落とした。
「なあ……思ったんだけどさ」
濡れた指でネルの股間を軽くなぞり、視線を突き刺す。
「俺ここに入れようと思えば入れられるんだよな? てか世の中では、それが正しい『自然の摂理』なんだろ?」
ネルの意識はまだ霞んでいた。けれどその言葉と同時に、下腹部に伝わる現実感に、全身がぞくりと震える。
「やだ……っ、やめて……!」
涙目で首を振るネルを見て、ルシアンはわざとらしく肩をすくめた。
「冗談だよ。入れる気なんかねえよ。俺にそんなことできるように見えるか? お前本当に面白いな」
そう言って、ケラケラと笑うルシアン。ネルの胸の奥に走るのは安堵か、屈辱か。どちらにしても、震えが止まらなかった。
――女のような容貌だからといって油断してた。こいつは……「そう」だった。
しかし、ルシアンの挿入を拒んだ瞬間、その黒い瞳が揺らいだことをネルは見逃さなかった。
笑い声が収まり、静けさが戻る。顔に飛び散った体液が、粘ついて乾きかけているのをネルは必死に袖で拭った。敗北感で胸が押し潰されそうだった。
「……その顔でベッド入んの? 臭ぇしベタベタだし。さすがの俺でも無理」
ルシアンが煙草を消し、立ち上がった。
「風呂、入んぞ」
「……っ」
反射的に拒もうとしたが、腕を取られ、あっさり引きずられる。ルシアンは裸のまま、何でもない顔でバスルームへ歩いていく。ネルは半ば転がるようについて行くしかなかった。
タイルの冷たさに足がすくむ。頭上からシャワーが降り注ぎ、ぬめりが流れ落ちていく。安堵よりも羞恥が先に立ち、ネルは両腕で必死に胸を隠した。
「はは、まだそんなとこ隠してんの? 俺のチンポ舐めといて今さら?」
「黙れ……っ!」
「かわいーな」
ルシアンは石鹸を泡立て、わざとゆっくりとネルの肩に触れた。細い指が泡を絡ませ、首筋から鎖骨、腕へと撫でていく。強引でも乱暴でもない。むしろ丁寧すぎて、逆に落ち着かない。
「ほら、力抜け。……ガチガチじゃん」
泡立つ掌が背中を往復する。骨ばった背筋をなぞられるたび、ネルの体は勝手に震えた。
「お前、思ったより線細いな。育ちのいい坊ちゃんってこういうとこでバレんだな。……」
小さく囁く声に、ネルの心臓が跳ねる。ついさっきまで顔に精を浴びせた男の言葉とは思えないほど、柔らかい声音だった。
――他の誰かにも同じことをしているのだろうか。
ネルの脳裏に一瞬そんな考えが横切る。
「やめ……っ、自分でできる」
「へえ? 自分で股洗えんのか? さっき洪水みたいに垂れ流してたくせに」
「――!」
真っ赤になったネルの腰を、ルシアンが片手で押さえた。もう片手で泡をつけ、そのまま内腿を撫でる。恥ずかしい場所に触れる指は、ふざけているようで妙に繊細だった。
「……ったく、びっくりするくらい敏感だな。ちょっと撫でただけで震えやがって」
「触るな……!」
「はいはい」
わざとらしく手を離し、今度は髪に触れる。泡でやわらかく揉み込むように頭皮を洗い、前髪を額に貼りつけながら笑った。
「目、閉じろ。泡入るぞ」
ルシアンの指が髪を梳きながら、泡を揉み込む。その感触に、ネルの胸奥でひとつの記憶が呼び起こされる。
――幼い頃。まだ手も小さく、声も細かった頃。
兄嫁のクラリッサが、優しく「じっとしていてね」と笑いながら髪を洗ってくれたことがあった。
泡だらけの手で額に触れ、くすぐったくて笑った自分。あのときの胸の温もりと匂い。
その記憶はネルにとって、初恋のように清らかな光景だった。
……けれど今、同じように髪を洗う指は、クラリッサのそれよりもずっと長く、骨ばっていて、どこか危うい。
なぞられるたび、肌がじんわり熱を帯びる。懐かしさではなく、別の感情が溶け込んでいく。
クラリッサとは違う。
これは――欲望に引きずり込まれるような、甘くて、怖い感覚だ。
すすぎ終え、バスタオルで包まれる。ふわりと布地に閉じ込められ、ネルは思わず息をついた。
「……ほら、綺麗になった」
ルシアンの声は、今まででいちばん穏やかだった。タオル越しに抱き寄せられ、温もりが直に伝わってくる。
胸に顔を押しつけられ、ネルは戸惑いと共に抗えぬ安心感を覚える。つい数分前まで屈辱で震えていたのに、今は逆に、離されたら崩れてしまいそうだった。
「お前さ」
濡れた髪を指で梳きながら、ルシアンが小声で問う。
「なんで家出なんかしたんだ?」
心臓が一気に冷える。
答えたくない記憶――エドウィン。
ネルはタオルを掴んで視線を逸らした。
「……話したくない」
「ふぅん。じゃあ、聞かねえ」
それ以上追及しなかったルシアンは、ただタオルで髪を拭き続ける。指先の優しさが、余計にネルを混乱させた。
シャワーを終えると、二人は再びベッドへ戻った。
まだ濡れた髪のままタオルを掛けたネルを、ルシアンは半ば引き寄せるようにして寝台に横倒しにする。
「ほら、こっち来い」
ルシアンの胸に顔を押しつけられ、ネルは思わず身体を強張らせた。ついさっきまで屈辱で泣かされていたのに、今は逆に、抱き締められるとほっとしてしまう自分が許せない。
「ガキみたいな顔してんな。……涙の跡まだ残ってる」
そう言いながら、ルシアンが頬に唇を押しあてる。軽いキスが次々と顔中に降ってきて、くすぐったさにネルは小さく身をよじった。
「や、やめろ……」
「やめねーよ。……口も、貸せ」
不意に唇を奪われ、喉奥まで甘い熱が流れ込んでくる。強引なのに、さっきみたいな暴力的なものではなかった。舌を絡めるたび、むしろ全身が力を抜かされていく。
離れた瞬間、ルシアンはわざと無邪気に笑ってみせた。
「お前、キスだけは上手いな。才能か?」
「な、何言ってるんだ……」
顔を赤らめるネルの口元に、また短いキス。今度は頬、顎、首筋へとゆっくり辿っていく。
「ん……」
思わず洩れた声に、自分で驚く。だがルシアンはすぐに反応して唇を重ね、さらに深く追い打ちをかけてきた。
気づけば、ネルは自分からも腕を伸ばし、服の上からルシアンの背を掴んでいた。体温と湿った吐息に包まれて、羞恥よりも甘さが勝っていく。
――どうしてだ。
あれほど憎たらしいはずの相手に、抱き寄せられるだけで安心してしまうなんて。
濡れた髪を撫でられ、耳元に囁かれる。
「お前見てると変な気分になるわ。坊ちゃんのくせに俺を狂わせる」
心臓が跳ねる。ネルは、ぼんやりと思った。
――黙ってれば、綺麗な女。
それこそ高校のクイーンビーと張るくらい。
……いや、違う。クラリッサと比べても、まるで別物だ。気品なんか欠片もないのに、目を逸らせない。こうして自分を翻弄して笑う悪魔みたいなやつなのに。
ネルの胸の奥は甘さと痛さがないまぜになった。
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