ドルメンの館

かぷか

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スワロフという男

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「ニオ!!」

 ガバッとベッドから飛び起きた。

「目が覚めましたか?」
「隣だ」

 隣を見ると自分と同じベッドに横になる仁緒がいた。スワロフは仁緒の心臓に耳を当て音が鳴っているのを確認した。

「死んだか?」

「「生きてる」」

「冗談だ」

「スワロフ様、あんなに強引に呪文を発動させて死んでも知りませんよ」

「そうだな」

「あの後も大変だったんだぞ。スワロフ様の血が流れ続けるから止めなきゃいけなかったし客人は来るわで忙しいかった!」

「オクタ、腕をやられたのか」

「客人が厄介なやつで丁度スワロフ様の能力も消えてたからな」

「やられたのはオクタが弱いんですよ。仕方なく私が加勢しました」

「うるせぇ、二人かくまいながらは難しいんだよ!仕方なくなら加勢するな!」

「お礼ぐらい言えないんですか!ああ、悪魔だからお礼は言えなかったですね!」

「いえる!よくやった!」

「それは、お礼じゃありません!!」

 スワロフは呆れながら手を払い二人の言い争いをやめさせた。

「で、客人は?」

「「追い払った」」

それを聞くとベッドに再び体を沈めた。

隣で眠る仁緒を見る。

「結局主印は舌にしたんですね」
「まぁ、なるべくしてなったな」

「はぁ~そうだな。ニオにはまだ言うなよ」

「スワロフ様、悪魔が舌に主印を付けるなんてあれですよ」

「わかってる…」

「あれだな」

「わかった!言うな!!」

「「では、失礼します」」

二人は部屋を去っていった。


 俺もわかってる……

 俺はニオを助けたわけだ

 客人よりもニオを優先した

 何よりも本能的に主印をした場所…
 まさか一番あり得ない場所にするとは


 ゆっくり目を覚ましたは仁緒は叫んだ。

「うわぁぁぁぁ!!俺、死んでない!何で!」

 ベッドから飛び起き手を見て自分が生きている事を確かめた。隣にいるスワロフは不思議そうに見ていた。

「俺が助けた」

「何で!!」

「死にたかったのか?」

「こんな所にいるなら死んだ方がまし!」

「うーん、俺はニオに死んで欲しくない」

「知らないよ!」

「体は痛くないか?」

「別に…大丈夫…です」

「そうか、良かった」

 自分の体をあちこち触るが傷はふさがり痕もない。至って健康に感じたがそれが余計に怖かった。治ってしまうということはここはやはり普通の世界ではないんだなと実感させられた。

 スワロフの犬に殺されかけた時に淡々としている様子だったスワロフを見てゾッとしたのを思い出した。それにあの時、助ける様子は微塵も感じなかったのに助けたと言われ信じられなかった。

 
 何なんだよこいつは

 俺は犬に噛まれて死にかけてたはずなのに

 こいつが俺を助けたって本当か?
 
 意識が無くなった後は全然わからないけど、
 一つだけ覚えていることがある

 夢で何度も俺を呼ぶ声が聞こえた…

 あれは、何だったんだろう…


「ニオ?」

 考え込む仁緒に隣にいたスワロフが声をかける。スワロフを見ると包帯で胸をぐるぐる巻きにされ怪我をしている様子だった。

しかも…

「髪……」

「ああ、切った」

「そんな急に…それに怪我ですか?」

「ああ、客人が来てちょっともめた」

 編み込んであった綺麗な髪だったのに。それに客人ともめて取っ組み合いでもしたのかよ……

「てことで、お風呂に入る」

「は?」

「お互い血まみれだ」

 よく見ると乾いてはいるが血の後が所々残っていた。確かにこのままでは気持ち悪いし服も破れたままで着替えたい。了承するとスワロフも一緒に入ると言った。

断ろうと思ったが怪我をしてる様子から手伝う方が良いかと思い一緒に入る事にした。

 部屋の奥にあるお風呂場へ行くが薄暗く良く見えない。服を脱ぐとスワロフも包帯をとっていたが傷は暗くてわからなかった。

体を洗い薄暗い風呂に入る。

「ニオ、怪我は残ってないか?」

「はい、全然」

 大怪我をしたのに確かに傷一つないのは助けられたのは本当だったかもと思っていた。だとしたらお礼を言うべきなのか…でも自分はあのまま死にたいとも思っていた。

会話が続かず静まる中スワロフが話しかけてきた。

「ニオ、主印だが…」
「付けたくない」

「そうか…」

「怖い思いをさせてすまなかった。ディーは悪くないから叱らないでやってくれ。俺の指示に従っただけだ」

「………わかった」

「ニオ…」

 触ろうとしたらビクッとなり後退りしたのでスワロフは触るのをやめた。先に出る仁緒に「ゆっくり入るから」と言ってお風呂に残った。

 着替えが用意されベッドも全て綺麗になっていた。机には二人分の食事も準備されている。

 服に袖を通すと机に置いてある水を飲んだ。

 食事…二人分。
 一緒に食べろってことだよな。

 しかし、待てどもスワロフはお風呂から出てこない。流石に食事が冷めてしまったと思い風呂場に呼びに行ったが返事がない。

 そっと開けて声をかけるが返事がないため、湯船に向かうとまだ浸かっていた。近くまで行き声をかけたが反応がない。

 寝ているかと思いを体をゆするとスワロフの体が湯船に沈んでいった。思わず湯船に入り引っ張り上げた。

 どうしよう!

「スワロフさん!スワロフさん!誰か!!」

「モノゴさん!!オクタさん!!スワロフさんの意識がないんです!!」

誰の返事もない。

「誰か!誰か!スワロフさんを助けて下さい!」 
「モノゴさん!オクタさん!」

必死で叫ぶ。

「スワロフさん、誰か助けを呼んできます!」

「「必要無い」」

 いつの間にか二人が後ろに来ていた。すぐにオクタがスワロフを抱き抱え寝室へ行った。モノゴは消えいなくなったと思ったらオクタと話をしていた。一瞬にしてモノゴも寝室にいた。

 仁緒も慌ててお風呂場を出る。濡れた服を脱ぎ捨て寝室に向かった。

見るとスワロフの傷から血がでていた。お風呂場では暗くて気がつかなかったが傷が開いてしまったらしい。

二人は手早く処置をした。
佇む事しか出来ない仁緒はその様子をずっと見ていた。

「声をかけてくれてありがとうございます」
「傷は大した事ないが熱はでるな」

「悪魔が熱を出すなんて何百年振りですかね?」
「まぁ、出すときだすだろ」

「あんな風に命がけでやればなりますかね」
「仕方ないだろ、やるっつうんだから」

「あの…その傷どうしたんですか?」

「「?」」

「客人と何かあったらしいですけど、その人に刺されたんですか?」

「刺されたのはおっ」

モノゴはオクタの口を押さえた。

「そうですか。とりあえず熱が引くまでほっといてあげてください。そのうち起きますから」

「なんだよ!こいつたす…んぐ」

「でわ、貴方は好きなように」

そう言うと二人は消えていった。
部屋にはスワロフと二人きりになった。


「離せ!」
「離しますよ!」

 部屋を出たモノゴはオクタの口から手を離した。廊下を歩きながら二人で話す。

「あいつ、知らないから教えてやるのに」
「駄目ですよ。スワロフ様がわざと黙ってるんですから」

「何で」
「知りませんよ。命がけで助けたの知られたく無いんじゃないですか?」

「何で」
「だから、知りませんよ!目が覚めたら聞いて下さいよ。それより本気ですかね?」

「さぁな、だが主印が一番必要無い部分にするやつは決まってる」

「そうですが」

「助ける為とはいえ、咄嗟にしたのかもしれない。じゃあ、何で助けたんだ?ってなるんだよ」
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