ドルメンの館

かぷか

文字の大きさ
上 下
5 / 24
ドルメンの館

5

しおりを挟む
 というわけで、館から逃げてきたんだけどスワロフはかくれんぼをしていると思い俺を探し回っている。

 まさか、森に出れるなんて。スワロフの能力がきれると外に出れるなんて知らなかった。ディーに感謝だな。そのうちバレて追いかけてきそうだけど少しでも時間稼ぎをして逃げたい。

 スワロフが言っていた通り店があるなら見つかれば連絡をとって家に帰れる!すぐに警察を呼べればいい。

 こんな事になるなら肝試しなんてするんじゃなかった。何日経ったかもわからないけど2週間は過ぎてる気がする。みんな心配してるだろうな。

 霧が出てきたけど大丈夫か……

 疲れてもできるだけ館から離れる為に足を休めなかった。やっと霧が晴れそうな時に向こうからゆらゆら光が見えた。これで助かると思い近づく光に声をかけた。

「すみません~」

「はい?」

 近寄ると体格の良い30代ぐらいの男の人がランタンとハンマーを持って歩いていた。森の中では別におかしくない格好だよな多分。

「あの、町まで行きたいんですけど。どうしたら行けますか?」

「町?俺も今から行くけど一緒に行く?」

「はい、お願いします」

親切な人で良かった~

「あの、携帯は持ってませんよね?」

「けいたい…無いな~ごめんね」

 皆が持ってるとは限らないしこんな山奥じゃ電波も入らないか。

 この人はシスさんと言って鍛冶屋とじょいんし?と言う職業をしているらしい。がっしりしていて目鼻立ちもしっかりしてるから海外の血が混ざってるような感じ。

 鍛冶屋はお客さんの所に行ってメンテナンスとかをしたり持ち込みのものを研いだりするようで今日もその帰りだという。
俺も自己紹介をすると名前をすぐに人に教えちゃ駄目だよと言われた。はい、身を持って知りました。

 道に迷いドルメンの館から出れなくてやっと外に出れた話をしたら大変だったなと言ってくれた。不思議な体験を話したけど信じてもらえたかはわならない。

 電話を借りたいと話したら快諾してもらえて、店に寄らせてもらうことになった。

 霧で少しわかりにくいけど何軒か並んで店があるようだった。店に入ると所狭しと道具が飾ってあった。さっそく電話を借りようと思ったら信じられない事を言われた。

「にしても、ドルメンの館から逃げてきたならこの先どうするの?」

「電話をお借りして家に帰って友達が無事か確認します」

「家ってこの辺じゃないよね?それに主印してあるなら居場所バレちゃうでしょ」

「え、主印…そんなのしてないです」

「ん、してなきゃこここれないだろ?」

どういう事?

「シスさんはドルメンの館は知ってるんですか?スワロフも」

「そりゃ、有名だから。館の誰かに主印つけられたんだろ?でなきゃ危なくて1人でここまでこれないし、まぁ俺と会ったから大丈夫だけど」

「俺はつけられてませんよ!」

「もしかして、知らなかった?舌についてるの」

 は?

 スワロフが俺の知らない間に勝手につけたのか。いつの間に…嫌だって言ったから付けてないと思ってたけど違ったんだ。

「これ、外さないと帰れませんか?だったらすぐに取ってください!!」

「いや、まぁ。ドルメンの館が嫌で逃げてきたなら取るけど…本当にいいのか?」

「取ってください!!」

男は少しニヤリとした。

「幸い、俺は除印使だ。良かったな、その主印取ってやるよ」

 何だかわからないけど取れるなら取ってもらって家に帰る!

 シスさんは部屋の作業場でしか取れないからといい、奥の扉を開け地下へ俺を案内してくれた。薄暗くひんやりするその場所は診療台みたいな所があり明るくその場を照らしていた。

「上半身脱いだら寝そべってね。それとベルトははずしてズボンは寛がせておいて」

 俺は上半身を脱いで言われるまま台に寝た。ライトが眩しいが我慢して目をつむる。

「あの……取るの痛くないですか?」

「大丈夫だよ、全然痛くないから」

 準備があるようで離れた所から音がした。だんだん怖くなってきたけどこれを取らないと帰れないなら取ってもらうしかない。

 足音が台まで近づく、眩しいけどちょっと目を開けた。上半身裸のシスさんの体は良くみるとタトゥーが結構ついてる……

それに服を着てるとわからなかったけど凄い筋肉。鍛冶屋だと鍛えられるのかな…怖い人じゃないよね?

「ニオ君、緊張してる?顔が可愛くなってるよ」

「ほ、本当に痛くないですよね?」

「大丈夫、優しくするから。にしても主印はまだ使われて無いんだね。傷も全然ないし綺麗なもんだな」

 シスさんは暖かい手で俺の体をあちこち触り問診のような感じでチェックしだした。ズボンもゆっくり脱がされ足を触られた。

太もも辺りを触られビクッとなると少し笑われた気がした。

「じゃあ、始めるよ」

そう言われ体に力が入ってしまった。

「ニオ君…そんな怖がると優しくできないよ」

「は…はぃ」

 暖かい手がお腹をゆっくり撫で回し徐々に上まできた。大きな手の平に乳首があたりその手は肩まで上がると繰り返された。
その割合がだんだんと胸に集中していった。指先で撫でまわされたり、胸を揉むように触られた。

「う…」

「痛かった?」

「い…え」

 これをしないと取れないならするしかない。ふとシスさんを見ると目が合った気がした。一瞬ギラリと光ったような気がしたと思ったら俺の上に股がり首に顔を近づけ首筋を舐めながらはぁはぁと言っている。

「し、シスさん!?」

「もう…たまんねぇ…マジでまっさらな人間。俺が主印取ってやるからな。そしたら上から付けてやるよ」

「ど、どういう意味ですか!」

「本当に何も知らないんだな。そこがまたたまらねぇな。主印がなかったらお前はとっくにあの世行きだしここにもこれねぇよ。元の家がどこだか知らないが帰れないなら俺が一生可愛がってやるよ」

「主印とったら帰れるんじゃ」

「誰かの物にならなきゃお前はここでは生きて行けない。ここは悪魔の町だぞ」

 シスさんは俺の首筋や肩を舐めながら時折匂いもかいで興奮しているようだった。

結局帰れないのかと思うと涙がでる。それがシスさんに付くとシスさんは更に興奮した。

「クソ!こんな奴初めてだ。可愛いな。舌出せよ、取ってやるから。よりによって舌に付けるとは…俺は大歓迎だが」

「ふっ…うっ」

耳の中を舐められもう一度「舌を出せ」と言われた。

大人しく舌を出しすとまじまじと舌を見られた。真剣な顔をしながら何か考えている。

「複雑だな、取れるか?」

シスの目が光り舌を出す。仁緒の舌と這わせようとすると横から声がした。

「ニオ~見~つけた」

シスさんはバッと俺から離れた。
この声を聞いて俺の計画は今、失敗した。

「ニオ~こんな所に居たのか。なかなか難しかったが楽しめた」

「スワロフ……」

寝台から起き上がると俺はシスさんに言われた事を思い出す。主印が舌に付いている。

「俺に主印つけたのか!」

「……ああ」

「嫌だって言ったのに」

「……。」

「知らない間に付けるなんて最低だ!俺は帰らない!シスさんに主印を取ってもらう!」

 ニオがシスに駆け寄りくっつくとスワロフの顔が冷血へと変わる。それを見てシスが思わず合いの手を入れる。

「ニオも取りたがってます!俺が責任を持って取ります!だから館から出してやってください!」

「言わずに付けたのは悪かった……帰ろう」

「嫌だ」

「ニオがいないと寂しくて死んでしまうよ。帰りたいのは知ってる。今は無理なんだ、必ず帰してあげるから…」

「電話…借りたい」

「あぁ」

シスさんは近くの電話を取って渡してくれた。電話をかけるもつながらない。もう一度かける。

「もしもし…」

「あ、ニオさんですか。早く帰って来てください。スワロフ様が能力も使わず探しに行きましたので家が大変で。後、我々皆が心配してますから帰宅してください。おい!早く帰宅しろ!飯食うぞ!」

「何でモノさんにつながるんですか?」

「え、そりゃ電話ですから。思った場所につながりますよ」

「わかりました」

 シスに電話を渡してお礼を言った。スワロフは悲しいような笑っているような顔をした。

ゆっくり俺に近づくと手を掴み自分に引き寄せた。

相変わらずひんやりとした冷たい手。

「ニオ~捕まえた。帰ろう」

「わかった…」

「シスさん、いろいろありがとうございました。ご迷惑もおかけしました。あと、逃がしてくれようとしてありがとうございます」

ペコリとお辞儀をした。

「あ~まぁ、戻るなら良いけど。俺も触ったりして悪かった」

「鍛冶屋、ニオの主印取らなくてよかったな~取ってたらお前は触れるだけで即死だった。ニオの匂いや表情は最高だろ~俺のニオだ」

シスは青ざめて手を振った。

「てことで俺の勝ちだ!!ニオ、わかっているな勝者のご褒美は!」

「は?」

「ニオが言い出したんだ。何でも言うことを聞くって。何にするかな~」

「な!一つだけだし、何でもじゃない!」

 何だかんだで俺の帰る場所は今はここしかない。脱走計画は失敗に終わったけどスワロフが必ず帰すと言ってくれた言葉を信じるしかないかな。
しおりを挟む

処理中です...