夜の目も寝ず見える景色は

かぷか

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9 レオ ①

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 当時の俺はどうなってたかなんて全然わからなかった。俺はただ事じゃない事ぐらいしかわからなかった。

 カシムがボロ布を着せ無理矢理手を引っ張って歩かせ、喋るなと言って冷たい態度をしたのも必死に俺を助けようとしてたんだなって思う。

 下手すりゃ自分も縛り首にされるかも知れねぇのに。

 検問での出来事は幼かった俺だが今でも鮮明に覚えている。あの時殴られた痛みは今でも一番痛かったと記憶が残す。誰と手合わせしてしてもどこかで怪我をおっても。それぐらい強烈な一発だった。

ただ、あの一発をもらったから辛いことがあっても耐えれた部分もあった。それもあって良かったんじゃねぇかと稀に思う。

「んなわけないじゃん!レオを殴った奴こらしめてやりたい!」     

「あはは」

 隣で話を聞くシルバの頭を撫でた。レオの肩に寄り添っていたがレオの顔を見て頬にキスをした。

「で、続きは?」

「ああ、」

 それから俺はカシムと命からがら逃げたんだ。そしてバレットという家にお世話になった。この家に怪我が治るまで暫くおいてもらった。

 怪我が治りかけたある日、カシムに家族が殺された事を聞かされた。その夜は怖くて怖くて仕方なかった。涙が枯れはて泣き疲れては眠るを繰り返していた。そしたら急に怒りが沸き起こって当たり散らした。

 殺された所を見ていない俺はどこか信じられないままだった。いつか迎えに来てくるんじゃないか、これは夢でまだどこかにいるんじゃないかって。何度も窓の外を見るんだが、知らない景色が広がっててまた急に寂しくなってた。

 何日も誰も迎えに来ない事実が俺を不安にさせ現実なんだと理解せざる終えなかった。

 カシムはそんな俺に厳しく優しく接した。悲しい時はずっと抱き締めてくれた。寝る最後はいつも「剣の光の指す道へ」と言ってをかけてくてた。その言葉はいつも俺の心にある。

 怪我もすっかり良くなりやっと気持ちの整理がついたと思ったら今度はカシムが俺を孤児施設に連れていった。俺はてっきりカシムと住むかと思っていたから嫌で仕方なかったな。

 側近ではなくなったカシムは元は冒険者だった。働かないと食べていけないから、一緒にはいれないと言って施設に預けた。ただ、時が来たら迎えに来るといい俺の前からいなくなった。

「きっとカシムさんも辛かったよね」

「ああ、そう思う」

「多分、本当の理由は違うと思うけどもし同じ立場ならそんな事できたのかな。こんな辛い事……亡くなったのだって言うの躊躇ってたと思う」

「そうだな…」

「だって、レオの小さい頃絶対可愛かったし!そんなレオに残酷な事できない!」

「ははは、俺は悪ガキだったよ。喧嘩ばかりしてた」

 孤児に入ると新参者は洗練を受けた。妬みや力の強い奴が取り仕切る世界だった。理不尽かつ分かりやすい。弱いものは端に隠れひっそりと過ごしていた。

 その当時は身体が小さく俺は的になっていた。逃げても追いかけてくるそいつはら暇をもて余していた。ある日俺は怒りに身を任せ人を殴った。

これが初めて知った暴力だった。

 何ともいえねぇ後味の悪さと胸くそが悪かった。それでもやられるのが嫌で怯んだ奴らを追いかけて殴った。暴力でしか解決できない虚しさを感じたが、それから何もしてくることはなかった。

 だが次に弱いものを探すとそいつらは俺から別の奴に攻撃を移した。俺が弱いものの見方をすると喧嘩になった。そんな事ばかりしていたら暫くするとそれもなくなった。

 当たれない気持ちを誰かにぶつけたかったのかもしれない。孤児の何人かは別の親代わりが見つかりここを出ていった。大体、物静かな奴からいなくなるのを見て何となくわかった。

 半年経ち孤児施設に慣れ始め、もしかしたらカシムは俺を見捨てて一生迎えにこないんじゃないかと不安に思い始めたそんなある日、俺を引き取りたいと言ってきた人がいた。

「彼がいいんだが」

「すみません、彼は引き取り手がいまして申し訳ないですが…」

「どうしても彼が良いんだ、金は倍だす」

「しかし……」

 その男は小綺麗な格好だった。どこぞの金持ちだと言うことは見ればわかったが何かが違った。隣には若い綺麗な男もいた。

 金を倍だすと言われた職者は俺をあっさり二人に明け渡した。職者に引っ張られ今日からこの方が主だと言われそそくさと門の外に押し出された。

「レオだな」

「はい…」

「安心しろ、カシムとは昔知り合いだった。今からお前に剣術を教える」

「剣術…」

「剣を握った事はあるか?」

「ちょっとだけなら…あります」

 その日から俺はこの男に引き取られ剣術を教わった。

 宿に泊まりながら朝に迎えに来ては剣術の練習を毎日森でした。衣食住にも困らない生活だった。

 あんなにも世話になった男の顔は微かにしか思い出せねぇ。
 顔を見てる暇があったら剣術を鍛えろと言われあまり見れなかった。隣にいた若い男もフードをずっと被っていたから顔は覚えていない。
若い男とはほとんど会話もなく俺の剣術を見てくれるわけでもなかった。数ヶ月出掛けては戻ってきてアイズと何か話しをしていた。そうだ、思い出した。

 俺はその男をとアイズと呼んでいた。

 アイズはいつも練習を怠るなと言っていた。あの当時の俺は何かにひたすら打ち込めるものが欲しかった。それが剣術を習う事で打ち込むことができたのは楽しかった。

 なぜ俺はアイズに引き取られ剣術を教えられたかは今もわからないが感謝している。剣の基礎ができているのは間違いなくアイズのおかげだ。
 アイズは口数の少ない男だったが珍しく話しかけてきた時があった。

「レオ、お前は身を守る方法を身に付けろ。俺にしてやれるのは剣術ぐらいしかない」

「はい」

「俺は…どんなにお前が辛くても助けれない。お前の欲しいものは与えれない」

 何かを諭したような言葉は俺の耳に残った。それからアイズとの生活が数ヶ月続いたある日いきなりバレッドの家に帰された時は驚いた。

「レオ、今日で稽古は終わりだ。カシムの元へ返す。稽古を怠るなよ。お前は前に進め」

「アイズさん、剣術を教えてくれてありがとうございました」

「礼は必要ない」

「行くぞ」
「はい」

 二人は朝霧が降りた道を駆けていった。
 何となくお別れなんだと思った。
 
 その後も二度と二人に会うことは無かった。

 久しぶりのバレットの家の門は前より小さく思えた。門を開けるとカシムが血相を変えて走って来た。

 今でも覚えている。

 俺はてっきり孤児施設に帰れと言われると思ったが泣きながら俺を強く抱きしめ謝ったんだ。それが痛くて痛くて、途中から笑えてきたんだった。

「レオ様!レオ様!」

「様はつけないんじゃなかった?」

 その日から俺は孤児施設ではなくバレットの家に正式に引き取られる事になった。

 カシムから俺の行方不明の話を聞いた。俺に会わせない施設にしびれをきかせバレットさんが職者を問いただすと売られた事実が発覚した。それを知った時には俺はとっくに引き取られた後だった。

 バレットさんが必死に探すが全く手がかりが掴めずカシムの帰りをずっと今かと待っていたそうだ。事の次第を伝えるもかなりの月日がたった後で絶望的な毎日を送っていたらしい。カシムが探し回る中、一通の手紙が届き無事だと書かれていた時は二人とも腰が抜けたそうだ。

 今でもカシムは孤児施設に入れた事を後悔している。俺はそんな事はもう気にしてなかったが彼の中では後悔しか残らない出来事になったようだ。

 後日、俺の手がかりを教えてくれた施設の子に会いに行くとカシムが言った。俺も一緒についていくといいお礼と無事を伝えに行くとあの、いじめっ子達だった。ありがとうと言ったら別にと言って逃げていった。
 
「悪い奴らじゃなかったかも」

「あの子達はレオを心配をしていた」

「そっか…。俺さ、アイズって人といた」

「アイズ…」

「カシムの昔の知り合いだって言ってた」

 その名前を聞いてカシムは驚いていた。買われた先がアイズで宿で暮らしていた事や剣術を習っていた事を話した。複雑そうな顔をしたがアイズで良かったと笑顔で答えた。

 二人は知り合い同士だったようだがカシムのその顔から仲は良さそうには見えなかった。
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