トワイライトコーヒー

かぷか

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関西天馬編

四夜

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「石崎さん、天馬さん何時位に戻ってきますかね?」

「さぁ、こっち戻るん明け方ちゃいます?」

「はい、書類できましたよ。ホンマに抜けるんですか?」

「抜けますとも。まだ冗談思ってたんか?ないない、この変化に気がつけへんのならまだまだ天馬さんの左腕にはなられへんな。絶対的右腕はこの石崎やけど」

 事務所で軽い冗談を言いながら書類に目を通しパソコンと照らし合わせ石崎と舎弟は事務作業をしていた。

「絶対的右腕は清美さんやないんですか?ははは」

「清美さんはそんな方やないです」

「てっきり昔っから天馬さん言うて慕ってましたからそうなんや思いました。あっち行ったのも天馬さんの為にて言うてましたからいずれ戻ってきてって思ってたんですけど。というか友人ですもんね。俺もあんな友達おったら良かったですわ。今回の…やっぱり清美さんの事があったからですか?」

「さぁ、どうでしょう」

「違うんですか?」

「違うとは言いませんけど組長なるのは決まってたことですし、本人次第やった部分はありますけどね。もっと早くても良かった思います…」

「ほんまになるんですね。実感あんまり無いですわ。いずれなるてわかっててもいつまででも天馬さんは天馬さんのままでいて欲しい反面、組長になって欲しかった部分も大きくて、これでいろいろ変わってくると思うとなんや少し寂しい気分ですわ」

「そうですね」

「石崎さんなんて親も同然ですから俺より考え深いんやないですか?」

「まだなってないですから実感はなってからやとは思いますけど…それよりその前にやることがありますから」

「勿論です、そのための下準備もしっかりやらせてもらいます!」

「清美さんやりはった奴わかったんで、どう落とし前つけてもらいましょうか…多分同じこと思ってる思いますけど方法は天馬さんにお任せですね。上手いことやりたいですけど…」

「そいつらと交渉ですか?金大きくぶんどって支配下にできたらええですね」

「そんなんしませんよ」

「な!?そんなんやったら清美さんやられ損やないですか!黙ってられませんよ!事情聞いて「はい、終わり」なんて、片方の耳聞こえんくなったんですよ!左耳かてまだわからんのに!」

「わかってるわ。許さんに決まってるやろ。…誰が許すか…地獄の底まで追いかけて血反吐吐かせたる」

 バキッ

 持っていたペンが折られインクが手にたれた。

「……は、い。」 

「親父も清美さんやらたん知ってますから仇取るつもりみたいですけど天馬さんに任せてた事もあって慎重です。天馬さんが今回こらえたんは偉い評価してましたけど当然怒りは治まってないですし、この件で親父通したないやろし。それに交渉なんて甘いですからうちらがやらな、な?」

「はい。けど親父は交渉するつもりです。カードとして使うんちゃいますか?」 

「交渉できん相手やから清美さんやられたん気づかへんのは耄碌もうろくしてるとしか…はは、これ言わんでくださいね」

「言いませんよ。俺も幼なじみあんなんされたら…許されへん。天馬さんの気持ちわかります!」

「天馬さんにとって清美さんは光ですから。天馬さんの願いは昔からわからないです…けど清美さんの願いは天馬さんの夢なんで今までこれたんが奇跡やったんかもしれません。相反する二人が交わることは難しいですね…」

「ずっと小さい頃から見てきたなら誰よりもわかるんやないですか?むしろ天馬さんよりも二人を客観視できてるので、また一緒にとか…」

「どうですかね、わからないことも沢山ありますよ」

「例えばなんです?」

「例えば…清美さんの気持ち」

「気持ち…ですか。確かに清美さんに了承得ずに今回で足、洗わせるんで本人はどう思ってるか…それに報復かてうちらが変わりにやりますし、組長になるのも本人おらんところで全部終わってたなんて知ったら…可哀想な気します」

「それも仕方ないです。ご兄弟の意見ですから。けど清美さんをわかってないのも可哀想です」

「お兄さんですか…」

「唯一の理解者が天馬さんなんです」

「そう、…ですね。やっぱりヤクザ理解してもらうん難しいですよね。それに天馬さんこそずっと一緒に歩んできた人が急にいなくなったら…寂しいどころやないやろうな。最近冷たなったというか厳しなったいうか…口数も減った気がして」

「清美さんは特別ですから。今日は会えるとええですけど…清美さんなら気がつくの遅なりそうです。まぁ、毎日通ってはりますから関係ないですね。今月は地獄のように忙しくなりそうやな…地図と防犯カメラの場所頭に叩き込んでおいてください」

「はい」 



 深夜の病院の窓を見守る天馬、今日もカーテンが開くことはなかった。壮史には会わせないと言われたが清美が心配でわかっていたが夜な夜なこうしていつか開けられるカーテン窓を見つめていた。

 そんな天馬を二人の男が後をつけ話すタイミングを伺っていた。

「木嶋組長、ずっと見てますね」

「……。」

「今はそれどころや無いぐらい混乱してるのに…春見にも調査入ってる噂です。こんな所で怪我人見守ってる場合や無いですよ。たった1ヶ月半程でこの有り様ですよ。それに誰も付けずにずっと居てるなんて狙われてる可能性もあるのに」

は眼中にないんだろ」

 清美の事件は流れ弾のようなものだった。山科のビルに顔を出した時、清美がビルで迷いスパイと間違われて自分の組にボコられたという話から始まっていたがどうやら少し別も意味があったようだ。

確かに天馬との関わりが強いためそう思われても仕方のない人物でもあったが裏に関西の兄弟組のトップがいるにも関わらず手を出すだろうかと。山科自体徹底した管理ではあるが慎重な上半殺しにする理由は見つからなかった。ただ、理由は後からいくらでもつけられる。

 そこで清美のいる足助について詳しい人物に調べたのだがどうやらこの足助組自体、山科組の派閥に入っていたようだった。その一つの目標が関西進出を取り上げていたようで関西の兄弟組トップの春見を潰そうと清美を利用しようとしていた事がわかった。つまり次の段階にはいるのに利用価値のない清美を切り捨てたのだ。

 丁度その清美を切り捨てた後に起きた今回の出来事はこれこそが大元が隠したかった事実なのではないかと予想した。

 春見組嗅ぎ付けられては困ること。兄弟組に知られてはいけない出来事。

「行くぞ」


 暗闇から現れ窓を見る少々機嫌の悪い天馬に近づいた。
 
「プライバシーは守るタイプや思ってたわ」

「これから関西へ戻る。会って話せるのはここしかなかった。悪いな」

「そうですか」

「関東は暫く近づけん…」

「……。何が聞きたいんですか?」

「いろいろ」

「どうぞ、」 

「今回の事、知ってたのか?」

「知るわけ無いやないですか」

「偶然か」

「偶然です。最悪な…偶然が重なったんです。こないな事が起こる知ってたら清美なんか行かせてませんよ」

 気の毒だったが命があるだけましだと思った。元々疑われやすい清美に情報を嗅ぎ付けるような真似をさせたのか気になっていた。利用されないよう手を回していたはずの天馬がここへ来て裏切るような行動。

「なぜ探っていた」

「理由なんてありません。強いて言うたら気持ち悪いぐらい静かやった…ぐらいですね。嫌な予感が当たっただけです」

 もし春見が狙われている話を天馬に先にしていたら…いや、それはない。その前に清美は病院送りにされていて天馬には届いていなかった話。今回の事件もその最中に起こっている。計画を企てるには何もかもが合わない。

それにあの時点では関東も静かなもので嗅ぎ回る要素がなかったはず。いち早くそれに気がついたのは何かあると思ってしまう。見切りや偶然なのかもしれないが木嶋にはそのタイミングの良さが気になった。

「まだ納得してないようですけど」

「ああ、タイミングが良すぎるからな」

「どうぞ、調べて下さい。何もでてきませんし、もし知ってたら間違いなく清美は殺されてました。あの状況ならそうでしょ?生かしとくなんてありえんまんよ。その場に居合わせた山科に出入りしてた奴ら軒並み知らしめるように襲撃なり組にやられてます」

「黒幕は」

「何回も言いますけど知りません。今も清美と会話できてないので何があったか知るよしもないです。わかってんのは誰かの指示で足助の奴らに清美殴らせたってことだけです。それよりええんですか?こんなところで油売ってて。関東は今黒幕探しにやっきになってますよ」

「こっちのほうが大事な話だ」
 
「ふっ、そうですか…」

「契約はあったのか」

 天馬はチラッと見るとまた窓を見つめた。

「当然です。内容は言いませんよ」

「狙いは足助だけだな」

「今のところは山科の誰からの指示か証拠無いんで直接手を下した所から攻めます」

 春見という組がありながら清美が関東の組へ入った理由は勿論春見組の為しか考えられずそれを了承している組ならば何かしらの契約が結ばれていたのは間違いなかった。天馬がその組に金を渡し清美が春見のスパイではないのと安全を引き換えにそこの組に留まらせ守っていた。つまり簡単に言えば天馬は清美のケツもちをしていたことになる。だがこれは契約というなの脅しにも逆にとれていた。清美に何かあればその契約が破棄されることとなる。金まで融資していたにも関わらず清美はやられてしまった。

契約は破られ春見組を裏切り敵に回してでも別の取り決めを優先した足助。自分よりも強く権力のある持ち主といえば山科、その誰かの差し金で大きく事が動くならば…

「……。後戻りできん」

「わかってます」

「この決断が良いとは限らん」

「わかってる」

「仇がとりたいだけならうちが請け負う」

「誰がさすか。これはうちの問題や」

「今抜ければ怪しまれるぞ。もしかしたら今起こっていることの濡れ衣をかけられ組ごと消される」

「そうかもしれません」

 受け入れたような返事に少しなげやりな態度にも見えた。

 引き金を引かされた天馬が決断に至ったのには清美という人物への思い入れが強いからで、ここを呑むか否か考えていた。自分が同情するには説得力に欠けていたし関係のないこと。組にも影響が出る話にあの人ならこんな時どうしていたかと考えるも決まっている。愛する人の為に動いていた。だが自分には愛する人はいない。ならば…金。

「何も知らなかったとはいえ清美とやらを庇えばお前はその時点で山科にスパイを送ったと思われる。山科の傘下が清美を破門にしたのも上へのケジメ伺いのための尻尾切りかもしれない。そこでお前が復讐となれば関東は一気にお前のところを攻めに来る」

「上等です」

「関西の兄弟組も黙ってない。むしろ関西のほうが攻めてくるかもな。組を潰す気か?」

「……。俺は今回の事件と清美は別や考えてるんであっちの事は好きにしたらええと思ってます」

「それじゃ済まされない。いくら山科の指示で清美を殴らせたと知ったところでお前がやる復讐に意味があるとは思えん」

「意味があるとかないとかやない。やったらやり返す。それが俺らの世界や。それに俺のせいなんや…力の無いのも…あいつが堅気戻らんのも。怪我させたんも東京に送りこんだんも…全部、全部、俺が悪い!だから決めた。いつまでも何もできん俺が嫌になっただけや。気済んだか」

 天馬は立ち去ろうとした。

「待て。まだ話は終わってない。手は貸してやる。条件は情報が入ったらすぐよこせ。計画は緻密にしたい」

「金は…」

「いらん」

「なんでや気持ち悪い。タダより怖いもんないて小学生でも知ってんで」

「誰がタダでやると言った。お前が俺の脅威になる前に恩をきせる」

「ふっ…あの人が言いそうやなセリフやな」

「……。上手くやれ、何がなんでも。上手くいけば総攻撃は防げる上にお前の組への目線がひっくり返る。この件で嫌ってほど恩をきせたら俺が上に上がる」

「まだ俺にヤキモチ焼いてどうすんねん。…まぁ、ええか。宜しく…頼みます」

 木嶋は不機嫌そうに車に乗り込むと行ってしまった。
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