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新戦力
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現代、ブラッドリング施設内。
黒衣の女吸血鬼であるレイナは足早に廊下を歩いていた。
目的の場所である玄関ホールの扉の前に着くと、歩いてきた勢いをそのままに両開きの扉を開けた。
すると、今しがた彼女が入ってきた場所から玄関口までの両脇に、同じ黒衣の吸血鬼の男女が一直線に並んでいる。
その玄関ホールの中央には親の七光りのライアン、そして腰巾着のエミリアがいた。
「レイナ! ドレスはどうした!?」
ライアンは威厳を感じさせない声を必死に荒げて注意してきた。
が、レイナはまったく怯まずライアンの横に立ち正面を見て来客に備える。
「私は貴方の着せ替え人形じゃないの」
「そういうことを言ってるんじゃない、俺の横に立つなら相応の格好をしろと言ってるんだ」
「いざという時に備えてるの、いつ出動命令が出るか分からないでしょ」
「その命令は俺が出す!」
「それじゃあ遅い」
「どういう意味だ!?」
まるで騒ぐ子供と、それを相手にしない女性といった構図に周囲の吸血鬼も若干呆れ顔になる。
ライアンがさらに何か言おうとしたその時、外からの来客者が扉を開けた。
その瞬間、ライアンを含めた全員が口を閉じ、姿勢を真っ直ぐに伸ばす。
右手を心臓の位置に添え、軽くお辞儀をする。
これは、この国ならではの習慣である。
主人の意向に逆らう部下は右手ごと急所を剣で刺されても良いとする格好であり、利き手と心臓を重ねて同時に捧げるという忠誠の姿勢だ。
そうして迎い入れる体制が整った中、扉を開けて入ってきた人数は三人。
中央にいる人物は黒い高級スーツを来た白髪の男性でレイナの恩人であるデュラン。
その右斜め後ろには、執事服の冷酷な眼差しの男性でレイナにとってはあまり良い印象のない人物ロンサン。
そして、最後に入ってきたのは見慣れない者だった。
下は紺のスラックスに上は同じく紺のベスト、その下に白のワイシャツ。
茶色の髪は右側が顎まで長く、左側は反対に短く仕上げ左右対称。
一瞬男性かと思ったが、身体をよく見ると女性だった。
レイナにとっては初見となるその人物を見ていると、ライアンは両手を広げてデュランに近づいていく。
「父さん、聞いてくれよ、レイナがーーー」
まるで教師に告げ口する子供のような態度のライアンに対し、デュランは鬼のような形相で持っていた杖を振りかぶった。
そして、一切の躊躇もなくライアンの顔を殴る。
「ブッ!?」
半回転しながら無様に血を吹き倒れた。
すぐに顔を抑え、なぜ殴ったのかという表情を見せる。
そう、ライアンはデュランの息子であり、その立場を利用し駄々をこねて所長になったのだが、完全に実力不足であった。
「この、バカ息子が!!」
空間を振るえさせるような大きな罵声に、周囲の者達は緊張し唾を飲み込む。
「と、父さん、どうして……?」
「一週間前、お前は人狼を倒したな?」
「そ、そうだけど、何で怒るんだよ?」
「お前が余計な苦労を掛けさせるからだ」
実は一週間前、ライアンは廃工場に潜む四人の人狼の討伐任務に赴いていた。
だが、その敵はフェイズ1(身体はほとんど変化していない、せいぜい爪や牙が少し伸びている程度)の者達で実力を持つ吸血鬼ならさほど苦労はしないはずだった。
しかし、ライアンは二個小隊を動員させ瀕死になる程度に追い詰めさせると、何を思ったのか貴重なプラチナ弾が入ったハンドガンを二丁持って戦闘を開始。
数十発も無駄に撃ちまくった挙げ句、当たったのは僅か数発。
しかも最後はその場所を派手に爆破までしたのだ。
敵を排除後、速やかに回収部隊に任せれば良かったのだが自らの戦績を誇示したかったライアンは完全に余計なことをしていた。
この時、レイナは別件で出撃していたため行けなかったが、ほぼ同じ人数の敵相手を無傷で倒している。
ライアンのこの一件でデュランは政府関係者や警察に潜んでいる部下を動員して隠蔽工作をさせており、かなり苦労をさせられたようだった。
「あの一件で私はかなり骨を折った、お前にブラッドハウンドの称号を与えたのは間違いだった。」
デュランが称号の名称を口にした途端、ライアンは目を見開く。
殴られたことよりよほどショックだったようだ。
この称号というのは二段階ある。
一つは『グレイハウンド』
一定以上の戦績と小隊の指揮能力があると判断された者が与えられるもので、隊長クラスの者の大概はこの称号が与えられている。
もう一つは『ブラッドハウンド』
これはグレイハウンドの者の中でもさらに優秀で、デュラン等の上層部に認められた者にのみ与えられる。
現在、この施設にいる中でブラッドハウンドの称号を持っているのはライアン、レイナ、ロンサンのみである。
しかし、ライアンは明らかに過大評価されていたようだ。
それが嘘だと言わんばかりに、ライアンは目に涙を浮かべる。
「お、俺は、父さんに認めてほしくて……」
「さっさと下がれ、今日はお前に用はない」
「そ、そんな……」
「いいから下がれ!!」
デュランから怒鳴られたことで、ライアンは怒られた子供のようにその場から足早に立ち去った。
その様子を見ていたエミリアは一瞬だけデュランの顔色を伺ったが、自身も怒られるのではないかと思いすぐにライアンの後を追った。
「お前達もいい、持ち場に戻れ」
デュランを出迎えるために並んでいた吸血鬼達は、彼からの指示に一瞬戸惑うものの、つい今しがた去ったライアンのことを思いだし、蜘蛛の子を散らすようにその場を後にしていった。
残されたのはレイン、ロンサン、デュラン、そして謎の女性だけだった。
「すまんなレイナ、見苦しいところを見せて」
「いえ……」
「そうだ、紹介が遅れたな、彼女は今日からここで働くことになったアイヴィーだ」
「よろしくね」
デュランに紹介された女性アイヴィーは、たった今この場で起きた事に雰囲気を重く感じることなく軽快に挨拶をした。
「彼女は機械関係の、たしか……」
「ハッキングが得意です」
「ああ、そうだったな、いかんいかん、最近の技術に億劫でな」
アイヴィーはにこやかにレイナに手を差し出し、握手を求めた。
「今度から貴女のオペレーターを担当することになったの、任務中知りたいことがあったら私に任せて」
「ええ、よろしく」
レイナは淡々と握手を済ませた。
そして、アイヴィーがここに配属になったことに若干疑問に思う。
「デュランさん、オペレーターなら他にも居るのですが……」
「ああ、それなんだが、最近の技術の発展は凄まじくてな、電子戦…と言ったかな、それに対応できる人材が必要になってきたので彼女をここに配属させることにしたんだ」
「まあ、戦うのは苦手なんですけどね」
アイヴィーは舌を出しておどけて見せる。
だが、レイナは特に反応することなくデュランに質問する。
「ここのオペレーターでは対応しきれないと?」
「そういうわけではないんだが、やはり若い力もいれなくてはな……とにかく、ここで立ち話するより座って話をしないか?」
「失礼しました、こちらへどうぞ」
レイナはデュラン達を応接室へ案内していった。
応接室。
デュラン、レイナ、アイヴィーはそれぞれ座っているが、ロンサンだけデュランの右斜め後ろに立ったままだった。
重々しい雰囲気の中、アイヴィーが挙手する。
「あのー、私ってこの場に必要ですか?」
「ああ、君にもこれから話すことを聞いてほしいからね」
デュランからの言葉に頷くと静かに手を下ろした。
そこへ何者かが慌てた様子で入ってくる。
「はぁはぁ、遅れて申し訳ありません、何分、仕事が多くて」
「構わんよ、さあ、座って」
その人物はよれた黒いスーツを来て若干頭髪が後退した痩せこけた男、副局長のグリエルという人物だった。
局長であるライアンが様々な言い訳をして仕事をしない分、グリエルが後処理をしている。
そのせいか常時疲れた様子で、レイナも若干同情していた。
「さて、本題に入ろうか、グリエル、私の息子はしっかりと仕事をしているかね」
「あ、えと、それは、その……」
「君の率直な意見を聞かせてくれ、何を言おうが評価に影響しないと約束しよう」
副局長は目を泳がせ、額から汗が流した。
いつもライアンから『父さんに言いつけるぞ、そうなればお前なんか簡単に辞めさせられるんだぞ』と脅され、身を粉にして働いてきた。
だが、その七光りの父親が聞き入れる姿勢を見せているため、正直に話すことにした。
「その、大変申し上げにくいのですが、彼は、あまり、仕事をしない様子で……」
「ああ、続けて……」
「任務後の後始末から各所への連絡、補給品の手配、人員配置等、ほぼ全て私に回されまして、局長はというと、あのエミリアと、遊んでいるようで、先週の件につきましては、その、私は止めたのですが……」
今までどれだけ苦労してきたのだろうか。
溜め込んできた不満の数々にレイナは呆れアイヴィーは『うわぁ…』と思わず声に出してしまった。
一通り聞いたところで、デュランはレイナに目を向ける。
「レイナ、どうだろうか、君がここの局長になっては」
「……」
提案を言われた本人は反応が薄く、むしろアイヴィーと副局長が驚いた。
そんな二人のことを気にせず、レイナは口を開く。
「デュランさん、とてもありがたい提案なのですが、私はそのつもりはありません」
「……なぜ?」
「貴方に助けられたあの日以降、私はずっと無法者達を狩ってきました」
「そうだ、君は十分過ぎるほどの戦果を上げた」
「私が望むのは地位ではなく武器や力です、奴らを一掃するまで戦えるだけの」
「局長になってからでも出来るぞ」
「はい、ですが、私は現場での指揮なら兎も角他の者まで面倒を見る能力はありません、代わりに副局長に是非局長になってもらいたいのです」
レイナからの指名に驚く副局長。
推薦したデュランは若干落胆した様子を見せ、アイヴィーは局長の椅子を蹴ったレイナに信じられないといった表情を見せていた。
デュランからの好意を無視する形になってしまい、レイナは申し訳なさから顔を下に向けていた。
「そうか、私としてはレイナが局長になりアイヴィーに支えてほしかったのだが……」
その言葉に、アイヴィーは初めて自分がこの場にいる理由を理解した。
そうして、しばらくの沈黙の後、デュランはゆっくりと腰を上げる。
「とりあえず、今日のところは引き上げるとしよう」
「本当に申し訳ありません、ですが、私はこれからも貴方のために戦っていくことを誓います」
「ああ、局長の件は気が変わったらいつでも言ってくれ、君にはその資格があるのだから……」
「はい……」
デュランとロンサンは屋敷を後にした。
レイナ、アイヴィー、グリエルは玄関口まで見送った。
特にレイナは、デュランとロンサンが乗った車が見えなくなるまで忠誠の礼をしていた。
「まさか昇進の話を蹴るとはね」
レイナに屋敷内を案内されているアイヴィーは呟く。
それに対し、レイナは正面を向いたまま返答する。
「私は上に立つより現場で戦いたいの」
「さっき話してた、あの方に助けてもらったお礼?」
「それもある、もう一つは……」
途中で言葉に詰まる。
なぜなら、レイナが戦っているのはデュランに対する礼と復讐が理由だからだ。
その原因となる過去を思い出す度に、家族や親友を失った悲しみの記憶を呼び覚ましてしまう。
「好き勝手に暴れる連中が許せないから……」
拳を握りながら怒りを露にするレイナに、アイヴィーはそれ以上何も聞かなかった。
その後、オペレーター達がいるモニタールームへ連れていき、今後使うであろう机とパソコン、通信用マイク等を確かめる。
それらが済むと、最後は地下にある部屋がある場所まで案内する。
廊下の壁や天井はコンクリートで出来ており、ホテルというより工事の為の作業員用通路といった雰囲気だった。
アイヴィーは『何だか味気ない』と文句を言っていたが無視した。
黙っていると次から次へと不満を言いそうになるので、レイナは過去の出来事を語らせて誤魔化そうとする。
「そういえば貴女は吸血鬼になってから何年たったの?」
「確か五年位かな、まだ人間だった時は警察のオペレーターをしていたの、通報の大半は特に緊急のものではなくて毎回精神的に疲れそうになったわ、それである日帰っている途中で後ろから急に噛まれて血を吸われたの、最初は酔っぱらいか薬物中毒者の仕業かと思ったけど病院に搬送されて苦しくなって気を失って、気がついたら別の施設にいてそこで私は吸血鬼になったって言われたわ」
早口でかなり足早な説明にレイナは半分程聞き流していた。
しかし、アイヴィーはまだ続ける。
「最初は信じられなかったけど、喉が乾いてきて差し出された輸血パックの血を飲んだら身体が受け入れたの、その後これからどうするんだって聞かれて……」
「わかった、続きは明日にして」
アイヴィーの部屋の前に到着したことで、レイナは話を切り上げさせる。
「そう、まだ全部言えてないけど、まあとにかく、これからよろしく」
「ええ、よろしく」
よくしゃべるアイヴィーのことが苦手なのか、レイナは素っ気なく別れた。
遠ざかっていくレイナの後ろ姿を、新入りの彼女は唇に指を当てながら頬を赤らめて見つめる。
「綺麗……」
部屋に入るのが名残惜しそうにするアイヴィーだが、レイナは全く気がつかないまま自分の部屋へと向かっていった。
「はぁ……」
レイナは疲れた様子でコートを脱ぎ捨て、自分の部屋のベットに横になった。
肉体的な疲労というよりは精神的なものだ。
その原因となった新人の顔が脳裏に浮かんでくる。
レイナとしてはあまりお喋りな者は得意ではない。
例外としては……
「セレーネ……」
唯一心を通わせた同年代の友人。
二百年前に殺され、もう二度と会うことが出来なくなったあの子。
心の中からあの日の約束が消えない。
実はこの世界のどこかで生きているのではないかと、あり得ないことばかり考えてしまう。
そんな彼女にそっくりな女性のことも思い出す。
夜の街中を移動している時に偶然見つけた花屋で働いている若い従業員。
だが、その女性はセレーネとは関係ない。
元々一般人への接触は特別な理由がない限り禁止されている上に、下手に近づくと敵対者との戦闘に巻き込んでしまうかもしれない。
頭の中で友人とその従業員の顔を交互に何度も思い出してく。
そんなことをしても失った過去は取り戻せないことも分かっている。
これ以上は虚しさが増すだけだと己に言い聞かせ、目を閉じた。
願わくば、目が覚めたら二百年前のあの日に戻ってほしいと考えながら、意識を落としていった。
数時間後。
外は太陽が昇り、一般人の人々は仕事に精を出していた。
屋敷内はというと、全ての窓のカーテンが閉められ、一部の警護担当の吸血鬼以外は眠っていた。
基本的に昼夜逆転の生活を送っており、太陽が沈むまでは屋敷内は静かだった。
そんな中、廊下を一人の女性が足音も立てずにゆっくりと歩いていた。
その人物がレイナの部屋の前まで行くと、電子ロックが解除される。
事前に何か細工をしたのか、特に驚く様子もなく静かにドアを開けると中へ侵入。
出入り口に向かって背を向けて横になり眠るレイナの姿に、侵入者は口元が緩んだ。
一歩、また一歩と音もなく近づいていく。
ついに手が届く距離までくると、お辞儀をするように上体を傾けていく。
そして、息が掛かる程顔を近づけると、レイナの頬にキスとした。
だが、次の瞬間レイナは飛び起き侵入者を突き飛ばした。
同時に枕の下に隠していた拳銃を持って尻餅を着いたであろう相手に向ける。
しかし、その顔を見て驚く。
「っ…アイヴィー!?」
寝る前に記憶した相手にレイナは一瞬だけ混乱した。
新人である彼女がなぜ侵入して触れてきたのか分からなかった。
「何してるの!?」
「そ、その、ちょっと、イタズラを……お願い撃たないで」
「はぁ……まったく……」
レイナは呆れながら銃を下ろす。
そして疑問に思った。
「ドアは電子ロックが掛かってたはずだけど?」
「その、ここのシステムをハッキングして……」
「……」
レイナは苛つきながらも、もう一つ分からないことがあった。
吸血鬼化すると、身体能力に加えて五感も強化される。
他の仲間には言ってないが、レイナは聴覚と皮膚の感覚が特に優れている。
空気の流れを察知し、眠っていても肌に当たる風の感触で敵の接近を感知できた。
しかし、アイヴィー相手にそれが出来なかった。
(……疲れてたから?)
自問自答しても分からない。
侵入してきた新人に目を向けると、申し訳なさそうにこちらを見ていた。
「あ、あの、局長には……」
「ああ、あのバカには言わないから、とにかく自分の部屋に戻って、それからもう二度としないで」
「わかった……」
立ち上がって部屋を出ようとすると、レイナが呼び止める。
「ちょっと待って」
「?」
「これ、捨ててきて」
レイナがポケットから出して投げ渡したのは、任務の後に中身を飲み干した輸血パックだった。
アイヴィーは文句を一つも言わずに受け取り、部屋を後にした。
「はぁ……」
大きな溜め息をすると、レイナは銃を握ったまま横になる。
まさかとは思うが、また侵入してくるのではないかと警戒するとともに、なぜ接近してきたことすら直前まで分からなかったのか疑問に思いながら目を閉じた。
(感覚が鈍った? そんなまさか……)
再び意識が落ちるまではさほど時間は掛からなかった。
レイナの部屋を出たアイヴィーは一人嬉しそうに廊下を歩いていた。
(まさかすぐ起きるなんて、さすが)
彼女が最も強化された能力、それは隠密に関するものだった。
足音を消し、息を殺し、空気の流れすら乱さないまるで忍者のような身のこなし。
筋力は他の吸血鬼より若干低く、正面からの戦闘ではほぼ勝てない彼女にとってはある意味生き残るための最大の武器でもある。
しかし、さすがに頬に口づけした途端に起きたのは予想外だったようだ。
そんなハプニングにあっても、嬉しい戦利品が手に入ったことで帳消しになる。
レイナが口をつけた輸血パック。
それがなにより嬉しかった。
アイヴィーは頬を赤らめると、レイナが吸った所に口づけする。
実は、同性愛者でありレイナに関するプロフィールを目にした時から一目惚れしていた。
数秒間の間接キスの後、唇を離すとそれを大事に抱き抱えながら自分の部屋へと向かっていく。
両思いになりたいという願望と、嫌われるかもしれないから気付かれたくないという想いの両方を胸に抱えながら。
黒衣の女吸血鬼であるレイナは足早に廊下を歩いていた。
目的の場所である玄関ホールの扉の前に着くと、歩いてきた勢いをそのままに両開きの扉を開けた。
すると、今しがた彼女が入ってきた場所から玄関口までの両脇に、同じ黒衣の吸血鬼の男女が一直線に並んでいる。
その玄関ホールの中央には親の七光りのライアン、そして腰巾着のエミリアがいた。
「レイナ! ドレスはどうした!?」
ライアンは威厳を感じさせない声を必死に荒げて注意してきた。
が、レイナはまったく怯まずライアンの横に立ち正面を見て来客に備える。
「私は貴方の着せ替え人形じゃないの」
「そういうことを言ってるんじゃない、俺の横に立つなら相応の格好をしろと言ってるんだ」
「いざという時に備えてるの、いつ出動命令が出るか分からないでしょ」
「その命令は俺が出す!」
「それじゃあ遅い」
「どういう意味だ!?」
まるで騒ぐ子供と、それを相手にしない女性といった構図に周囲の吸血鬼も若干呆れ顔になる。
ライアンがさらに何か言おうとしたその時、外からの来客者が扉を開けた。
その瞬間、ライアンを含めた全員が口を閉じ、姿勢を真っ直ぐに伸ばす。
右手を心臓の位置に添え、軽くお辞儀をする。
これは、この国ならではの習慣である。
主人の意向に逆らう部下は右手ごと急所を剣で刺されても良いとする格好であり、利き手と心臓を重ねて同時に捧げるという忠誠の姿勢だ。
そうして迎い入れる体制が整った中、扉を開けて入ってきた人数は三人。
中央にいる人物は黒い高級スーツを来た白髪の男性でレイナの恩人であるデュラン。
その右斜め後ろには、執事服の冷酷な眼差しの男性でレイナにとってはあまり良い印象のない人物ロンサン。
そして、最後に入ってきたのは見慣れない者だった。
下は紺のスラックスに上は同じく紺のベスト、その下に白のワイシャツ。
茶色の髪は右側が顎まで長く、左側は反対に短く仕上げ左右対称。
一瞬男性かと思ったが、身体をよく見ると女性だった。
レイナにとっては初見となるその人物を見ていると、ライアンは両手を広げてデュランに近づいていく。
「父さん、聞いてくれよ、レイナがーーー」
まるで教師に告げ口する子供のような態度のライアンに対し、デュランは鬼のような形相で持っていた杖を振りかぶった。
そして、一切の躊躇もなくライアンの顔を殴る。
「ブッ!?」
半回転しながら無様に血を吹き倒れた。
すぐに顔を抑え、なぜ殴ったのかという表情を見せる。
そう、ライアンはデュランの息子であり、その立場を利用し駄々をこねて所長になったのだが、完全に実力不足であった。
「この、バカ息子が!!」
空間を振るえさせるような大きな罵声に、周囲の者達は緊張し唾を飲み込む。
「と、父さん、どうして……?」
「一週間前、お前は人狼を倒したな?」
「そ、そうだけど、何で怒るんだよ?」
「お前が余計な苦労を掛けさせるからだ」
実は一週間前、ライアンは廃工場に潜む四人の人狼の討伐任務に赴いていた。
だが、その敵はフェイズ1(身体はほとんど変化していない、せいぜい爪や牙が少し伸びている程度)の者達で実力を持つ吸血鬼ならさほど苦労はしないはずだった。
しかし、ライアンは二個小隊を動員させ瀕死になる程度に追い詰めさせると、何を思ったのか貴重なプラチナ弾が入ったハンドガンを二丁持って戦闘を開始。
数十発も無駄に撃ちまくった挙げ句、当たったのは僅か数発。
しかも最後はその場所を派手に爆破までしたのだ。
敵を排除後、速やかに回収部隊に任せれば良かったのだが自らの戦績を誇示したかったライアンは完全に余計なことをしていた。
この時、レイナは別件で出撃していたため行けなかったが、ほぼ同じ人数の敵相手を無傷で倒している。
ライアンのこの一件でデュランは政府関係者や警察に潜んでいる部下を動員して隠蔽工作をさせており、かなり苦労をさせられたようだった。
「あの一件で私はかなり骨を折った、お前にブラッドハウンドの称号を与えたのは間違いだった。」
デュランが称号の名称を口にした途端、ライアンは目を見開く。
殴られたことよりよほどショックだったようだ。
この称号というのは二段階ある。
一つは『グレイハウンド』
一定以上の戦績と小隊の指揮能力があると判断された者が与えられるもので、隊長クラスの者の大概はこの称号が与えられている。
もう一つは『ブラッドハウンド』
これはグレイハウンドの者の中でもさらに優秀で、デュラン等の上層部に認められた者にのみ与えられる。
現在、この施設にいる中でブラッドハウンドの称号を持っているのはライアン、レイナ、ロンサンのみである。
しかし、ライアンは明らかに過大評価されていたようだ。
それが嘘だと言わんばかりに、ライアンは目に涙を浮かべる。
「お、俺は、父さんに認めてほしくて……」
「さっさと下がれ、今日はお前に用はない」
「そ、そんな……」
「いいから下がれ!!」
デュランから怒鳴られたことで、ライアンは怒られた子供のようにその場から足早に立ち去った。
その様子を見ていたエミリアは一瞬だけデュランの顔色を伺ったが、自身も怒られるのではないかと思いすぐにライアンの後を追った。
「お前達もいい、持ち場に戻れ」
デュランを出迎えるために並んでいた吸血鬼達は、彼からの指示に一瞬戸惑うものの、つい今しがた去ったライアンのことを思いだし、蜘蛛の子を散らすようにその場を後にしていった。
残されたのはレイン、ロンサン、デュラン、そして謎の女性だけだった。
「すまんなレイナ、見苦しいところを見せて」
「いえ……」
「そうだ、紹介が遅れたな、彼女は今日からここで働くことになったアイヴィーだ」
「よろしくね」
デュランに紹介された女性アイヴィーは、たった今この場で起きた事に雰囲気を重く感じることなく軽快に挨拶をした。
「彼女は機械関係の、たしか……」
「ハッキングが得意です」
「ああ、そうだったな、いかんいかん、最近の技術に億劫でな」
アイヴィーはにこやかにレイナに手を差し出し、握手を求めた。
「今度から貴女のオペレーターを担当することになったの、任務中知りたいことがあったら私に任せて」
「ええ、よろしく」
レイナは淡々と握手を済ませた。
そして、アイヴィーがここに配属になったことに若干疑問に思う。
「デュランさん、オペレーターなら他にも居るのですが……」
「ああ、それなんだが、最近の技術の発展は凄まじくてな、電子戦…と言ったかな、それに対応できる人材が必要になってきたので彼女をここに配属させることにしたんだ」
「まあ、戦うのは苦手なんですけどね」
アイヴィーは舌を出しておどけて見せる。
だが、レイナは特に反応することなくデュランに質問する。
「ここのオペレーターでは対応しきれないと?」
「そういうわけではないんだが、やはり若い力もいれなくてはな……とにかく、ここで立ち話するより座って話をしないか?」
「失礼しました、こちらへどうぞ」
レイナはデュラン達を応接室へ案内していった。
応接室。
デュラン、レイナ、アイヴィーはそれぞれ座っているが、ロンサンだけデュランの右斜め後ろに立ったままだった。
重々しい雰囲気の中、アイヴィーが挙手する。
「あのー、私ってこの場に必要ですか?」
「ああ、君にもこれから話すことを聞いてほしいからね」
デュランからの言葉に頷くと静かに手を下ろした。
そこへ何者かが慌てた様子で入ってくる。
「はぁはぁ、遅れて申し訳ありません、何分、仕事が多くて」
「構わんよ、さあ、座って」
その人物はよれた黒いスーツを来て若干頭髪が後退した痩せこけた男、副局長のグリエルという人物だった。
局長であるライアンが様々な言い訳をして仕事をしない分、グリエルが後処理をしている。
そのせいか常時疲れた様子で、レイナも若干同情していた。
「さて、本題に入ろうか、グリエル、私の息子はしっかりと仕事をしているかね」
「あ、えと、それは、その……」
「君の率直な意見を聞かせてくれ、何を言おうが評価に影響しないと約束しよう」
副局長は目を泳がせ、額から汗が流した。
いつもライアンから『父さんに言いつけるぞ、そうなればお前なんか簡単に辞めさせられるんだぞ』と脅され、身を粉にして働いてきた。
だが、その七光りの父親が聞き入れる姿勢を見せているため、正直に話すことにした。
「その、大変申し上げにくいのですが、彼は、あまり、仕事をしない様子で……」
「ああ、続けて……」
「任務後の後始末から各所への連絡、補給品の手配、人員配置等、ほぼ全て私に回されまして、局長はというと、あのエミリアと、遊んでいるようで、先週の件につきましては、その、私は止めたのですが……」
今までどれだけ苦労してきたのだろうか。
溜め込んできた不満の数々にレイナは呆れアイヴィーは『うわぁ…』と思わず声に出してしまった。
一通り聞いたところで、デュランはレイナに目を向ける。
「レイナ、どうだろうか、君がここの局長になっては」
「……」
提案を言われた本人は反応が薄く、むしろアイヴィーと副局長が驚いた。
そんな二人のことを気にせず、レイナは口を開く。
「デュランさん、とてもありがたい提案なのですが、私はそのつもりはありません」
「……なぜ?」
「貴方に助けられたあの日以降、私はずっと無法者達を狩ってきました」
「そうだ、君は十分過ぎるほどの戦果を上げた」
「私が望むのは地位ではなく武器や力です、奴らを一掃するまで戦えるだけの」
「局長になってからでも出来るぞ」
「はい、ですが、私は現場での指揮なら兎も角他の者まで面倒を見る能力はありません、代わりに副局長に是非局長になってもらいたいのです」
レイナからの指名に驚く副局長。
推薦したデュランは若干落胆した様子を見せ、アイヴィーは局長の椅子を蹴ったレイナに信じられないといった表情を見せていた。
デュランからの好意を無視する形になってしまい、レイナは申し訳なさから顔を下に向けていた。
「そうか、私としてはレイナが局長になりアイヴィーに支えてほしかったのだが……」
その言葉に、アイヴィーは初めて自分がこの場にいる理由を理解した。
そうして、しばらくの沈黙の後、デュランはゆっくりと腰を上げる。
「とりあえず、今日のところは引き上げるとしよう」
「本当に申し訳ありません、ですが、私はこれからも貴方のために戦っていくことを誓います」
「ああ、局長の件は気が変わったらいつでも言ってくれ、君にはその資格があるのだから……」
「はい……」
デュランとロンサンは屋敷を後にした。
レイナ、アイヴィー、グリエルは玄関口まで見送った。
特にレイナは、デュランとロンサンが乗った車が見えなくなるまで忠誠の礼をしていた。
「まさか昇進の話を蹴るとはね」
レイナに屋敷内を案内されているアイヴィーは呟く。
それに対し、レイナは正面を向いたまま返答する。
「私は上に立つより現場で戦いたいの」
「さっき話してた、あの方に助けてもらったお礼?」
「それもある、もう一つは……」
途中で言葉に詰まる。
なぜなら、レイナが戦っているのはデュランに対する礼と復讐が理由だからだ。
その原因となる過去を思い出す度に、家族や親友を失った悲しみの記憶を呼び覚ましてしまう。
「好き勝手に暴れる連中が許せないから……」
拳を握りながら怒りを露にするレイナに、アイヴィーはそれ以上何も聞かなかった。
その後、オペレーター達がいるモニタールームへ連れていき、今後使うであろう机とパソコン、通信用マイク等を確かめる。
それらが済むと、最後は地下にある部屋がある場所まで案内する。
廊下の壁や天井はコンクリートで出来ており、ホテルというより工事の為の作業員用通路といった雰囲気だった。
アイヴィーは『何だか味気ない』と文句を言っていたが無視した。
黙っていると次から次へと不満を言いそうになるので、レイナは過去の出来事を語らせて誤魔化そうとする。
「そういえば貴女は吸血鬼になってから何年たったの?」
「確か五年位かな、まだ人間だった時は警察のオペレーターをしていたの、通報の大半は特に緊急のものではなくて毎回精神的に疲れそうになったわ、それである日帰っている途中で後ろから急に噛まれて血を吸われたの、最初は酔っぱらいか薬物中毒者の仕業かと思ったけど病院に搬送されて苦しくなって気を失って、気がついたら別の施設にいてそこで私は吸血鬼になったって言われたわ」
早口でかなり足早な説明にレイナは半分程聞き流していた。
しかし、アイヴィーはまだ続ける。
「最初は信じられなかったけど、喉が乾いてきて差し出された輸血パックの血を飲んだら身体が受け入れたの、その後これからどうするんだって聞かれて……」
「わかった、続きは明日にして」
アイヴィーの部屋の前に到着したことで、レイナは話を切り上げさせる。
「そう、まだ全部言えてないけど、まあとにかく、これからよろしく」
「ええ、よろしく」
よくしゃべるアイヴィーのことが苦手なのか、レイナは素っ気なく別れた。
遠ざかっていくレイナの後ろ姿を、新入りの彼女は唇に指を当てながら頬を赤らめて見つめる。
「綺麗……」
部屋に入るのが名残惜しそうにするアイヴィーだが、レイナは全く気がつかないまま自分の部屋へと向かっていった。
「はぁ……」
レイナは疲れた様子でコートを脱ぎ捨て、自分の部屋のベットに横になった。
肉体的な疲労というよりは精神的なものだ。
その原因となった新人の顔が脳裏に浮かんでくる。
レイナとしてはあまりお喋りな者は得意ではない。
例外としては……
「セレーネ……」
唯一心を通わせた同年代の友人。
二百年前に殺され、もう二度と会うことが出来なくなったあの子。
心の中からあの日の約束が消えない。
実はこの世界のどこかで生きているのではないかと、あり得ないことばかり考えてしまう。
そんな彼女にそっくりな女性のことも思い出す。
夜の街中を移動している時に偶然見つけた花屋で働いている若い従業員。
だが、その女性はセレーネとは関係ない。
元々一般人への接触は特別な理由がない限り禁止されている上に、下手に近づくと敵対者との戦闘に巻き込んでしまうかもしれない。
頭の中で友人とその従業員の顔を交互に何度も思い出してく。
そんなことをしても失った過去は取り戻せないことも分かっている。
これ以上は虚しさが増すだけだと己に言い聞かせ、目を閉じた。
願わくば、目が覚めたら二百年前のあの日に戻ってほしいと考えながら、意識を落としていった。
数時間後。
外は太陽が昇り、一般人の人々は仕事に精を出していた。
屋敷内はというと、全ての窓のカーテンが閉められ、一部の警護担当の吸血鬼以外は眠っていた。
基本的に昼夜逆転の生活を送っており、太陽が沈むまでは屋敷内は静かだった。
そんな中、廊下を一人の女性が足音も立てずにゆっくりと歩いていた。
その人物がレイナの部屋の前まで行くと、電子ロックが解除される。
事前に何か細工をしたのか、特に驚く様子もなく静かにドアを開けると中へ侵入。
出入り口に向かって背を向けて横になり眠るレイナの姿に、侵入者は口元が緩んだ。
一歩、また一歩と音もなく近づいていく。
ついに手が届く距離までくると、お辞儀をするように上体を傾けていく。
そして、息が掛かる程顔を近づけると、レイナの頬にキスとした。
だが、次の瞬間レイナは飛び起き侵入者を突き飛ばした。
同時に枕の下に隠していた拳銃を持って尻餅を着いたであろう相手に向ける。
しかし、その顔を見て驚く。
「っ…アイヴィー!?」
寝る前に記憶した相手にレイナは一瞬だけ混乱した。
新人である彼女がなぜ侵入して触れてきたのか分からなかった。
「何してるの!?」
「そ、その、ちょっと、イタズラを……お願い撃たないで」
「はぁ……まったく……」
レイナは呆れながら銃を下ろす。
そして疑問に思った。
「ドアは電子ロックが掛かってたはずだけど?」
「その、ここのシステムをハッキングして……」
「……」
レイナは苛つきながらも、もう一つ分からないことがあった。
吸血鬼化すると、身体能力に加えて五感も強化される。
他の仲間には言ってないが、レイナは聴覚と皮膚の感覚が特に優れている。
空気の流れを察知し、眠っていても肌に当たる風の感触で敵の接近を感知できた。
しかし、アイヴィー相手にそれが出来なかった。
(……疲れてたから?)
自問自答しても分からない。
侵入してきた新人に目を向けると、申し訳なさそうにこちらを見ていた。
「あ、あの、局長には……」
「ああ、あのバカには言わないから、とにかく自分の部屋に戻って、それからもう二度としないで」
「わかった……」
立ち上がって部屋を出ようとすると、レイナが呼び止める。
「ちょっと待って」
「?」
「これ、捨ててきて」
レイナがポケットから出して投げ渡したのは、任務の後に中身を飲み干した輸血パックだった。
アイヴィーは文句を一つも言わずに受け取り、部屋を後にした。
「はぁ……」
大きな溜め息をすると、レイナは銃を握ったまま横になる。
まさかとは思うが、また侵入してくるのではないかと警戒するとともに、なぜ接近してきたことすら直前まで分からなかったのか疑問に思いながら目を閉じた。
(感覚が鈍った? そんなまさか……)
再び意識が落ちるまではさほど時間は掛からなかった。
レイナの部屋を出たアイヴィーは一人嬉しそうに廊下を歩いていた。
(まさかすぐ起きるなんて、さすが)
彼女が最も強化された能力、それは隠密に関するものだった。
足音を消し、息を殺し、空気の流れすら乱さないまるで忍者のような身のこなし。
筋力は他の吸血鬼より若干低く、正面からの戦闘ではほぼ勝てない彼女にとってはある意味生き残るための最大の武器でもある。
しかし、さすがに頬に口づけした途端に起きたのは予想外だったようだ。
そんなハプニングにあっても、嬉しい戦利品が手に入ったことで帳消しになる。
レイナが口をつけた輸血パック。
それがなにより嬉しかった。
アイヴィーは頬を赤らめると、レイナが吸った所に口づけする。
実は、同性愛者でありレイナに関するプロフィールを目にした時から一目惚れしていた。
数秒間の間接キスの後、唇を離すとそれを大事に抱き抱えながら自分の部屋へと向かっていく。
両思いになりたいという願望と、嫌われるかもしれないから気付かれたくないという想いの両方を胸に抱えながら。
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