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強化薬
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北部局研究室。
この部屋にいつもいるドクターことアルドリックは強化ガラスで出来た箱を眺めていた。
中には実験用マウスが数匹入っていたが、皆血だらけになって死んでいた。
アルドリックは大きくため息をつきながら電話を掛ける。
「……どうも、例の薬ですが、どうやら失敗のようです……マウス達は確かに身体能力が向上しましたが、知能の低下と狂暴性が増し、共食いした挙げ句に突進して頭が潰れ死にました」
椅子に座り、落胆しながらパソコンが置かれた机に身体を向ける。
「本当にこれを奴らの手に渡しても良かったのですか? もしかすると、レイナが死ぬかもしれませんよ?」
電話相手からの返答にドクターは首を傾げる。
「覚醒を促す? 予備の戦力? ランハートのことですか? パソコンにデータを……少々お待ちを」
電話を掛けたままパソコンのメールフォルダを確認、受信した内容を確認するとそのデータに驚く。
「これは……この人物は吸血鬼化してどれ程……一年!? それでこれ程とは……いつこちらへ? はい、分かりました、では……」
電話を切ると、画面に表示されているデータを何度も見返す。
納得するまで隅から隅まで目を通すと、関心しながら椅子の背もたれに体重を預けた。
「目的のためならお気に入りが死ぬことさえ問わないか、流石だな、デュラン」
あまり感情が動くことがないドクターでさえ驚愕する程、デュランのやり方は予想を遥かに上回っていた。
これからレイナに訪れるであろう試練が想像出来るのは、ここではアルドリックだけだった。
だが、彼は決して教えない。
それどころか、この結果がどういったものになるのかという好奇心さえあった。
ギリア国北部と東部の間。
工業地帯と様々な街並みに挟まれたこの地帯の地下。
戦時中に空襲を避けるために作られた地下壕が、現在もそのまま残っている。
まるで地下鉄のように無数の通路があり、時には大人数を収容できる広い空間さえある。
当時の歴史を知りたい人には資料代わりとなる場所だが、現在ここは多数の無法者の住処となっていた。
学校の体育館の半分程の地下空間。
そこで大勢の男達が声を上げていた。
上半身裸の男二人が殴り合っているからだ。
まるで格闘家の試合でも見ているかのような熱気。
しかし、対峙している両者の手にグローブはなく審判もいない。
すでに殴り合ったため、口の端から血が流れ、目の周りが赤く腫れていた。
体格の良い短髪の男と、身体は引き締まっているが相手より少し細い男の戦い。
流れは短髪の男に傾いていた。
細い男は既に息が上がっており、辛うじて拳を当てるが、より強力な反撃を食らい足元がフラついていた。
短髪の男は好機と言わんばかりに、右の拳を大きく振って細い男を殴り飛ばす。
まるで投げられた人形のように倒れると、その怒りのまま殺気を込めて睨み付ける。
細身の男はゆっくりと立ち上がると、狼の如く吠えた。
その声に会場は一瞬静まり返る。
なぜなら細身の男の爪や牙が狼の物のように伸びていくからだ。
「いいぜ、来いよ!!」
短髪の男は恐れる様子もなく挑発。
それに応えるかのように、変化した細身の男が飛び掛かろうとした。
だが、二人から最も遠くの場所にいた見物人が突如何者かに投げられ、短髪の男に当たる。
「ぐっ!? なんだ!?」
対決していた二人は同時に犯人がいる方へ視線を向けた。
周りのギャラリーも同じようにその人物を見ると、一気に興奮が冷めていく。
「てめえら、何してんだ!!」
耳を塞ぎたくなるような怒号。
下は黒のジーンズ、上はタトゥーを入れた素肌に黒のジャケットと着た黒髪短髪の大男。
彼こそこの集団のNo.2であり人狼のバーレットという男だった。
その後ろにはもう一人の人物。
濃い茶色の分厚いロングコートにジーンズ、黒い長髪をオールバックにして固めた男。
ここのリーダー格であるラオウルという名の人狼だった。
「誰が仲間同士で戦えと言った」
リーダーの言葉に、皆口を閉ざし、俯く。
だが、先程まで戦っていた短髪の男が息を荒くしながら反発する。
「いつまでここに閉じ籠ってればいいんだよ!! 仲間が少し殺られただけじゃねえか!!」
「てめえ誰になめた口聞いてんだ!!」
No.2のバーレットが食って掛かる。
だが、短髪の男は引き下がらない。
「お前ら兄弟は何もしてないのに偉そうにしやがって 俺は違うぜ、こうして戦って鍛えてんだからよ」
「あぁ? てめえは単に暴れてえだけじゃねえか!!」
「やるか? 来いよ図体だけデカい臆病者が」
「お前……死にてえみたいだな」
今まさに巨体の二人が激突しようとしたその時。
リーダーのラオウルは一人落ち着いた様子のまま、バーレットの肩に手を乗せ制止させる。
「落ち着け、バーレット」
「でも、兄貴……」
この集団のリーダーとNo.2は兄弟だった。
「お前達が暴れたい気持ちは分かる、だが今はその時ではない」
「けっ……いつまでそんなこと言ってんだてめえは、怖じ気づいたか?」
その言葉に兄ではなく弟が反応する。
「いい加減に―――」
「やめろ!!」
「あ、兄貴、でもよ……」
「いいから下がれ……お前は、戦う準備が出来てるのか?」
確認するリーダーに、短髪の男は鼻で笑う。
「とっくの昔に出来てるんだよ、それも俺だけじゃねえ、お前達そうだろ!!」
短髪の男が拳を上げると、周りの仲間達も呼応して声を張り上げ拳を上げた。
この場で戦う意志がないのは兄弟だけ、と言わんばかりの雰囲気だった。
「お前はもうここのリーダーじゃねえ、戦う気がないなら引っ込んでな!!」
今にも全員が兄弟に襲い掛かるような雰囲気になる。
その数に、弟の方が圧倒され一歩下がってしまう。
だが、ラオウルは物怖じしていない。
「分かった、ここは引こう」
「あ、兄貴……」
「行くぞ」
兄が先に後ろを向いて歩くと、それに弟が遅れて着いていく。
二人が去ったことで、この集団のリーダーが変わったことに歓声の声が上がった。
どうやら今までラオウルが戦う許可を出さなかったことに鬱憤が溜まっていたようだ。
人狼の力と若さからくる闘争本能を抑えられていた彼らにとって、まさに邪魔者が去った喜びの瞬間だった。
そんな自分達にとっては嬉しくない声を背中で感じながら、弟のバーレットは悔しがる。
「兄貴、本当にこのままで良いのかよ!?」
「いいさ、仲間はここ以外にもいるからな」
「でもよ、ここに集めた武器や物資も全部あいつらの物になっちまったぜ?」
「その件なんだがな、もう物資は来ない」
「え? どういうことだよ?」
「奴ら吸血鬼の仲間割れに俺達は利用されていたようだが、それも終わったようだ」
今までは、実の父親を殺そうとしたライアンによって彼ら人狼に武器等が提供されていた。
しかし、絶縁とも取れる電話越しの会話。
その後の連絡や物資の供給が途絶えたことから、ラオウルは吸血鬼側の内乱が終結したと推測した。
「あ、そうだ兄貴、あの薬、あれだけでも回収しようぜ」
「だめだ」
「な、なんでだよ?」
「奴らの薬なんぞ信用出来ん」
最後の補給物資の中に、大量の注射器が入っていた。
そこに入れられていた手紙に一言。
『これは強化薬だ、上手く使うように』
とだけ記載されていた。
「じゃあ、ここに集めた物もこの場所も、全部あいつらにくれてやるのか?」
「そうだ、ここが政府の吸血鬼共にバレるのも時間の問題だろう、奴らにはせいぜい一人でも多くの吸血鬼共を道連れにしてもらうさ」
「そうか、まあ、兄貴がそう言うなら……」
結局、リーダーが入れ替わったことに歓喜する同志達から離れることとなった二人。
兄であるラオウルはともかく、弟のバーレットはここに仲間や物資を集めた労力を無駄になってしまったことに対して名残惜しそうに去っていった。
この部屋にいつもいるドクターことアルドリックは強化ガラスで出来た箱を眺めていた。
中には実験用マウスが数匹入っていたが、皆血だらけになって死んでいた。
アルドリックは大きくため息をつきながら電話を掛ける。
「……どうも、例の薬ですが、どうやら失敗のようです……マウス達は確かに身体能力が向上しましたが、知能の低下と狂暴性が増し、共食いした挙げ句に突進して頭が潰れ死にました」
椅子に座り、落胆しながらパソコンが置かれた机に身体を向ける。
「本当にこれを奴らの手に渡しても良かったのですか? もしかすると、レイナが死ぬかもしれませんよ?」
電話相手からの返答にドクターは首を傾げる。
「覚醒を促す? 予備の戦力? ランハートのことですか? パソコンにデータを……少々お待ちを」
電話を掛けたままパソコンのメールフォルダを確認、受信した内容を確認するとそのデータに驚く。
「これは……この人物は吸血鬼化してどれ程……一年!? それでこれ程とは……いつこちらへ? はい、分かりました、では……」
電話を切ると、画面に表示されているデータを何度も見返す。
納得するまで隅から隅まで目を通すと、関心しながら椅子の背もたれに体重を預けた。
「目的のためならお気に入りが死ぬことさえ問わないか、流石だな、デュラン」
あまり感情が動くことがないドクターでさえ驚愕する程、デュランのやり方は予想を遥かに上回っていた。
これからレイナに訪れるであろう試練が想像出来るのは、ここではアルドリックだけだった。
だが、彼は決して教えない。
それどころか、この結果がどういったものになるのかという好奇心さえあった。
ギリア国北部と東部の間。
工業地帯と様々な街並みに挟まれたこの地帯の地下。
戦時中に空襲を避けるために作られた地下壕が、現在もそのまま残っている。
まるで地下鉄のように無数の通路があり、時には大人数を収容できる広い空間さえある。
当時の歴史を知りたい人には資料代わりとなる場所だが、現在ここは多数の無法者の住処となっていた。
学校の体育館の半分程の地下空間。
そこで大勢の男達が声を上げていた。
上半身裸の男二人が殴り合っているからだ。
まるで格闘家の試合でも見ているかのような熱気。
しかし、対峙している両者の手にグローブはなく審判もいない。
すでに殴り合ったため、口の端から血が流れ、目の周りが赤く腫れていた。
体格の良い短髪の男と、身体は引き締まっているが相手より少し細い男の戦い。
流れは短髪の男に傾いていた。
細い男は既に息が上がっており、辛うじて拳を当てるが、より強力な反撃を食らい足元がフラついていた。
短髪の男は好機と言わんばかりに、右の拳を大きく振って細い男を殴り飛ばす。
まるで投げられた人形のように倒れると、その怒りのまま殺気を込めて睨み付ける。
細身の男はゆっくりと立ち上がると、狼の如く吠えた。
その声に会場は一瞬静まり返る。
なぜなら細身の男の爪や牙が狼の物のように伸びていくからだ。
「いいぜ、来いよ!!」
短髪の男は恐れる様子もなく挑発。
それに応えるかのように、変化した細身の男が飛び掛かろうとした。
だが、二人から最も遠くの場所にいた見物人が突如何者かに投げられ、短髪の男に当たる。
「ぐっ!? なんだ!?」
対決していた二人は同時に犯人がいる方へ視線を向けた。
周りのギャラリーも同じようにその人物を見ると、一気に興奮が冷めていく。
「てめえら、何してんだ!!」
耳を塞ぎたくなるような怒号。
下は黒のジーンズ、上はタトゥーを入れた素肌に黒のジャケットと着た黒髪短髪の大男。
彼こそこの集団のNo.2であり人狼のバーレットという男だった。
その後ろにはもう一人の人物。
濃い茶色の分厚いロングコートにジーンズ、黒い長髪をオールバックにして固めた男。
ここのリーダー格であるラオウルという名の人狼だった。
「誰が仲間同士で戦えと言った」
リーダーの言葉に、皆口を閉ざし、俯く。
だが、先程まで戦っていた短髪の男が息を荒くしながら反発する。
「いつまでここに閉じ籠ってればいいんだよ!! 仲間が少し殺られただけじゃねえか!!」
「てめえ誰になめた口聞いてんだ!!」
No.2のバーレットが食って掛かる。
だが、短髪の男は引き下がらない。
「お前ら兄弟は何もしてないのに偉そうにしやがって 俺は違うぜ、こうして戦って鍛えてんだからよ」
「あぁ? てめえは単に暴れてえだけじゃねえか!!」
「やるか? 来いよ図体だけデカい臆病者が」
「お前……死にてえみたいだな」
今まさに巨体の二人が激突しようとしたその時。
リーダーのラオウルは一人落ち着いた様子のまま、バーレットの肩に手を乗せ制止させる。
「落ち着け、バーレット」
「でも、兄貴……」
この集団のリーダーとNo.2は兄弟だった。
「お前達が暴れたい気持ちは分かる、だが今はその時ではない」
「けっ……いつまでそんなこと言ってんだてめえは、怖じ気づいたか?」
その言葉に兄ではなく弟が反応する。
「いい加減に―――」
「やめろ!!」
「あ、兄貴、でもよ……」
「いいから下がれ……お前は、戦う準備が出来てるのか?」
確認するリーダーに、短髪の男は鼻で笑う。
「とっくの昔に出来てるんだよ、それも俺だけじゃねえ、お前達そうだろ!!」
短髪の男が拳を上げると、周りの仲間達も呼応して声を張り上げ拳を上げた。
この場で戦う意志がないのは兄弟だけ、と言わんばかりの雰囲気だった。
「お前はもうここのリーダーじゃねえ、戦う気がないなら引っ込んでな!!」
今にも全員が兄弟に襲い掛かるような雰囲気になる。
その数に、弟の方が圧倒され一歩下がってしまう。
だが、ラオウルは物怖じしていない。
「分かった、ここは引こう」
「あ、兄貴……」
「行くぞ」
兄が先に後ろを向いて歩くと、それに弟が遅れて着いていく。
二人が去ったことで、この集団のリーダーが変わったことに歓声の声が上がった。
どうやら今までラオウルが戦う許可を出さなかったことに鬱憤が溜まっていたようだ。
人狼の力と若さからくる闘争本能を抑えられていた彼らにとって、まさに邪魔者が去った喜びの瞬間だった。
そんな自分達にとっては嬉しくない声を背中で感じながら、弟のバーレットは悔しがる。
「兄貴、本当にこのままで良いのかよ!?」
「いいさ、仲間はここ以外にもいるからな」
「でもよ、ここに集めた武器や物資も全部あいつらの物になっちまったぜ?」
「その件なんだがな、もう物資は来ない」
「え? どういうことだよ?」
「奴ら吸血鬼の仲間割れに俺達は利用されていたようだが、それも終わったようだ」
今までは、実の父親を殺そうとしたライアンによって彼ら人狼に武器等が提供されていた。
しかし、絶縁とも取れる電話越しの会話。
その後の連絡や物資の供給が途絶えたことから、ラオウルは吸血鬼側の内乱が終結したと推測した。
「あ、そうだ兄貴、あの薬、あれだけでも回収しようぜ」
「だめだ」
「な、なんでだよ?」
「奴らの薬なんぞ信用出来ん」
最後の補給物資の中に、大量の注射器が入っていた。
そこに入れられていた手紙に一言。
『これは強化薬だ、上手く使うように』
とだけ記載されていた。
「じゃあ、ここに集めた物もこの場所も、全部あいつらにくれてやるのか?」
「そうだ、ここが政府の吸血鬼共にバレるのも時間の問題だろう、奴らにはせいぜい一人でも多くの吸血鬼共を道連れにしてもらうさ」
「そうか、まあ、兄貴がそう言うなら……」
結局、リーダーが入れ替わったことに歓喜する同志達から離れることとなった二人。
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