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執着心 前編
8話
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「京香には会いましたか?」
住職が尋ねてくる。
「奥様のことですか?」
「ええ」
「ちらりとお見掛けしましたが、会話はしていません。ただ、とても綺麗な方で驚きました」
おまけにおぞましかったです、という言葉は慎んだ。
「私にはもったいないほどいい女でしょう、ハハハ」
住職は豪快に笑う。
「いえいえ、そんなことありません。ちなみにどこでお知り合いになったんでしょう」
俺が何気なく言った言葉に、住職の態度が一変する。
急に表情を強張らせ、口を閉じてしまう。
「すいません。俺は一人やもめなもんで、ついつい好奇心が出てしまって」
「いやいや、まぁ昔いろいろあって意気投合したという感じでしょうか。満緒も私たちの結婚には大賛成してくれましたしね」
大賛成?
当初はそうだったのだろうか。綺麗な義母が出来て喜んでいたところ、とんだ毒母だと分かり今は後悔しているのか。
住職と義母との出逢いに関してはあまり突っ込んでくれるなという壁を感じた。
俺は何げなく部屋の中を見渡して、棚の上に置いてあるサプリに目を留めた。
「何の薬ですか?」
そう聞くと、住職は苦笑いをして答える。
「マルチビタミンとかいうサプリだそうです。京香はいろんなサプリを海外から取り寄せていて、これもそのうちのひとつです」
「あれだけ美しい方なんですから美容面には気を遣っているんでしょうね。拝見しても?」
「どうぞ」
俺は棚の上のサプリを手にし、成分表を確認してみた。
海外からの輸入ものということで全てが英語表記で俺にはさっぱりだった。レモンの絵が描いてあるため、住職の説明どおりビタミン系のものなのだろうとは想像できる。
けれど海外からわざわざ取り寄せたという謎のサプリの存在に、嫌が応にも「毒」という単語を連想してしまう。
「私には何のサプリかさっぱりですか、念のため主治医に見せて許可はとってあります。気休め程度にしかなりませんが、飲んで構いませんよと」
「そうですか」
俺は思わず苦笑してしまう。
満緒の陰謀説に危うく引っ掛かりそうになっていた。いくらなんでも病院で毒を飲ませるなんてあるはずがないだろう。
「まぁ私の入院によって満緒も心を入れ替えたんでしょう、ずいぶん心配してくれてお弁当も作ってくれますよ」
「お弁当ですか? 料理をするんですか?」
「いえいえ、あいつに包丁なんて持たせたら危なっかしいだけですよ。ただ、病院食がまずいんだって言ったら、俺が作ってやるって言い張ってね。私としては京香に頼みたいんですが、あいつなりに心配してくれているのかもしれませんね。人間らしいところが見えて少しほっとしています」
住職は息子の成長に胸をなでおろしている様子だが、満緒の心配はそんな軽いものではない。今度は満緒の方がストレスでぶっ倒れるのではないかと感じるくらい思い悩んでいるのに、子の心親知らずというわけか。
住職は会話の途中で軽く咳込み、少しの間目を瞑り呼吸を整えていた。体力が落ち切っているのは一目瞭然だ。
目の前の住職の様子を見て満緒の不安は日に日に色濃くなっていった事だろう。
俺はこれ以上住職を疲れさせたくないと、丁重にお礼を言い病院を後にした。
住職が尋ねてくる。
「奥様のことですか?」
「ええ」
「ちらりとお見掛けしましたが、会話はしていません。ただ、とても綺麗な方で驚きました」
おまけにおぞましかったです、という言葉は慎んだ。
「私にはもったいないほどいい女でしょう、ハハハ」
住職は豪快に笑う。
「いえいえ、そんなことありません。ちなみにどこでお知り合いになったんでしょう」
俺が何気なく言った言葉に、住職の態度が一変する。
急に表情を強張らせ、口を閉じてしまう。
「すいません。俺は一人やもめなもんで、ついつい好奇心が出てしまって」
「いやいや、まぁ昔いろいろあって意気投合したという感じでしょうか。満緒も私たちの結婚には大賛成してくれましたしね」
大賛成?
当初はそうだったのだろうか。綺麗な義母が出来て喜んでいたところ、とんだ毒母だと分かり今は後悔しているのか。
住職と義母との出逢いに関してはあまり突っ込んでくれるなという壁を感じた。
俺は何げなく部屋の中を見渡して、棚の上に置いてあるサプリに目を留めた。
「何の薬ですか?」
そう聞くと、住職は苦笑いをして答える。
「マルチビタミンとかいうサプリだそうです。京香はいろんなサプリを海外から取り寄せていて、これもそのうちのひとつです」
「あれだけ美しい方なんですから美容面には気を遣っているんでしょうね。拝見しても?」
「どうぞ」
俺は棚の上のサプリを手にし、成分表を確認してみた。
海外からの輸入ものということで全てが英語表記で俺にはさっぱりだった。レモンの絵が描いてあるため、住職の説明どおりビタミン系のものなのだろうとは想像できる。
けれど海外からわざわざ取り寄せたという謎のサプリの存在に、嫌が応にも「毒」という単語を連想してしまう。
「私には何のサプリかさっぱりですか、念のため主治医に見せて許可はとってあります。気休め程度にしかなりませんが、飲んで構いませんよと」
「そうですか」
俺は思わず苦笑してしまう。
満緒の陰謀説に危うく引っ掛かりそうになっていた。いくらなんでも病院で毒を飲ませるなんてあるはずがないだろう。
「まぁ私の入院によって満緒も心を入れ替えたんでしょう、ずいぶん心配してくれてお弁当も作ってくれますよ」
「お弁当ですか? 料理をするんですか?」
「いえいえ、あいつに包丁なんて持たせたら危なっかしいだけですよ。ただ、病院食がまずいんだって言ったら、俺が作ってやるって言い張ってね。私としては京香に頼みたいんですが、あいつなりに心配してくれているのかもしれませんね。人間らしいところが見えて少しほっとしています」
住職は息子の成長に胸をなでおろしている様子だが、満緒の心配はそんな軽いものではない。今度は満緒の方がストレスでぶっ倒れるのではないかと感じるくらい思い悩んでいるのに、子の心親知らずというわけか。
住職は会話の途中で軽く咳込み、少しの間目を瞑り呼吸を整えていた。体力が落ち切っているのは一目瞭然だ。
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