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執着心 後編
19話
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矢島が満緒の担任だった当時、クラス中が荒れてひどい時期だった。熱血指導で生徒たちの心を開こうとした矢島だが、そんなことは不可能だと実感した。学園ドラマみたいなものは、現実では起こらないのだ。
クラスの問題ごとで校長や教頭、学年主任から叱責される中、矢島を支えてくれたのが2歳年下の吉田京香だった。
彼女とは大学の先輩・後輩の関係で、京香が矢島と同じ学校に配属されたことをきっかけに深い仲となり、結婚を約束した。
京香は少しでも矢島の負担を減らそうとクラス一の問題児、安杜満緒の対応にあたった。矢島が対処するよりも京香が満緒に説教する方がすんなりおさまることが多かった。
矢島は満緒の対応を京香にまかせっきりにして、自身はクラスの雑用や心の健康を取り戻すことに力を注いだ。
その対応を心の底から悔やむことになるとは、その時は思いもよらなかったそうだ。
その頃から少しづつ京香の態度がおかしくなっていった。
矢島を避けるようになり、学校で会っても目も合わさなくなった。
原因が分からず困惑していた折、別の教師から満緒と京香のただならぬ噂を耳打ちされた。
矢島は面倒な満緒の対応をすべて京香にまかせっきりにしたことを棚にあげ、彼女を攻め立てた。そこでようやく、2人の交際は彼女の意志ではないと聞かされたのだ。
はじめは薬を飲まされ無理やり関係を持たされた。その後は隠し撮り動画を武器に、矢島に全てばらすと脅され身動きが出来なくなった。
苦しみ抜いた結果、矢島に全てを打ち明けようとした京香だったが、満緒の狂暴性を知るにつけそれができなくなった。自分が満緒から離れてしまえば攻撃の矛先が矢島に向くのではないかという恐怖心で、京香は口を閉じていたのだ。
矢島は全てを話してくれた京香を許し、満緒と話し合いの場を持つことにした。
結果的に京香が危惧していたことが現実となった。
満緒は矢島と話し合いもせず、京香の前で彼の顔面が腫れあがるまで殴り続けた。そして逃げようとする矢島の体を切りつけ、最後に留めと言わんばかりに背中にナイフを突き立てた。その場面を京香も見ていたのだ。
その事件があり矢島は車いす生活となり、京香は彼のもとを去った。
それから数年して、矢島は彼女が満緒の父親と結婚したと聞かされたのだ。
「矢島さんは驚いていたよ、どうして満緒さんの父親なんかと結婚したんだと。そんなことをすれば一生満緒と縁が切れなくなるのにと」
京香は悔しそうに俯いていた。
住職は動揺したように京香を見て、不安げな瞳で話しかける。
「京香、君とは矢島先生の一件があって親しくなったと認識している。婚約者であるあなたに私が何度も謝罪をするうち、いつの間にか心が通じ合ってしまった。いけないこととは分かっていながらどうしても気持ちを止めることが出来なかった。私はそう思っていたが、君の方は違ったのか?」
「……私、私は……」
京香はぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「おいおい、今度は泣き落としか? 認めたらどうだ、金目当てに親父に近づいたって」
満緒が嘲笑う。
「違う、違う、違う!!」
京香は狂わんばかりに髪を振り乱して、泣き叫んだ。
「私は隆さんを愛していたの!例え車いすになったってずっと愛し続けていた。でも、こいつが……安杜満緒が私に結婚を申し込んできたのよ」
住職は驚いて満緒を見た。
「なんだって?」
「はっ、騙されんなよ親父。大昔、遊び半分で付き合った女だ。結婚なんて考えるわけないだろ、ばかばかしい。おいババア、調子に乗んなよ」
京香は泣きじゃくりながら、激しく首を振る。
「嘘つき、嘘つき、嘘つき! 私は必死に断ったわ。第一自分の婚約者を半身不随にした男となんて誰が結婚するもんですか。そう言ったら、彼は考えを変えてきたの、だったら親父と結婚しろって、それで俺の母親になれって」
「嘘をつくな! 親父、京香の言うことは全部でたらめだ」
「本当よ光照さん。あなたには申し訳ないけど、脅されていたの。俺の側から離れれば隆さんを殺すって。あの時の私はどうかしていたの、逃げればよかったのにそれができなかった。彼に対する恐怖心でいっぱいで、今思えば洗脳に近かったのかもしれないわ。隆さんを失いたくなかったのよ、満緒なら本当に彼を殺しかねないって、それが私には分かっていたから」
京香は足元から崩れ落ちるようにしてしゃがみ込み、声をあげて泣いた。
住職と満緒は呆然とした表情でそれを見ていた。
クラスの問題ごとで校長や教頭、学年主任から叱責される中、矢島を支えてくれたのが2歳年下の吉田京香だった。
彼女とは大学の先輩・後輩の関係で、京香が矢島と同じ学校に配属されたことをきっかけに深い仲となり、結婚を約束した。
京香は少しでも矢島の負担を減らそうとクラス一の問題児、安杜満緒の対応にあたった。矢島が対処するよりも京香が満緒に説教する方がすんなりおさまることが多かった。
矢島は満緒の対応を京香にまかせっきりにして、自身はクラスの雑用や心の健康を取り戻すことに力を注いだ。
その対応を心の底から悔やむことになるとは、その時は思いもよらなかったそうだ。
その頃から少しづつ京香の態度がおかしくなっていった。
矢島を避けるようになり、学校で会っても目も合わさなくなった。
原因が分からず困惑していた折、別の教師から満緒と京香のただならぬ噂を耳打ちされた。
矢島は面倒な満緒の対応をすべて京香にまかせっきりにしたことを棚にあげ、彼女を攻め立てた。そこでようやく、2人の交際は彼女の意志ではないと聞かされたのだ。
はじめは薬を飲まされ無理やり関係を持たされた。その後は隠し撮り動画を武器に、矢島に全てばらすと脅され身動きが出来なくなった。
苦しみ抜いた結果、矢島に全てを打ち明けようとした京香だったが、満緒の狂暴性を知るにつけそれができなくなった。自分が満緒から離れてしまえば攻撃の矛先が矢島に向くのではないかという恐怖心で、京香は口を閉じていたのだ。
矢島は全てを話してくれた京香を許し、満緒と話し合いの場を持つことにした。
結果的に京香が危惧していたことが現実となった。
満緒は矢島と話し合いもせず、京香の前で彼の顔面が腫れあがるまで殴り続けた。そして逃げようとする矢島の体を切りつけ、最後に留めと言わんばかりに背中にナイフを突き立てた。その場面を京香も見ていたのだ。
その事件があり矢島は車いす生活となり、京香は彼のもとを去った。
それから数年して、矢島は彼女が満緒の父親と結婚したと聞かされたのだ。
「矢島さんは驚いていたよ、どうして満緒さんの父親なんかと結婚したんだと。そんなことをすれば一生満緒と縁が切れなくなるのにと」
京香は悔しそうに俯いていた。
住職は動揺したように京香を見て、不安げな瞳で話しかける。
「京香、君とは矢島先生の一件があって親しくなったと認識している。婚約者であるあなたに私が何度も謝罪をするうち、いつの間にか心が通じ合ってしまった。いけないこととは分かっていながらどうしても気持ちを止めることが出来なかった。私はそう思っていたが、君の方は違ったのか?」
「……私、私は……」
京香はぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「おいおい、今度は泣き落としか? 認めたらどうだ、金目当てに親父に近づいたって」
満緒が嘲笑う。
「違う、違う、違う!!」
京香は狂わんばかりに髪を振り乱して、泣き叫んだ。
「私は隆さんを愛していたの!例え車いすになったってずっと愛し続けていた。でも、こいつが……安杜満緒が私に結婚を申し込んできたのよ」
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「なんだって?」
「はっ、騙されんなよ親父。大昔、遊び半分で付き合った女だ。結婚なんて考えるわけないだろ、ばかばかしい。おいババア、調子に乗んなよ」
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