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消えた妹 前編
3話
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天堂家の内部は映画のワンシーンでしか見たことのないような豪華な室内……ではなく、全体的に薄汚れており、まるで幽霊屋敷を連想させた。
一志は俺の微妙な反応に気付き、苦笑しながら答える。
「こんな古ぼけた屋敷で驚かれたでしょう。両親が死んでからはここで生活しておらず、月に1.2度風通しのために通ってくる程度なんです」
「いえいえ、アンティーク風な内装で素敵ですよ。ご両親はいつお亡くなりに?」
「父親の方は5年ほど前、母親は半年ほど前ですね。どちらも病気でしたが穏やかな最後でしたよ」
一志はそう言って、深緑色のカーペットが敷かれた螺旋階段を昇る。
俺も一志に続いて2階に上がる。
右側に窓、左側に部屋がずらりと並ぶ薄暗い廊下だった。
ふと、敏感な鼻がかすかな匂いをキャッチしてむず痒くなる。
「あの奥が里佳子の部屋です」
一志が突き当りのドアを指さす。今日の天気のせいだろう、里佳子の部屋がやけに薄暗いように感じる。
気のせいだろうか、扉の辺りに少女の影が動いたように見えた。
一志は俺を促すように部屋の奥へ足を向けるが、突き当りの部屋へは入らず手前の扉を開けた。
「ここが私の部屋です」
俺がそこへ入ろうとすると、右隣の部屋からバシンバシンと扉に体当たりする音がした。
俺が不審気な視線を向けると、一志は困ったように笑う。
「犬です、お客様が来るので部屋に閉じ込めているんです。でも、元気すぎて困ってます」
「だろうと思いました」
「ん? 犬の鳴き声がしましたか?」
「いや、実は動物系のアレルギーを持ってまして、抜け毛とかそんなのがだめみたいなんです。犬や猫は好きなんですが、家では飼えなくて。ひどい時は呼吸困難を起こすこともあるんです」
こそばゆそうに鼻を擦る俺を見て、一志は気の毒そうな顔をした。
「ああ、そりゃ大変ですね」
一志は勢いよく扉にぶち当たる犬たちを落ち着かせようと、扉を薄く開けた。
「こら、静かにしないか」
扉の隙間をこじ開けるようにして、黒光りした大きな鼻が顔を覗かせた。
シェパードだ。俺の顔を見た途端、気が狂ったような声で鳴き始めた。どうやら3匹ほどはいそうだ。
一志はよしよし、と犬の頭を数度撫でてから、再び扉を閉める。けれど、それが余計に逆効果だったようで、犬たちの騒音が大きくなる。
俺と一志は顔を見合わせて笑い、案内された隣室へ足を運んだ。
一志は俺の微妙な反応に気付き、苦笑しながら答える。
「こんな古ぼけた屋敷で驚かれたでしょう。両親が死んでからはここで生活しておらず、月に1.2度風通しのために通ってくる程度なんです」
「いえいえ、アンティーク風な内装で素敵ですよ。ご両親はいつお亡くなりに?」
「父親の方は5年ほど前、母親は半年ほど前ですね。どちらも病気でしたが穏やかな最後でしたよ」
一志はそう言って、深緑色のカーペットが敷かれた螺旋階段を昇る。
俺も一志に続いて2階に上がる。
右側に窓、左側に部屋がずらりと並ぶ薄暗い廊下だった。
ふと、敏感な鼻がかすかな匂いをキャッチしてむず痒くなる。
「あの奥が里佳子の部屋です」
一志が突き当りのドアを指さす。今日の天気のせいだろう、里佳子の部屋がやけに薄暗いように感じる。
気のせいだろうか、扉の辺りに少女の影が動いたように見えた。
一志は俺を促すように部屋の奥へ足を向けるが、突き当りの部屋へは入らず手前の扉を開けた。
「ここが私の部屋です」
俺がそこへ入ろうとすると、右隣の部屋からバシンバシンと扉に体当たりする音がした。
俺が不審気な視線を向けると、一志は困ったように笑う。
「犬です、お客様が来るので部屋に閉じ込めているんです。でも、元気すぎて困ってます」
「だろうと思いました」
「ん? 犬の鳴き声がしましたか?」
「いや、実は動物系のアレルギーを持ってまして、抜け毛とかそんなのがだめみたいなんです。犬や猫は好きなんですが、家では飼えなくて。ひどい時は呼吸困難を起こすこともあるんです」
こそばゆそうに鼻を擦る俺を見て、一志は気の毒そうな顔をした。
「ああ、そりゃ大変ですね」
一志は勢いよく扉にぶち当たる犬たちを落ち着かせようと、扉を薄く開けた。
「こら、静かにしないか」
扉の隙間をこじ開けるようにして、黒光りした大きな鼻が顔を覗かせた。
シェパードだ。俺の顔を見た途端、気が狂ったような声で鳴き始めた。どうやら3匹ほどはいそうだ。
一志はよしよし、と犬の頭を数度撫でてから、再び扉を閉める。けれど、それが余計に逆効果だったようで、犬たちの騒音が大きくなる。
俺と一志は顔を見合わせて笑い、案内された隣室へ足を運んだ。
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