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消えた妹 前編
4話
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室内のソファーに一志と向かい合わせに座った俺は、さっそく今回の依頼内容を確認した。
「行方不明になった里佳子さんは14歳、中学2年生ですね?」
「はい、2か月前の10月初旬ごろから姿を消しました」
「警察へは?」
「もちろん何度も足を運びました。誘拐だと伝えても、家出だろうということで取り合ってもらえません」
14歳の少女が姿を消して2カ月、場合によっては事件性があるやもしれぬ案件だ。警察はなぜ誘拐だと片づけてしまったのだろう。
俺の疑問を感じとったのか、一志が口を開く。
「里佳子は過去に何度も家出をしています。友人関係や将来の事、いろいろなことで塞ぎがちになるタイプで小学生の頃から度々家を開けることがありました」
「なるほど。いつもはどれくらいで帰ってきてたんです?」
「長くても2週間。ですが、今回は2カ月です。それにいつもの家出と違って犯人に心当たりがあるんです」
一志は強い眼差しで俺を見た。
「……なるほど。そのあたりは依頼メールに書いてありましたが、もう一度説明していただけますか?」
「はい」
一志は居ずまいを正し、話し始めた。
「都筑達也という26歳の男です。小学校の頃から里佳子の家庭教師をやってもらっていました」
「家庭教師ですか。彼が里佳子さんを誘拐したという根拠は?」
「あいつは里佳子に恋愛感情を持っていたんです。それに気づいた俺が奴を解雇したんですが、その後もずっと里佳子につき纏っていて。里佳子は彼のことをひどく怖がっていたんです。けれど、里佳子が姿を消したと同時に、都筑もこの辺りに姿を見せなくなりました」
なるほど、ほぼ確定だな。
俺は無言で頷いた。
「都筑の家に何度も訪ねて行きましたが、相手は知らぬ存ぜぬ。逆に俺が里佳子をどこかへ隠したんだと罵る始末です」
「もちろんその話も警察にはしたんですよね?」
「ええ、警察どころか探偵などにもお願いしましたが、警察は事情聴取のみで終わらせてしまい、探偵の調査でも怪しいところはないと言うことでした」
ガタン!
廊下の方で大きな音が鳴る。
一志は里佳子の部屋がある方角へ顔を向け、小さく首を振った。
「もう打つ手がないんですよ椿さん。最近は枕元に里佳子が立つようになって、助けて、助けてって啜り泣くんです。こっちの気がどうにかなりそうでたまらないんです」
「…………」
おそらく幻覚だろうが、相手の気持ちを慮ってその言葉は表に出さなかった。
おれはちらりと棚の写真に目を向ける。
両親らしき2人の男女と、学生服を着た若い頃の一志、そして小学生くらいの少女が映っていた。まだあどけなさの残る可愛らしい少女だった。
「今回の依頼は里佳子さんを探してほしいということでしたが、警察や探偵が動いて何ともならなかったものを私がどうこうできるとは思えません。それは最初に伝えておきます」
一志は神妙な顔で頷いた。
「ですが、枕元に里佳子さんが立つという言葉にひっかかり今回の依頼を受けました。幽霊の類であれば私の管轄です。里佳子さんはどこかに捕らえられ身動きができない状態でいるため、生霊が現れている可能性があります」
もしくはすでに死んでいて、浮幽霊になっているかのどちらかだ。
「私もそう思っているんです。里佳子はきっと生きている、あの男が監禁しているんです」
一志は里佳子の部屋の方角をちらりと見て、意を決したように言う。
「実は明日、あいつは国外逃亡を図るようなんです。その前になんとかケリをつけたいんです」
「国外逃亡……?」
これはまた大きく出たもんだ。
「行方不明になった里佳子さんは14歳、中学2年生ですね?」
「はい、2か月前の10月初旬ごろから姿を消しました」
「警察へは?」
「もちろん何度も足を運びました。誘拐だと伝えても、家出だろうということで取り合ってもらえません」
14歳の少女が姿を消して2カ月、場合によっては事件性があるやもしれぬ案件だ。警察はなぜ誘拐だと片づけてしまったのだろう。
俺の疑問を感じとったのか、一志が口を開く。
「里佳子は過去に何度も家出をしています。友人関係や将来の事、いろいろなことで塞ぎがちになるタイプで小学生の頃から度々家を開けることがありました」
「なるほど。いつもはどれくらいで帰ってきてたんです?」
「長くても2週間。ですが、今回は2カ月です。それにいつもの家出と違って犯人に心当たりがあるんです」
一志は強い眼差しで俺を見た。
「……なるほど。そのあたりは依頼メールに書いてありましたが、もう一度説明していただけますか?」
「はい」
一志は居ずまいを正し、話し始めた。
「都筑達也という26歳の男です。小学校の頃から里佳子の家庭教師をやってもらっていました」
「家庭教師ですか。彼が里佳子さんを誘拐したという根拠は?」
「あいつは里佳子に恋愛感情を持っていたんです。それに気づいた俺が奴を解雇したんですが、その後もずっと里佳子につき纏っていて。里佳子は彼のことをひどく怖がっていたんです。けれど、里佳子が姿を消したと同時に、都筑もこの辺りに姿を見せなくなりました」
なるほど、ほぼ確定だな。
俺は無言で頷いた。
「都筑の家に何度も訪ねて行きましたが、相手は知らぬ存ぜぬ。逆に俺が里佳子をどこかへ隠したんだと罵る始末です」
「もちろんその話も警察にはしたんですよね?」
「ええ、警察どころか探偵などにもお願いしましたが、警察は事情聴取のみで終わらせてしまい、探偵の調査でも怪しいところはないと言うことでした」
ガタン!
廊下の方で大きな音が鳴る。
一志は里佳子の部屋がある方角へ顔を向け、小さく首を振った。
「もう打つ手がないんですよ椿さん。最近は枕元に里佳子が立つようになって、助けて、助けてって啜り泣くんです。こっちの気がどうにかなりそうでたまらないんです」
「…………」
おそらく幻覚だろうが、相手の気持ちを慮ってその言葉は表に出さなかった。
おれはちらりと棚の写真に目を向ける。
両親らしき2人の男女と、学生服を着た若い頃の一志、そして小学生くらいの少女が映っていた。まだあどけなさの残る可愛らしい少女だった。
「今回の依頼は里佳子さんを探してほしいということでしたが、警察や探偵が動いて何ともならなかったものを私がどうこうできるとは思えません。それは最初に伝えておきます」
一志は神妙な顔で頷いた。
「ですが、枕元に里佳子さんが立つという言葉にひっかかり今回の依頼を受けました。幽霊の類であれば私の管轄です。里佳子さんはどこかに捕らえられ身動きができない状態でいるため、生霊が現れている可能性があります」
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一志は里佳子の部屋の方角をちらりと見て、意を決したように言う。
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「国外逃亡……?」
これはまた大きく出たもんだ。
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