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バラバラの絆
21話:私たち、8人家族でした
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満身創痍、戦闘力を削がれ続けた世良田一家の思考は完全に停止状態、誰もその場を動けなかった。
その様子を横目に、つかさは何やらブツブツいいながら、誠の方に目を向ける。
誠はスマホ画面に夢中でつかさには目もくれない。パズルゲームでもしているのだろう、せわしなく指が動いている。
つかさはしばらく無言で誠の顔を凝視していたが、相手が一向にこちらと目を合わせようとしないので、諦めたように「誠くんに関しては問題なし」と締めくくった。
そう言った後、つかさは再び目の端で誠の様子を盗み見た。何か含みを持ったように感じる視線だが、誠はお構いなしに無視を決め込んでいる。
世良田一家は大黒柱の元樹から始まって長女の美園に至るまで、欠陥だらけの突貫工事状態。
突つけば埃しか出ない最悪の状態に陥っていた。埃どころか、ちょっと力を入れれば家ごと倒壊してしまいそうな危険水域に達している。
唯一誠だけが健やかに育ってくれているのが家族にとっての救いだった。
「あの~、つかさ君?」
顔の頬をあらぬ方向に引きつらせながら、栄子がつかさの顔色を伺うように口を開く。
「何か?」
「今日取材したことは記事に?」
「ええ。今から帰って原稿を書きます」
「……そう。で、内容は?」
「今話したことを纏めるつもりですけど」
「今話したこと?」
「ええ、受賞後のそれぞれの進む道についてです。タイトルはもう決めてあるんです。モデルファミリーとして前向きな別離。これで決まりです」
―――――。
―――――。
長い沈黙が落ちた後、我に返った元樹が口を開く。
「それはちょっとマズイんじゃないか? 別離なんて書いたら、モデルファミリー落選だぞ」
「そ、そうね。縁起でもない。そもそも私たちはそんなこと一言も喋ってないわよ」
頬に手をあてて困ったような仕草をしてみせる栄子だが、唇が震えており極度に動揺しているのが見て取れる。
「それよりも、私たち来月遊園地に行くんだけど、一緒についてきて独占取材ってことにしたらどう?」
「いえ、結構です。インパクトにかけますから」
そう言って話を締めくくったつかさを前に、一家は頭脳を総動員していろいろなアイデアを提案する。
「今度うちの会社の通販番組に出るんだけど、見学とかしないか?」と元樹。
「いえ、そういうのは親父の仕事柄よく見学に行ってるんで興味ないです」
「ゲートボール大会に出るんじゃが」とケンジとタキ。
「お元気そうで何よりです。楽しんできてください」
「俺と夏美のデート現場、特別に撮らせてやってもいいぞ」と勇治。
「いえ、偽装カップルに興味はありません。千秋さんとのデートなら歓迎ですけど」
どれも瞬殺で却下していくつかさは、ちらりと壁の掛け時計を見て、椅子から立ち上がる。慌てた美園が苦し紛れにてきとうな案を提案する。
「ああ、そうだ!今から2人で映画館とか行かない?」
これにはめずらしくつかさが食いついてきた。
「それはいい提案だ。その後のオプションはどうなってる?」
「オプション?」
「映画を見た後、どこかゆっくりできるところで2人きりで……」
言いかけたつかさの首元を元樹が羽交い絞めにする。
「貴様、高校生の分際で何を考えてるんだ!」
ぐいぐいと腕に力を込めてつかさを締め上げる。
「や、やめてください、お父さ……」
「だからさっき言っただろ、貴様にお父さんって呼ばれる筋合いはないんだよ!」
「そ…そっちこそ、グェ!何考えてるんですか、グゥ、俺は図書館とかカフェ、グェ! 一緒に勉強できたら…グェ!」
調子の悪いアヒルのような声を出しながら、つかさは必死に元樹の腕から逃れようとする。
その光景を前に、栄子がふとひらめいたように指をピンと立てた。
「ああ、そういえばどこにも話してないことがあって」
「グェ……な、なんですか」
「私たち一時、8人家族だったのよ」
「……オェッ…8人家族?」
元樹の腕からようやく解放されたつかさは、興味深そうに椅子に座り直した。
その様子を横目に、つかさは何やらブツブツいいながら、誠の方に目を向ける。
誠はスマホ画面に夢中でつかさには目もくれない。パズルゲームでもしているのだろう、せわしなく指が動いている。
つかさはしばらく無言で誠の顔を凝視していたが、相手が一向にこちらと目を合わせようとしないので、諦めたように「誠くんに関しては問題なし」と締めくくった。
そう言った後、つかさは再び目の端で誠の様子を盗み見た。何か含みを持ったように感じる視線だが、誠はお構いなしに無視を決め込んでいる。
世良田一家は大黒柱の元樹から始まって長女の美園に至るまで、欠陥だらけの突貫工事状態。
突つけば埃しか出ない最悪の状態に陥っていた。埃どころか、ちょっと力を入れれば家ごと倒壊してしまいそうな危険水域に達している。
唯一誠だけが健やかに育ってくれているのが家族にとっての救いだった。
「あの~、つかさ君?」
顔の頬をあらぬ方向に引きつらせながら、栄子がつかさの顔色を伺うように口を開く。
「何か?」
「今日取材したことは記事に?」
「ええ。今から帰って原稿を書きます」
「……そう。で、内容は?」
「今話したことを纏めるつもりですけど」
「今話したこと?」
「ええ、受賞後のそれぞれの進む道についてです。タイトルはもう決めてあるんです。モデルファミリーとして前向きな別離。これで決まりです」
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長い沈黙が落ちた後、我に返った元樹が口を開く。
「それはちょっとマズイんじゃないか? 別離なんて書いたら、モデルファミリー落選だぞ」
「そ、そうね。縁起でもない。そもそも私たちはそんなこと一言も喋ってないわよ」
頬に手をあてて困ったような仕草をしてみせる栄子だが、唇が震えており極度に動揺しているのが見て取れる。
「それよりも、私たち来月遊園地に行くんだけど、一緒についてきて独占取材ってことにしたらどう?」
「いえ、結構です。インパクトにかけますから」
そう言って話を締めくくったつかさを前に、一家は頭脳を総動員していろいろなアイデアを提案する。
「今度うちの会社の通販番組に出るんだけど、見学とかしないか?」と元樹。
「いえ、そういうのは親父の仕事柄よく見学に行ってるんで興味ないです」
「ゲートボール大会に出るんじゃが」とケンジとタキ。
「お元気そうで何よりです。楽しんできてください」
「俺と夏美のデート現場、特別に撮らせてやってもいいぞ」と勇治。
「いえ、偽装カップルに興味はありません。千秋さんとのデートなら歓迎ですけど」
どれも瞬殺で却下していくつかさは、ちらりと壁の掛け時計を見て、椅子から立ち上がる。慌てた美園が苦し紛れにてきとうな案を提案する。
「ああ、そうだ!今から2人で映画館とか行かない?」
これにはめずらしくつかさが食いついてきた。
「それはいい提案だ。その後のオプションはどうなってる?」
「オプション?」
「映画を見た後、どこかゆっくりできるところで2人きりで……」
言いかけたつかさの首元を元樹が羽交い絞めにする。
「貴様、高校生の分際で何を考えてるんだ!」
ぐいぐいと腕に力を込めてつかさを締め上げる。
「や、やめてください、お父さ……」
「だからさっき言っただろ、貴様にお父さんって呼ばれる筋合いはないんだよ!」
「そ…そっちこそ、グェ!何考えてるんですか、グゥ、俺は図書館とかカフェ、グェ! 一緒に勉強できたら…グェ!」
調子の悪いアヒルのような声を出しながら、つかさは必死に元樹の腕から逃れようとする。
その光景を前に、栄子がふとひらめいたように指をピンと立てた。
「ああ、そういえばどこにも話してないことがあって」
「グェ……な、なんですか」
「私たち一時、8人家族だったのよ」
「……オェッ…8人家族?」
元樹の腕からようやく解放されたつかさは、興味深そうに椅子に座り直した。
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