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座敷童子
22話:祭りの夜
しおりを挟むあれは、美園が8歳の頃だからちょうと8年前の夏ね。誠はまだ3歳くらいで小さかったから、何も覚えてないだろうけど。
栄子が記憶を辿るようにぽつりぽつりと話し始めた。
「あの頃の勇治は面倒見がよくて、いつも美園と遊んでくれてたのよ。美園もお兄ちゃんっ子だったし」
栄子はそう言って成長した2人の子供に目を向ける。
子どもの頃の美園は勇治のことが大好きでどこへ行くにも後をついて行きたがった。勇治もそれを拒否せず、仲良く手を繋いで遊びに出かけていた。
ここ最近は2人で行動する事がなくなり、母親としては寂しい思いだが、それは栄子自身にも言えることだった。
家族そろってどこかへ出かけるということ事態、久しくなくなってしまっている。
一抹の寂しさを抱きながら、栄子は昔の思い出を語り出した。
「夕方の6時頃、勇治と夏美ちゃんと美園の3人で神社にお菓子をもらいに行ったの。うちの近所の神社は夏祭りを開く日に子供に無料でお菓子を配るのが恒例なのよ」
美園も栄子の話を聞きながら、当時の光景を思い出し始めていた。美園は小学3年生、勇治と夏美は6年生だった。
神社は子連れの家族たちで賑わっており、出店や子供神輿もあり華やいだ雰囲気だった。
美園たちは栄子にもらったお金でたこやきやベビーカステラをを頬ばりながら、あちこちの店を覗いてまわった。
しばらくして、神社の片隅でひとり座り込んでこちらを見ている女の子に気が付いた。
美園がその子に近づくと、その子はトトトと神社の闇の中に消えてしまう。
再び美園がその子を追う、また逃げ出してしまう、しばらくその繰り返しが続いた。
美園の様子に気付いた勇治と夏美も、女の子の後を追いかけるが、闇が深まるにつれ怖くなった勇治が頼りないことを言い出す。
「なぁ、もう帰ろうぜ。なんか変なのが出てきそうじゃん」
「あれ、勇治怖いの?」
夏美が両手を幽霊のように揺らしてみせると、勇治は慌てて首を振る。
「バカッ!ちげぇよ。クマとか出たらやべぇじゃんか。クマが怖いんだよ、俺は」
そう言って虚勢を張って先頭を歩きだしたが、何かを見つけて「ギャン!」とひと鳴きし、2人を置き去りにしたまま今来た道を全力疾走で引き帰していった。
後に残された美園と夏美は唖然として、勇治が逃げ出した方向と闇の奥を交互に見つめた。
気づけば周りは鬱蒼とした森の中。神社の喧騒とはほど遠い位置にまで入り込んでしまっていた。
勇治の言う通り、何かが出そう、美園は心細くなって夏美の背中に回り込む。
ふと気がつくと、森の奥の方、闇がさらに色濃くなったところにその子は立っていた。
「夏美ちゃん、あの女の子だれ?」
「――分からない、幽霊?」
闇の中から2つの白い目がこちらを見ていた。
夏美は美園を背中に庇うようにして、息を呑む。
女の子の体がゆらりと揺れた。
美園は思わず手に持ったベビーカステラの袋を落としてしまう。袋の中からまだ温もりのあるふわふわとした茶色いカステラが顔を覗かせた。
その瞬間、闇の中から2つの手が伸びてきて、2人に襲い掛かった。
「きゃああああ!!!」
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