モデルファミリー <完結済み>

MARU助

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座敷童子

24話:あさこちゃん その2

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 世良田家を訪れた警察はすぐに近隣や他府県に子供の行方不明者がいないかと情報提供を求めた。けれど、不思議なことにその子らしい捜索願は出ていないことが分かった。
 警察や家族に不穏な空気が漂う。

「こんな小さな子が家にいないのに気付かないなんて、ちょっと普通じゃないわね」

 栄子が言う。元樹も黙って頷く。

「分かっておってあえて探さない可能性もあるじゃろ」

 ケンジが言う。
 大人たちの脳裏に「育児放棄」という単語が浮かんでいた。

「とりあえず、この子は署に連れて帰ってご家族からの連絡を待ちます」

 そう言って女の子を連れて行こうとした警察の腕を、小さな手がぎゅっと掴んだ。

「だめ!」

 美園だった。

「連れて行っちゃだめ」
「ちょっと美園、やめなさい。お巡りさんも困るわよ」

 栄子が美園をなだめようとするが、美園は断固として「だめだめ」を繰り返している。
 事の顛末を黙って見ていた夏美が、間に入るように口を開く。

「友達になったのよ」
「え?」
「美園ちゃんとその子、友達になったの」
「友達?」

 だってこの子しゃべらないじゃない、栄子は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。余計な事を言って子供を傷つけたくはなかった。

「友達になるって聞いたら、うん、って頷いたの。だから友達!」

 美園が言う。
 女の子は黙って下を向いている。
 警察の大きな手に連れて行かれそうになっている薄汚れた女の子が気の毒で、栄子の胸は詰まりそうになった。

「この子、警察に行った後どうなるのかしら」
「親が出てくるまで施設に預けられることになります」
「施設……ですか」

 心もとなげに栄子が言うと、美園が首を振る。

「だめ、しせつ、だめ!私たち友達でしょ、ね?」

 そう言って美園が女の子を見ると、俯いていた女の子が僅かばかりだが首を縦に振り動かした。
 子供なりに見せた精一杯の反応に、栄子の決心が固まった。

「ねぇ元樹さん、この子の親が見つかるまでうちで……」

 栄子が言いかけるより先に、元樹が口を開く。

「だったらこの子うちで預かりますよ」
「え?」

 突然の提案に警察も驚いたようだった。

「ほら、うちこんな感じで子供も多いし。ああ、夏美ちゃんは近所の子なんだけど、今は夏休みでしょ。美園たちもこの子がいれば退屈せずにすみますよ」
「いや、でも」
「もちろん、親が見つかるまでです。それまで一時預かり所って感じで」
「はぁ、しかし……」
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