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城島先輩
37話:青い闇
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城島の告白により、生徒会室の空気はひどく重いものになっていた。
沈み込む美園を前に、城島がふと我に返り明るい声で話しかける。
「こういう傷があるとさ、両親に虐待されたんじゃないかとか、いろいろ言われるんだ。でもそうじゃない。僕の両親はとっても優しくていい人たちだったからね。変な噂とかたてられると僕自身辛いし、両親が誤解されるのも嫌なんだ。この背中に傷をつけたのは彼らじゃないからね」
じゃあ、誰が?
喉元まででかかった言葉を飲み込んだ。
これ以上踏み込むべきではない。これは本当に城島自身のプライベートな部分であり、隠し通しておきたい秘密でもあるだろうから。
ただ、間違いなく言えることは、あの背中の傷と同じくらい、城島の心の中にも深い傷が残ってしまっているということだ。
城島九音を形作っているものの中に、あの背中の傷は深く深く根付いているのだろう。
「このことはあまり口外しないでほしいんだ」
「もちろんです!言うわけないです。つかさにも厳しく言っておきますから」
美園はこぶしを握り締めて言う。
「ありがとう」
ふわりとほほ笑んだ城島は、綺麗な所作で足元に落とした制服を拾い上げる。
「さて服を着よう。今ここに誰か入ってきたら、よからぬ噂を立てられてしまいかねないからね」
肩を竦めて笑う。
この異様な状況に今更ながら気づいた美園は、顔が火照ってくるのを感じていた。上半身裸の生徒会長と密室で2人っきり。噂どころか既成事実として校内を駆け巡るだろう。
ほんの少しそんな噂が立てば幸せだと思ってしまった自分が恥ずかしい。あの傷をみた後では、とても不謹慎だ。
「あ、あのそれじゃあ私はそろそろ」
そそくさとその場を退散しようとした美園の背中に向かって、城島が声をかける。
「そういえば、さっきのこと」
「さっき?」
「うん。僕のことカッコイイって言ってたよね。これ以上ライバルが増えたら困るとも。それってもしかして、愛の告白なのかな」
え? え? ええええええ!!!!!
さっきは突然の事で動揺していて、自分がどんな発言をしたのか全く記憶にない。時間を巻き戻して考えてみれば、確かにそのようなことを言ってしまった気がする。
「いや、さっきのは思わず口をついて出た失言で……。ああ、でも嘘じゃなくて、先輩のことは少なからずとも、いやかなり大部分好きな感じで、んと、んと、とりあえず今日はこの辺で失礼します」
バコン、と開ききってない扉に顔面を思いっきりぶつけながら、城島の含みのある笑みに見守られつつ、美園は生徒会室を後にした。立つ鳥後を濁さずということわざがあるが、思いっきり騒々しかったのは言うまでもない。
☆ ☆ ☆
しばらく経って静寂が戻ってきた生徒会室で、城島はふぅとため息をついてイスに腰を降ろした。
「全く、騒がしい子だ」
ついつい彼女にテンポを持っていかれてしまい、本来なら喋る必要のないことまで語ってしまう。
「幸せな家庭で育ったんだな。真っ直ぐで曇りのない瞳だ」
純粋な彼女の前向きさが羨ましいと同時に、とても憎らしいと思える瞬間もある。
自分の背負ってきた人生と比べてみれば、尚更にどうしようもなく憤りを感じてしまう。それは彼女のせいでもないのに。
彼の陰鬱な気分を反映しているのだろうか。先ほどまでの心地よい雰囲気とは真逆の、澱んだ空気が部屋を支配していた。
その空気を切り裂くように、彼は立ち上がって、窓辺に歩み寄る。
青い瞳は虚空だ。遠く、遠く、その目に映るはずのないどこか遠くを見つめている。
「もうすぐだ。もうすぐ全ては終わる。罪人に罰を与える時がきた。贖罪など必要ない。あるのは――死のみ」
死、という言葉を口にした瞬間、城島の青い瞳に憎悪の炎が熱く燃え上がった。けれど、それもすぐに深青に飲み込まれ、体の奥深くへ静かに身を横たえる。
負の感情を飲み込んだ彼の瞳は、尚いっそう冷えきり、周りのものばかりか自分までをも傷つけてしまいかねない鋭い光を抱いた。
沈み込む美園を前に、城島がふと我に返り明るい声で話しかける。
「こういう傷があるとさ、両親に虐待されたんじゃないかとか、いろいろ言われるんだ。でもそうじゃない。僕の両親はとっても優しくていい人たちだったからね。変な噂とかたてられると僕自身辛いし、両親が誤解されるのも嫌なんだ。この背中に傷をつけたのは彼らじゃないからね」
じゃあ、誰が?
喉元まででかかった言葉を飲み込んだ。
これ以上踏み込むべきではない。これは本当に城島自身のプライベートな部分であり、隠し通しておきたい秘密でもあるだろうから。
ただ、間違いなく言えることは、あの背中の傷と同じくらい、城島の心の中にも深い傷が残ってしまっているということだ。
城島九音を形作っているものの中に、あの背中の傷は深く深く根付いているのだろう。
「このことはあまり口外しないでほしいんだ」
「もちろんです!言うわけないです。つかさにも厳しく言っておきますから」
美園はこぶしを握り締めて言う。
「ありがとう」
ふわりとほほ笑んだ城島は、綺麗な所作で足元に落とした制服を拾い上げる。
「さて服を着よう。今ここに誰か入ってきたら、よからぬ噂を立てられてしまいかねないからね」
肩を竦めて笑う。
この異様な状況に今更ながら気づいた美園は、顔が火照ってくるのを感じていた。上半身裸の生徒会長と密室で2人っきり。噂どころか既成事実として校内を駆け巡るだろう。
ほんの少しそんな噂が立てば幸せだと思ってしまった自分が恥ずかしい。あの傷をみた後では、とても不謹慎だ。
「あ、あのそれじゃあ私はそろそろ」
そそくさとその場を退散しようとした美園の背中に向かって、城島が声をかける。
「そういえば、さっきのこと」
「さっき?」
「うん。僕のことカッコイイって言ってたよね。これ以上ライバルが増えたら困るとも。それってもしかして、愛の告白なのかな」
え? え? ええええええ!!!!!
さっきは突然の事で動揺していて、自分がどんな発言をしたのか全く記憶にない。時間を巻き戻して考えてみれば、確かにそのようなことを言ってしまった気がする。
「いや、さっきのは思わず口をついて出た失言で……。ああ、でも嘘じゃなくて、先輩のことは少なからずとも、いやかなり大部分好きな感じで、んと、んと、とりあえず今日はこの辺で失礼します」
バコン、と開ききってない扉に顔面を思いっきりぶつけながら、城島の含みのある笑みに見守られつつ、美園は生徒会室を後にした。立つ鳥後を濁さずということわざがあるが、思いっきり騒々しかったのは言うまでもない。
☆ ☆ ☆
しばらく経って静寂が戻ってきた生徒会室で、城島はふぅとため息をついてイスに腰を降ろした。
「全く、騒がしい子だ」
ついつい彼女にテンポを持っていかれてしまい、本来なら喋る必要のないことまで語ってしまう。
「幸せな家庭で育ったんだな。真っ直ぐで曇りのない瞳だ」
純粋な彼女の前向きさが羨ましいと同時に、とても憎らしいと思える瞬間もある。
自分の背負ってきた人生と比べてみれば、尚更にどうしようもなく憤りを感じてしまう。それは彼女のせいでもないのに。
彼の陰鬱な気分を反映しているのだろうか。先ほどまでの心地よい雰囲気とは真逆の、澱んだ空気が部屋を支配していた。
その空気を切り裂くように、彼は立ち上がって、窓辺に歩み寄る。
青い瞳は虚空だ。遠く、遠く、その目に映るはずのないどこか遠くを見つめている。
「もうすぐだ。もうすぐ全ては終わる。罪人に罰を与える時がきた。贖罪など必要ない。あるのは――死のみ」
死、という言葉を口にした瞬間、城島の青い瞳に憎悪の炎が熱く燃え上がった。けれど、それもすぐに深青に飲み込まれ、体の奥深くへ静かに身を横たえる。
負の感情を飲み込んだ彼の瞳は、尚いっそう冷えきり、周りのものばかりか自分までをも傷つけてしまいかねない鋭い光を抱いた。
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