モデルファミリー <完結済み>

MARU助

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元樹の話

39話:元樹 パート2

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 山田はとんでもないことを言い出した。
 進藤仁に救われた。
 そんなことあるわけがない。
 あの男に関わったことにより、元樹の人生は破滅したのだから。

「いやいや、それはない。あいつが会社の不正を暴いたからこんなことになったんだ。救われたなんて話、これっぽちもないぞ」
「だからさっき言ったじゃないですか。会社が世良田さんをスケープゴートにしようと下準備してたって。もうその段階から会社は警察に目を付けられていたんです。不正がばれるのは時間の問題だったんです」
「――じゃあ、あいつが記事にしなくてもいずれ疑惑が表に出たと?」
「はい。そうなった時、犯人として検挙されるのは世良田さんだったんです」

 元樹はあまりのことに言葉を継げなかった。

「でも、なんで山田がそんなこと知ってるんだ」
「みんな知ってましたよ。事件が発覚する少し前から警察が俺たちに接触してきて、世良田さんの情報を探ってて。そのあたりから何かあるんじゃないかってみんな噂してました」
「いや、でも俺のところに警察が来たのは事件が発覚してからだぞ」
「いやいや、いきなり本命に切り込まないでしょ。まず外堀を埋めて証拠固めをしてから犯人を追い詰める。刑事事件だとそうじゃないですか」
「いや、でもまさかそんな……」

 この期に及んでまだ信用しない元樹に向けて、山田は決定的な言葉を放つ。

「会社から海外に行けって言われませんでした?」
「――え?」
「仕事かなんかで行けって言われたでしょ?」
「ああ、商談があるから代表として行ってくれって」
「なんで行かなかったんです?」
「なんでって、行こうとしたらハゲタカ進藤が俺のパスポートをシュレッダーに掛けやがったんだ」

 渡航当日に急用だからと進藤の勤めている局に呼び出され、そこで手渡された資料を読み込んでいるうちにいつの間にかパスポートが消えていた。
 しばらくして、しれっとした顔で「あれ、これなんですかね?」と、粉々になったパスポートの切れ端をみせてきた。

「書類をかけたつもりが混じってたって。そんなわけねぇだろ? あいつ俺が海外旅行に行くのが羨ましかったんだって。三流ゴシップ記者の給料だと国内の温泉施設が限界だろうしな」

 当時を思い出しはらわたが煮えくり返りだした元樹だが、山田は妙に冷静な口調で頷いた。

「やっぱり」

 一人納得した山田を前に、元樹は何が何だか分からない状態だった。
 そんな元樹に噛んで含めるように山田が言う。

「これは早坂部長から聞いたんですけど」
「早坂? 確かお前が入って来た後くらいに辞めた奴だよな。親の介護とかなんとか」
「ええ。俺、早坂部長直属でしたからいろいろ可愛がってもらってました。その彼が言ってたんです、10年ほど前に海外に行った課長が現地で強盗にあって刺殺されたって」
「え?」
「その課長、億単位で会社の金を横領してたって後で発覚したんです。でも、本人が亡くなってしまったからこの件は不問だって」

 元樹は体から血の気がひいていくのを感じていた。

「だから早坂部長は言ってました。会社から海外に行けって言われても行くなよ、死ぬぞ、って。実は早坂部長もJ国の支社に出向命令が出てたんです」
「――」
「でもそれを断って会社を辞めました。その後に世良田さんが早坂部長の仕事を引き継いだんです。会社は早坂部長を人身御供にしようとしてたけど、逃げられたので世良田さんに、って。そんな流れだと思います」
「――まさか」

 元樹が想像していた以上に事態が深刻だったことに気付き、ウエイトレスが運んできたホクホクのスパゲティにさえも目がいかなくなってしまった。
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