モデルファミリー <完結済み>

MARU助

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つかさとの攻防

47話:座敷童子からの連絡

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 特大のステーキ肉に、エビのシュリンプ、トリュフ入りのサラダに、カボチャのスープ。
 つかさの前に栄子の豪華な手料理が並べられている。
 それを美味しそうにほおばるつかさを、世良田一家は恐る恐る眺めていた。

「うまい! 栄子さん、うまいですよ」
「あら、良かったわ。ほほほ。お代わりならいくらでもあるから、何でも言って」

 栄子は引きつったような笑みを見せる。

「あれ、皆さんはそんな質素な食事でいいんですか。俺だけステーキで皆さんが豚キムチだなんて、なんだか申し訳ないな」 

 白ご飯に、豚キムチ、豆腐の味噌汁を前に沈み込んでいる一家を見て、つかさは口だけ申し訳なさそうなセリフを吐く。

「いいんだ、いいんだ。俺たちは好きなんだよ、豚キムチが」

 元樹は虚勢を張り、大口を開けて白ご飯をほおばる。

「な、みんなも好きだよな! な!」

 美園達も口々に「うんうん」と頷き、豚キムチを口に運ぶが、何の味もしない。絶望に突き落とされた人間は、味覚さえも失ってしまうのだろうか。
 タキとケンジでさえも、心なしが覇気がないように見え、ため息の数が増している。

 重々しい食卓を前に、事態を把握していない誠がつかさに質問をする。

「ところでつかさ兄ちゃん、今日は何の用だったの?」
「ん? ああ、そうだ」

 ここに来た目的を思い出したのであろう、つかさはナイフで肉を切り分けながら口を開く。

「そういえば、連絡がきたんです。座敷童子ちゃんから」
「え、本当か?」

 元樹が驚いたように目を見開く。
 まさか本人と連絡がつくとは思っていなかった一家は、嬉しさと不安ですぐには反応できなかった。

「間違いないのかしら? おもしろがった一般の方が連絡してきてる可能性もあるんじゃない?」

 栄子が問う。

「もちろん、何人か自分が座敷童子だから取材に来いだの、取材料を貰えるならインタビューを受けてやってもいいだの、美園に会わせろだの、いろんな反響がありましたよ」

 そう言って、つかさはかぶりと肉を口に入れる。
 滴る肉汁に世良田一家の喉がゴクリと鳴る。

「ん~、うまい! ……だけど、そういうのっていろいろ質問したら化けの皮が剥がれるもんです。でもその中で最後まで残った子がいて」
「どうしてその子が本人だと?」

 美園の問いに、つかさが自信ありげに言う。

「その子の名前は記事に書いてなかっただろ? あれは、あえてそうしてたんだ。世良田家であさこって呼ばれてたことは、本人と世良田一家しか知らない話だ。だけど、その子はあさこって呼ばれてたことを憶えていたよ」
「間違いないな」

 勇治が重々しく呟く。
 さっきのことをまだ許したわけではないつかさは、ちらりと勇治を睨みつけ、話を続ける。

「で、インタビューをお願いしたんですけど、断られました」
「あら」

 栄子が残念そうに言う。

「ついでに言うと、皆さんにも会いたくないそうです」
「――どうして?」

 元樹が問う。

「今の家族は偽物だって、そう言ってます」

 予想外のあさこの答えに、美園が乾いた声を漏らす。

「当たってるじゃない」
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