61 / 146
誠はどこ?
59話:不在の誠
しおりを挟む
皆は今まで一度も見せたこともない、奇妙な表情をしていた。
なんで自分に注目が集まっているのか分からず、つかさは困惑する。
「――お泊まりって?」
恐る恐るといった風に、栄子が口を開く。
「金曜の夕方に誠に会って、そん時今から友達んちに泊まりに行くって……」
そう言いかけて、つかさはようやく一家のこちらを探るような視線の意味合いに気づいた。
「お前らまさか……」
信じられない、信じられないが、そうだとしか考えられない。
わなわなと震える指を世良田一家に突きつけて立ち上がった。
「マジ信じらんねぇ。金曜の夜から今朝までアイツが家に居ない事に気づいてなかったのか!? 今日は日曜だぞ」
全員が全員あらぬ方向に視線を向ける。目が泳いでいる。
「こんだけ大勢大人がいて誰一人あいつを気にかけてなかったのか?」
当然とはいえ、厳しいつかさの言葉に元樹が素早く反応し、自己保身に走る。
「俺は土曜は仕事で会社に泊まってて、帰ってきたのは昨日の深夜だから仕方ないさ。栄子、お前母親だろ? 何で気づかなかったんだ」
「仕事で会社に泊まった? バカ言いなさいよ、リンリンとかいうガールズバーの女のとこでしょうが。あんたが楽しい時間を過ごしてる間、あたしは体調崩して寝込んでたのよ! 知ってるでしょ」
自分を正当化しようとする元樹を厳しく制する。
この反撃に、元樹はグゥの音も出ないようで、攻撃先を弱いものへと変更した。
「だいたい、美園だって、弟がいないことに気づかないっておかしいだろ?」
娘に罪の意識を押し付けようとする卑怯な父親を前に、美園は毅然と反撃する。
「あたしだって勉強で忙しいの。いちいち誰がいないかなんて知らないわよ! なんで私に言うのよ」
「お前だけじゃない、勇治だってそうだ。お前長男だろ」
「俺だって土日は受験勉強で手一杯なんだよ。好きな時間にご飯を食って、寝て、勉強する。いちいち今日は誰の顔を見てないなんて、気にしてられっか!」
勇治はそう言って無言で、ケンジとアキを見据える。
2人は情けなさそうに肩を潜めてイスに座ったままだ。こういう時にはきっちりと健気な老人というポジションを獲得できるのだから、大したもんだ。
「てか、そもそも夜は一緒に食事とらないのかよ? 普通そこで気づくだろ?」
「みんな好き勝手な時間に食べるからバラバラよ」
と、栄子が唇を尖らす。
「なんでだよ、なんでそうなっちゃってんだよ。昔はそうじゃなかっただろ? みんなで食ってただろ」
「なんでお前がそんなこと知ってんだよ」
勇治がつかさを睨みつけるが、その視線を押し返すようにつかさが語気を強める。
「あさこちゃんの話をしてるときに言ってただろ! てか、今はそんなことどうでもいいんだよ」
「慌てるな、落ち着け」
収集がつかなくなってきたタイミングで、元樹が立ち上がって話を整理する。
「つかさ君は金曜日に誠に会ったんだな?」
「ああ、リュック背負って歩いてたからどこ行くんだ、って声かけたら友達の家に泊まるんだって」
「そうか、だったら心配することない。小学生と言ったってもう高学年だ。友達の家に泊まりに行ってるんだ。心配することない。みんな落ち着け。大丈夫だから。な、心配ないよ、大丈夫大丈夫、心配ないさ…ははっ」
動揺しているのか、元樹は「心配するな、大丈夫だ」を無意識に繰り返している。
そのセリフが余計に世良田一家の不安を煽り立てる。
「なんて奴らだ。ここまで酷い偽装家族だとは思いもしなかったよ」
つかさは呆れたように音を立ててイスに腰を下ろし、頬杖をついた。
なんで自分に注目が集まっているのか分からず、つかさは困惑する。
「――お泊まりって?」
恐る恐るといった風に、栄子が口を開く。
「金曜の夕方に誠に会って、そん時今から友達んちに泊まりに行くって……」
そう言いかけて、つかさはようやく一家のこちらを探るような視線の意味合いに気づいた。
「お前らまさか……」
信じられない、信じられないが、そうだとしか考えられない。
わなわなと震える指を世良田一家に突きつけて立ち上がった。
「マジ信じらんねぇ。金曜の夜から今朝までアイツが家に居ない事に気づいてなかったのか!? 今日は日曜だぞ」
全員が全員あらぬ方向に視線を向ける。目が泳いでいる。
「こんだけ大勢大人がいて誰一人あいつを気にかけてなかったのか?」
当然とはいえ、厳しいつかさの言葉に元樹が素早く反応し、自己保身に走る。
「俺は土曜は仕事で会社に泊まってて、帰ってきたのは昨日の深夜だから仕方ないさ。栄子、お前母親だろ? 何で気づかなかったんだ」
「仕事で会社に泊まった? バカ言いなさいよ、リンリンとかいうガールズバーの女のとこでしょうが。あんたが楽しい時間を過ごしてる間、あたしは体調崩して寝込んでたのよ! 知ってるでしょ」
自分を正当化しようとする元樹を厳しく制する。
この反撃に、元樹はグゥの音も出ないようで、攻撃先を弱いものへと変更した。
「だいたい、美園だって、弟がいないことに気づかないっておかしいだろ?」
娘に罪の意識を押し付けようとする卑怯な父親を前に、美園は毅然と反撃する。
「あたしだって勉強で忙しいの。いちいち誰がいないかなんて知らないわよ! なんで私に言うのよ」
「お前だけじゃない、勇治だってそうだ。お前長男だろ」
「俺だって土日は受験勉強で手一杯なんだよ。好きな時間にご飯を食って、寝て、勉強する。いちいち今日は誰の顔を見てないなんて、気にしてられっか!」
勇治はそう言って無言で、ケンジとアキを見据える。
2人は情けなさそうに肩を潜めてイスに座ったままだ。こういう時にはきっちりと健気な老人というポジションを獲得できるのだから、大したもんだ。
「てか、そもそも夜は一緒に食事とらないのかよ? 普通そこで気づくだろ?」
「みんな好き勝手な時間に食べるからバラバラよ」
と、栄子が唇を尖らす。
「なんでだよ、なんでそうなっちゃってんだよ。昔はそうじゃなかっただろ? みんなで食ってただろ」
「なんでお前がそんなこと知ってんだよ」
勇治がつかさを睨みつけるが、その視線を押し返すようにつかさが語気を強める。
「あさこちゃんの話をしてるときに言ってただろ! てか、今はそんなことどうでもいいんだよ」
「慌てるな、落ち着け」
収集がつかなくなってきたタイミングで、元樹が立ち上がって話を整理する。
「つかさ君は金曜日に誠に会ったんだな?」
「ああ、リュック背負って歩いてたからどこ行くんだ、って声かけたら友達の家に泊まるんだって」
「そうか、だったら心配することない。小学生と言ったってもう高学年だ。友達の家に泊まりに行ってるんだ。心配することない。みんな落ち着け。大丈夫だから。な、心配ないよ、大丈夫大丈夫、心配ないさ…ははっ」
動揺しているのか、元樹は「心配するな、大丈夫だ」を無意識に繰り返している。
そのセリフが余計に世良田一家の不安を煽り立てる。
「なんて奴らだ。ここまで酷い偽装家族だとは思いもしなかったよ」
つかさは呆れたように音を立ててイスに腰を下ろし、頬杖をついた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる