モデルファミリー <完結済み>

MARU助

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奪われた家族

82話:前を向いて

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「人質交換?」

 誠の思いもよらぬ提案に、城島は驚いたように声を漏らす。

「オペラハウスに何があるのか分からないけど、そこを取引の舞台として、僕とトワを交換するんだ。僕は無事に救出されて、トワはお兄さんのところへ帰れる。ついでにそこでオペラハウスに隠されたマツムラの野望も暴いて奴を国から追放する。完璧でしょ」
「そう簡単には……」
「分かってる。そう簡単にはいかないって。でもきっとトワも早くお兄さんに会いたいはずだよ」

 寂しそうに微笑む誠を見て、城島の心に悲しみがよぎる。

 誠の姿がトワと重なる。
 そうだ、本当なら今ここにはトワがいるはずだったのだ。
 幼い頃、守りきれなかった小さな弟。
 自分の大切な宝物。

 けれど、その宝物は一番憎むべき相手に無償の愛を注ぎ、信頼を寄せているのだ。
 それを考えると腸が煮えくり返るような怒りに襲われるが、同時に恐怖も抱く。

「トワは俺の話を信じてくれるだろうか。あいつは最後までマツムラを信じるかもしれない。俺の存在自体を否定されたら……。情けないことにそう考えると少し怖いんだ」
「怖れないで闘ってください。じゃないと大切なものは守れません。思ってることはちゃんと口にして相手に伝えないと届きません」
「モデルファミリー代表に家族のなんたるかを説教されたら何もいえないな」

 城島は自虐的な笑みを浮かべる。

「そんな事ないです。本当は今のセリフ、自分自身にいってるんです。家族の絆が砕け散ってしまってるのに、僕はただ笑って聞き分けのいい子を演じてただけだから」
「砕け散ってる?」
「偽物です。僕たちはモデルファミリーに選ばれたら別れ別れになるです。みんなそれぞれの道を歩むんです」
「――そうだったのか」

 なんの苦労もなしに温かい環境で育っているように見えた美園。
 城島はいつもそんな彼女が羨ましく、時には憎らしくさえ思う時があった。
 けれど、人間の内面は本人にしか分からないもの。城島と同じように彼女自身にも内に秘めた暗い部分があったということなのだろうか。

「僕たちのやってることっておかしいと思いません? 別々の道に進むためにみんなで力を合わせてるんだから」
「――ああ、確かに」
「お父さんもお母さんも、勇治兄ちゃんも美園姉ちゃんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、みんな分かってるんです。自分たちがおかしいってこと」
「なのに走りだした船は止まらないんだな」
「はい。この道は間違ってるって分かってるのに、誰も足を止めようとしない。僕たち家族は愚か者なんです」

 大人びた表情を見せる誠を前に、城島は複雑な思いを抱いた。
 けれど、そんな城島の気持ちとは反対に、誠の瞳には徐々に強い光が宿りはじめていた。

「……でも思うんです。絆が砕け散っても欠片は残ってるって。もう元に戻らないほど粉々かもしれないけど、最後まで僕は信じてるんです。家族を。みんなを信じてるんです」

 城島は真っ直ぐ誠を見た。
 こんな小さな子どもが、大人のように悩み苦しみ、そして前を向こうとしている。
 だったら、自分にももっと何かが出来るはずではないだろうか。

「俺も、お前も……諦めるにはまだ早いってことだな」

 誠もその視線をしっかりと受け止めて頷いた。

「はい!」

 そう……。


 ――全ては……ハッピーエンドの為に!
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