101 / 146
近づく二人の距離
99話:開き直り
しおりを挟む
美園はふかふかのソファーに座ってふわぁ~と大きく欠伸をする。
ここ数日の間でいろんなことが起こりすぎて、現実を受け止めるたびに脳が疲弊し、感情がマヒしてしまったようだ。
こんな状況にも関わらず、のんきに欠伸が出てくる。
「今頃、日本は大変だろうな。おじいちゃん達ノイローゼになってなきゃいいけど」
だだっ広い客室で、なぜかつかさと2人きりで取り残されている美園は、大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせた。
誠がいじめに遭っていたという事実は一家にとって衝撃以外のなにものでもなかったが、へしおれかけた気持ちをなんとか奮い立たせ、政府関係者や要人の集まる対策会議へ出席することとなった。
そこへは栄子と元樹と勇治が参加しており、美園とつかさはキロッスとの接触時間まで居室待機中だ。
美園が省かれて勇治が招待されていることに腹は立つが、担任によってたいして頭がよくないことを暴露されてしまったのだから致し方ないことだろう。
美園の不満をよそにつかさはテーブルを挟んだ向かいのソファーで、小さな機械をごちゃごちゃといじっている。
「やっぱ最新式はいいよな」
満足げに呟いて美園を見たので、たいして、いや全く興味がないが聞いてみる。
「それ、何」
すると、待ってましたとばかりに自慢げに語りだす。
「空港で親父にもらった。すげぇ高いペン型のスパイカメラ兼ボイスレコーダーなんだぜ。前から欲しかったんだけど金がなくてさ」
そう言って機械を美園の前に置いて、
「触ってみろ。めちゃ軽い」
喜々としている。
やっぱり全く興味が沸かない。
目の前にいるこの男と自分では、立場が全然違うのだ。自分のように神妙になれといっても、無理な注文だろう。
つかさもようやく美園の落ち込みように気づいたのか、ペンを胸ポケットに差しなおすと、遠慮がちに口を開く。
「あんま心配すんな。悪いようにはなんないさ」
「空港でのひと悶着をあんたの父親にスクープされたんだよ。どう転んだらうまくいくの」
確かに……。つかさはそう呟いて、顎をさする。
「さっき親父からメールがきて、誠のあのブログもメディアで取り上げられてて、すごい勢いでアクセスが殺到してるって」
「ふぅ~ん。でもあれって、閲覧制限がかかってて誰でも見れないんでしょ?」
「ああ。でも今回の事で誠自身も有名になっちまって、友達申請してたガキの1人があのブログをコピーして、勝手に一般公開しちまったらしい」
「なるほどね。あたし達は世界的に有名になっちゃってるってことね」
胸パッド3つも詰め込んだ偽装オッパイの真実が世界中にばら撒かれてしまったことに、美園は少なからずショックを受けた。
ふと城島の事が頭に思い浮かんで胃が痛くなったが思い直す。
城島はああいう下品なものに触れようとはしないはずだ。大丈夫、まだばれてない。
こうやっていろいろ考えていると、逆に開き直り感が出てきてしまった。
「なんだかんだいってさ、結果こうなって良かったかも。あたし的にお嬢様のフリもいい加減疲れてたし。学校の勉強にだって全然ついてけてないし」
「ずいぶんスッキリした顔してるな」
「まぁね。あたしたち家族はさ、モデルファミリーになるために理想の家族を演じてきてたわけ。だけど、やっぱ偽者は偽者。ボロが出てきちゃうのよね。誠が理想の子どもを演じてたって聞いたとき、ちょっと申し訳ないなって思っちゃった。あんな小さい子どもにまでそういうプレッシャーを背負わせてたんだって。だからあの子があたしたちの悪口を書くのも分かる気がする」
裏モデルファミリー。
最初はなんてひどいこと、そう思ったけれど、誠なりの鬱憤の捌け口を見つけていたのだろう。
「悪口かな、あれ」
「悪口でしょ。どう贔屓目に見ても。家族のアラレもない姿や嘘偽りない日常を暴露しちゃってんだから。不倫、ロリコン、胸バッド。こういう単語が出てる時点でアウトでしょ」
「俺は笑えたけど」
それは良かった。死ぬまで笑ってろ。
なんだかむかついてきたので、美園は体の向きを変えてつかさをシャットアウトする。
今考える事は誠が無事に戻ってくるかということ、それだけだ。
ここ数日の間でいろんなことが起こりすぎて、現実を受け止めるたびに脳が疲弊し、感情がマヒしてしまったようだ。
こんな状況にも関わらず、のんきに欠伸が出てくる。
「今頃、日本は大変だろうな。おじいちゃん達ノイローゼになってなきゃいいけど」
だだっ広い客室で、なぜかつかさと2人きりで取り残されている美園は、大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせた。
誠がいじめに遭っていたという事実は一家にとって衝撃以外のなにものでもなかったが、へしおれかけた気持ちをなんとか奮い立たせ、政府関係者や要人の集まる対策会議へ出席することとなった。
そこへは栄子と元樹と勇治が参加しており、美園とつかさはキロッスとの接触時間まで居室待機中だ。
美園が省かれて勇治が招待されていることに腹は立つが、担任によってたいして頭がよくないことを暴露されてしまったのだから致し方ないことだろう。
美園の不満をよそにつかさはテーブルを挟んだ向かいのソファーで、小さな機械をごちゃごちゃといじっている。
「やっぱ最新式はいいよな」
満足げに呟いて美園を見たので、たいして、いや全く興味がないが聞いてみる。
「それ、何」
すると、待ってましたとばかりに自慢げに語りだす。
「空港で親父にもらった。すげぇ高いペン型のスパイカメラ兼ボイスレコーダーなんだぜ。前から欲しかったんだけど金がなくてさ」
そう言って機械を美園の前に置いて、
「触ってみろ。めちゃ軽い」
喜々としている。
やっぱり全く興味が沸かない。
目の前にいるこの男と自分では、立場が全然違うのだ。自分のように神妙になれといっても、無理な注文だろう。
つかさもようやく美園の落ち込みように気づいたのか、ペンを胸ポケットに差しなおすと、遠慮がちに口を開く。
「あんま心配すんな。悪いようにはなんないさ」
「空港でのひと悶着をあんたの父親にスクープされたんだよ。どう転んだらうまくいくの」
確かに……。つかさはそう呟いて、顎をさする。
「さっき親父からメールがきて、誠のあのブログもメディアで取り上げられてて、すごい勢いでアクセスが殺到してるって」
「ふぅ~ん。でもあれって、閲覧制限がかかってて誰でも見れないんでしょ?」
「ああ。でも今回の事で誠自身も有名になっちまって、友達申請してたガキの1人があのブログをコピーして、勝手に一般公開しちまったらしい」
「なるほどね。あたし達は世界的に有名になっちゃってるってことね」
胸パッド3つも詰め込んだ偽装オッパイの真実が世界中にばら撒かれてしまったことに、美園は少なからずショックを受けた。
ふと城島の事が頭に思い浮かんで胃が痛くなったが思い直す。
城島はああいう下品なものに触れようとはしないはずだ。大丈夫、まだばれてない。
こうやっていろいろ考えていると、逆に開き直り感が出てきてしまった。
「なんだかんだいってさ、結果こうなって良かったかも。あたし的にお嬢様のフリもいい加減疲れてたし。学校の勉強にだって全然ついてけてないし」
「ずいぶんスッキリした顔してるな」
「まぁね。あたしたち家族はさ、モデルファミリーになるために理想の家族を演じてきてたわけ。だけど、やっぱ偽者は偽者。ボロが出てきちゃうのよね。誠が理想の子どもを演じてたって聞いたとき、ちょっと申し訳ないなって思っちゃった。あんな小さい子どもにまでそういうプレッシャーを背負わせてたんだって。だからあの子があたしたちの悪口を書くのも分かる気がする」
裏モデルファミリー。
最初はなんてひどいこと、そう思ったけれど、誠なりの鬱憤の捌け口を見つけていたのだろう。
「悪口かな、あれ」
「悪口でしょ。どう贔屓目に見ても。家族のアラレもない姿や嘘偽りない日常を暴露しちゃってんだから。不倫、ロリコン、胸バッド。こういう単語が出てる時点でアウトでしょ」
「俺は笑えたけど」
それは良かった。死ぬまで笑ってろ。
なんだかむかついてきたので、美園は体の向きを変えてつかさをシャットアウトする。
今考える事は誠が無事に戻ってくるかということ、それだけだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる