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近づく二人の距離
101話:美園との未来
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美園はソファーに深く腰掛け、向かいに座るつかさに対し、胸のうちを話し始めた。
「誠にもしものことがあったらあたしたちどうなっちゃうんだろ、ってそのことばっかり心配している」
「どうって?」
「モデルファミリーのお金が入ったら解散ってのは規定路線だったはずなんだけど、今になって家族がバラバラになった時のこと考えると不安で仕方ない」
「余計な口挟むようだけど、もうモデルファミリーは無理だと思うぞ」
美園はちらりとつかさに視線を向け、ため息をつく。
「分かってるわよ。だけど、あたしたちがこのまま来年も家族を続けてると思う? これだけ世間に悪評が広まっちゃってるのに」
「それは俺の親父が煽った部分もある。悪い、謝る」
「もういいわよ、ママの言う通り偽装がばれるのは時間の問題だったのよ。時期がちょっと早まっただけ。誠を取り戻した後、私たちは解散よ。それを考えると哀しくなる」
美園は正直に本音を話す。自分を取り繕うこともしんどくなっていた。
誠を取り戻し日本へ帰国した後、一家はそれぞれの道を歩むことになる。
7億円も手にできず、無駄にダメージを負った状態で、世間から後ろ指をさされながら一家は離散する。
分かっていたことだが、いざその時期が近づいているとなると妙に寂しく感じるのはなぜだろうか。
日本から遠く離れたユグドリアに来たせいで、いい知れぬ寂しさに襲われ、本音という名の弱音が出る。
「私、1人ぼっちになっちゃうな」
無意識にそう呟いていた。
誰に言ったつもりでもないが、目の端でつかさがぴくんと反応したのが分かった。
重い沈黙の後、つかさがボソボソッと何かを言ったが、聞き取れなかった。
「なんて言ったの?」
「だから、俺が******」
また、後半が尻すぼみになって聞き取れない。
「だから聞こえない、って。こんな近い距離で何なのよ」
美園が呆れてため息をつくと「あ~!!」いう苛立たしげな呻き声を上げたつかさは、半ば自棄になったように大声で吠える。
「だ・か・ら! 心配しなくても、俺がずっと傍にいてやるよ!」
「――え?」
思わず顔を上げたその先、真正面からこっちを見つめるつかさの視線とかち合った。
とても冗談とは思えないほど真面目な表情をしている。
「おい、聞こえたのか」
「え……あ~、えっと」
「前に言ったこと覚えてるか? 一緒に生活する話」
「なんかそんなこと言ってたね」
モデルファミリーの賞金が手に入った後、一緒に暮らさないか。
確かつかさはそう言っていた。
ずっと美園のことを考えていたと、そんなことも言っていた気がするが、その時は賞金目当てに近づいてくるいけすかない男だと相手にしなかった。
ただ、今は違う。
こんな心細いところに取り残され、誠も誘拐され、先行きも見えない未来にほんの少し灯る希望の光。
「赤の他人のためにここまでやるかって、お前さっき言ってたけど、俺にとっちゃ赤の他人じゃない」
「――どういう意味?」
「たぶん……っていうか、お前は間違いなく俺の未来の嫁さんだし、そうなってくると世良田一家は俺にとって大事な家族になる」
「誠にもしものことがあったらあたしたちどうなっちゃうんだろ、ってそのことばっかり心配している」
「どうって?」
「モデルファミリーのお金が入ったら解散ってのは規定路線だったはずなんだけど、今になって家族がバラバラになった時のこと考えると不安で仕方ない」
「余計な口挟むようだけど、もうモデルファミリーは無理だと思うぞ」
美園はちらりとつかさに視線を向け、ため息をつく。
「分かってるわよ。だけど、あたしたちがこのまま来年も家族を続けてると思う? これだけ世間に悪評が広まっちゃってるのに」
「それは俺の親父が煽った部分もある。悪い、謝る」
「もういいわよ、ママの言う通り偽装がばれるのは時間の問題だったのよ。時期がちょっと早まっただけ。誠を取り戻した後、私たちは解散よ。それを考えると哀しくなる」
美園は正直に本音を話す。自分を取り繕うこともしんどくなっていた。
誠を取り戻し日本へ帰国した後、一家はそれぞれの道を歩むことになる。
7億円も手にできず、無駄にダメージを負った状態で、世間から後ろ指をさされながら一家は離散する。
分かっていたことだが、いざその時期が近づいているとなると妙に寂しく感じるのはなぜだろうか。
日本から遠く離れたユグドリアに来たせいで、いい知れぬ寂しさに襲われ、本音という名の弱音が出る。
「私、1人ぼっちになっちゃうな」
無意識にそう呟いていた。
誰に言ったつもりでもないが、目の端でつかさがぴくんと反応したのが分かった。
重い沈黙の後、つかさがボソボソッと何かを言ったが、聞き取れなかった。
「なんて言ったの?」
「だから、俺が******」
また、後半が尻すぼみになって聞き取れない。
「だから聞こえない、って。こんな近い距離で何なのよ」
美園が呆れてため息をつくと「あ~!!」いう苛立たしげな呻き声を上げたつかさは、半ば自棄になったように大声で吠える。
「だ・か・ら! 心配しなくても、俺がずっと傍にいてやるよ!」
「――え?」
思わず顔を上げたその先、真正面からこっちを見つめるつかさの視線とかち合った。
とても冗談とは思えないほど真面目な表情をしている。
「おい、聞こえたのか」
「え……あ~、えっと」
「前に言ったこと覚えてるか? 一緒に生活する話」
「なんかそんなこと言ってたね」
モデルファミリーの賞金が手に入った後、一緒に暮らさないか。
確かつかさはそう言っていた。
ずっと美園のことを考えていたと、そんなことも言っていた気がするが、その時は賞金目当てに近づいてくるいけすかない男だと相手にしなかった。
ただ、今は違う。
こんな心細いところに取り残され、誠も誘拐され、先行きも見えない未来にほんの少し灯る希望の光。
「赤の他人のためにここまでやるかって、お前さっき言ってたけど、俺にとっちゃ赤の他人じゃない」
「――どういう意味?」
「たぶん……っていうか、お前は間違いなく俺の未来の嫁さんだし、そうなってくると世良田一家は俺にとって大事な家族になる」
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