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オヘラハウスへ
105話:肖像画
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約束の時間まで残り僅か。
一家は緊張した面持ちで刻が過ぎるのを待った。
人質交換に指定された大ホールは劇場公演などを行うオペラハウスのメイン会場で、舞台と客席の収容人数は5千人規模を誇る。
一家はその広々としたホールの手前席で、心細げに小さく固まっていた。
日が落ちるのが早いのだろう、窓から差し込む光は既に薄暗い。
けれど、劇場内には眩いほどのライトが灯されており、隅々まで見通せるようになっていた。
「あと少しってところだな」
元樹が壁の時計を見上げて呟く。
時計の針までキラキラ輝いて見えるのはダイヤが装飾されているせいであり、声が響いて聞こえるのは音響設備が良いからだろう。
ふと美園が壁に並べられた絵画の一つを指差す。
「あれがトワ君の家族ね」
みんなは美園が指さす先を見た。
ホールのどの位置からでも見渡せるよう、壁の高い位置に沿うようにして多くの絵画や肖像画が並んでいる一角がある。
その中でもひときわ大きく美しい額縁に、4人の肖像画が描かれていた。
左奥で威厳を放ち立っているのが国王だろう。
口髭を生やし、王族の服に身を包んでいる。目元はとても穏やかだ。
そしてその横に長い黒髪の優しそうな女性が寄り添っていた。ほっそりとして儚げなその女性がきっとサチ王妃だろう。
そしてその2人の前に幼い子供が2人。1人は今のトワくらいの年齢で、もう1人はまだ母親の腕の中が恋しいであろうと思える幼さだ。
「あらん、トワ君小さいわねぇ。お人形さんみたいだわ」
栄子が嬉しそうな声を上げた。
母性本能が擽られたのは間違いない。
「トワ君の隣にいるのがお兄さんね」
栄子がそう聞くと、トワは少し照れくさそうに頷く。
「こうしてみるとトワ君はママ似で、お兄さんはパパ似なのね。っていうか、あら。お兄さん誰かに似てない?」
何かを思い出そうと首を捻る栄子を見て、元樹が嫌みったらしく答える。
「今習ってるテニスのインストラクターじゃねぇのか。やたら用もないのに人んちに電話かけてきやがるガキいるだろ」
それを聞いて栄子はちょっと驚いた顔をして答える。
「あら、あなた私のことに全く関心がないんだと思ってたら、そういうところはちゃんとチェックしてるのね」
栄子が上機嫌になったので、元樹は小さく舌打ちをした。
「別に。あんだけデカイ声で喋ってたら嫌でも耳に入るんだよ。もうあいつに家に電話してくるなって言ってやれ。イライラする」
「はいはい」
なんだかよく分からないが、自分が喋った分だけ損をしてる気がして、元樹はぶすっとした表情で口を閉じた。
それを見た栄子はさらに満足そうに笑みを見せた。
美園はといえば、そんな周りの会話など耳に入らないといった様子で、一心に絵を見つめている。
「おいおい、お前もロリコンが開花したか?」
つかさの嫌味もうわの空で聞き流し、しばらくしてからようやく口を開く。
「すごく似てる」
「誰が」
「トワ君のお兄さん、城島先輩にすごく似てる」
「はぁ? 生徒会長のことか」
美園に指摘され、もう一度肖像画を確認したつかさ。
すぐさま否定しようとしたが、確かにどことなく面影があるような気がしてしまい、不愉快な気分になる。
「世の中には自分に似てるやつが3人はいるっていうからな」
面倒くさそうに言い放つも、美園はぽうっとした表情で絵画に魅入っている。
王子に似ているなんてどこまで嫌味な野郎なんだ。美園の横顔を眺めながら、つかさは心の中で毒づいた。
一家は緊張した面持ちで刻が過ぎるのを待った。
人質交換に指定された大ホールは劇場公演などを行うオペラハウスのメイン会場で、舞台と客席の収容人数は5千人規模を誇る。
一家はその広々としたホールの手前席で、心細げに小さく固まっていた。
日が落ちるのが早いのだろう、窓から差し込む光は既に薄暗い。
けれど、劇場内には眩いほどのライトが灯されており、隅々まで見通せるようになっていた。
「あと少しってところだな」
元樹が壁の時計を見上げて呟く。
時計の針までキラキラ輝いて見えるのはダイヤが装飾されているせいであり、声が響いて聞こえるのは音響設備が良いからだろう。
ふと美園が壁に並べられた絵画の一つを指差す。
「あれがトワ君の家族ね」
みんなは美園が指さす先を見た。
ホールのどの位置からでも見渡せるよう、壁の高い位置に沿うようにして多くの絵画や肖像画が並んでいる一角がある。
その中でもひときわ大きく美しい額縁に、4人の肖像画が描かれていた。
左奥で威厳を放ち立っているのが国王だろう。
口髭を生やし、王族の服に身を包んでいる。目元はとても穏やかだ。
そしてその横に長い黒髪の優しそうな女性が寄り添っていた。ほっそりとして儚げなその女性がきっとサチ王妃だろう。
そしてその2人の前に幼い子供が2人。1人は今のトワくらいの年齢で、もう1人はまだ母親の腕の中が恋しいであろうと思える幼さだ。
「あらん、トワ君小さいわねぇ。お人形さんみたいだわ」
栄子が嬉しそうな声を上げた。
母性本能が擽られたのは間違いない。
「トワ君の隣にいるのがお兄さんね」
栄子がそう聞くと、トワは少し照れくさそうに頷く。
「こうしてみるとトワ君はママ似で、お兄さんはパパ似なのね。っていうか、あら。お兄さん誰かに似てない?」
何かを思い出そうと首を捻る栄子を見て、元樹が嫌みったらしく答える。
「今習ってるテニスのインストラクターじゃねぇのか。やたら用もないのに人んちに電話かけてきやがるガキいるだろ」
それを聞いて栄子はちょっと驚いた顔をして答える。
「あら、あなた私のことに全く関心がないんだと思ってたら、そういうところはちゃんとチェックしてるのね」
栄子が上機嫌になったので、元樹は小さく舌打ちをした。
「別に。あんだけデカイ声で喋ってたら嫌でも耳に入るんだよ。もうあいつに家に電話してくるなって言ってやれ。イライラする」
「はいはい」
なんだかよく分からないが、自分が喋った分だけ損をしてる気がして、元樹はぶすっとした表情で口を閉じた。
それを見た栄子はさらに満足そうに笑みを見せた。
美園はといえば、そんな周りの会話など耳に入らないといった様子で、一心に絵を見つめている。
「おいおい、お前もロリコンが開花したか?」
つかさの嫌味もうわの空で聞き流し、しばらくしてからようやく口を開く。
「すごく似てる」
「誰が」
「トワ君のお兄さん、城島先輩にすごく似てる」
「はぁ? 生徒会長のことか」
美園に指摘され、もう一度肖像画を確認したつかさ。
すぐさま否定しようとしたが、確かにどことなく面影があるような気がしてしまい、不愉快な気分になる。
「世の中には自分に似てるやつが3人はいるっていうからな」
面倒くさそうに言い放つも、美園はぽうっとした表情で絵画に魅入っている。
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