122 / 146
一家団結
120話:あさこちゃんがいれば百人力
しおりを挟む
世良田一家が知っている進藤つかさは、頭が良くて、こずるくて、抜け目がなくて、そして底抜けに明るい、そんな青年だった。
しかし、つかさの口をついてでる幼少期の思い出は、そんなイメージを覆すほど重い話だった。
場の雰囲気が曇りかけたのに気付いたつかさが、たいしたことない、と笑う。
「こういうわけだったんで皆さんのうちで過ごした日々は驚きの連続でした。食事中に大声で喧嘩したり、笑ったり。小さな誠くんが転んで泣いても誰も怒らない。それどころか、皆で必死にあやそうとする。皆さんの日常の何もかもが俺にとっては不思議で新鮮だったんです」
「いや、それが普通でしょ」
戸惑いながら美園が答える。
「そう、それが普通。でも俺の育った環境は普通じゃなかった。それを気付かせてくれたのが世良田一家だったんです。あなたたちは初めて俺に家族の温かさを教えてくれた人たちですよ」
「つかさくん……」
栄子が瞳を潤ませながら鼻をすする。
「今は忙しいからこれ以上の説明はまた今度ってことで。ただ、俺には皆さんに恩があるんです。当時の俺を暗闇から救ってくれた恩が。だから世良田一家の危機を救うために帰って来たんですよ」
力強いつかさの言葉に、美園の胸は熱くなる。
この男がいればどんな悪いことでも吹き飛んでしまう、そんな予感さえしてくる。
「お前の父親が俺に恩があるって言ってたのは、このことだったんだな」
元樹がポツリと言う。
「へぇ、親父そんなこと言ってました。あの人あんなナリしてるけど、実は義理堅い一面があるんですよ。敵に回すとやっかいですけど、味方につけておいて損はないですよ」
それは元樹自身が一番理解していることだった。
結局、彼の息子を救ったことで元樹自身、知らないところで恩返しされていたということなのだ。
「よし、座敷童子が俺たちの側についてるなら、安心だ。そうだろ栄子」
「ええ、そうよ。あさこちゃんにはずっと帰ってきてほしいと思ってたもの」
想像していた姿とは大きく違っていたが、栄子は懐かしいものを見るように成長したあさこを見つめた。
つかさは照れくさそうに笑う。
勇治、美園、誠、そしてつかさ。成長してたくましくなった子供たちの存在が、栄子にとって何よりも素晴らしい宝物だと気づく。
「ほんと、最高じゃないの私たち。こんなかわいい子たちに囲まれて。そうでしょ、元樹さん」
瞳を潤ませた栄子を見て、元樹も神妙な顔をして頷く。
「そうだな。俺たちは知らない間にすごいことをやってのけたんだ。ここまで立派に子どもたちを育て上げたんだからな」
「自画自賛してんなよ」
勇治が鬱陶しそうに呟くが、照れくささの裏返してあることは表情を見れば分かる。
つかさの告白により、より一層思いが強くなった世良田一家。
この良い流れを引き継いだまま行動に移そうと、元樹が采配を振るう。
「俺と栄子で核兵器に関して証拠となるような写真を撮ってくる。口でいくら説明してもマツムラが否定したらそれまで。何よりも証拠が大事だ。いいな」
「OKよ」
栄子が頷く。
「それから、トワ君はお兄さんの救出に向かってくれ。マツムラもトワ君にひどいことはしないだろう。誠は……ここに残ってほしいけど」
「僕も行く」
誠はすぐに答える。
「そう言うと思った。だから美園と勇治とつかさで子供たちを守ってくれ。俺たちは証拠を集めたらすぐに行くから、それまで頼んだぞ」
「ラジャー」
美園たちは「まかせとけ」と言わんばかりに、自信たっぷりにピースサインをする。
しかし、つかさの口をついてでる幼少期の思い出は、そんなイメージを覆すほど重い話だった。
場の雰囲気が曇りかけたのに気付いたつかさが、たいしたことない、と笑う。
「こういうわけだったんで皆さんのうちで過ごした日々は驚きの連続でした。食事中に大声で喧嘩したり、笑ったり。小さな誠くんが転んで泣いても誰も怒らない。それどころか、皆で必死にあやそうとする。皆さんの日常の何もかもが俺にとっては不思議で新鮮だったんです」
「いや、それが普通でしょ」
戸惑いながら美園が答える。
「そう、それが普通。でも俺の育った環境は普通じゃなかった。それを気付かせてくれたのが世良田一家だったんです。あなたたちは初めて俺に家族の温かさを教えてくれた人たちですよ」
「つかさくん……」
栄子が瞳を潤ませながら鼻をすする。
「今は忙しいからこれ以上の説明はまた今度ってことで。ただ、俺には皆さんに恩があるんです。当時の俺を暗闇から救ってくれた恩が。だから世良田一家の危機を救うために帰って来たんですよ」
力強いつかさの言葉に、美園の胸は熱くなる。
この男がいればどんな悪いことでも吹き飛んでしまう、そんな予感さえしてくる。
「お前の父親が俺に恩があるって言ってたのは、このことだったんだな」
元樹がポツリと言う。
「へぇ、親父そんなこと言ってました。あの人あんなナリしてるけど、実は義理堅い一面があるんですよ。敵に回すとやっかいですけど、味方につけておいて損はないですよ」
それは元樹自身が一番理解していることだった。
結局、彼の息子を救ったことで元樹自身、知らないところで恩返しされていたということなのだ。
「よし、座敷童子が俺たちの側についてるなら、安心だ。そうだろ栄子」
「ええ、そうよ。あさこちゃんにはずっと帰ってきてほしいと思ってたもの」
想像していた姿とは大きく違っていたが、栄子は懐かしいものを見るように成長したあさこを見つめた。
つかさは照れくさそうに笑う。
勇治、美園、誠、そしてつかさ。成長してたくましくなった子供たちの存在が、栄子にとって何よりも素晴らしい宝物だと気づく。
「ほんと、最高じゃないの私たち。こんなかわいい子たちに囲まれて。そうでしょ、元樹さん」
瞳を潤ませた栄子を見て、元樹も神妙な顔をして頷く。
「そうだな。俺たちは知らない間にすごいことをやってのけたんだ。ここまで立派に子どもたちを育て上げたんだからな」
「自画自賛してんなよ」
勇治が鬱陶しそうに呟くが、照れくささの裏返してあることは表情を見れば分かる。
つかさの告白により、より一層思いが強くなった世良田一家。
この良い流れを引き継いだまま行動に移そうと、元樹が采配を振るう。
「俺と栄子で核兵器に関して証拠となるような写真を撮ってくる。口でいくら説明してもマツムラが否定したらそれまで。何よりも証拠が大事だ。いいな」
「OKよ」
栄子が頷く。
「それから、トワ君はお兄さんの救出に向かってくれ。マツムラもトワ君にひどいことはしないだろう。誠は……ここに残ってほしいけど」
「僕も行く」
誠はすぐに答える。
「そう言うと思った。だから美園と勇治とつかさで子供たちを守ってくれ。俺たちは証拠を集めたらすぐに行くから、それまで頼んだぞ」
「ラジャー」
美園たちは「まかせとけ」と言わんばかりに、自信たっぷりにピースサインをする。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる