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野望は絶対阻止!
128話:3年前
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美園たちは城島を助け出すため、階下を目指す。
階段を下っては行き止まりにあたり、まだ別の位置から階段を降り直す。そういうことを繰り返していた。
「オペラハウスを下から見た感じだと10階建てくらいだったけど、感覚としちゃ地下もそれくらいありそうな感じだな」
と、つかさ。
「でも海を埋め立ててるわけだから、そこまで深くはないでしょ。いいところ地下2階か3階くらい? むしろ階段を上がって昇ってを繰り返して無駄に体力を削られてるだけな気がするわ。まるで迷宮よ」
遊園地の巨大迷路で勇治に置いてけぼりを食らい、不安で大泣きをした小さな頃の思い出が蘇る。
でも今は不思議と不安ではない。誠とトワがいることに加え、強力な味方が傍についているからだ。
美園はつかさに視線を向ける。
「なんだ?」
「あ、うん。立派になったなって。あの幼いあさこちゃんが、こんなに大きくなったんだもん」
「なんだそれ。お前もだろ」
つかさは思わず吹き出すが、ふと思い出したように話し出す。
「そういやお前たち、3年ほど前に俺と会ったこと覚えてないか?」
「え?」
3年前と言うと美園がちょうど中学3年生の頃、誠はまだ8歳だ。
覚えてる?という意味を込めて誠を見るが、誠も知らないというように首を振る。
「だろうな、あん時の俺、ガチガチのヤンキーだったから」
「ああ、まだ金髪でバイク事故を起こして、女と遊びまくってた時代ね」
妙に美園の口調に棘があるが、つかさはあえてスルーして話を続ける。
「そうそう、やばかった時代。ちょうど隣の学校の奴らとやりあって警察で事情聴取受けた後だったんだよ。なんだか無性にお前らに会いたくなって、バイクかっ飛ばして会いに行ったんだよ」
「そうなの? でも会ってないよね?」
そんな特徴的な人物と再会していて、覚えていないはずはない。
「軽く挨拶した程度だな。俺が世良田家の前でバイクを停めて観察してたら、たまたまお前たちが家族そろって家から出てきたんだ。たぶんどっかに出かける時じゃないか」
「ああ、あの頃はモデルファミリー代表になるため、裏工作してたのよ。みんなでよく外食に行って幸せ家族をアピールしてた」
顔に仮面を貼り付けて家族揃ってあちこちに出かけていた頃を思い出す。
会話らしい会話はない、みんなが笑っている姿を世間に認知してもらえばいいのだから。
とにかく幸せにそうに笑っていることが世良田家に課せられたミッションだった。
「俺がお前らの方を見てると、元樹さんが『どうも、こんにちは』って。その後、お前たちもにこにこ笑いながら軽く頭下げて、車に乗ってどっかに行っちまった」
「へぇ、でもちゃんと挨拶したんなら、印象悪くなかったでしょ」
「どこが? 最悪だったよ」
つかさは鬱陶しそうに目を瞑る。
それを見た美園は、不機嫌そうに返事を返す。
「まさか、あんたをあさこちゃんだと気づけなかったことに不満があるわけじゃないよね。どう考えても無理だからね」
「違うよ。お前たちの態度だよ。昔の元樹さんなら、俺みたいにやばい奴が家の前に立ってたら、まず不審そうな顔するだろ。ついでに美園や誠のことを心配する。それが俺の知ってる世良田一家だよ」
世間体よりも子供の幸せや安全を優先する、そんな家族のはずだった。
「なのに、あの時のお前らときたら、怪しい男を見ても嫌な顔ひとつせずニコニコ笑ってこんにちは、ときたもんだ。背筋が凍り付いたぜ」
いくら記憶を探ってもその場面を思い出すことができないが、自分たち一家ならやりそうだと美園は思った。
相手を訝しんだり、嫌な顔をみせたりしたら噂をされるかもしれない。世良田一家は愛想が悪かった、と。
そうならないためにも全方向に向けて笑顔を振りまき、常に緊張感を持って偽装家族を演じていたのだ。
階段を下っては行き止まりにあたり、まだ別の位置から階段を降り直す。そういうことを繰り返していた。
「オペラハウスを下から見た感じだと10階建てくらいだったけど、感覚としちゃ地下もそれくらいありそうな感じだな」
と、つかさ。
「でも海を埋め立ててるわけだから、そこまで深くはないでしょ。いいところ地下2階か3階くらい? むしろ階段を上がって昇ってを繰り返して無駄に体力を削られてるだけな気がするわ。まるで迷宮よ」
遊園地の巨大迷路で勇治に置いてけぼりを食らい、不安で大泣きをした小さな頃の思い出が蘇る。
でも今は不思議と不安ではない。誠とトワがいることに加え、強力な味方が傍についているからだ。
美園はつかさに視線を向ける。
「なんだ?」
「あ、うん。立派になったなって。あの幼いあさこちゃんが、こんなに大きくなったんだもん」
「なんだそれ。お前もだろ」
つかさは思わず吹き出すが、ふと思い出したように話し出す。
「そういやお前たち、3年ほど前に俺と会ったこと覚えてないか?」
「え?」
3年前と言うと美園がちょうど中学3年生の頃、誠はまだ8歳だ。
覚えてる?という意味を込めて誠を見るが、誠も知らないというように首を振る。
「だろうな、あん時の俺、ガチガチのヤンキーだったから」
「ああ、まだ金髪でバイク事故を起こして、女と遊びまくってた時代ね」
妙に美園の口調に棘があるが、つかさはあえてスルーして話を続ける。
「そうそう、やばかった時代。ちょうど隣の学校の奴らとやりあって警察で事情聴取受けた後だったんだよ。なんだか無性にお前らに会いたくなって、バイクかっ飛ばして会いに行ったんだよ」
「そうなの? でも会ってないよね?」
そんな特徴的な人物と再会していて、覚えていないはずはない。
「軽く挨拶した程度だな。俺が世良田家の前でバイクを停めて観察してたら、たまたまお前たちが家族そろって家から出てきたんだ。たぶんどっかに出かける時じゃないか」
「ああ、あの頃はモデルファミリー代表になるため、裏工作してたのよ。みんなでよく外食に行って幸せ家族をアピールしてた」
顔に仮面を貼り付けて家族揃ってあちこちに出かけていた頃を思い出す。
会話らしい会話はない、みんなが笑っている姿を世間に認知してもらえばいいのだから。
とにかく幸せにそうに笑っていることが世良田家に課せられたミッションだった。
「俺がお前らの方を見てると、元樹さんが『どうも、こんにちは』って。その後、お前たちもにこにこ笑いながら軽く頭下げて、車に乗ってどっかに行っちまった」
「へぇ、でもちゃんと挨拶したんなら、印象悪くなかったでしょ」
「どこが? 最悪だったよ」
つかさは鬱陶しそうに目を瞑る。
それを見た美園は、不機嫌そうに返事を返す。
「まさか、あんたをあさこちゃんだと気づけなかったことに不満があるわけじゃないよね。どう考えても無理だからね」
「違うよ。お前たちの態度だよ。昔の元樹さんなら、俺みたいにやばい奴が家の前に立ってたら、まず不審そうな顔するだろ。ついでに美園や誠のことを心配する。それが俺の知ってる世良田一家だよ」
世間体よりも子供の幸せや安全を優先する、そんな家族のはずだった。
「なのに、あの時のお前らときたら、怪しい男を見ても嫌な顔ひとつせずニコニコ笑ってこんにちは、ときたもんだ。背筋が凍り付いたぜ」
いくら記憶を探ってもその場面を思い出すことができないが、自分たち一家ならやりそうだと美園は思った。
相手を訝しんだり、嫌な顔をみせたりしたら噂をされるかもしれない。世良田一家は愛想が悪かった、と。
そうならないためにも全方向に向けて笑顔を振りまき、常に緊張感を持って偽装家族を演じていたのだ。
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