モデルファミリー <完結済み>

MARU助

文字の大きさ
131 / 146
野望は絶対阻止!

129話:初めての友達

しおりを挟む
 誠とトワのペースに合わせ、再び階段を下り始めた美園たち。
 道すがらふと、つかさの過去のことに話が及ぶ。

「そういえばつかさは私たちと別れた後、おばあちゃんに引き取られたんだよね。確かおばあちゃんがあさこちゃんを迎えに来たって聞いたけど」
「ああ、親父のばあちゃんに引き取られた。でも、数年したらそのばあちゃんも死んで、中学に入るタイミングで親父に引き取られたんだ」
「はは~ん。それでグレたわけね」

 つかさ以上にやんちゃな進藤仁の姿を思い浮かべ、致し方ないと美園は納得した。

「なんつーか、長いこと親子してなかったからすげぇ気まずくて。そのうち家に帰るのも嫌になっちまって、あれよあれよとヤバい方に進んで」
「それでメンタルがパンクして、楽しかった子供時代を思い出して、ベソ掻いてあたしたちに会いに来たってわけね」
「そうだな。まぁ、結果的にそこで更なる衝撃を受けたわけだけど」
「悪かったわね」

 美園が目を細めてつかさを睨みつける。

「いやいや、まぁなんだ、それがきっかけで俺も心を入れ替えたんだから良かったよ。お前たちの姿を見て、なんとかして俺の知ってる世良田一家に戻さないと、って。俺の大好きだったあの家族を俺が取り戻してみせる、そう誓ったんだから」
「大したもんね。他人の家族を更生させるために、M高に入るレベルまで一から勉強したんだから」

 素直に感心した美園を前に、つかさはこともなげに言う。

「いや、勉強はそんなにしなかったな。俺、地頭がいいんだよ。受験だって補欠じゃなく、一般合格だし」
「…………」

 美園は小さく舌打ちした。

「親父はさ、俺に協力してくれたんだよ。世良田一家のインタビューを取ってきてやる、って。親父としちゃ、一家のイメージアップに一役かってやろうって心づもりだったんだけど、結果的に企業の不正を暴くことになっちまって、元樹さんには迷惑かけたな」
「悪くないんじゃない。そんなヤバい会社だったんなら、いずれパパの精神がやられちゃってたよ。その前に逃げ出せて良かったんじゃない」
「そうか、そう言ってもらえると助かるよ」

 つかさは心の底から安堵する。
 そうして歩きながら美園手をぎゅっと握る。

「な、何!」

 驚いて手を振りほどこうとする美園だったが、つかさがそれを許さない。
 繊細だががっしりとした手のひらが、美園の小さい手をしっかり握りしめていた。

「お前には大したことない言葉だったかもしれないけど、俺は嬉しかったんだぜ」
「……何が」

 仕方なしにつかさと手を繋いだまま階段を下りる美園。
 気のせいだろうか、なんだか気温が上昇している気がする。

 美園は火照り始めた頬を覚ますように、反対側の手で顔をさすりながら、誠とトワがこちらを振り向かないことを祈っていた。

「覚えてないか? あさこちゃんと私は友達よ。これからもずっと一緒にいようね、って」
「へぇ。そんなこと言ったんだ」
「言った言った。俺、言葉にこそ出さなかったけど、最高に嬉しかったんだぜ。美園は俺にできた初めての友達だからな」

 そう言ったつかさは屈託のない表情で美園に笑いかけた。
 彼のこういった表情や仕草のひとつひとつが、美園の中で少しづつ変化を起こしていった。

 あれほど毛嫌いしていた相手のはずだが、今はつかさの事を知るごとに心の距離が近づきはじめている気がするのだ。

「俺が一番苦しかった時、お前たち家族が……そして、お前が……俺を助けてくれたんた。だから今度は俺が全力でお前を守る」

 そう言って握りしめた手により一層力を込めた。
 それに答えるかのように、美園もしっかりその手を握り返した。
 2人の視線が重なり合う。大丈夫、自分たちは絶対やれる。そんな確信が心を強くしていた。

 ちょうどその時、誠とトワが鉄製との扉の前に辿り着き、耳を澄まして中の様子を伺い始めた。

「何か声が聞こえるよ」

 誠はそう言って、美園たちを手招きした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...