モデルファミリー <完結済み>

MARU助

文字の大きさ
132 / 146
最終決戦

130話:野望

しおりを挟む
 ヒタヒタヒタ。
 冷え切った地下牢に、城島の腕から流れ落ちた血が雫のようにしたたり落ちる。

 マツムラは口に薄笑いを浮かべ、弱っていく城島の様子を黙って見つめていた。
 鎖で縛りつけられている両腕の痛みに耐えながらが、城島は血で見えにくくなった目をこらし、マツムラを睨みつける。

「父を……アンドレ国王を殺したのはお前だろう」
「何?」

 マツムラの声音が変わる。

「私がアンドレを手にかけるなど、そんなことあるはずがないだろう。あいつは自分から海に落ちたんだ」
「どっちも同じだ。お前が母を海に突き落としたから、助けに入った父も巻き込まれたんだ。2人ともお前が殺したも同然だろ」

 ビュン!!!

 ムチが飛ぶ。鈍い音と共に、城島のしなやかな肢体に赤い筋が走る。
 城島の口から苦痛の声が漏れた。

「いい加減にしろクオン。お前もトワと一緒に殺されたいのか?」
「なんだと……トワに手を出すな!」

 手追いの猛獣を落ち着かせるように背後から優しく城島の体に腕を回したマツムラは、彼の耳元に口を寄せる。

「今は私に逆らっていても、じきに私に感謝するようになる。2人でこの国を比類なき大国家にしようではないか。約束しよう、全ての人間をお前の足元にひざまずかせてやると」
「俺にひざまずくのは、貴様だけで十分だ。クソが」

 マツムラの顔は見る間に紅潮していく。
 激しい怒りを賢明に堪えようとしているが、ムチを持つ手はブルブルと震え出していた。

 背後に立つマツムラの表情を伺い知ることはできないが、城島は背中の方で空気が淀んでいくのを肌で感じとった。
 傷口が妙にざわつく。

 マツムラは再び腕を高く振り挙げ、ムチを振るおうとした。

 その瞬間――。

「お兄様に手を出すな!」

 鋭い声をあげて、トワが姿を現した。
 その後ろから、誠、美園、つかさが続く。

 マツムラは一瞬に驚いたように目を見開き、凶悪さのこもった表情を見せた。
 しかしそれも瞬間的なことで、すぐさまいつもの柔和な顔に戻る。

「おお、これはこれはトワ王子。ただいまこの男の取り調べをしている最中です。なかなか改心しませんので、少々お仕置きをしていたところです」
「鎖を外せ」
「なんですと?」
「聞こえなかったのか。鎖を外せと言ってるんだ」

 トワのマツムラを見る目は、以前の愛情のこもったそれとは違っていた。
 表情にありありと侮蔑の色を滲ませて、相手を睨みつける。

「トワ王子……一体何を」

 その場から動こうとしないマツムラに代わり、美園とつかさが進み出て、城島の腕に巻き付いた鎖を外してやる。
 あまりにも痛々しい傷口を前に、美園は思わず顔を背けてしまう。

 戒めを解かれた城島の体は、重力のままに床に崩れ落ちようとした。
 そこへつかさが素早く腕を差し入れ、衝撃を和らげた。
 城島の体はひんやりとした床に静かに横たえられた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...