公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!

小択出新都

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274.

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 エリデさんのお家に来てから三日目。
 昨日の遠乗りは楽しかった。あのあと、花畑の横にある泉でサンドイッチを食べて、馬で景色のきれいな場所をいろいろと回った。エリデさんがこの場所を案内してくれたのだ。

 そして今、私は台所に立っている。
 遠乗りに連れて行ってくれたお礼に、朝食は私が作ると申し出たのだ。

「大丈夫ですか?」

 エリデさんは少しハラハラしながら、私のことを見守っている。

「大丈夫です。こう見えても、料理には一角の自信があるんですよ。幼い頃から練習していますし、最近ではオリジナル料理の研究なんかもしています」

 私は腕まくりをして、料理に自信アリということを示す。

「ふーむ、材料はこれだけですか」

 正直、食材が潤沢にあるとは言えない。
 数種類の野菜に、ベーコンや干し肉、それならここの鶏が産んだ卵。

「すみません、夕食は村の人にお裾分けしてもらえるので、朝と昼の簡単な食事用のものしかないんです」

 遠乗りに出かけたときサンドイッチ作ってくれたし、エリデさんは料理ができないわけではないと思う。
 けど、一人暮らしなので、簡単に済ませることが多いようだった。

「いえいえ、十分です」

 私は目の前にある材料でできる料理を思いつくと、すぐに調理にかかる。
 テキパキと野菜を切って、きれいな水でさっと洗う。それから、ベーコンをお鍋で煮て出汁をとり、そこに野菜を入れて簡単なスープを作る。

 それから、残りの野菜をみじん切りにして、フライパンで炒める。塩胡椒で味付けしたら、卵を投入! いい感じに焼けたら形をまとめてオムレツの完成!

 私の手際にエリデさんは驚いていた。

「本当に料理が上手なんですね」
「はい! ここでお世話になってる間は間、料理は任せてください!」
「いえいえ、さすがにそれは……」

 エリデさんはそう言って遠慮しかけたが、ふと考え込むように指を顎に当てた。

「料理の研究もされていると言ってましたよね。実は少しアドバイスが欲しいことがありまして」
「アドバイスですか? 大丈夫です! なんでも相談してください」

 私はエリデさんの相談を待った。
 でも、それはやってこなかった。

「すみません、それについては晩御飯まで待ってもらってよろしいでしょうか」
「はい、もちろんです」

 それは全然構わなかったけど、晩御飯まで待つ意味はなんなんだろうと私は首を傾げた。昼には話にくいこととか?
 でも、朝か夜かで相談しやすさが変わる案件なんてあるのだろうか。

 そういわけで、時間の空いた私はお屋敷の庭をフラフラしてた。自然豊かで景色も良く、ふらりゆらりしてるだけで楽しい。
 しばらくふらゆらしてると、村に続く道から人が歩いてきてるのが見えた。

 一人はおばあさんで、一人は若い娘さん。
 娘さんといっても私よりだいぶ年上だけど。エリデさんと同い年ぐらいだろうか。

「おはようございます」

 彼女たちと声が聞こえる距離になったので、私は頭を下げる。2週間も滞在するんだから、こういう挨拶も大切だよね。

「あらあら、おはようございます」

 おばあさんと娘さんは、驚いた表情で頭を下げる。
 軽く自己紹介しておこうかと私が考えていると、娘さんの方が私に興味津々な様子で近づいてきた。

「エトワさまですよね!」
「はい、ご存じなんですね」
「もちろん! エリデさまからたびたびお話を聞いてます」

 はて、私はこのお屋敷にきてまだ3日だし、ここにきたときエリデさんとも初対面だったんだけど。そんな私のこと話す機会なんてあったのかなぁ……
 でも、その疑問について考える暇もなく、娘さんがグイグイとくる。

 若い娘さんのパワーはすごい。

「ねぇねぇ、エリデさまの奥様になられるという話は本当ですか?」

 はい~~~?
 なんですか、それは。

「え、えっと……」

 本当も何も、初耳な情報ですが。

「こら、あんた! そういうことは気軽に聞いたりすることじゃないよ!」
「でも、でも、おばあちゃん」
「仕事の邪魔をするなら帰りな」

 そういうと、娘さんは本当におばあさんに追い返されてしまった。

「おばあちゃんのバカー、ケチー!」

 麦畑の向こうから娘さんの恨み言が響いて聞こえてくる。

「まったくもう仕事もろくにできないくせに噂話ばかりしたがるんだから」

 おばあさんはため息を吐いてお孫さんの愚痴をいったあと、私のほうに向き直る。

「失礼しました。私はエリデさまのお屋敷の清掃をさせていただいてるルモワというものです。エトワさまが屋敷にいらっしゃる間は、何度も顔を合わせることになると思います。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」

 私とルモワおばあさんはそういって頭を下げ合った。
 ルモワさんの用事はお屋敷の掃除に来たということなので、私もお屋敷に戻る。

 屋敷の玄関から入るとルモワおばあさんはテキパキと掃除の準備をはじめた。
 私も一緒に掃除しようと思ってモップを持ってくる。

「手伝いますよ~」

 すると、おばあさんは慌てて首を振った。

「いえいえ、奥様にそんなことさせるわけにはいきません」

 パシッとモップは回収されて、おばあさんは向こうに言ってしまった。
 私は心の中で呟く。

(奥さまじゃありませんよ~?)
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