公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!

小択出新都

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279.

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 どもどもエトワです。
 エリデさんとご両親のお墓参りにいった帰り、お屋敷に戻ってきたらルモワおばあさんが倒れていました。

 お墓参りの帰りにご老女が倒れているのである。
 もう嫌な予感しかしない。

「おばあさーーーん!!」

 私は真っ青な顔をして、おばあさんに駆け寄る。
 ひしっとその体に飛びつくと、おばあさんの体から悲鳴があがった。

「あいたたたたたぁっ! さわらないでくださいっ! 奥さまぁっ!!」
「よかった! 生きてる!!」
「いえ、よくはありません。腰を痛めているようです」

 エリデさんが冷静におばあさんに近づき、すぐに悪いところを言い当てた。

「天井の掃除をしようとしたら……落ちてしまって……歳はとりたくないものです……」

 それを聞いてエリデさんはため息をついた。

「高いところの掃除はやめてくださいとお願いしていたのですが……」

 それからエリデさんは馬を走らせ、村の人たちを呼んでくれた。
 村の人たちが荷車に毛布をたくさん敷いて、おばあさんを運ぶ準備をする。

 前に会ったお孫さんも来ていて、おばあちゃんを困った表情で見つめた。

「もう、おばあちゃんったら歳なのに無理するから……。でも、エリデさまのお屋敷のお掃除はどうしたらいいのかしら」

 それから、とてもいいことを思いついたというように、胸の前でパンっと手を叩いた。

「はっ、それなら私がエリデさまたちのお世話をすればいいんだ!」

 おばあさんが腰を痛めているにも関わらず、その頬は嬉しそうに紅潮していた。
 きっとエリデさんに憧れているのだろう。歳も近いしかっこいいもんね、エリデさん。

「ダメだよ、あんたは! この前だって自分の部屋の掃除をしろって言ったら、棚やらバケツやらを倒して滅茶苦茶にしたじゃないか! あんたにさせるぐらいならアタシが……! アイタタタ!」
「ちょっとばあちゃん、無理しないでくれよ! ミモワ、お前も手伝わないなら帰れ!」

 荷車から這い出ようとしたルモワおばあさんを、村の男衆たちが慌てて止める。
 それから、お孫さん、たぶん名前はミモワさんはイエローカードを食らってしまった。

「うう、はい……」

 お孫さんは反省して、荷車の毛布を整えはじめる。
 ルモワおばあさんはこちらを執念の籠った瞳で見つめる。

「エリデさま、奥さま、痛みがひいたらすぐに掃除に戻りますので……」
「いやいや、無理だよ。2週間は休まないと」

 今晩にでも屋敷に戻ってきそうなルモワおばあさんに、村の人たちが頭を抱える。
 お孫さんもさすがに困った表情をした。

「う~ん、誰か安心して掃除を引き受けてくれる人がいたら」
「おまかせください」

 私はみんなの前に出て、ポフッと胸を叩いた。

「おくさま!?」
「奥様が……!?」
「奥様ではありません」

 私は毎度の村の人たちの私への呼び方を訂正しながら、放置されたままになっている掃除道具を取り、周りの人が止める間も与えず、梯子に登り高いところの窓をピカピカにして見せた。

「この通り、掃除は得意です」

 ルモワおばあさんを安心焦るため、ここはえっへんと実力をアピールする。

「いえ、客人であるエトワさんにそういうことをさせるわけにはいきません。掃除ぐらい自分でやりますよ」

 エリデさんはそういって首を振るが、私も掃除道具を持ったままいえいえと否定を返す。

「こちらこそ、お世話になっている身なのですから、困っているとき助けにならないわけにはいきません。滞在している間の掃除は、私に任せてください」

 エリデさんの灰色の目から放たれる視線と、私の細い目から放たれるそれがバチバチとぶつかり合う。
 やっと到来したお世話になっているお礼のチャンス、譲るつもりはなかった。

 エリデさんも譲るつもりはなく、村の人たちは私たちの対立に口を挟むこともできず固唾を見守っていた。
 こうなると、必然的に意見をだせるのは残り一人しかいなかった。

 今は荷車に寝かされている、この屋敷の掃除の最高責任者である。
 自然とみんなの視線がルモワおばあさんに向く。

 おばあさんは苦しい表情をしながら、エリデさんと私を見比べると、苦渋の決断という表情で宣言した。

「奥さま……この屋敷に滞在する間だけでいいので掃除をお願いします……!」
「奥さまではありませんけど承知しました」

 私はさっきまで持っていたはたきを持ってガッツポーズを作った。
 勝った、勝利、臨時掃除係のお仕事ゲット!

 エリデさんも私たちの様子をみて、渋々といった感じに受け入れた。

 そういうわけでルモワおばあさんの心配事も片付き、荷車で運ばれているとき、ちょいちょいっと手招きされて呼ばれた。

「どうしました?」

 なんだろうと近づいていくと、ルモワおばあさんは震える手で、私の背後を指差した。
 その指の先を心眼で追うと、何の変哲もない扉がひとつ。私はこの屋敷は泊まらせてもらえっている部屋と、リビングぐらいしか利用してないので、何の部屋かはわからない。

 ルモワおばあさんは私にだけ聞こえるような小さな声でいう。

「奥さま、あの部屋だけは……あの部屋だけはまだ入ってはいけません……。たとえ奥さまでもです……」
「奥さまじゃないですけどわかりました。でも、なんで――」

 理由を聞こうとしたら、かなり無理してたのか、そこでルモワおばあさんはガクッと気絶する。

「あー、もう無理するから」
「ちょうどいいから運んじまうべ」

 村の人たちはあまり心配する様子もなく緩い雰囲気でルモワおばあさんを運んで行った。
 残された私は、何の変哲もない木の扉を見つめてつぶやいた。

「開かずの間……」

 やなよかーん。

 
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