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スカーレット侯爵家、つまりはリンクスくんのご実家にお泊まりさせてもらっての次の日の朝。
私は誰に起こされることもなく、むっくりとお布団から起き上がった。窓を見るとお日様は、もう随分と高い位置にある。
お昼というにはまだ早いけど、早朝というには遅すぎる、そんな時間みたいだ。
「学校があったら、完全に遅刻だねえ」
ソフィアちゃんのご実家にお世話になってるときは、こんな時間に起きることは不可能だった。健康的な人たちが、毎朝私を起こしにくるからだ。
(ソフィアちゃんのお家を悪くいうわけではないけれど、私はこっちの方が性に合ってるのかも)
お休みの間ぐらい、ずっと朝寝坊してたいものである。
朝寝坊が許されたことに、軽く感動みたいなものを覚えつつ、私は着替えてから部屋をでた。
特に何も考えずにボーッと廊下を歩いてると、リンクスくんのお父さん、コーラルさんと行き合う。
「おはようございます、エトワさま。お疲れかと思ったので、起こさないようにしておきましたが、大丈夫でしたか?」
「はい、おかげさまで、ゆっくり寝ることができました」
「それはよかった。ダイニングに朝食を用意してあります。よかったら、案内しますよ」
「すみません、お願いします」
ダイニングまでコーラルさんに案内してもらう。
その間に話したけど、話題はほぼほぼリンクスくんのことだった。
「そうですか、リンクスは楽しく暮らせてるみたいですね」
公爵家の別邸でのリンクスくんの様子をご報告すると、コーラルさんはそう微笑んだ。
「そうですね、でも……」
「どうしました?」
私は前々から悩んでることを打ち明けた。
「護衛の仕事には、そこまで熱心にやらなくてもって思うほど真面目なのに、公爵家の後継者を目指すのにはあんまり熱心に見えないんですよね。この前の生徒会選挙も出馬しようとすらしなかったですし」
そこまで言って、私は失敗を犯したことに気づいた。
優しそうな雰囲気に、ついつい気を許して話してしまったけど、そもそもスカーレット侯爵家はリンクスくんを公爵家の後継者候補として派遣したお家なのだ。真面目に後継者候補になろうとしてないと聞いたら、ご実家でのリンクスくんの評価が下がってしまうかもしれない。
「あのあのあのお、さっきのは言葉の綾というか! リンクスくんなりに自分の考えで真面目に一生懸命に取り組んでるんだと思います!」
私は頭を抱え、必死に誤魔化そうとする。
でも、そんな私の姿に、コーラルさんはくすくすと笑って言った。
「リンクスのことを考えて庇ってくださってるんですね。どうやら本当に家族のように思ってくださってるようだ。でも、安心してください。あの子が後継者を目指すつもりがないということは、もう僕達夫婦には伝えられていますよ、本人の口からね」
「えええっ」
「そもそも選挙に出てない話は僕達にも伝わっていますからね。さすがにそのフォローで誤魔化すのは無理だったと思いますよ。聞いてて面白かったので、いいんですけど」
「いえいえいえっ! もうそういう話ではなくてっ!」
楽しそうに私のフォローの無様っぷり笑うコーラルさんに、私はそれどころではないと汗をかきながら伝えた。
そう、それどころではない。
え、すでに後継者候補を目指すつもりがない。しかも、ご両親にはすでに伝えてる。
それをお父さんは楽しそうに笑いながら話している。
もう、どこがそれどころで、どこがないのか、どこらへんがムイムイなのか、わからない。
今も自分で何を考えてるのかわからない
「なななな、なんでっ」
「他にやりたいことがあるみたいですよ」
「やりたいことって……」
おかしいとは思っていた。
護衛役の子たちにとって、後継者候補になりたいという思いはそれぞれだった。ソフィアちゃんにとっては自分を高めるための目標、クリュートくんは自分が優秀だと周りに示すため、ミントくんは「男なら高みを目指す……そこに理由はない……」とか最近は言い出してる、スリゼルくんは、わからないけど切羽詰まった思いを感じる。
でも、リンクスくんだけはそういった欲求を感じられたことすらない。
護衛の仕事にはやたらと熱心だけど、それを最初は後継者を目指すためだと思っていたけど、それは違うと……最近はなんとなくわかっていた。
親しい間柄だと思ってた。少なくとも、エンシェントゴーレムの事件のあとからは……
でも今更になって、肝心なことを何も知らなかったことに気づく。
「なんでしょうか……」
私は思わず、コーラルさんに頼ってしまった。
知らないリンクスくんのことを知りたい……
でも、コーラルさんは澄んだ瞳をしながら、優しい声音で私に告げた。
「それをあなたが知るのは、リンクスの口からにすべきですよ」
「そう……ですね」
私はコーラルさんのことを本当にいい人だなって思った。
リンクスくんが私に話してくれていないことを、今お父さんの口から聞くのは、きっとダメなことだったと思うから。
「いつか、話してくれますかね?」
「ええ、きっと、そのときがくると思いますよ」
リンクスくんがなぜ、後継者候補を目指すのをやめてしまったのかはわからない。
でも、いつかその理由を教えてもらえたらいいなって思った。
私は誰に起こされることもなく、むっくりとお布団から起き上がった。窓を見るとお日様は、もう随分と高い位置にある。
お昼というにはまだ早いけど、早朝というには遅すぎる、そんな時間みたいだ。
「学校があったら、完全に遅刻だねえ」
ソフィアちゃんのご実家にお世話になってるときは、こんな時間に起きることは不可能だった。健康的な人たちが、毎朝私を起こしにくるからだ。
(ソフィアちゃんのお家を悪くいうわけではないけれど、私はこっちの方が性に合ってるのかも)
お休みの間ぐらい、ずっと朝寝坊してたいものである。
朝寝坊が許されたことに、軽く感動みたいなものを覚えつつ、私は着替えてから部屋をでた。
特に何も考えずにボーッと廊下を歩いてると、リンクスくんのお父さん、コーラルさんと行き合う。
「おはようございます、エトワさま。お疲れかと思ったので、起こさないようにしておきましたが、大丈夫でしたか?」
「はい、おかげさまで、ゆっくり寝ることができました」
「それはよかった。ダイニングに朝食を用意してあります。よかったら、案内しますよ」
「すみません、お願いします」
ダイニングまでコーラルさんに案内してもらう。
その間に話したけど、話題はほぼほぼリンクスくんのことだった。
「そうですか、リンクスは楽しく暮らせてるみたいですね」
公爵家の別邸でのリンクスくんの様子をご報告すると、コーラルさんはそう微笑んだ。
「そうですね、でも……」
「どうしました?」
私は前々から悩んでることを打ち明けた。
「護衛の仕事には、そこまで熱心にやらなくてもって思うほど真面目なのに、公爵家の後継者を目指すのにはあんまり熱心に見えないんですよね。この前の生徒会選挙も出馬しようとすらしなかったですし」
そこまで言って、私は失敗を犯したことに気づいた。
優しそうな雰囲気に、ついつい気を許して話してしまったけど、そもそもスカーレット侯爵家はリンクスくんを公爵家の後継者候補として派遣したお家なのだ。真面目に後継者候補になろうとしてないと聞いたら、ご実家でのリンクスくんの評価が下がってしまうかもしれない。
「あのあのあのお、さっきのは言葉の綾というか! リンクスくんなりに自分の考えで真面目に一生懸命に取り組んでるんだと思います!」
私は頭を抱え、必死に誤魔化そうとする。
でも、そんな私の姿に、コーラルさんはくすくすと笑って言った。
「リンクスのことを考えて庇ってくださってるんですね。どうやら本当に家族のように思ってくださってるようだ。でも、安心してください。あの子が後継者を目指すつもりがないということは、もう僕達夫婦には伝えられていますよ、本人の口からね」
「えええっ」
「そもそも選挙に出てない話は僕達にも伝わっていますからね。さすがにそのフォローで誤魔化すのは無理だったと思いますよ。聞いてて面白かったので、いいんですけど」
「いえいえいえっ! もうそういう話ではなくてっ!」
楽しそうに私のフォローの無様っぷり笑うコーラルさんに、私はそれどころではないと汗をかきながら伝えた。
そう、それどころではない。
え、すでに後継者候補を目指すつもりがない。しかも、ご両親にはすでに伝えてる。
それをお父さんは楽しそうに笑いながら話している。
もう、どこがそれどころで、どこがないのか、どこらへんがムイムイなのか、わからない。
今も自分で何を考えてるのかわからない
「なななな、なんでっ」
「他にやりたいことがあるみたいですよ」
「やりたいことって……」
おかしいとは思っていた。
護衛役の子たちにとって、後継者候補になりたいという思いはそれぞれだった。ソフィアちゃんにとっては自分を高めるための目標、クリュートくんは自分が優秀だと周りに示すため、ミントくんは「男なら高みを目指す……そこに理由はない……」とか最近は言い出してる、スリゼルくんは、わからないけど切羽詰まった思いを感じる。
でも、リンクスくんだけはそういった欲求を感じられたことすらない。
護衛の仕事にはやたらと熱心だけど、それを最初は後継者を目指すためだと思っていたけど、それは違うと……最近はなんとなくわかっていた。
親しい間柄だと思ってた。少なくとも、エンシェントゴーレムの事件のあとからは……
でも今更になって、肝心なことを何も知らなかったことに気づく。
「なんでしょうか……」
私は思わず、コーラルさんに頼ってしまった。
知らないリンクスくんのことを知りたい……
でも、コーラルさんは澄んだ瞳をしながら、優しい声音で私に告げた。
「それをあなたが知るのは、リンクスの口からにすべきですよ」
「そう……ですね」
私はコーラルさんのことを本当にいい人だなって思った。
リンクスくんが私に話してくれていないことを、今お父さんの口から聞くのは、きっとダメなことだったと思うから。
「いつか、話してくれますかね?」
「ええ、きっと、そのときがくると思いますよ」
リンクスくんがなぜ、後継者候補を目指すのをやめてしまったのかはわからない。
でも、いつかその理由を教えてもらえたらいいなって思った。
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