公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!

小択出新都

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264.

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 倉庫を飛び出した私は、まずは天輝さんの存在を感じるところを目指す。

「天輝さーーーん!」

 魔獣たちはハリネズミくんの捜索に尽力しているのか、通り道にはいなかった。
 私の足は軽快にその場所へとたどり着く。

「天輝さん! 大丈夫だった⁉︎」
『エトワ! ようやく脱出したのか!』

 天輝さんがいたのは鳥の巣の中にいた。
 大きな木の上にある巣で、マーブル模様の卵が10個ぐらいあった。天輝さんはその下じきになっている。

「…………」
『おい、エトワ、どうした。はやく私を手に取れ。力を解放してこの事態を収拾するぞ』

 ……今、天輝さんを取り出したら、卵が溢れてしまいそうだ。
 卵を温めている母鳥が、「ピチュン」と鳴いて私をみた。

 つぶらな瞳が、うるうると私を見つめる。

「……天輝さん」
『どうした、エトワ』
「さよならーーー! さよならーーー!」

 私は踵を返すと、天輝さんは置いて屋敷の方に走り出した。

『おい、エトワ! エトワァーーーー! エトワァアアアアア! アホォーーー! アホォーーーーーー!」

 アホウドリになってしまった天輝さんの声だけがおっかけてくる。

「天輝さんはそこで大人しくしててねぇ~~~!」

 私はそれだけを大声で念押ししておくと、天輝さんなしでハリネズミくんを助けに向かうことにした。
 天輝さん、小鳥が生まれて、お母さんからたくさん餌をもらって大きくなって、兄弟仲良く飛ぶ訓練をして、みんなで飛べるようになって巣だっていったら。
 必ず助けてあげるからね……!


***


『エトワ……、私のことは気にせず先に行ってくれ……お前が世界を救えると信じている……』

 そんなことを言ってた気がする天輝さんの無念と意志を胸に、私は屋敷へと辿り着いた。
 バタンっと勢いよく扉を開け……

 てしまったせいで、魔獣たちの注目があつまる。

「ガウガウ!」

 魔獣たちは私に向かってくる。
 害意は感じないけど、拘束しようとする意思は感じる。

「モサモフさん!」

 あれ以来、モサモフさんの声は聞こえない。
 そもそもあれは果たしてモサモフさんの声だったのか、それもわからない。

 ただ、モサモフさんは私の意志を汲み取るように、体から移動し剣の形状を作る。
 まるいっこいのでおだんごみたいになってるけど。

「てやーーー!」

 中型の魔獣なので、倉庫にいた子たちよりは丈夫とはいえ、怪我はさせたくない。
 モサモフさんの毛は適度な打撃を与えて、魔獣たちを無力化してくれる。

 道中の魔獣たちを倒し、私はハリネズミくんが隠れている部屋へと急いだ。

「ウォンウォン!」

 部屋の前にいた犬型の魔獣もモサモフさんのおかげで難なく倒す。
 そして扉に手をかけると、カチャッとあっさり開いた。

「ハリネズミくん、大丈夫だったかい?」

 姿を現した私に、ハリネズミくんはビビり散らかした。
 毛を逆立てて、その場を駆け回る。

 そりゃそうだ。今の私、モサモフさんに包まれて、毛玉のモンスターだもんね……
 何かをいう前に、頭の部分のモサモフさんが動いて、私の顔をハリネズミくんに見せてくれた。

「私! 私だよ!」

 顔を見せるとわかってくれたようだ。
 ハリネズミくんは心臓を撫で下ろす仕草でホッとする。

「とりあえず、天輝さんは助けられなかったけど、私は一緒に動けるよ! 一緒にルバーブさんのところに行こう!」

 私がそういうと、ハリネズミくんの後ろにいたミミズクさんが「ホー」っと首を傾げた。
 まるで事情を話せと言ってるようだった。

「かくかくしかじか、うまうまねこねこ、ねうしとらたつみ!」

 私は理解はしてもらえるかわからないけど、一通りの事情を説明した。
 ミントくんが下剋上を企てていること。私たちはそれと止めようとして、魔獣たちと敵対し追いかけられていること。天輝さんが今なお小鳥の巣に囚われてしまっていること。ハリネズミくんにも、今一度、現状を知ってもらいたかったのもある。

 私の言葉を聞くと、ミミズクさんは「ホーホー」と頷き、どこかへ飛び去っていった。
 危ないと感じて避難してくれたのかもしれない。それが一番だと思う。

 かなりのおじいちゃんみたいだから巻き込むわけにはいかない。
 そういえば、ハリネズミくんも無理してついてきてもらう必要はないんだよね。もう、私が動けるんだし。

「あ、ハリネズミくんももし怖くて、行きたくないなら隠れてても大丈夫だよ。巻き込んじゃってごめんね」

 私の言葉に、ハリネズミくんはふるふると首を振った。
 それから、決心を込めた表情で手紙を握りしめる。

 言葉はわからないけど、それだけで通じ合えた。

「うん、ありがとう。一緒にミントくんを止めよう!」

 一緒に頷いて部屋を出ようとしたとき、遠い方角からこちらに向かって複数の魔獣たちが走ってくる足音がした。
 ハリネズミくんがこの部屋に隠れていたとき、仲間を呼びにいったメンバーが帰ってきたのだ。

 どうしよう、という顔をするハリネズミくんに、私は扉の影に隠れていてと指示をだした。

 そして魔獣たちの気配が部屋に近づき、扉の付近で止まった瞬間——
 私は全力で飛び出し、モサモフさんの剣で斬りつけた。

 不意をつける分、敵の数などは把握できてない。でも、どうせ全員倒さないと進めないのだ。やれるだけやるしかない。
 1匹、2匹、3匹、増援の魔獣を不意打ちで切り伏せる。

 残ったのは3匹、右手近にいた1匹を距離を詰め、袈裟斬りで倒す。
 もう1匹が左側から飛びかかってきたので、クルッと回転し、剣を地面に滑らせ、切り上げの一撃でモサっと無力化する。

 残りは1匹。
 私は、最後の1匹が小さいことに気づいた。

 ハリネズミくんと同じサイズだけど、この屋敷にいたのは中型の魔獣たちだけなので、やたらと小さく見える。
 その姿には見覚えがあった。倉庫で小型魔獣たちの指揮を取り、天輝さんを鳥の巣に封印してしまった、あのキツネの魔獣だ。

 そう考えると、体は小さいけどかなりの曲者である。
 私は油断なくモサモフさんの剣を構えながら言った。

「君もこれ以上止めるなら、倒させてもらうよ」

 キツネさんは、私の言葉にくるりと宙返りをして、距離を取った。
 見逃してくれるわけではなさそうだ。むしろ、戦闘態勢に入った気がする。

 キツネさんは私から距離を取ると、いきなり

「ケェエエエエエエエエエン!」

 けたたましい叫び声をあげた。

「仲間を呼ぶ気⁉︎」

 私は気絶させようと距離を詰めた。
 しかし、その判断は間違えだった。

 叫び声をあげたその一瞬、煙のようなものがキツネさんの体を包み込み、そのまま煙が大きく廊下全体に広がっていく。
 そして煙が晴れたとき、そこに現れたのは廊下を埋め尽くさんばかりの大きさの魔獣。
 レトラスに負けない体のサイズで、七本の立派な尻尾をもつ、巨大なキツネの魔獣だった。
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