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166.
私は大きな成果を携えて、ニンフィーユ家の屋敷から帰ってくることができた。
他にもアイディアはちょこちょこ考えていたけど、やっぱり大きな成果が期待できるのは今回のパイシェン先輩のうちの名前を借りる作戦しかない。
新商品に足りない信用と宣伝を一気に得られてしまう凄い作戦だ。
「ただいま~」
玄関を開けると、リンクスくんがこちらに向かって歩いてきた。
「どこにいってたんだよ」
「ちょっとニンフィーユ家のお屋敷まで」
そういったらびっくりした顔をされた。
「何でそんなとこにいったんだよ! 大丈夫だったか? 嫌がらせとかなかったか?」
「ただ料理長さんのところにアルミホイルの宣伝にいかせてもらっただけだよ。パイシェン先輩もいたし大丈夫だよ。会った人はみんな紳士的に対応してくれたよ?」
「本当かぁ?」
疑うような視線。
「本当だよ~」
私は心配しすぎのリンクスくんを、手をひらひらさせて宥める。
もう夕飯の時間だったので、一緒に食事の部屋まで移動する。
みんな揃って晩御飯をたべているとソフィアちゃんにも、ニンフィーユ家での話を聞かれた。
予想以上にうまくいったことを話すと、料理を運んでいたうちの料理長さんから尋ねられる。
「エトワさま、うちは宣伝に使っていただけないのですか? アルミホイルも使わせていただいてますが」
「あっ――」
そういえばうちもニンフィーユ家に負けないというか、勝ってる大貴族だった。
身近になりすぎて宣伝に使うって発想が浮かんでなかった。
「でも、名前を使うならクロスウェルさまの許可が必要だよね」
ニンフィーユ家のときは本家の人に会うのは避けて、料理長さんを説得で来たら、パイシェン先輩がそれとなく許可を取ってくれるって作戦だったけど、お父さま相手だとさすがにちゃんと許可を取らないとばれる。
「エトワさまがお手紙を書けばすぐに取れると思いますよ」
ええ、そんな簡単に上手くいくわけ――。
――他に方法もないし試しに送ったら取れました。
***
エトワ商会のことは順調に進みつつ、はてさて問題のポムチョム小学校。
問題児のエルフィスちゃんだけど、まあさすがに数日も経って落ち着いていた。というか、本人が落ち着いたというより、周りが暴言に慣れた……。
でも口が悪いのは相変わらずで、周りもあんまり近寄りたがらない。
なので孤立していた。エルフィスちゃん本人もそれで構わないようで、つんつんした態度のまま学校にはちゃんと毎日通ってるようだ。
リリーシィちゃんが私がいない間の様子も教えてくれた。
そんなポムチョム小学校だけど、今日は剣の授業だった。
3年生になってちょっとずつ冒険者らしい授業も増えてきている。1、2年生のころは自由に好きな武器でちゃんばらしていた子供たちだけど、この授業は職(クラス)の既望に関わらず全員参加だ。
モンスターと戦うんだから、剣は使えるようになっていたほうがいいよね。
ガイダーだって自分の身を守るぐらいの能力は必要だし。
学校にいる間ずっと、むすっとした表情のエルフィスちゃんだけど、剣の授業と聞いて少し笑顔を見せる。それから運動場に集合したクラスメイト全員に向けて、練習用の木の棒を突きつけて言った。
「この中で一番強いのは誰? 私が相手してあげる!」
うーん、一番強いというと、アレックスくんだろうか。ポーラくんもかなり強い。
2人とも剣士志望の男の子だ。その実力は剣術学校の生徒と戦っても負けないと言われている。私は剣術学校って見たこと無いからよくわからないんだけどね。
ポムチョム小学校の子供たちは3年生になってちょっと大人になったのか、すでにエルフィスちゃんスルーが習慣化してしまったのか、誰も答えずに淡々と授業の準備をしていく。
無視されかけたエルフィスちゃんは慌てて、一対一に切り替えて剣の得意そうな子に聞き込みをはじめる。
「誰が一番強いのよ! 教えなさいよ!」
「え? それならエトワちゃんかな?」
へ?
なぜか私の名前を出され呆然となる。
エルフィスちゃんも不審そうに私をちらっと見て、別の相手に聞き始めた。
「あ、あいつ……? ちょっとあんたは誰が強いと思うのよ!」
今度聞いたのはアレックスくんだった。アレックスくんの性格的にはポーラくんって答えるかな。さすがに自分が一番に強いとはいえないだろうし。
「エトワだろ」
アレックスくん!?
なんで私の名前をあげるの!?
「あ、あんたは!?」
今度聞いたのはポーラくん。
「エトワちゃんだと思うけど」
だからなんでっ!?
「あんたは!」
「エトワちゃんかな?」
「あんた!」
「エトワちゃん」
な、なんでみんな私の名前をあげるんだ!
もしかして面倒を私に押し付けようとしてないかい……?
いやいやいやいやポムチョム小学校の子たちはそんな悪い子じゃない!
商業学校からもはみだし者になって飛ばされてきた私を、笑顔で受け入れてくれたみんないい子たちばかりだ。
この2年と半年を一緒に過ごしてきた大切な私のクラスメイトだ。
じゃあ、なぜ。なぜ……!
「本当にあいつが一番強いの……?」
エルフィスちゃんが私を疑わしげな瞳で見つめる。
それも当然。ガイダー志望の私は、前衛系志望の子たちを邪魔しないように、ちゃんとそういう系の授業では手を抜いていた。
「だってエトワちゃん誰にもてかげんしてるし」
「いつもきらくな顔で私たちの攻撃受け止めちゃうし」
「たまにすごーい動きしてるし」
ばれてたぁ!?
おかしい……ちゃんと加減してたはずなのに……。
『ふむ、力を隠してるつもりだったのか……』
ええ、天輝さんは気づいていたの!?
『ああ、お前がたまに異様な動きで子供たちの攻撃を避けてるのは見ていた。どうやら神からの才能の賦与がお前の感覚そのものを狂わせてるようだな。大きな鉈を振っているように、小さい加減は効きにくいのだろう』
気づいてたなら言ってよ!
「俺たちでもエトワには現状は勝てる気しない」
「さすがにガイダー志望にいつまでも負けてはられないから、そのうち勝つつもりだけど」
アレックスくんとポーラくんが止めを刺すように言った。
なんかみんな私が思うより大人になってたんだなって思った。
ずっと一緒に過ごしてたから気づかなかったけど……。なんか反省……。
「本当に……?」
エルフィスちゃんはまだ疑わしげに私を見ている。
でも、たくさんの子たちからそういわれるとさすがに信じざるを得ないようで。
「じゃあ、あんたと勝負よ! 誰がこのクラスで一番強いか教えてあげる」
まあ、そうなりますよね……。
他にもアイディアはちょこちょこ考えていたけど、やっぱり大きな成果が期待できるのは今回のパイシェン先輩のうちの名前を借りる作戦しかない。
新商品に足りない信用と宣伝を一気に得られてしまう凄い作戦だ。
「ただいま~」
玄関を開けると、リンクスくんがこちらに向かって歩いてきた。
「どこにいってたんだよ」
「ちょっとニンフィーユ家のお屋敷まで」
そういったらびっくりした顔をされた。
「何でそんなとこにいったんだよ! 大丈夫だったか? 嫌がらせとかなかったか?」
「ただ料理長さんのところにアルミホイルの宣伝にいかせてもらっただけだよ。パイシェン先輩もいたし大丈夫だよ。会った人はみんな紳士的に対応してくれたよ?」
「本当かぁ?」
疑うような視線。
「本当だよ~」
私は心配しすぎのリンクスくんを、手をひらひらさせて宥める。
もう夕飯の時間だったので、一緒に食事の部屋まで移動する。
みんな揃って晩御飯をたべているとソフィアちゃんにも、ニンフィーユ家での話を聞かれた。
予想以上にうまくいったことを話すと、料理を運んでいたうちの料理長さんから尋ねられる。
「エトワさま、うちは宣伝に使っていただけないのですか? アルミホイルも使わせていただいてますが」
「あっ――」
そういえばうちもニンフィーユ家に負けないというか、勝ってる大貴族だった。
身近になりすぎて宣伝に使うって発想が浮かんでなかった。
「でも、名前を使うならクロスウェルさまの許可が必要だよね」
ニンフィーユ家のときは本家の人に会うのは避けて、料理長さんを説得で来たら、パイシェン先輩がそれとなく許可を取ってくれるって作戦だったけど、お父さま相手だとさすがにちゃんと許可を取らないとばれる。
「エトワさまがお手紙を書けばすぐに取れると思いますよ」
ええ、そんな簡単に上手くいくわけ――。
――他に方法もないし試しに送ったら取れました。
***
エトワ商会のことは順調に進みつつ、はてさて問題のポムチョム小学校。
問題児のエルフィスちゃんだけど、まあさすがに数日も経って落ち着いていた。というか、本人が落ち着いたというより、周りが暴言に慣れた……。
でも口が悪いのは相変わらずで、周りもあんまり近寄りたがらない。
なので孤立していた。エルフィスちゃん本人もそれで構わないようで、つんつんした態度のまま学校にはちゃんと毎日通ってるようだ。
リリーシィちゃんが私がいない間の様子も教えてくれた。
そんなポムチョム小学校だけど、今日は剣の授業だった。
3年生になってちょっとずつ冒険者らしい授業も増えてきている。1、2年生のころは自由に好きな武器でちゃんばらしていた子供たちだけど、この授業は職(クラス)の既望に関わらず全員参加だ。
モンスターと戦うんだから、剣は使えるようになっていたほうがいいよね。
ガイダーだって自分の身を守るぐらいの能力は必要だし。
学校にいる間ずっと、むすっとした表情のエルフィスちゃんだけど、剣の授業と聞いて少し笑顔を見せる。それから運動場に集合したクラスメイト全員に向けて、練習用の木の棒を突きつけて言った。
「この中で一番強いのは誰? 私が相手してあげる!」
うーん、一番強いというと、アレックスくんだろうか。ポーラくんもかなり強い。
2人とも剣士志望の男の子だ。その実力は剣術学校の生徒と戦っても負けないと言われている。私は剣術学校って見たこと無いからよくわからないんだけどね。
ポムチョム小学校の子供たちは3年生になってちょっと大人になったのか、すでにエルフィスちゃんスルーが習慣化してしまったのか、誰も答えずに淡々と授業の準備をしていく。
無視されかけたエルフィスちゃんは慌てて、一対一に切り替えて剣の得意そうな子に聞き込みをはじめる。
「誰が一番強いのよ! 教えなさいよ!」
「え? それならエトワちゃんかな?」
へ?
なぜか私の名前を出され呆然となる。
エルフィスちゃんも不審そうに私をちらっと見て、別の相手に聞き始めた。
「あ、あいつ……? ちょっとあんたは誰が強いと思うのよ!」
今度聞いたのはアレックスくんだった。アレックスくんの性格的にはポーラくんって答えるかな。さすがに自分が一番に強いとはいえないだろうし。
「エトワだろ」
アレックスくん!?
なんで私の名前をあげるの!?
「あ、あんたは!?」
今度聞いたのはポーラくん。
「エトワちゃんだと思うけど」
だからなんでっ!?
「あんたは!」
「エトワちゃんかな?」
「あんた!」
「エトワちゃん」
な、なんでみんな私の名前をあげるんだ!
もしかして面倒を私に押し付けようとしてないかい……?
いやいやいやいやポムチョム小学校の子たちはそんな悪い子じゃない!
商業学校からもはみだし者になって飛ばされてきた私を、笑顔で受け入れてくれたみんないい子たちばかりだ。
この2年と半年を一緒に過ごしてきた大切な私のクラスメイトだ。
じゃあ、なぜ。なぜ……!
「本当にあいつが一番強いの……?」
エルフィスちゃんが私を疑わしげな瞳で見つめる。
それも当然。ガイダー志望の私は、前衛系志望の子たちを邪魔しないように、ちゃんとそういう系の授業では手を抜いていた。
「だってエトワちゃん誰にもてかげんしてるし」
「いつもきらくな顔で私たちの攻撃受け止めちゃうし」
「たまにすごーい動きしてるし」
ばれてたぁ!?
おかしい……ちゃんと加減してたはずなのに……。
『ふむ、力を隠してるつもりだったのか……』
ええ、天輝さんは気づいていたの!?
『ああ、お前がたまに異様な動きで子供たちの攻撃を避けてるのは見ていた。どうやら神からの才能の賦与がお前の感覚そのものを狂わせてるようだな。大きな鉈を振っているように、小さい加減は効きにくいのだろう』
気づいてたなら言ってよ!
「俺たちでもエトワには現状は勝てる気しない」
「さすがにガイダー志望にいつまでも負けてはられないから、そのうち勝つつもりだけど」
アレックスくんとポーラくんが止めを刺すように言った。
なんかみんな私が思うより大人になってたんだなって思った。
ずっと一緒に過ごしてたから気づかなかったけど……。なんか反省……。
「本当に……?」
エルフィスちゃんはまだ疑わしげに私を見ている。
でも、たくさんの子たちからそういわれるとさすがに信じざるを得ないようで。
「じゃあ、あんたと勝負よ! 誰がこのクラスで一番強いか教えてあげる」
まあ、そうなりますよね……。
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