武装学園―乱舞―

グリプス

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      第一章

体育祭①

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 俺は春宮絢香に誘われて体育祭のタッグ戦に出ることになった。
 体育祭まであと一週間となって、特訓をすることにした。 
「ねぇ、冬霧君」
「なんだ?」
「私、武器の使い方がよくわからないんだけど……」
(ああ、まだ教えてなかったか)
「えっと、じゃあとりあえず春宮さんの能力ってなに?」
「能力は……一つもないです」
 彼女は恥ずかしそうにそう答えた。
「えっ?でも自分にあった能力なら習得できるはずだけど……」
 まず能力というのは、どんなものでも習得出来る訳でもない。
 一つは自分にあった能力なら簡単に習得出来る。
 二つ目は訓練などをして能力の標準に到達出来れば習得出来る。
 俺の場合、家が剣道の道場だったので安易に習得出来た。
「春宮さんの武器は魔道書?」
「そうですね」
 なら、使う魔法は遠距離系か回復系か。
「じゃあ春宮さんの使える魔法は?」
「えっと、遠距離の魔法です」
 じゃあ無理に能力を習得させる必要は無いな。
 戦術としては、俺が前衛彼女が後衛といったところか。
「分かった。なら春宮さんは援護を頼むよ」
「分かりました。……あの一つ聞いていいですか?」
 いきなりの質問に少し疑問を抱いたが質問を聞くことにした。
「冬霧君の能力ってなんなんですか?」
 最も知られたくないところを質問してきたな。
 彼女は人の秘密をバラしたりしないだろうから言っておこうか。
「俺の能力は《神速》と《瞬速》の二つだ」
「《神速》って最高ランクの能力ですよね?」
 そう、俺の能力《神速》は使ったら最後相手はいつやられたのかもわからなくなるほどの速さを持つ能力だ。
 でも、この能力は依頼の時にしか使わないようにしている。
 こういう人の目がある時は《瞬速》を使っている。
「冬霧君はすごいですね」
 彼女の言葉には尊敬と悲しみが混ざっていた。
「……すごくなんかないよ」
 この時、空気が重くなった。
「さて、武器の使い方を教えないと」
「お願いします!」
 そして、二人の特訓が始まってから一週間が経った。  
 二人の親睦が少し、ほんの少し縮まった気がしていた。
 そして、体育祭当日。開会式が始まり花火が打ち上げられトーナメント戦が始まった。
「さぁー!今年も始まりました体育祭!今年はタッグ戦という事になりましたが、優勝はどの学年になるか!実況は私放送部の木山がお送りします!」
 相変わらずテンション高いな……。
「……こんなに凄いんだね体育祭って」
「まぁ、体育会系みたいな学校だからな」
 緊張はしてるか。当たり前だな。こんな体育祭初めてなんだから。
「春宮さんは自分の事に集中したらいいから」
「分かった。ありがとう冬霧君」
 こっからが勝負と言ったところか。
 「では第一回戦!冬霧&春宮ペア対木下&亜海ペア!」
 これならまだ楽だな。
「春宮さん。援護はこの試合何もしなくていいよ」
「えっ?どうして?」
「すぐ終わるから、とでも言っておこうか」
 そう言い終わると同時にゴングが鳴り響いた。
「冬霧流双剣術一式〝胡蝶蘭〟」
 すると相手の武器は綺麗に真っ二つになっていた。
 彼が使った技は、二本の剣によって切られていた。
「試合終了!なんと試合開始三秒で決着がつきました!」
 そう、トーナメント戦は相手が意識がなくなるかギブアップ又は武器が使えなくなると試合が終了する。
「お疲れ様、冬霧君」
「ありがとう。悪かったな、試合する事無くして」
「次があるから!」
 彼女は笑みを浮かべながら答えた。
 そして二回戦三回戦、さらに準々決勝を突破し準決勝まで上り詰めた。
「春宮さん、少しお願いがあるんだけど……」
「なんでしょう?」
「次の試合始まったら、君の緋の魔法で相手を包囲してくれないか?」 
 彼女は一瞬固まったように動かなくなったが、答えてくれた。
「分かりました。ですけど、あまり無茶しないでください」
 おそらく心配しているのだろう。目がとても悲しそうだ。
「分かった。じゃあ頼むよ」
「もちろんです!」
 彼女のトーンが少し上がって嬉しそうに答えた。
「準決勝は、冬霧&春宮ペア対鎌桐&湖蜜ペアです!」
 さすがに相手はSランクが一人いるからな。少し本気出したほうがいいな。
「春宮さん、よろしく!」
 彼女は何も言わずコクリと頷いた。
「では準決勝、始め!」
 試合開始のゴングが鳴り響き、彼女は仕掛けを始めてくれた。
「私の緋の魔法〝火焔包囲〟」
 彼女が使った技は一定範囲を火で包囲する技だ。
「よし、能力《瞬速》を発動し行動に移る」
「Cランク如きが、Sランクに勝てるとでも思ってんのか!」
 (いるんだよな、こういう自分が相手より上だから強いって勘違いする奴が)
 少し、呆れながらも試合に集中した。
「冬霧流双剣術二式〝雷峡〟」
「……なんだ?これ?」
 そう言葉を残すと意識を失った。
「おっーと!またもや冬霧選手が試合開始直後に鎌桐選手を倒した!強い、強すぎる!」
 (後一人だな。湖蜜って言ったか?こいつは峰打ちで大丈夫だろう)
 そう考えて、峰打ちを相手に施し試合は終わった。
「試合終了!勝者、冬霧&春宮ペア!」
 試合終了の通告が終わると、観客席から大歓声が送られた。
「ありがとう、春宮さん。助かったよ」
「ううん。私は相手を動けないようにしただけだから」
 そう言いながら、彼女は首を横に振った。
「そんな事ない。春宮さんが動けないようしてくれたから勝てたんだ」
 すると、頬を少し赤くしながらそっぽを向いてしまった。
「つ、次は決勝だね!どうなるのかな?」
 彼女は心配そうな顔をして問いかけてきた。
(おそらく、生徒会長が勝ってくるだろうな。だとしたら決勝の相手は………)
「冬霧君?どうしたの、難しい顔して」
「何でもない。春宮さんは準決勝もさっきと同じ魔法を使ってくれないか?」
「わ、分かった」
 そして決勝の時間になったので会場に向かっている途中、以外な人物が現れた。
「よっ!決勝進出おめでと」
「圭人、何しに来たんだ?お前は新聞部として仕事があると言っていなかったか?」
「部長に少し時間を貰ったんだ。とにかく頑張れよ!」
 彼は満面ない笑顔で言った。
 おそらく何かあるだろうと考えたが聞いたところで応えるはずもないので問う事はしなかった。
「じゃあ行ってくる」
「おう、勝ってこいよ!」
 そしてすれ違う時にハイタッチをして別れた。
「それでは決勝の選手を紹介します!閃光の如く相手を薙ぎ倒してきた冬霧&春宮ペア!」
 観客からの興奮が混じった大歓声が聞こえてくる。
「対するは武装学園生徒会長にして、実力は学園一!銘堂&蓮介ペア!」
 この時の歓声は、女子の歓声の方が多いように聞こえた。
「よろしく頼むよ、冬霧瞬輔君?」
「なんで俺の名前を知ってるんですか?生徒会長さん」
 「知ってるよ。これでも生徒会長だからね」
 生徒会長は女子からの人気が高く、ファンクラブがあると聞いたが、なるほど確かに女子が興奮するのも分かる。
「お手柔らかに頼むよ」
「こちらこそ」
 挨拶が終わり自分の位置に戻り春宮さんに小声で話しかけた。
「ごめん、試合前に言った事取り消すけどいいかな?」
「別にいいけど……。どうしたの?」
「ちょっと本気の生徒会長と戦いたくなってね」
 そう、いつも生徒会長は模擬戦の時や体育祭の時に限ってはいつも余裕を持って戦っていた。
 だから、本気の彼と戦いたくなったのだ。
「隣の副会長の事は任せられる?」
「大丈夫、任せといて!」
 彼女は嬉しそうに答えた。
「では決勝戦、始め!」
 試合開始のゴングが鳴り響いた直後、一気に生徒会長との間を詰めた。
「ふーん、結構やるね」
 そう言いながら生徒会長は余裕の笑みを浮かべていた。
(……少し距離を取るか)
 そして、生徒会長との間を取るためバックステップを使い距離を取った。
 一つ深呼吸をして落ち着いた。
「使いたくなかったが、ここまで来たら使うしかないな。能力《神速》を発動し行動に移る」
 踏み込みをすると、そこには小さなくぼみが出来ていた。
「冬霧流双剣術三式〝乱れ桜〟」
 一気に会長との間を縮め、目に見えない程の速さで攻撃を仕掛けていた。
 攻撃も目に見えない速さで技を繰り出した。
 が、
「……すべて受け止めているんですね」
「君の速さは学園一だろう。だが僕は幾つもの戦闘を行ってきたんだ、これくらいなら止められる」
 やはり学園は余裕の笑みを浮かべながら攻撃を受け止めている。
 会長の武器は一本の洋風の剣だ。
 それでも止められている。
「会長、いいんですか?こんなに攻撃を受けていても」
「どういう意味だい?」
「乱れ桜は、乱撃を繰り出す技です。それをずっと受けていたら……」
 会長は、その言葉の意味に気付き間を取ったが既に遅かった。
「おーっと!会長の武器が粉々になってしまったー!会長はここで退場になった!」
 観客は驚き、少しの間静かになったが大歓声が送られた。
「さてと、春宮さんのとこに行くか」
                       
 (冬霧君、いやシュンちゃんに頼まれたから頑張らないと!)
 副会長の武器は弓矢なので、遠距離対決という事になる。
 それでも、やはり副会長は強かった。実績が違い過ぎたのか一方的に押されていた。
「どうしましたか、あなたの力はこんなものですか?」
 副会長は憎たらしい口調で彼女を挑発していた。
「私の氷の魔法〝氷華凍結〟」
 魔法を使った途端、副会長の足が凍りつき動けなくなったのだ。
「さすがにこれは予想外です。でも、足を凍らせても手が動かせるので意味はないと思いますがね!」
 確かにその通りだ。だが、足が凍りついたことによって回避はまず不可能だ。
 それでも矢を打ち続ける。
 彼女は飛んでくる矢を避け続けていながら考えたが、いい案が思い浮かばなかった。
 そして、先程飛んできた矢彼女の背中に軌道を変えた。
「……しまった!」
 もう駄目だと思い目を瞑ったが体に矢は一本も当たっていなかった。
 疑問に思った彼女は目を開けるとそこには冬霧が彼女を抱えながら立っていた。
「……シュ、シュンちゃん?」
「大丈夫か?悪かったな、副会長を任せっきりにして。でも、もう大丈夫だ。俺もいる」
 さっき戦っていた冬霧の場所を見ると、そこには会長の姿は無かった。
「もしかして、勝ったの?」
「いや、勝ったというか武器を壊したっというか……」
 武器を壊したという事は、実力では勝てなかったが知力で勝ったとも言える。
「そんな事より、一気に片付けるぞ!」
「うん!」
 そして、彼女が援護をしながら冬霧が副会長に攻撃を仕掛けていた。
「これで決める!冬霧流双剣術二式〝雷峡〟」
「……クソっ!負けたか」  
 副会長は意識を失ったのでそこで試合終了のゴングが鳴った。
「試合終了!勝者は冬霧&春宮ペア!そして優勝ーーー!」
 パンッパンッ!と花火が打上げられ一日目の体育祭が終わった。
 試合も終わったので会場から出る途中の廊下で彼女に話しかけた。
「なぁ、春宮さん……。いや絢香、ごめん!」
「ど、どうしたの冬霧君?」
 おそらく、彼女は冬霧のもう一人の幼馴染みだ。
「絢香、試合中にシュンちゃんって呼んだろ?その呼び方をするのは、俺の母親か関口絢香しかいないんだよ」
「そっか、やっと気付いてくれたか」
 彼女は嬉しそうに笑ったが、途中怒り口調になった。
「なんで、早く気付かなかったのかな?」
 顔は笑っているが、目が笑っていない。こういう顔をしている時は本気で怒っている時だ。
「い、いや苗字変わってたし口調も変わってたから……」
「ふーん、それだけ?」
「もう一つは、綺麗になってたから……」
 冬霧は頬をポリポリと掻きながら赤くして答えた。
「ばっ、ばか!何言ってんのよ……」
 そして彼女も顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「まぁ、今回は許してあげる。次はないからそのつもりで!」
「はい、肝に命じておきます……」
 長かったトーナメント戦が今、終わった。
 残りは二日目のクラス団体戦のみとなった。
  
                                                                              続く
 
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