ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち

文字の大きさ
17 / 26

17

しおりを挟む
「おーい!ステラー!」

 ブランシュ家についた俺たちは、庭のテラスに座る人影に声をかけた。

「アレン君!それにミアさんも!いらっしゃい!」

「お邪魔致します。ステラ様」

「フェリシアが、ステラが呼んでるって言うから来たんだけど、俺に何か用?」

「…もうっ!もう少しアレン君はお話を楽しめないかなぁ。すぐに本題に入ろうとするとこ、あんまりよくないよ!」

 う”…。
 ぷくーっと膨れた顔をしたステラを見て、ついさっきも同じ顔の女の子に同じような事を言われたのを思い出した。髪型や雰囲気が違うから見分けがつくけど、黙ってたらフェリシアも見分けがつかないくらいそっくりなんだよなぁ。
 後ろでミアが小さく笑っているのを見て、なんか恥ずかしくなってきた。あまりコミュニケーションをとる、という事が得意じゃないんだ。前世から話す人なんていなかったし、誰も俺のつまらない話なんて興味ないだろう、と思うと用件だけ話して終わりにした方がお互いのためだと思っていたから…こんな風にもっとゆっくり話してほしい、なんて言われるのは新鮮だ。

「あぁ~。…その、ごめん。フェリシアに言われてきたんだ。ステラが呼んでるって。もし今時間があったら、って、天気もいいしさ。少し一緒に話せないかな。」

「うん!いいよ!今2人のお茶を用意するから、座って待っててくれる?」

 さっきとは違い、笑顔のステラはすぐ後ろにある椅子をチラッと目配せすると、読んでいた本をテーブルに置いて家の中に速足で行った。

「アレン様。女性というのはもう少し…」

「わかった、わかったよ!俺が悪かった。もう少し会話を楽しむように心がけるから!」

 ミアが後ろから小さな声で言いかけたが、内容は聞かずとも分かる。俺に足りない社交辞令や会話を楽しむ貴族としてのマナーがない、という事だ。
 俺は椅子に座ると、目の前のテーブルの上に広げられたノートや本を見た。魔導書のようなものと、魔術関連の書き込みだろう。かなり高度なもののようで、今の俺には理解ができない。前世で見た量販型の簡易魔法とは全く別物のようだ。
 ステラは俺と同時期に学校へ行かなくなると、魔法の勉強を始めた。力がなくても、誰かを守れるようになりたい。という彼女は父、ルシアンの能力を色濃く受け継いだようで、魔導師としての才能を開花させていた。詳しい話は専門外の俺にはわからないが、12歳では異例の実力で、すでに実践レベルで強くなっているらしい。
 まぁ、当の本人にその自覚がないせいか、まだ実践にも出ていないし、成果もあげていないのだが…。この魔導書やノートにある書き込みをみれば実力の高さは俺でもわかる。

「おまたせ~。お菓子もあるんだよ。ゆっくりしていってね!」

「ありがとうございます。ステラ様」

「ありがとうステラ。この魔導書はすごいね…。何が書いてあるかさっぱりわからないや」

「お父さんに教えてもらいながらたくさん勉強したからね。例えばほら、こんな事とかもできるんだよ?」

 ステラは喋りながら椅子に座り、お皿に並んでいるお菓子を見ると、人差し指をたててお菓子のクッキーめがけてヒュッと指を降ろす。
 次の瞬間、クッキーが急に半分にパキっと音を立てて割れた。

「どう?風魔法なんだけど、空気の刃で半分に割ったの。魔力の調整や小さい的に当てるの大変なんだからっ!」

 自慢げに話すステラをよそに、俺は割れたクッキーを手に持つと、ミアに視線を送る。ミアは静かに一度だけ首を縦に動かした。
 切り裂き魔の犯行と似ている。
 でも、この無邪気なステラがそんなことをするのか?ただ、手口がすごい似ている。繊細な技術で誰にでもできるものでは無いということを考えると、万が一にも…という言葉が脳裏をかすめてしまう。標的をかなり離れたところから狙っているのかもしれないし、最悪フェリシアはそれを知っていてステラをかばっているのかもしれない。ここに連れてきたのは俺に何かを気づかせるためなのか?
 なんで俺はここに今日呼ばれたんだ。なんでわざわざこんな切り裂き魔と同じような手口の風魔法を俺に見せた?

「どうしたの?そんなに珍しい?風魔法?」

 クッキーを見ながら考え事をしていた俺にステラが若干心配そうに話しかけてきた。そりゃそうだよな。魔法を披露しただけなのに、きっと喜ぶとか、驚くと思っていただろうに俺たちが予想外の反応をしたからだ。

「い、いや。器用なもんだなって思って。俺ならテーブルごと斬りそうだ!」

 俺は自分の中にある疑心を隠すように、わざと大げさに笑ってみせた。無邪気なステラが、人を傷つけることなんてするはずないし、フェリシアがそれを隠そうとするわけもない。俺は自分の中にある疑心に目を背けた。

「あはは!アレン君には確かに無理そう!テーブルごとズバッと斬っちゃってミアさんに怒られてそう!」

「ステラ様のおっしゃる通りです。アレン様は加減が出来ませんのでこのような繊細な事は出来ないでしょう。…まぁ、魔法が使えるようになれば、の話ですが」

「え?アレン君魔法使えないの?」

 ミアが一瞬ハッとした顔を見せたが、俺の方をチラッと見るなり何事もなかったかのように目を閉じた。

「ミア!その事は内緒にって言ったのに!…はぁ。そうだよ。魔法についてはミアからも教えてもらってはいるんだけど、まだ使えない。才能がないのかもしれないね」

 俺はミアに抗議するが、それよりもステラが驚いたように俺の方へ視線を送ってきた方に気がいってしまったのでミアを責めるのは一旦やめた。
 ステラが驚くのも無理はない。俺もなにかしらの魔法は多分使えるはずなんだ。ルシアンに前診てもらったとき、魔力は感じるから何かしらの魔法が使えるようになると思う。という話を聞いてからミアに教えてもらったり鍛錬と言うものはしているのだが…火も水も風も何の属性魔法も芽が出ない。
 あまり意識していなかったけど、少しガッカリしたようにステラには見えてしまったのかもしれない。彼女は気を使うように声をかけてくれた。

「その、大丈夫だよ!わたしもこんなたくさん勉強してやっと最近魔法が使えるようになってきたんだよ?最初は失敗ばかりだったし、やっとコツを掴んだ感じがするの!」

「わかるわかる!こんなに一生懸命ノートに書き込まれているんだ。偉大な魔術士様になるんだろうなって思うよ」

 全く悪気は無かったんだけど、やり場のないモヤモヤが心にあるせいで、少し言い方が悪くなってしまった。場に重たい空気が流れる。ステラも困ったような顔をしてしまった。いや、俺がさせてしまった。前世では憧れの女の子だったのに、最近はステラやフェリシアと話すことが当たり前になってきたから最近は有難みというのを忘れているのかもしれない。悪気は本当になかったんだけど、どうにかこの空気を改善しなくては…。
 俺たちふたりの長い沈黙を見かねたミアが、軽くため息をつくとわざとらしく明るい口調で俺たちに話題を振ってくれた。
「アレン様、ミア様は実際に4大元素マスターの称号に今最も近い存在になりつつあるんですよ。特に、ステラ様のその見た目からは想像できませんが、使う魔術は攻撃魔法特化型で、本気を出せば王都の騎士団、一個小隊程度ならステラ様お一人でも撃破できる程の実力があるかと思われます」

「ま、マジかよ!!」

 正直驚いた。こんな可愛い見た目して、補助魔法や回復系よりも攻撃魔法が得意だなんて…しかも王都の1個小隊をたった1人で撃破とか、そんな恐ろしい事できるのかよ。

「はい。このミアも、ステラ様と腕試しとなると、もう太刀打ちできません」

「そんな、私なんてまだまだですよ!もっと強くなって、もっともっとたくさん魔法を覚えていかないと!」

 目の前で体をクネクネさせている可愛い少女が騎士団の一個小隊を壊滅できる魔法使い…。それがもっと強くなるって言うのだから喧嘩した瞬間に国がひとつ焼け野原になるような、デストロイヤー的存在になるのではないか?
 …笑顔で国を焼け野原にするステラを想像すると背筋がゾワっと寒くなるのがわかった。彼女を敵に回すのはやめておこう…。

「ところで、アレン君。明日は何か予定あるの?」

 目の前にいる大量殺戮兵器候補…もとい、ステラはモジモジして頬を赤らめながら、なにやら言いにくそうに声をかけてきた。

「明日?特にないから、いつも通りミアと特訓かなぁ。…こいつ、全然手加減してくれなくてさぁ。今日もボッコボコにされて痛いのなんのって」

 腕のあざをステラに見せながらミアを軽く睨みつけた。ミアはそんなの知らないって顔で出された紅茶をすすっている。このアザと、さっきの助け舟でお互い様。とでも言いたそうな雰囲気だ。

「そ、そうなんだ。ねぇミアさん?明日の午後、アレン君とお買い物に行っちゃダメかな。できれば、2人で行きたいんだけど…」

 まさかのデートイベント発生に驚いて、ミアも体が大きく揺れた。平常心を装っているが、きっと今心の中はグチャグチャだと思う。
 それにしても、いつの間にかステラは俺に対する友好値MAXだったってことか!?こ、これはぜひ2人で行くべきだと思う!

「わ、私は構いませんが…。アレン様、いかがでしょうか?」

「いいんじゃないかな!ステラも強いし、俺も昔より強くなったからさ!町の中くらい、ミアがいなくても、ステラを安全にエスコートしてみせるさ!ミアが大丈夫、ってことなら問題ないでしょ。」

「…かしこまりました。アレン様」

 上擦った声で喜びに震える手でクッキーを無理やり掴み頬張る。
 買い物を2人でする姿を想像して完全に顔の筋肉が緩み切っているのがわかるし、それを見るミアの視線が痛いのだが、緩んだ口元が元に戻らない…。

「と、いうことで明日は大丈夫だよ」

「ほ、ほんとう?ありがとうアレン君!!明日の午後、噴水の前で待ち合わせね!約束だよ?」

 ステラとデート…ステラとふたりっきり…。
 正直、ミア以外の女の子と2人っきりというのは初めてだった。今も前世もなかった女の子とのデート。しかも憧れのステラと2人っきりという展開に、この時の俺は、完全にのぼせきっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

処理中です...