悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷

文字の大きさ
42 / 55
第三章

4 レオス・ヴィダールとカモールのボス戦

しおりを挟む
「カモール!」

「レオス様、申し訳ありません」

 俺とカモールはお互いの安否を確認する。

「そんなことはいいから、怪我は?」

「今のところは何も、何かに吸い寄せられたようで魔物も見当たりません」

 カモールの後を追ってボス部屋へと入った俺は辺りを見渡した。部屋はドーム状になっており、周りの壁は洞窟と同じ岩壁で出来ている。
 魔物の姿は見えない。

「ん、あれはなんだ」

 俺は扉から反対側にある窪みの中にある台座に乗った光る球体が目に入った。ダンジョンならあれがコアじゃないか? あれを壊せばこの厄介なダンジョンも消え去るだろう。

「ボスがいないのは不思議だけど、サクッと攻略出来るならそれに越したことはない。カモールはそこで待機してて」

 カモールの返事も待たずに俺は駆け出す。壊してしまえばこちらの勝ちだ。俺は勝利を確信しコアとの距離を縮めていく。
 そして剣を振り上げ球体を、コアを破壊して終わり――のはずだった。

 ガキンと何か不可視の壁に弾かれたように剣はコアを破壊出来ずに手前に戻ってきた。防御機能付きかよ、ってことは――

 ドシンと部屋の中央に音が響き渡る。俺は振り返りたくなかったが、意を決して体を後ろへと回す。
 そこには魔物ではなく、全身を鎧で纏い大きなバスターソードを持ち、霊体のようなもやが周りにまとわりついた何かが出現していた。

「カモール!」

「レオス様!」

 お互いが正反対の場所にいて、このボスがどちらに攻撃を仕掛けてくるか分からない。お互いの安否を確認して臨戦態勢を取る。
 鎧を着たボスは、ゆっくりとこちらに振り返った。

「俺かよ……」

 無言のボスはそのまま俺の方にダッシュしてくる。こいつを倒せば終わりだ。出し惜しみはしてられないぜ。

「ダークバインド」
「グラビティ」

 俺の拘束闇魔法をお見舞いする。しかしダークバインドは不発に終わる。よく見るとボスには影がない。そんなのアリかよ。
 グラビティも効果が薄いのか、あまり気にせずこちらに向かってくる。

「くっ、ダークバレット!」

 俺は相手の体勢を崩そうとダークバレットを連打する。しかし相手は意に介した様子はない。

「魔法防御が高いって感じか? いいぜ、どうせ闇魔法の威力は低いんだ」

 俺は剣を構え相手の攻撃に備える。ブラックホールも使えない、最悪カモールが巻き込まれるし、俺も巻き込まれる。
 ボス鎧は真っすぐに両手に持った剣を振り上げて俺に攻撃してくる。まずは初撃を正面から受け止める。剣の腹を左手で支えて振り下ろされたバスターソードを横に受け流しつつ守る。

(重い!)

 想定以上に威力のある攻撃に俺は危機感を覚える。このまま守勢に回っていてはいずれ負ける。なにか打開策はないか。
 策を考えながらも体は動かし続ける。相手の攻撃を受け流し自身の左の地面に打ち下ろされた剣を持つ両腕に攻撃を仕掛ける。しかし相手の鎧は固くわずかに傷がついただけに終わった。

「ウィンドカッター」

 そこにカモールの風魔法が炸裂する。首辺りを狙った攻撃は相手の鎧を剥がし、頭部を守っていた兜が取れる。鎧の中が見える。

「うっ」

 ボス鎧の正体はアンデット。恐らくスケルトン系だろう。骨だけで表情の無いその顔はゆっくりと兜を地面から掬いあげ、再度頭に嵌め直す。
 しかし中身が分かったのは収穫だ。アンデットなら疲れもない。闇魔法も多分威力が軽減される。……有利な条件どこ? カモールの風魔法に期待するか。

「カモール、どれくらい魔力に余裕ある?」

「4~5割といったところでしょうか」

「充分だ、援護を頼む。俺は剣で応戦する」

 中身がスケルトンでもやることは変わらない。剣で戦いカモールの風魔法で攻撃する。その連携で倒し切る。倒せるはずだ。

 俺はムルムルを叩き起こす。

「おい、起きろムルムル。敵だぞ。融合は出来そうか?」

「ん~、おはようなのです。融合は……まだ足りないのです」

 一番確実なのがここで悪魔融合に頼ることだったんだが、出来ないものは仕方がない。

「ならサポートよろしく」

「わかったのです」むふー

 俺の頭にあるムルムルの目がカッと開くと、周りの動きが少しゆっくりに見えた。実際に周りが遅くなったのではない。俺の体感時間がゆっくりになっただけだ。これでボス鎧に対して先手が取れる。
 鎧を直接攻撃しても効果は薄い。ならどこを狙うか、関節だ。あと出来るなら兜も剥がしておきたい。

 俺は魔力循環で足に力を込めると、一瞬でボス鎧の間合いに入り込む。驚いたであろう相手が俺に攻撃を繰り出すのをゆっくりとした体感時間で見極める。防御に回るだけでは二流、一流は反撃をスムーズに行うために最小限の動きで相手の攻撃を見切り攻撃に繋げる。
 俺は横薙ぎに振られる相手の両手剣を少し後ろに下がることで躱し、避ける瞬間に相手の手首の隙間に攻撃を加える。

 関節が外れたのか、相手は剣を持っていた片手を落とす。魔力で動いていようが、関節ははまっていないと動かないらしい。俺は続けざまに相手の右ひじに攻撃を加え、同じく捻る様に関節を外す。
 完全に使い物にならなくなった右腕を必死に嵌めようとするボス鎧の兜を俺は下からかちあげるように剣を振り上げる。

 カンという小気味よい音を出し、相手の兜が転々とその場に転がる。

「ウィンドボール」

 俺が叫ぶ前にカモールの魔法がスケルトンの頭に直撃する。
 よろめいた相手に更に俺が脳天をかち割る勢いで剣を打ち込む。

「死ねやおらあああ!」

 もう死んでるからおかしいか? でもそれくらいの勢いが必要でしょ。
 そして相手の頭はぱっくりと割れて、顔面が壊れていく。
 スケルトンはその場にバターンと倒れる。しかし残った左腕は未だに動いてる。頭を割っても死なない?

「カモール、鎧剥ぐの手伝って」

 俺は中にコアみたいなものがあると思い、鎧を剥いでいく。反撃されると危険なのでバスターソードは相手の届かない位置に蹴り飛ばしておく。
 案の定鎧を剥いだスケルトンの胸の付近に赤く光る石があった。それを俺がさくっと壊すと、スケルトンは灰のように消えていった。残ったのは鎧と魔石だけだ。

「これで攻略完了かな?」

「恐らくは……。後はあの不思議な球体ですな」

 まあ多分コアだろう。あれを壊してダンジョンクリア! 最後はボスの鎧と魔石を回収してとんずらだ。
 俺は窪みのある台座に近づき、今度は見えない壁がないか確認する。俺が手を伸ばすと先程あった反発はなく、するりと窪みの中に手が入っていった。

「後はこれを壊すだけ、だ!」

 俺は球体を取り出し、地面に叩きつける。すると俺たちの耳にアナウンスが流れ込んできた。

『迷宮のコアの破壊を確認。すべての魔物の出現を停止。迷宮は消滅します。早めの退去を推奨します』

 ご丁寧に事後処理までしてくれるとは、これを作ったやつは親切だな。誰が作ってんだろうか。まあ深く考えてもしょうがない。だと割り切って置いた方が精神衛生上楽だ。

「じゃあカモール、鎧と魔石を回収して撤収だ」

「畏まりました」

 こうして俺の初めてのダンジョン攻略は終わった。案外あっけなかったなと思った。
 後日各地にダンジョンが出現すると聞くまでは。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥風 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸
ファンタジー
【あらすじ】  ジュナリュシア・キーブレスは、キーブレス王国の第十七王子として生を受けた。  キーブレス王国は、スキル至上主義を掲げており、高ランクのスキルを持つ者が権力を持ち、低ランクの者はゴミのように虐げられる国だった。そして、ジュナの一族であるキーブレス王家は、魔法などのスキルを他人に授与することができる特殊能力者の一族で、ジュナも同様の能力が発現することが期待された。  しかし、スキル鑑定式の日、ジュナが鑑定士に言い渡された能力は《スキル無し》。これと同じ日に第五王女ピアーチェスに言い渡された能力は《Eランクのギフトキー》。  つまり、スキル至上主義のキーブレス王国では、死刑宣告にも等しい鑑定結果であった。他の王子たちは、Cランク以上のギフトキーを所持していることもあり、ジュナとピアーチェスはひどい差別を受けることになる。  お互いに近い境遇ということもあり、身を寄せ合うようになる2人。すぐに仲良くなった2人だったが、ある日、別の兄弟から命を狙われる事件が起き、窮地に立たされたジュナは、隠された能力《他人からスキルを奪う能力》が覚醒する。  この事件をきっかけに、ジュナは考えを改めた。この国で自分と姉が生きていくには、クズな王族たちからスキルを奪って裏から国を支配するしかない、と。  これは、スキル至上主義の王国で、自分たちが生き延びるために闇組織を結成し、裏から王国を支配していく物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも掲載しています。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...