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第三章
8 レオス・ヴィダールは戸惑う
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学園が再開して初日、慌ただしく動き回る教師たち。授業も今までの復習から始まり休校にしていた部分を補うように進んでいく。まあ大半は家庭教師などをつけているのでそこまで困ることはないんだけど、AやBクラスではきっと大変なことが起こっているだろうなと想像に難くない。
そんな授業を流し見程度で終わるのを待っていると、アインが今日の放課後もやるか? と誘ってきた。
もちろん。と俺は返し、放課後を楽しみにしていた。今の自分がアインとやったらどれくらいになるだろうか。想像も付かなかった。
授業の終わりを告げるチャイムがなる。勉強をサボっていた生徒たちは机を枕代わりに倒れている。俺はまあ算術とかは困らないし、歴史とかは学んでるからあんまり困らない。魔法学も独自に研究していたから基本は抑えている。
アインは、少し疲れているようだった。迷宮の対処に時間を取られていたのだろう、普通はそうなる。
「大丈夫か? 少し休んでからでいいぞ」
「いや、大丈夫だ。さあいこうか」
アインはカバンを背にして訓練場へと向かう。その後ろからエレオノーラとリボーンが付けてきているのには気が付かないふりをして。なにやってんだあいつら。
訓練場について、適当な木剣を手に取る。
準備運動もそこそこに、俺はアインの前にたち戦いの準備を整える。
「俺、強くなったよ」
「そうかい、僕もだよ」
へえ、どこまで強くなったんだろう。見せてもらうじゃないか。
俺は魔力を解放せず、魔力循環に魔力を回し以前よりも遥かに強度を持った体で迎え撃つ。
「いくよ!」
その掛け声と共にアインが一歩で間合いを縮める。そこから下からかちあげるように剣が振るわれる。以前までの俺ならこれをいなすので精一杯だっただろう。しかしそれを敢えて上半身を逸らすことで避ける。
そして無防備に伸びきった相手の右腕に木剣を切りつける。アインは急いで剣を戻し、右手を守る様に剣で防ごうとする。
それは確かに間に合った。しかし無理な体勢から剣を出したせいか、俺が振り上げた剣の重さに耐えきれず、体を半身にして転がってしまう。あのまま耐えていたらどこかが折れたか、関節が外れていただろう。
「いって……」
それでも腱かどこかを痛めたかもしれない。痛がるアインを見て俺はそう思った。
「大丈夫か? そんなに力を入れたつもりはなかったんだが」
「っ! 言ってくれるね、まだまだだよ、ここからさ」
俺とアインの模擬戦は始まったばかりだった。
――数十分くらい経っただろうか。目の前にいるのはボロボロなアインと、傷一つない俺。いつもなら俺が指導を受ける側で、ボロボロになるのは俺だった。
立場は逆転した。しかしそれは技量が上がったというわけではない。単純に力が違うのだ。いくら蟻が技を鍛えたとして、象に踏まれてしまえばそれまでだ。それほどまでの差があるとは言えないが、今のアインと俺の間には隔絶した力の差がある。
魔法を交えて戦えば少しは変わるかもしれないが、そもそも魔力量も多いのだ。魔法を補助程度にしか考えていないアインの魔法戦などたかが知れている。
「随分、強くなった、ね」
よろめきながらアインが立ち上がる。そうだな、なんか申し訳なくなるくらい強くなっちゃったよ。別にアインが弱いわけでも悪いわけでもない。俺が強すぎるのだ。
「なんか、違うな……」
「えっ?」
「エレオノーラ、見てるんだろ。魔法戦しようぜ」
「っ!」
物陰から見守っていた二人に声をかける。
アインからもう学ぶことは技術的なことしかないが、それも力があればどうとでもなる。問題は魔法戦だ。この魔力量でエレオノーラとどれだけ渡り合えるのか、それが知りたかった。
「レオス、なんだか怖くてよ」
「そうか? で、やるかやらないのか」
「……やりますわよ」
大好きなアインがボコボコにされて少し怒っているのだろうか。エレオノーラはその感情を隠そうともせず俺の前に立ちふさがる。
「アイン様、見ていてくださいまし」
「それじゃあいいか、始めるぞ」
「ホーリーランス」
「ダークランス」
開始の合図はない。2人の魔法がぶつかり合う。どちらかが負ける、そう思われた。
「なっ、相殺!」
本来光魔法が闇魔法に負けることなどあり得ない。それが覆るとしたらその魔力量は――
「舞え、ホーリーダンス!」
「ダークバレット」
俺は指先に、10本の指全てにダークバレットを展開し、舞っている光の刃を打ち落としていく。威力の低いダークバレットでもこれだけの魔力を込めれば勝てることを証明した。
「――っ、ならジャッジメント!」
「ちょ、それはやりすぎ!」
リボーンが止める間もなく、彼女の最大級の魔法が放たれる。
まあブラックホールで吸収してもいいんだが、ここは格の差を見せつけるためにもこっちにしよう。
「デスサイズ」
大きな鎌のような形態をした闇魔法が彼女の剣を模したジャッジメントを刈り取る。そのまま鎌は彼女に向かって振り下ろされ、彼女の真横に着弾した。
放心しているエレオノーラにリボーンが駆け寄って声をかけている。そして俺に非難の声を浴びせる。
「レオス! ちょっとやりすぎなんじゃないか!?」
「そうか? ちゃんと当たらないようにしたし、そもそも最初に攻撃してきたのはそっちだろ?」
「だからって!」
「いいんですの、リボーン。私が弱かっただけですの……」
俺はなんか空気が悪いなと思い、その場をそそくさと去った。
なんだろう、俺が悪いのか?
そんな授業を流し見程度で終わるのを待っていると、アインが今日の放課後もやるか? と誘ってきた。
もちろん。と俺は返し、放課後を楽しみにしていた。今の自分がアインとやったらどれくらいになるだろうか。想像も付かなかった。
授業の終わりを告げるチャイムがなる。勉強をサボっていた生徒たちは机を枕代わりに倒れている。俺はまあ算術とかは困らないし、歴史とかは学んでるからあんまり困らない。魔法学も独自に研究していたから基本は抑えている。
アインは、少し疲れているようだった。迷宮の対処に時間を取られていたのだろう、普通はそうなる。
「大丈夫か? 少し休んでからでいいぞ」
「いや、大丈夫だ。さあいこうか」
アインはカバンを背にして訓練場へと向かう。その後ろからエレオノーラとリボーンが付けてきているのには気が付かないふりをして。なにやってんだあいつら。
訓練場について、適当な木剣を手に取る。
準備運動もそこそこに、俺はアインの前にたち戦いの準備を整える。
「俺、強くなったよ」
「そうかい、僕もだよ」
へえ、どこまで強くなったんだろう。見せてもらうじゃないか。
俺は魔力を解放せず、魔力循環に魔力を回し以前よりも遥かに強度を持った体で迎え撃つ。
「いくよ!」
その掛け声と共にアインが一歩で間合いを縮める。そこから下からかちあげるように剣が振るわれる。以前までの俺ならこれをいなすので精一杯だっただろう。しかしそれを敢えて上半身を逸らすことで避ける。
そして無防備に伸びきった相手の右腕に木剣を切りつける。アインは急いで剣を戻し、右手を守る様に剣で防ごうとする。
それは確かに間に合った。しかし無理な体勢から剣を出したせいか、俺が振り上げた剣の重さに耐えきれず、体を半身にして転がってしまう。あのまま耐えていたらどこかが折れたか、関節が外れていただろう。
「いって……」
それでも腱かどこかを痛めたかもしれない。痛がるアインを見て俺はそう思った。
「大丈夫か? そんなに力を入れたつもりはなかったんだが」
「っ! 言ってくれるね、まだまだだよ、ここからさ」
俺とアインの模擬戦は始まったばかりだった。
――数十分くらい経っただろうか。目の前にいるのはボロボロなアインと、傷一つない俺。いつもなら俺が指導を受ける側で、ボロボロになるのは俺だった。
立場は逆転した。しかしそれは技量が上がったというわけではない。単純に力が違うのだ。いくら蟻が技を鍛えたとして、象に踏まれてしまえばそれまでだ。それほどまでの差があるとは言えないが、今のアインと俺の間には隔絶した力の差がある。
魔法を交えて戦えば少しは変わるかもしれないが、そもそも魔力量も多いのだ。魔法を補助程度にしか考えていないアインの魔法戦などたかが知れている。
「随分、強くなった、ね」
よろめきながらアインが立ち上がる。そうだな、なんか申し訳なくなるくらい強くなっちゃったよ。別にアインが弱いわけでも悪いわけでもない。俺が強すぎるのだ。
「なんか、違うな……」
「えっ?」
「エレオノーラ、見てるんだろ。魔法戦しようぜ」
「っ!」
物陰から見守っていた二人に声をかける。
アインからもう学ぶことは技術的なことしかないが、それも力があればどうとでもなる。問題は魔法戦だ。この魔力量でエレオノーラとどれだけ渡り合えるのか、それが知りたかった。
「レオス、なんだか怖くてよ」
「そうか? で、やるかやらないのか」
「……やりますわよ」
大好きなアインがボコボコにされて少し怒っているのだろうか。エレオノーラはその感情を隠そうともせず俺の前に立ちふさがる。
「アイン様、見ていてくださいまし」
「それじゃあいいか、始めるぞ」
「ホーリーランス」
「ダークランス」
開始の合図はない。2人の魔法がぶつかり合う。どちらかが負ける、そう思われた。
「なっ、相殺!」
本来光魔法が闇魔法に負けることなどあり得ない。それが覆るとしたらその魔力量は――
「舞え、ホーリーダンス!」
「ダークバレット」
俺は指先に、10本の指全てにダークバレットを展開し、舞っている光の刃を打ち落としていく。威力の低いダークバレットでもこれだけの魔力を込めれば勝てることを証明した。
「――っ、ならジャッジメント!」
「ちょ、それはやりすぎ!」
リボーンが止める間もなく、彼女の最大級の魔法が放たれる。
まあブラックホールで吸収してもいいんだが、ここは格の差を見せつけるためにもこっちにしよう。
「デスサイズ」
大きな鎌のような形態をした闇魔法が彼女の剣を模したジャッジメントを刈り取る。そのまま鎌は彼女に向かって振り下ろされ、彼女の真横に着弾した。
放心しているエレオノーラにリボーンが駆け寄って声をかけている。そして俺に非難の声を浴びせる。
「レオス! ちょっとやりすぎなんじゃないか!?」
「そうか? ちゃんと当たらないようにしたし、そもそも最初に攻撃してきたのはそっちだろ?」
「だからって!」
「いいんですの、リボーン。私が弱かっただけですの……」
俺はなんか空気が悪いなと思い、その場をそそくさと去った。
なんだろう、俺が悪いのか?
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