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第三章
9 アイン・ツヴァインは焦る
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手も足もでなかった。
レオスとの放課後の模擬戦はいつも通りに行われた。いくら強くなったって言ってもこの数か月で急に変われるほど人間というやつは簡単ではない。そう思っていた。
(技が、通用しない……)
レオスは確かに強くなった。それは本当だ。しかしこんな、力ですべてを解決するような戦い、僕が磨いてきた剣技をすべて否定されてしまったような気がした。大人と子供に力の差がある様に、魔力にだって差があるのは知っている。
ただこうも手も足も出ないほどの差があるとは信じられない、否認められなかった。
僕がボロボロに負けた後、エレオノーラと行った魔法戦で彼の魔力の底を見ることは出来なかった。ただ純粋に火力が違った。威力が弱いとされてりる闇魔法を用いて、火力だけなら最強と呼ばれる光魔法を打ち破ったのだ。馬鹿げている。一体この数か月の間に何が起こったのというのだ。
僕らが唖然としている間に、彼はばつが悪そうにその場を去っていった。
「アイン様、お体は大丈夫ですの?」
「ああ、木剣だし見た目よりひどくないさ。レオスも、手加減してただろうし……」
そう自分言って涙が溢れてきた。レオスは友達だしライバルでもある。でもまだ剣なら自分の方が上、そう驕っていたところもある。レオスに急に上に行かれたことに動揺したのか、溢れ出るものが止まらない。
「ア、アイン様! やはりどこか痛めて」
「いいんだ、……グスッ……僕の問題だ」
今までだって僕は加減をしてレオスの相手をしていたわけではない。あくまで全力を出したうえで勝ってきた。それが急に師匠が弟子に教えるように手心を加えられるなど屈辱と言ってもおかしくなかった。
レオスにはそんなつもりはないだろう。だけど僕は悔しかった。遠くに行ってしまった友人に戻ってきて欲しい、その境地に辿り着きたいそう思うのはおかしいことではないだろう?
今闇雲にレオスに挑んでも結果は見えている。ならどうするか。鍛錬しかない。
「エレオノーラ、僕に魔法を教えて欲しい」
「えっ! そんなこともちろんですわ。……ならわたくしにも剣術を教えてもらえると嬉しいのですが」
「そんなのお安い御用さ、僕はもっと強くならないといけない。その為にはもっと魔力が欲しい」
「わかりましたわ、わたくしの出来る限りお手伝いいたします」
「あのー僕もいるけど、手伝う?」
「当然でしょう! 雑用係は必須ですわよ」
「雑用……」
まあリボーンとは仮想レオスとして戦って貰えばいいし、まあ、どうにかなるだろ。
魔法戦もそうだし、純粋に魔力の扱いを上昇させるには彼女と共に鍛えたほうが良い。きっと彼女もレオスに負けたことにショックを受けているに違いない。そういった者同士切磋琢磨していくのがいいだろう。
それから朝早く起きてから魔力をなるべく使い切る様に魔法戦を行い、昼休みもご飯もほどほどに魔力を使い切る。午後の授業は魔力枯渇状態で受ける。放課後の練習は少し休憩して魔力を回復させてから再度枯渇させる。その繰り返しだった。
剣術も鍛えるのは欠かさない。魔力枯渇状態になると体の動きが著しく制限されるのでゆっくりとした型の練習となる。一旦初心に戻り全ての動きを確かめながら剣を振るう。それでも彼との差が埋まるとは到底思えなかった。
レオスと顔を合わせても普通に挨拶はするし、会話もする。
彼も彼で最近忙しいようで顔を合わす機会が減ったが、放課後の訓練場に現れないということは鍛錬は休憩中なのか?
強さに慢心しているのならそれは好都合。差を詰めさせてもらおう。
そんな日々を二ヶ月ほど続けていると、期末試験の時期が迫ってきた。こればかりは勉強を優先しないといけない、辺境伯を預かる者の令息して恥ずかしくない成績を修めなければ。
勉強に精を出す日々、しかし出来る範囲で魔力量を増やす為に必死に魔力を練る。そして静かに体外に放出し魔力をどんどん使っていく。これが自然に出来るころには魔力は枯渇し、ずーんと体が重くなった。
そこからは重たい体をなんとかうごかして勉強を再開する。そんな日々をしばらく続けて期末試験は終わった。
結果が出る前に、僕はレオスに再戦を申し込んだ。まだ勝てるとは思っていない。ただどれだけ近づいたのか、それが知りたかった。
「いいよ、今から?」
「問題なければ」
ならいこう、とレオスが訓練場へと足を向ける。その後ろ姿は今まで見たどの強者よりも大きく見えた。
訓練場についてお互いに木剣を手に取り構える。
「じゃあどっからでもかかってきていいよ」
相変わらず余裕なレオスに対して、慎重に間合いを計る。
無闇に飛び込んでもだめだ。冷静に相手を見る。
隙だらけのように見える。しかしそんなことはない、あそこから対応できるからこその体勢だ。
「しっ!」
僕は真正面からの突きを選択する。どう弾かれも次の手に行かせる。そう思った。しかし予想通りとはいかなかった。
レオスはこちらの剣先に対して剣先で返してきたのだ。木剣とはいえ尖った狭い面積を動いている的に当てる。魔力だけではない、技術ですら上回られた? いやまだだ。衝突した剣先を左に払い、飛び掛かりながら剣を振るう。
それをレオスは軽く受け流し、僕はそのまま着地する。
追撃はない。
レオスは待っていた。これ以上やる意味があるのかと言わんばかりに。
僕は奥歯をギリっとかみ締めた。
「あまり僕を舐めるなよ!」
右から、左から、兜割、袈裟斬り、横薙ぎ、足払い、体当たり、持てる全てを使いレオスに攻撃を仕掛ける。
それらを全ていなされ、躱され、防御される。
「はぁ……」
レオスの口からため息が漏れる。
聞きたくなかった声だ。
「もういいかな?」
やめてくれ! 僕をそんな目で見ないでくれ。
さもつまらないものでも見るかのようなレオスの瞳に、僕の姿は写っていなかった。
レオスとの放課後の模擬戦はいつも通りに行われた。いくら強くなったって言ってもこの数か月で急に変われるほど人間というやつは簡単ではない。そう思っていた。
(技が、通用しない……)
レオスは確かに強くなった。それは本当だ。しかしこんな、力ですべてを解決するような戦い、僕が磨いてきた剣技をすべて否定されてしまったような気がした。大人と子供に力の差がある様に、魔力にだって差があるのは知っている。
ただこうも手も足も出ないほどの差があるとは信じられない、否認められなかった。
僕がボロボロに負けた後、エレオノーラと行った魔法戦で彼の魔力の底を見ることは出来なかった。ただ純粋に火力が違った。威力が弱いとされてりる闇魔法を用いて、火力だけなら最強と呼ばれる光魔法を打ち破ったのだ。馬鹿げている。一体この数か月の間に何が起こったのというのだ。
僕らが唖然としている間に、彼はばつが悪そうにその場を去っていった。
「アイン様、お体は大丈夫ですの?」
「ああ、木剣だし見た目よりひどくないさ。レオスも、手加減してただろうし……」
そう自分言って涙が溢れてきた。レオスは友達だしライバルでもある。でもまだ剣なら自分の方が上、そう驕っていたところもある。レオスに急に上に行かれたことに動揺したのか、溢れ出るものが止まらない。
「ア、アイン様! やはりどこか痛めて」
「いいんだ、……グスッ……僕の問題だ」
今までだって僕は加減をしてレオスの相手をしていたわけではない。あくまで全力を出したうえで勝ってきた。それが急に師匠が弟子に教えるように手心を加えられるなど屈辱と言ってもおかしくなかった。
レオスにはそんなつもりはないだろう。だけど僕は悔しかった。遠くに行ってしまった友人に戻ってきて欲しい、その境地に辿り着きたいそう思うのはおかしいことではないだろう?
今闇雲にレオスに挑んでも結果は見えている。ならどうするか。鍛錬しかない。
「エレオノーラ、僕に魔法を教えて欲しい」
「えっ! そんなこともちろんですわ。……ならわたくしにも剣術を教えてもらえると嬉しいのですが」
「そんなのお安い御用さ、僕はもっと強くならないといけない。その為にはもっと魔力が欲しい」
「わかりましたわ、わたくしの出来る限りお手伝いいたします」
「あのー僕もいるけど、手伝う?」
「当然でしょう! 雑用係は必須ですわよ」
「雑用……」
まあリボーンとは仮想レオスとして戦って貰えばいいし、まあ、どうにかなるだろ。
魔法戦もそうだし、純粋に魔力の扱いを上昇させるには彼女と共に鍛えたほうが良い。きっと彼女もレオスに負けたことにショックを受けているに違いない。そういった者同士切磋琢磨していくのがいいだろう。
それから朝早く起きてから魔力をなるべく使い切る様に魔法戦を行い、昼休みもご飯もほどほどに魔力を使い切る。午後の授業は魔力枯渇状態で受ける。放課後の練習は少し休憩して魔力を回復させてから再度枯渇させる。その繰り返しだった。
剣術も鍛えるのは欠かさない。魔力枯渇状態になると体の動きが著しく制限されるのでゆっくりとした型の練習となる。一旦初心に戻り全ての動きを確かめながら剣を振るう。それでも彼との差が埋まるとは到底思えなかった。
レオスと顔を合わせても普通に挨拶はするし、会話もする。
彼も彼で最近忙しいようで顔を合わす機会が減ったが、放課後の訓練場に現れないということは鍛錬は休憩中なのか?
強さに慢心しているのならそれは好都合。差を詰めさせてもらおう。
そんな日々を二ヶ月ほど続けていると、期末試験の時期が迫ってきた。こればかりは勉強を優先しないといけない、辺境伯を預かる者の令息して恥ずかしくない成績を修めなければ。
勉強に精を出す日々、しかし出来る範囲で魔力量を増やす為に必死に魔力を練る。そして静かに体外に放出し魔力をどんどん使っていく。これが自然に出来るころには魔力は枯渇し、ずーんと体が重くなった。
そこからは重たい体をなんとかうごかして勉強を再開する。そんな日々をしばらく続けて期末試験は終わった。
結果が出る前に、僕はレオスに再戦を申し込んだ。まだ勝てるとは思っていない。ただどれだけ近づいたのか、それが知りたかった。
「いいよ、今から?」
「問題なければ」
ならいこう、とレオスが訓練場へと足を向ける。その後ろ姿は今まで見たどの強者よりも大きく見えた。
訓練場についてお互いに木剣を手に取り構える。
「じゃあどっからでもかかってきていいよ」
相変わらず余裕なレオスに対して、慎重に間合いを計る。
無闇に飛び込んでもだめだ。冷静に相手を見る。
隙だらけのように見える。しかしそんなことはない、あそこから対応できるからこその体勢だ。
「しっ!」
僕は真正面からの突きを選択する。どう弾かれも次の手に行かせる。そう思った。しかし予想通りとはいかなかった。
レオスはこちらの剣先に対して剣先で返してきたのだ。木剣とはいえ尖った狭い面積を動いている的に当てる。魔力だけではない、技術ですら上回られた? いやまだだ。衝突した剣先を左に払い、飛び掛かりながら剣を振るう。
それをレオスは軽く受け流し、僕はそのまま着地する。
追撃はない。
レオスは待っていた。これ以上やる意味があるのかと言わんばかりに。
僕は奥歯をギリっとかみ締めた。
「あまり僕を舐めるなよ!」
右から、左から、兜割、袈裟斬り、横薙ぎ、足払い、体当たり、持てる全てを使いレオスに攻撃を仕掛ける。
それらを全ていなされ、躱され、防御される。
「はぁ……」
レオスの口からため息が漏れる。
聞きたくなかった声だ。
「もういいかな?」
やめてくれ! 僕をそんな目で見ないでくれ。
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