兄がBLゲームの主人公だったら…どうする?

なみなみ

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中学生編

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本屋さんから一歩外に出た途端、強い日差しを感じて、その眩しさに私は思わず目を閉じた。

季節はもう夏になろうとしている。

体育祭であんなことがあったにも関わらず、二葉くんは今まで通りに私に接してくれた。恭子ちゃんも今回の件で反省したのか、最近大人しいらしい。しかも、ごめんなさいの気持ちですの手紙とともに、クマ太郎のグッズを分けてくれたりするようになった。
例えばメモ帳だったら、3枚くらいとかちょこっとなので、遠慮なく頂いている。私も新しいのを見つけたら分けてあげたりして、彼女と仲良くなったみたいで少しうれしい。

穏やかな日々を送っている私だが、一つ変化したことがあった。
本屋になら単独行動を許されるようになったのだ。
私は時間のある時にサイクリングがてら、自転車を走らせるようになった。

最近気になるのは、本屋の近くの街道沿いにできたアイスクリーム屋さんだ。駐輪場まで歩いていく途中にその店はオープンした。
1人で店に入って買って食べるのはまだ緊張するので、私はいつも店内を横目で見ながら店の前を通り過ぎている。
彩子は最近彼氏ができたみたいで、リア充の彼女には一緒に食べに行こうとお願いしにくいし。蓮琉くんとかお兄ちゃんに頼んだら一緒に来てくれそうだけど、2人とも最近部活が忙しそうなので、ぐっと我慢していたりする。

(うわ~。今日も美味しそう。)
お店の方ばかりを見て歩いていた私は、前を歩く人に気が付かずに思い切りぶつかってしまった。
勢いよくふっとび、そのまま尻餅をついてしまう。

「わっ。すみません!……あ。」
「すまん、俺も余所見してたから……お!」

(四楓院隼人だ。)

私は意外な人物とぶつかったようで、驚いて目を見開いた。
相手も私に見覚えがあるようで、私をじっと見ていたが、はっとしたように指さしてきた。

「お前、三田のセフレか。」
「違います。」
「でも体育祭の日に公園で一緒にいたよな。」
「たまたまです。やめてくださいよ、ホントに。」
私はお尻についた汚れをはらうと素早く立ち上がった。そのまま移動しようとした私はそのまま動けなくなった。
駐輪場まで行こうとした私の手を、彼がつかんでニヤリと笑っていた。

「なあ、お前さっきこの店の前でヨダレをたらしそうな顔してたよな。」
「なっ。……確かに美味しそうだなあって見てましたけど。ヨダレはたらしてませんよ。たぶん。」
結構失礼だな。この人。
そのまま歩き出そうとした私の背中に彼が魅力的な言葉を投げかけてきた。
「おい。一緒に食べないか?」
「え?」
「だから、一緒にこの店入ってアイスを買わないかと言っているんだ。さすがに男1人じゃ敷居が高いからな。おごってやらんでもないぞ。」
なんだかとってもえらそうである。
そういえばこの人、とんでもなく甘党だったかも。私は少し考えた。あたまの中でアイスと蓮琉くんが、天秤にのってゆらゆらしている。

(………むむ。)

「俺の名前を知らないから不安か?俺は四楓院隼人。高校3年生。お前は?」
「斎藤花奈、です。中二です。ええと、四楓院先輩……。」
「隼人でいい。」
「四楓………。」
「隼人。」
「……隼人先輩。」
「まあいい。」
隼人先輩は少し不満そうだが仕方なさそうに頷いた。

私は高速回転で考えた。
蓮琉くんには、ひとりで本屋に行っても寄り道せずに、帰れと言われている。
だがしかし、私は今、アイスが食べたい。
ものすごく食べたい。
アイスを買ったらすぐに食べて、すぐに帰ったらいいよね。
あ、でも、自己申告というテもあるよね。

私は無言で携帯電話をとりだした。
メールしとこう。うん。そうしよう。
私は速攻でメールを送ると、隼人先輩を振り返った。
「行きましょう!でもおごらなくていいですから!」


そして数分後。私は何故か駐輪場にある小さな椅子を取り合うように隼人先輩と座り、アイスを食べていた。座る場所の面積が小さいのでおしくらまんじゅうのように身体がくっついている。

店内に入りアイスを購入した私が、そのまま去ろうとしたら、何故か隼人先輩がついてきたのだ。

ちなみに、私はツインで抹茶とバニラ。隼人先輩はトリプルでチョコとストロベリーとキャラメルを選んだ。

ああ。美味しい。
幸せだ。

「お前、幸せそうに食べるな。」
「だって美味しいです。」
蓮琉くんとかお兄ちゃんだったら、一口もらうけど。隼人先輩だったら無理だよねえ。
私は無意識に隼人先輩のアイスをじっと見ていたらしい。
隼人先輩は苦笑して私を見た。
「一口味見するか?」
「いいんですか?」
「そんなにじっと物欲しそうに見られたら逆に落ち着かねえよ。ほら。」
私は一瞬悩んだが、ありがたく頂くことにした。
「うわあ。美味しい。チョコ濃厚!ストロベリー果肉入り!キャラメルほろ苦大人味ですね~。」
「リポーターみたいだな。」
「先輩も私の食べます?」
「いや。俺は……やっぱりもらおう。いいか?」
「どうぞ、どうぞ。」
隼人先輩はもっとたくさんとるかと思ったけど、少しだけスプーンにすくった。
「……美味いな。」
「ですよね~。バニラはクリーミーで抹茶は濃い味で。いや~ずっと食べてみたかったんですよ。念願叶いました。声かけて下さってありがとうございます。」
「……よかったな。」
隼人先輩は、少し笑うと、私をじっと見つめてきた。

「お前は、俺のことが怖くないのか?」
私を観察するような視線。
彼が少し目を細めただけで、なんでも白状したくなるような雰囲気になる。

そういえばこの人、風紀を乱す人を容赦なく取り締まるから、学校で畏怖の対象だったっけ。お兄ちゃんはそんなの気にしないから、普通に話したりしてて。最初はそこを面白がってただけだったのに、だんだん惹かれていくんだった。

ぼんやりと考え込んでしまい、彼に返事をしてないことに気がついた私はあわてて隼人先輩を見た。先輩はまだ私をじっと観察するように見ている。
私は慎重に口を開いた。

「私は。怖がるほど隼人先輩のことを知りません。それに、兄が言ってました。相手を噂とかイメージだけで判断するなって。ちゃんと見てから友達になれるか自分で判断しろって。……なんて、全部兄の受け売りですけどね。」
だんだん恥ずかしくなってきた私は残りの抹茶アイスをパクリと口に入れた。後のバニラはゆっくり食べよう。

先輩は驚いた顔をしていたが、やがて表情を和ませると、小さく呟いた。
「いい兄貴だな。」
「ありがとうございます。大好きなお兄ちゃんです!」
私と隼人先輩はふと目をあわせると、微笑みあった。
隼人先輩、こんな優しい表情できたんだなあ、と少し失礼なことを考えていると、駐輪場の入口に自転車が入ってくる音がして、私達はそちらの方へ振り返った。

「花奈!おい蓮琉。花奈いたぞ?」
お兄ちゃんだった。
「花奈お前、携帯でろよ。店内で食べてるのかと思ったらいないから、探しまわっただろ?」
「え?うわ。ほんとだごめんなさい。」
携帯電話を、確認すると、お兄ちゃんと蓮琉くんから着信が、たくさん来てた。

「これは心配料金な。」
お兄ちゃんは私のスプーンをもつと、残りのバニラアイスを全部すくって食べてしまった。
「ああああ!お兄ちゃん!ゆっくり味わおうと思って残しといたのに!」
「美味いな、これ。蓮琉~これ美味いよ。」
「はいはい。買ってきますよ。金は後で徴収するからな。先輩はおかわりとかいります?」
「いや、もう充分だ。」

私がスプーンをくわえてじとっとお兄ちゃんを見ていると、隼人先輩もお兄ちゃんを見ていることに気がついた。
「斎藤……。お前がこいつの兄貴か。」
「妹の花奈がお世話になったみたいですみませんでしたね。」
お兄ちゃん達が話していると、蓮琉くんが戻ってきた。自転車をとめると、アイスを持って近づいてきた。持っていた二つのカップのうち、一つをお兄ちゃんに渡すと、もうは一つは私に渡してくれた。
「ほら、環。花奈も、これ。環が食べたぶんな。」
「ありがとう!蓮琉くん。一口食べなよ。はい。あ~ん。」
私はいつもの癖で、スプーンですくうと、蓮琉くんの口元に持っていった。
「美味しい?」
「うん。美味いな。」
蓮琉くんは自分の口の横についたぶんを舐めとると、にっこりと微笑んだ。

ふと気がつくと、隼人先輩が蓮琉くんをひきつった顔で見ていた。
「誰にもなびかない男……か。この姿を見たらお前のファンが泣くな。」
「余計なお世話ですよ。だいたい、花奈を勝手に誘わないで下さい。何かあったらどうするんですか。」
「俺が一緒にいるのに、どうにかなるわけがないだろう。」
「いつか足元掬われないといいですね。」
「お前、失礼な奴だな。」
いつの間にか言い合いになっている2人を無視して、お兄ちゃんはアイスを食べ続けている。

その幸せそうな姿はまさに天使。
食べ方は優雅なのに、アイスはすごい勢いでなくなっていく。その姿に見入ってしまい、食べるのが疎かになっていた私のアイスをお兄ちゃんがじっと見た。
「花奈、いらないのか?食べてやろうか?」
「ううん?食べるよ!」
「遠慮すんなよ?晩御飯食べられなくなるぞ。」
「大丈夫!食べられるもん。」
私はお兄ちゃんからアイスを守るために蓮琉くんのそばに素早く移動した。蓮琉くんはまだ隼人先輩と言い合いしていたが、避難してきた私を見て、目を和ませた。
「大丈夫。花奈、ゆっくり食べろよ?環!お前トリプル買ってやっただろうが。花奈のを狙うなよ!」
「だって足りねえ。余計に腹がへった。早く帰ろうぜ。」
「お兄ちゃん、今日お母さん夜勤だから、晩御飯私が作るよ。スーパーよって帰ろう?」
「りょーかい。……なんですか、四楓院先輩。微妙な顔して。」
「お前ら、学校と全然違うな。」
「穏やかな天使じゃないからがっかりですか?ま、これも俺ですよ。」
「いや、逆だ。」
「はい?」
「ははははっ。気に入った。面白いな、お前。」
「それはどうも?先輩も笑うんですね。……どうしてですかね。野生の虎に品定めされてる感じしかしないんですが。」
「そうか?気にするな。これも俺だ。」


隼人先輩はお兄ちゃんと蓮琉くんを見てニヤリと笑ったかと思うと、ゆっくりと立ち上がり、駐輪場を出て歩き始めた。そして、そのまま雑踏の中へ消えていった。






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