兄がBLゲームの主人公だったら…どうする?

なみなみ

文字の大きさ
16 / 48
中学生編

16

しおりを挟む
あっという間に夏が過ぎ。
秋も深まるこの頃。
文化祭の季節である。

第二の関門となる文化祭としては、選ぶ場所ととセリフの選択肢をどれにするかによって、各キャラへのルートが確定していく。

場所の選択肢としては。
蓮琉くんは教室。二葉くんは校庭。三田くんは音楽室。四楓院先輩は廊下だったように思う。

例えば教室を選択すると、主人公であるお兄ちゃんが教室にいき、そこには蓮琉くんがいて、蓮琉くんとの文化祭ストーリーが進んでいくのだ。
今回は、2人の関係が恋愛へと発展していく布石となるということで、少し胸キュンな話が盛り込まれていたように思う。


部屋で宿題をしていると、お兄ちゃんが私の部屋にいきなり入ってきた。そして、いきなりベッドにダイブして、しばらく無言でいたが、やがて小さな声で話しかけてきた。
「花奈。明日は文化祭来るのか?」
「うん。お母さんと行くよ?」
「あ~ほら、お前の友達は来ないんだよな。……侑心とか」
「二葉くんはその日剣道の試合が入ったんだって。行けないから、残念がってたよ?」
お兄ちゃんは、あからさまにほっとした顔をしたが、すぐに、苛立ったように声をあげた。
「そっか。来ないか。あの姿を見られなくてすむな。……あ~っ!ちくしょうっ!何でなんだよ?!」
「お兄ちゃん?どうしたの?」
イライラした声に、私は宿題をしていた手を止めてお兄ちゃんを見た。
あれ。お兄ちゃんがベッドにいない。

先程まで不貞腐れたように私のベッドに寝転んでいたお兄ちゃんは何故か今、毛布にくるまって部屋の隅にまるまっていた。
毛布の隙間から目がギョロリとのぞいていて、少し怖い。

「俺明日休むから。」
「明日は文化祭だよね。休んで大丈夫なの?」
「…………。」
兄がここまで憂鬱になっているのには理由がある。

明日、兄は女装するのだ。
兄のクラスは文化祭のプラネタリウムをするらしいのだが、その呼び込みとして、アイドルのような衣装を着るらしい。衣装を見せてもらったが、レースがふんだんに使用されたかなり可愛らしい服だった。お兄ちゃんはそれを憎々しげに見つめていたが。
兄はそれが嫌でたまらないのだろう。
数日前から家でも鬱々としており、今日に至っては毛布の中にまるまってしまっている。

「なんで、俺なんだよ。柴崎がすればいいじゃねえか。あいつの方がやりたがってたのに。」
私は兄の口からでてきた名前にピクリと反応した。

柴崎蓮。

確か、先輩ルートにでてくる妨害キャラのはずだ。
どちらかというと、女性的な容姿。
四楓院先輩のことが大好きで、先輩に気に入られているお兄ちゃんのことを敵視している。
確か文化祭ルートでは、兄を妨害するためにいろいろと画策していたはずだ。
彼の名前が兄の口からでるということは、いま彼が兄の人生にすでに関与しているということで。

(え……っ?もしかしてお兄ちゃんは今、先輩ルートなの?)

私はその場で立ち上がってお兄ちゃんを見た。
いきなり動いた私にはお兄ちゃんはビクリと体を震わせた。

前世の私がしていたこのBLゲームにはバッドエンドというものが存在した。
各ルートにそれぞれ用意されていたが、先輩ルートでは文化祭の時から分岐していたように思う。お兄ちゃんに嫉妬した柴崎が文化祭で女装しているお兄ちゃんを仲間に襲わせる輪姦エンドとかあったような気がするのだ。このゲームの中でもワーストワンに入るくらいの最悪エンドだったと思う。

(ええっ。どう動いたらバッドエンドのルートに入るんだっけ?お兄ちゃんが危ない?)

私は頭が真っ白になった。
もし、すでに先輩ルートに入ってたらどうしよう。
蓮琉くんに……相談するわけにもいかないよね。
この世界がBLゲームの世界で、お兄ちゃんが危ないなんて、いくら蓮琉くんでも信じられないと思う。
私に何ができるのかな。
どうしたらいいのかな。

「おい、花奈?どうした?」
いつの間にか泣いていたらしい私のところに、お兄ちゃんが毛布を投げ捨てて慌ててとんできた。

「お兄ちゃんが、危ないめにあったらどうしよう。花奈、なにもできないよ。」

「……?」

私は意味不明のことを言っていたと思う。
お兄ちゃんは泣きじゃくっている私をぎゅっと抱きしめると、そのままぐずっている幼い子供をあやすように膝に抱き上げてベッドの端に座った。

「花奈、俺ってけっこう強いんだぞ?」

「相手がもし集団で襲ってきたら?屈強な人たちに押さえつけられて体育館倉庫に連れていかれたりしたら、お兄ちゃん1人だったらやりかえせないじゃない。」

「う……。なんだその具体的な想定は。花奈、いきなりそんなこと言うなんて変な小説でも読んだのか?もう忘れろよ、そんなの。大丈夫だって。そんな奴いたら、俺がぶっ飛ばしてやるから。こんな外見でも意外に強いんだぞ?」

それはゲームの中の話で、もしかしたら私たちの現実になるかもしれないんだよ、なんて言えるはずもなく。
私はお兄ちゃんにぎゅっとしがみついた。
華奢そうに見えて、実はしなやかに鍛えあげられた身体の兄は、私を抱えていてもゆるがない。やっぱり兄も男のひとなんだなあ、と思う。

でもやっぱり心配だ。
そうだ。明日の文化祭は出来る限りお兄ちゃんを守ろう。
危なくなりそうだったら、誰かに助けを求めに走ればいいよね?
そう心に決めた私は、お兄ちゃんにぎゅっと抱きついた。

(お兄ちゃん、絶対に守るからね?)

優しく頭を撫でてくれるお兄ちゃんの手に、私は意識がぼんやりと遠のいていくのを感じてゆっくりと目を閉じた。

「もしそんな奴がいたら、ボコボコにして返り討ちにしてやるしな。花奈もなんかあったら言えよ?……花奈?寝たのか?泣きつかれて寝るなんて、小さい子供みたいだな。」



そんな話をしていたのがつい昨日だった。
はずなのに。
どうしてこうなった?

「あのさあ、君、四楓院様とどういう関係なの?」

お兄ちゃんの高校の文化祭。

お兄ちゃんを守る!と心に決め、今日に臨んだ私は今、階段の踊り場で何故か壁に押し付けられている。
目の前にいるのは柴崎蓮。

もう1度言おう。
どうしてこうなった?






しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

処理中です...