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中学生編
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「あのさあ。キミだれ?四楓院様から声をかけるなんて、有り得ないんだけど。」
特別教室のある校舎の階段の踊り場で。
私は今、逃げないように壁に押さえつけられている。
トイレを探してさ迷っていたら、いきなり捕まったのだ。
柴崎蓮は意外に背が高かった。
兄には及ばないが、綺麗な顔をしている。お兄ちゃんより少し華奢かもしれない。だけど、私に比べたら腕とか肩幅はしっかりとしており、男のひとを感じさせる。
(もっと、なよなよしてて、華奢で女の子っぽいのかと思った。)
「ていうか、地味。なんなの、この髪型。中学生になったんならもう少し気を使えば?」
(うるさいなあ。この後ろで一本結びが楽なんです~。)
「……髪質は悪くないんだから。このゴム邪魔。」
(えっ。)
彼は私の髪をさわっていたと思うと、ゴムを私の髪から抜き去って自分のポケットに入れてしまった。そしてポケットから櫛を取り出し、私の髪を整えはじめた。
ある程度すると、彼は満足げに笑った。
「うん。少しはマシになった。四楓院様から話しかけるような子なのに、あんまり地味だと困るからね。だだでさえ、最近目障りな奴がいるのに。ああ。あんたみたいなの四楓院様が相手になんかするわけないのはわかってるから。どうせハンカチ落としたとか、そういうのでしょ?」
先程、お母さんと校内を歩いている時に、四楓院先輩に声をかけられた。アイスの一件があったから、私の顔を覚えていたらしい。お母さんも一緒だったので、お互い挨拶程度だったのだが。
彼はその時の私達を見ていたのだろうか。
(ほんとに一瞬なんだけど。ありえないくらいのタイミングだなあ。)
別にハンカチを落とした訳では無いが、私は黙っていた。
君子危うきに近寄らず、である。
無言の私に気を良くしたのか、彼は満足気な表情で私に微笑みかけると、私に近づいた。壁に押し付けられているので、顔が近い。身じろぎした私の耳元で彼が囁いた。
「でも、四楓院様から話し掛けられたからって調子にのるようだったら、許さないから。それは覚えておきなよ。」
そして、彼は携帯電話を取り出すと、いきなり会話をはじめた。
「……はあ?だから、少し痛い目みせるんでしょう?……はあ?逃げるのが素早い?知らないよそんなの。」
(え。これって、お兄ちゃんのこと?)
柴崎蓮は、携帯電話をポケットにおさめると、私には興味をなくしたように歩きはじめた……が、いきなり怪訝そうに振り返った。
私は彼の制服を無意識に掴んでいた。
「……なに。ボク忙しいんだけど。」
「あ、あのですね。ええと……」
彼は私を数秒間くらいじっと見ていたかと思うと、私の手を乱暴に払い除けた。
そして私を無視するように数歩進むと、振り返って私を見た。
「ついてこないの?迷子でしょ?置いていくよ。」
「あ、ええと……。は、はいっ!」
歩調をゆるめる気もないらしい彼のあとを私は走るように追いかけた。私は息を乱しながら、思い切って彼に問いかけた。
「あのっ。今から、どこかに、行かれるんですか?」
「あんたには、関係ないよね。あ。ここからは自分で行って。」
校舎の裏手の方に歩いていく彼の後ろ姿を私はじっと見ていたが、悩みを振り切るように頭を一振した。
もしかしたら、お兄ちゃんが。それとも、他の誰かが危ないめにあっているかもしれない。
私は彼の去った方角を睨みつけると、追いかけるように走りだした。
(お兄ちゃん、絶対助けるからね?)
特別教室のある校舎の階段の踊り場で。
私は今、逃げないように壁に押さえつけられている。
トイレを探してさ迷っていたら、いきなり捕まったのだ。
柴崎蓮は意外に背が高かった。
兄には及ばないが、綺麗な顔をしている。お兄ちゃんより少し華奢かもしれない。だけど、私に比べたら腕とか肩幅はしっかりとしており、男のひとを感じさせる。
(もっと、なよなよしてて、華奢で女の子っぽいのかと思った。)
「ていうか、地味。なんなの、この髪型。中学生になったんならもう少し気を使えば?」
(うるさいなあ。この後ろで一本結びが楽なんです~。)
「……髪質は悪くないんだから。このゴム邪魔。」
(えっ。)
彼は私の髪をさわっていたと思うと、ゴムを私の髪から抜き去って自分のポケットに入れてしまった。そしてポケットから櫛を取り出し、私の髪を整えはじめた。
ある程度すると、彼は満足げに笑った。
「うん。少しはマシになった。四楓院様から話しかけるような子なのに、あんまり地味だと困るからね。だだでさえ、最近目障りな奴がいるのに。ああ。あんたみたいなの四楓院様が相手になんかするわけないのはわかってるから。どうせハンカチ落としたとか、そういうのでしょ?」
先程、お母さんと校内を歩いている時に、四楓院先輩に声をかけられた。アイスの一件があったから、私の顔を覚えていたらしい。お母さんも一緒だったので、お互い挨拶程度だったのだが。
彼はその時の私達を見ていたのだろうか。
(ほんとに一瞬なんだけど。ありえないくらいのタイミングだなあ。)
別にハンカチを落とした訳では無いが、私は黙っていた。
君子危うきに近寄らず、である。
無言の私に気を良くしたのか、彼は満足気な表情で私に微笑みかけると、私に近づいた。壁に押し付けられているので、顔が近い。身じろぎした私の耳元で彼が囁いた。
「でも、四楓院様から話し掛けられたからって調子にのるようだったら、許さないから。それは覚えておきなよ。」
そして、彼は携帯電話を取り出すと、いきなり会話をはじめた。
「……はあ?だから、少し痛い目みせるんでしょう?……はあ?逃げるのが素早い?知らないよそんなの。」
(え。これって、お兄ちゃんのこと?)
柴崎蓮は、携帯電話をポケットにおさめると、私には興味をなくしたように歩きはじめた……が、いきなり怪訝そうに振り返った。
私は彼の制服を無意識に掴んでいた。
「……なに。ボク忙しいんだけど。」
「あ、あのですね。ええと……」
彼は私を数秒間くらいじっと見ていたかと思うと、私の手を乱暴に払い除けた。
そして私を無視するように数歩進むと、振り返って私を見た。
「ついてこないの?迷子でしょ?置いていくよ。」
「あ、ええと……。は、はいっ!」
歩調をゆるめる気もないらしい彼のあとを私は走るように追いかけた。私は息を乱しながら、思い切って彼に問いかけた。
「あのっ。今から、どこかに、行かれるんですか?」
「あんたには、関係ないよね。あ。ここからは自分で行って。」
校舎の裏手の方に歩いていく彼の後ろ姿を私はじっと見ていたが、悩みを振り切るように頭を一振した。
もしかしたら、お兄ちゃんが。それとも、他の誰かが危ないめにあっているかもしれない。
私は彼の去った方角を睨みつけると、追いかけるように走りだした。
(お兄ちゃん、絶対助けるからね?)
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