兄がBLゲームの主人公だったら…どうする?

なみなみ

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中学生編

33 環

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三田が新しいクマ太郎のクレーンゲームを見つけたと教えてくれた。
映画館も同じ施設内にあるので、ついでに映画もみよう、という話しになって、俺と蓮琉と三田と花奈の4人で出かけることにした。
ストーカー事件以来、花奈がその時のことを思い出すたびに手が震えたり、泣き出しそうになるのを知っていた俺は、人混みにでるのはまだ早いのではないかと心配したが、気分転換になるかもしれないと考え直した。
蓮琉もいるしな。

花奈と蓮琉は、ストーカー事件の後いつの間にか仲直りしていた。

次の日、蓮琉に呼び出された俺は、告白されることになった。
もちろん、俺への告白ではない。
蓮琉は花奈への思いをやっと自覚したらしい。
花奈への思いを延々と騙るヤツを俺は遠い目で見ていた。

二人が仲直りしたことは、うれしいし、ありがたい。
だがしかし。
蓮琉の花奈を見る目が甘すぎる。
自覚した途端これかよ?やってることは前とかわりないのに、表情とか、花奈を見る目とか。全然違うんだよ、これが。
愛しいものを見る目っていうのかな。
柴崎なんて、仲直りした二人を見てすぐ眉をしかめて、『なにこれ。砂はいていい?』って言ってたもんな。その後、『でも兄ポジションからの脱却は大変そうだよね。』と意味深に笑ってたんだけど。

映画館に行っても蓮琉の求愛行動は止まらなかった。
映画を見る時に隣にすわり、手を離さない。
映画を見ずに花奈をじっと見つめてる。
映画館から出る人混みの中、危ないからって腰抱いて。お前わざとだろってくらい密着してるし。

さすがに花奈も何かおかしいと思ってるみたいだけどな。
でも、今までも同じようなことしてきてるからなあ。

それにしても花奈もすげえな。蓮琉にあんなに甘く見つめられたりしてたら、もしかして蓮琉クン私のこと好きなのかしら?ドキドキっ!てならないのかな。普通の女の子だったらのぼせ上がって、絶対その気になってるぞ。

俺は以前聞いた柴崎の『兄ポジション脱却』の言葉を思い出した。
花奈にとっての蓮琉の立場ってなんなんだろう。
恋人って雰囲気でもないしな。やってることはそのまんまだけど。



三田も蓮琉の変わりように目を丸くしていた。

おかしいといえば三田もおかしい。
話しかけても生返事だし。 
何だかそわそわしてるし。

映画に行くって話も決まった時はわかりやすく浮かれてたのに、昨日あたりからテンションが下がって、なんだかだるそうな態度になっている。
何かありましたって言ってるようなモンだよな。

花奈が危なかった時、九条沙也加とデートしてたって聞いた時には頭に血がのぼりかけたけど。
花奈がストーカーされてるって教えてくれたのはこいつだし、おかげで間一髪助かったのも事実だ。
九条沙也加について、これからのことを話あおうと蓮琉の家に集まった時、三田が九条沙也加とデートしてたって花奈が教えてくれた。どうしよう。三田は九条沙也加側のヤツなんだろうか。三田は帰らせるか?とも悩んだんだけど。蓮琉と柴崎と一瞬でアイコンタクトして、その日の主題を対九条沙也加から、花奈のストーカー相手の話にすりかえた。

今でも思う。
あの日、三田が、最後まで花奈を送ってくれていたら。
蓮琉が花奈に相談されかけた時、ちゃんと話をきいていたら。
俺が、剣道部の合宿に参加していなければ。
花奈は、もしかしたら無事だったかもしれない。

俺も蓮琉もお互いそこについては言葉に出さない。
ただ、今からは絶対花奈を守るという決意は話したけど。

三田は正直よくわからない。
九条沙也加との関係も。別に脅されてるって感じもしないし、あの女に傾倒してるってわけでもない。

高校に入ってから知り合ったので、三田のことをよく知ってるわけじゃない。
でも、悪いヤツではないのかな、とは思う。


映画館で、花奈がトイレに行くといって別行動することになったので、ゲームセンターで待ち合わせということにした俺は蓮琉と一緒に歩いていた。三田はいつの間にか姿が見えない。
隣を歩く蓮琉が俺に話しかけてきた。
「三田どこに行ったのかな。あいつ時々ふらっといなくなるよな。」
「どうかな。あいつ、今日も朝から様子が変だしな。心ここにあらずというか。蓮琉、何か聞いてるか?」
「いや、きいてない。……なあ、環は、あいつのことどう思う?」

蓮琉が、俺をじっと見つめてきた。
「あいつって……三田?」
「ああ。……九条沙也加と、関係があるんだろうか。」
「関係はあるだろ。やることやってんじゃねえの?高校入ってすぐの頃は女の香水の匂いぷんぷんさせてたし。そういえば最近はあんまりなかったな。」
「やることやってるって……まあ、そうだよな。環、俺が言いたいのはそうじゃなくて……っ。」
俺は蓮琉の肩をポン、と叩いた。
「ごめん。わかっててはぐらかした。あいつ、この前、花奈がストーカーされてるって教えてくれたんだよ。九条沙也加の仲間だったら、俺に連絡なんてよこさないんじゃないのかな、とも思うんだよな。まあ、あんまり考えてなさそうだから、無意識に使われたりしてるかもしれないけど。」
「だったら……っ。俺は花奈を守りたい。もう間違えたくないんだ。」
「花奈を守りたいのは、俺だって同じだ。でも、あいつ悪いヤツじゃない気がするんだよな。ポン太に、似てるし。」
「ポン太?」
「そう。じいちゃん家で飼ってた犬。ゴールデンレトリバー。すげえバカでいろいろやらかすんだけど、なんだか憎めないんだよなあ。」

ゲームセンターに着いた俺達は中には入らず出入口で待機した。
しばらく待ったが、花奈が帰ってこない。
しびれをきらした俺は、花奈に電話をかけてみることにした。
「あれ。出ないぞ。あいつ。まさか、また迷ってんのかな。」
花奈はよく迷子になるからな。
今頃慌てて、探し回ってるのかもしれない。

蓮琉が隣でポツリと呟いた。
「今度からトイレまでついて行こいこうかな。」

(こいつ、本気で女子トイレに一緒に入りそうだな。)
俺はまだブツブツ言っている蓮琉をとりあえず放置し、再度電話をかけてみることにした。

「花奈?今どこ……え?三田?……うわ。きりやがった。」

俺花奈の携帯にかけたよな。
なんで三田がでるんだ?

「花奈、なんて?」
不安そうな蓮琉に、俺は曖昧に微笑んだ。
「いや。またさっき俺達がいたカフェにいるらしい。」
蓮琉は眉をひそめた。
おかしいよな。俺もそう思う。
蓮琉は俺を問いただそうとしたが、すぐに思い直したのか、素早く身を翻した。
俺達は急いでついさっきまで入っていたカフェに向かうために走り出そうとした。

したのだが。
突然五、六人の女に取り囲まれた。
確か、二年生の女生徒だ。蓮琉に話しかけに教室に来たのを覚えている。なんとか話を終わらせようとするのだが、しつこく話しかけてきて、なかなか逃れられない。蓮琉も花奈のもとに早く行きたいのに邪魔をされて、イライラしているのだろう。顔がひきつっているのを通り越して、物騒な表情になっている。この顔みても平気で話しかけてくるのってどうよ。すげえ精神力だよな。
これはもう強行突破しかない、と思った俺はさらに出鼻をくじかれることになった。
その女は俺達の背後から近づいてきた。
いい加減覚えたくもないのに憶えさせられた香水の匂いがただよう。

「あら、偶然ね。一条くん、斎藤くん。」

振り向いた俺達の前で艶然と微笑むのは、九条沙也加だった。
絶対、偶然じゃねえだろ!?


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