背徳の海に舞うナリラ

菜種K

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第一章

8.双頭の蛇

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 ナリラを抱きしめていたイシュタ=ラは、彼女を放しながら指先で頬を撫でた。
 
 ナリラの胸を甘い痺れが走る。
「もっと……」
 と心の奥で囁くような欲望が芽生える。

 だが、そのとき。
 魔女の体に視線を落としたナリラは見た。

 イシュタ=ラの腰に絡んでいた飾り紐が、大きな双頭の蛇の魔物に姿を変えたのを!

 ドッドッドッドッ……ドッドッドッドッ……
 
 蛇は鎌首をもたげ、鱗の光沢をきらめかせて現れた。
 ぬらりと舌を伸ばすその異形は、女を求めていきり立つ凶暴な男そのものに似ておぞましく、淫靡な姿だった。
 
 浜辺で見た、あれよりも。
 友の肉体を貫いていたあれよりも、はるかに大きい!

「ひっ……いやああああぁっ!」
 
 ナリラの顔から血の気が引く。
 さっきまで胸を支配していた甘美な感覚は、一瞬で恐怖と嫌悪に塗り潰された。
 彼女は必死に身体を引こうとした。

 だが背後で、かさり、と音がした。
 次の瞬間、影から躍り出た蜘蛛の魔物が糸を吐き、ナリラの手首と足首を絡めとった。
「やめて! いや! 放して!」
 必死に叫ぶが、糸はきしむ音を立ててさらに締まり、四肢をクッションに縫いとめる。

 涙が溢れる。恐怖に体が震える。
「お願い、こんなの……やめて!」
 その懇願に答える代わりに、イシュタ=ラは薄く笑った。
「大丈夫……痛みはすぐに変わるわ。愛しさに……」

 蛇の頭の一方はイシュタ=ラの秘所へ潜り込み、もう一方がナリラの太腿を這い上がってくる。

 南海の魔女が切ない吐息を漏らした。
「ああ……」
 イシュタ=ラの腰に飲み込まれた蛇は、彼女の大きく膨らんだ花芯に舌を絡ませ、それを噛みしめながら責め立てていた。

 その姿は背徳そのもの。

 一方のナリラは太ももに触れる鱗の感触に鳥肌を立て、首を振り続ける。
「いや! いや! いやだ……いやぁあっ!」

 けれど、蜘蛛の糸に押さえつけられたまま、彼女は抗えなかった。

 蛇の頭部が彼女の秘所へと迫り、その熱と湿り気が触れた瞬間、ナリラは悲鳴を上げた。
「いやぁあっ! やめて、お願いっ!」
 蜘蛛の糸がきしみ、両脚は大きく開かされる。
 逃げようとする意志とは裏腹に、体は縫い付けられた人形のように動かない。

 ──こんな忌まわしい獣に、初めてを奪われるなんて!

 その考えが胸に浮かんだ瞬間、ナリラの心を奇妙な酩酊感が支配した。

 理不尽すぎる暴力に対する恐怖が、なぜか彼女を昂ぶらせる。
 自分は選ばれた犠牲者なのだ。
 誰も経験したことのない苦痛と屈辱を、ただひとり味わっている──そんな歪んだ誇りが、胸の奥で疼き始めた。

 しかし、意識の表層はそれを否定しようと必死に抵抗する。
「いや……いやぁよぉ……」
 涙に濡れた声は震えていた。

 イシュタ=ラはその様子を見て、妖艶に囁く。

「そう……恐怖に震えるあなたは美しいわ。苦しみも、拒絶も、すべて甘美な蜜になるのよ。今こそ迎えるのよ! 恥辱と愉悦と快楽のすべてを!」

 蛇の頭がついにナリラの秘所にたどり着いた。
 
 固く閉じられた蕾に舌を這わせる。
 ナリラは必死に抵抗して足の間に力を入れようとしたが、そこからはすでに蜜が溢れ、何ものの侵入を阻む力も持っていなかった。
 蛇は不意に激しく身をくねらせ、しゃにむに純潔の門を穿ち──

 血と蜜を浴びながらナリラの奥へと侵入していった。

「きゃああぁあぁああぁあーーーっ!!」

 純潔を守る花弁は引き裂かれ、蛇に食みつくされてゆく。
 ナリラはおぞましい激痛にはっきり悟った。
 自分は失ったのだ。
 
 女神ムロシャラを裏切り、冒涜し、仕える資格を失った。
 だが、その痛みに混じって底知れない快楽の影がすでに忍び寄っていた。

 ナリラは頭を振り乱し、蜘蛛の糸を必死に引きちぎろうとする。
 だが、糸は鋼鉄のように固く、腕も脚も、腰すらも絡め取られていた。

「やめて……やめてぇっ……!」
 喉が枯れるほどの叫び。

 それでも蛇は容赦なく蠢き、彼女の奥へ奥へと食い進んでいく。
 喰われている──その理不尽さに、再び胸が震える。

 どうして、私なの……。
 どうして、こんな目に……。

 理不尽さを呪う言葉のはずなのに、胸の奥底ではむしろ酔いしれる感覚が生まれ始めていた。
 こんな屈辱を与えられるのは、世界で自分ただひとり。
 それは選ばれし証のようでもあった。

 ドッドッドッドッ……ドッドッドッドッ……

 南海の魔女は恍惚の表情を浮かべながらドラムのリズムに合わせて激しく腰を打ち震わせ、蛇の頭がものすごい勢いでその奥を突いている。

 その振動は蛇の体を伝って、少女の体にも届いていた。

 「ひぅっ……! あぁっ……いや、い……や!」
 涙と共に漏れた声は、拒絶の悲鳴か、快楽の吐息か分からなくなっていた。

 もう……もう……。
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