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第1章 人生、終わった
第2ガチャ 運命ガチャ① SSR時間巻き戻し券5セット
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彼女の名前は、リッハシャール・ルドヴィガ。
生まれながら高貴で、美しくて誰もがため息をつくほど整った容姿だった。
しかし、出生はとても複雑だった。…いわゆる、婚外子である。
名の知れたとある名家の父に、流浪の踊り子の大恋愛の末に生まれたのだが…問題があった。それは、リッハシャールが不義の恋愛の末生まれた子供というところに起因する。
さて、夫人と父の間に子供はおらず、このままではどこぞの異国の血を引く妾の子供が長子となる。それを心よしとしない周囲の大人たちは、婦人をけしかけ、妾となった母をいびり倒した。
「お前さえいなければ!!!」
いびっていびっていびり倒し…精神的に追い詰められた母は数年後息を引き取る。
結果的に父はリッハシャルをそのまま養子として引き取ることになったわけだけど、異国の血を引く母に似て、黒い髪に、まるで宝石のようなサファイヤの瞳、陶器のような素肌に、長い手足。その全てが夫人の目には不快に映り、母の死後、その毒牙はリッハシャールに向かうこととなる。
「あんたの容姿は、あの妾の顔を思い出してイライラする」
そんな理由で、幼いリッハシャールは鞭で打たれ、食事も制限されていた。
父は仕事で忙しく、養母となる夫人との相性最悪な日々…しかし、更なる悲劇が彼女を襲う。
夫人が男児を出産したのだ。
ようやく生まれた年下の弟は、溺愛され、後継教育を施されることになる。しかし…ほどなくして父も母の後を追うように他界。家の権威は夫人とその子供にわたってしまう。
味方を完全に失ったリッハシャールの人生は、それから更に不幸のどん底へと落ちていく。その整った容姿がいらぬ災いを呼ぶことを知っていたリッハシャールは、自ら顔に蝋燭を押し付けひどいやけど痕を遺す。
異常な行動に恐怖した伯爵夫人は、そのまま彼女を離れの邸に閉じ込め、いないものと扱った。
だが、それでも満足しない夫人はリッハシャールをさらに苦しめる方法を思いつく。世間の目にさらされていないことをいいことに、彼女の悪口雑言をあちらこちらに言いふらし、遂には「黒魔術に傾倒している。毎夜男を買っては、呪術の実験をしている」などという偽情報を流したのだ。
元々婚外子の立場は弱く、格好の噂の的。
徐々にリッハシャールの噂は独り歩きし…結果、この処刑の日を迎えることになったのだ。
「ん…あれ?」
目を覚まして、顔に手を触れる。実は、自分が今どんな姿なのか皆目見当もつかないが……やけどの跡が痛々しい、つまり、これはそういうことだろう。
美女の人生ってば、大変なのね。
「…あなたも、ろくでもない人生だったんだね、リッハシャール…」
それから比べると、自分など、まだましな方かもしれない。
重たい身体を励ましながら起き上がると…自分の身体に傷は本当に手当されていることに気が付いた。
(罪人に手当までするの?どんだけ死んでほしくないわけ??)
最後に聞いた、たいこう様だかは、何者なのか?あまりに整った顔過ぎて、まるで印象に残っていないが、まどろっこしいことするくらいなら、助けてくれればいいのに。
さて…ここはどうやら独房のようで、冷たい石畳みの上には、簡素な藁が敷き詰められた布団が一枚だけ。手足は自由に動くので、枷はしていないようだった。
「どちらにせよ…私はわざわざ死ぬ為にここに来たのかな」
確か、直前人生ガチャとか言っていたけど、やはりあれはただの夢だったのかもしれない。もういいや、再び諦めて横になろうとしたら…
「いて」…こつん
何処からか、何かボールのような物が転がって来た。
「ボール…どこから」
手に取ってみると…それは金色の卵のような形で、材質は…触り慣れたプラスチックのようだ。
よくある500円ガチャに似てるような。この世界、ガチャもあるの??
手に持ってみると、からからと音がする。
「まさか、開いたり」
ぱかん、と乾いた音共に卵が割れた…割れた、というよりこれは。
中から、ふよふよと蛍のような弱々しい無数の光が浮かび上がる。それを手に取った瞬間、頭の中で声がした。
『運命ガチャを回しますか?』
「…はい?」
『もう一度聞きます。運命ガチャを回しますか?制限時間は10秒です。10,9,8』
ぽかんと口を開けたままの私は、ふと我に返る。
(え?!今運命ガチャって言った…!)
『3.2』
「あーーーやりますやります!!ガチャ!回します!!!」
ぴたり。カウントが止まった。そして…ふよふよ浮いていた光の粒は、SRと書かれた銀色の卵型になり、私の両手にすっぽりと収まった。ぎゅっと捻ると、どうやら開きそうだ。
「ガチャって…これ?」
さて、ガチャ、というのは…いわゆる一種の宝くじのような物、と認識している。
と、言うのも、私はこういったガチャとかそういうものをあまりやらない。だって思っていたものと違うものが手に入ったら、どうももったいないような、損したような気分になる。
さて、運命の場合は…どうなるんだろう。
「開けるよ…!えい」
ぱきん。
間抜けな音が響き、いよいよ金色の卵が割れる。そして中から飛び出してきたのは…紙切れ五枚。
「紙切れ…五枚…って」
これは外れ?
いや、違う。よく見ると、時間戻し引換券とかいてある。
時間戻し‥‥って、え?
斜め上すぎる景品に、ひとまず紙切れを隅々まで調べてみる。紙質は…厚紙系、書かれた文字は、多分日本語。しかも筆字‥‥そして、大きく「時間戻し引換券」とでかでかと書いてあったのだ。
「……ひい、ふう…うん、五枚」
不親切なのは…どの程度まで時間が戻せて、一枚につきどれ位の効果が得られるのか、時間を戻した後はどうなるのか、など説明が不足している!等々多々あるけれど。
「一枚で一秒とかだったら終わりだけど……」
さて、ここで状況を整理しよう。
私は独房なう、その内処刑される運命、多分。…え、完全に詰んでない?
このまま待ってても、恐らく待つのは――― ダメだ想像したくない。ついでに言うと、万が一そうなったとして、またあの現代の社会になんて戻りたくない。
「ま、まあ…そのまま消えちゃう可能性もあるけどさ…でも」
…これは、一枚一枚ちまちま使うべき?
それとも一気に行っちゃう?
私の決断は…。
「とりあえず!!一枚使おう!!!」
そう叫んだ瞬間…ぱっと私の周りが明るくなり、どこからかカチカチ…という歯車のような音が聞こえた。その音はどんどんどん加速していき、目を開いていられないくらい眩しくなる。そして
「ほぁ?!!」
ビュンっ!!!とジェットコースターにでも乗ったかのような突風が巻き起こると…私の目の前の景色は一変していた。
光が一筋しかないくらいの暗闇に、締め切られたカーテン、そして、ほこりをかぶった家具の数々。
そして私の手には…ほとんど燃え尽きそうな蝋燭に、たっぷりと煮えたぎった蝋の入った入れ物だった…
更には恐ろしいことに、まさにその液体を自分の顔にぶっかけようとしている寸前だった。
(ちょ?!え??!これどういう場面!!?)
「ぎゃあああ!!!!!」
…もう間に合うわけがない。
私は絶叫の後、心の中で必死に祈った。
「時間戻し!時間戻し!!!時間戻し――――!!!!」
そして…また、パッと光に包まれ、場面が変わり…私が次にやって来たのは―――
「!!」
ざく。
「?!」
足元を見ると…ここはどうやら屋外のようだ。
ざああ、ざああ…と雨の音が聞こえてきて、吸い込む空気は湿り気を含んでいる。
「ここは…」
目の前にいたのは…喪服の陳列。
皆、黒い傘をさして100メートルくらい先に見える白い壁の教会に向かって歩いている。
これは、誰かの葬式だろうか。
「何をぼさっとしているの?」
「!」
甲高く、いかにも不快と嫌悪がにじみ出たような…イライラした声。
振り返るとそこにいたのは…弔いの日にそぐわぬ派手な宝石のついたイヤリングに、血のように真っ赤な口紅。金色に輝くブロンドの髪には赤い髪飾りをつけ、喪服らしいと言えるのは、着ている黒いドレスとブラック・へアドレス位なものだろう。
なるほど、これが。
「伯爵夫人…」
「もたもたしないで」
か細くつぶやいた声にかぶせるように話すあたり、私と会話する気がないのだろう。
私は押し黙り、黙々と前を行く人の歩調に合わせる。
(白い花‥‥じゃあ、これは)
「もしかして…お母さまの、お葬式…?」
生まれながら高貴で、美しくて誰もがため息をつくほど整った容姿だった。
しかし、出生はとても複雑だった。…いわゆる、婚外子である。
名の知れたとある名家の父に、流浪の踊り子の大恋愛の末に生まれたのだが…問題があった。それは、リッハシャールが不義の恋愛の末生まれた子供というところに起因する。
さて、夫人と父の間に子供はおらず、このままではどこぞの異国の血を引く妾の子供が長子となる。それを心よしとしない周囲の大人たちは、婦人をけしかけ、妾となった母をいびり倒した。
「お前さえいなければ!!!」
いびっていびっていびり倒し…精神的に追い詰められた母は数年後息を引き取る。
結果的に父はリッハシャルをそのまま養子として引き取ることになったわけだけど、異国の血を引く母に似て、黒い髪に、まるで宝石のようなサファイヤの瞳、陶器のような素肌に、長い手足。その全てが夫人の目には不快に映り、母の死後、その毒牙はリッハシャールに向かうこととなる。
「あんたの容姿は、あの妾の顔を思い出してイライラする」
そんな理由で、幼いリッハシャールは鞭で打たれ、食事も制限されていた。
父は仕事で忙しく、養母となる夫人との相性最悪な日々…しかし、更なる悲劇が彼女を襲う。
夫人が男児を出産したのだ。
ようやく生まれた年下の弟は、溺愛され、後継教育を施されることになる。しかし…ほどなくして父も母の後を追うように他界。家の権威は夫人とその子供にわたってしまう。
味方を完全に失ったリッハシャールの人生は、それから更に不幸のどん底へと落ちていく。その整った容姿がいらぬ災いを呼ぶことを知っていたリッハシャールは、自ら顔に蝋燭を押し付けひどいやけど痕を遺す。
異常な行動に恐怖した伯爵夫人は、そのまま彼女を離れの邸に閉じ込め、いないものと扱った。
だが、それでも満足しない夫人はリッハシャールをさらに苦しめる方法を思いつく。世間の目にさらされていないことをいいことに、彼女の悪口雑言をあちらこちらに言いふらし、遂には「黒魔術に傾倒している。毎夜男を買っては、呪術の実験をしている」などという偽情報を流したのだ。
元々婚外子の立場は弱く、格好の噂の的。
徐々にリッハシャールの噂は独り歩きし…結果、この処刑の日を迎えることになったのだ。
「ん…あれ?」
目を覚まして、顔に手を触れる。実は、自分が今どんな姿なのか皆目見当もつかないが……やけどの跡が痛々しい、つまり、これはそういうことだろう。
美女の人生ってば、大変なのね。
「…あなたも、ろくでもない人生だったんだね、リッハシャール…」
それから比べると、自分など、まだましな方かもしれない。
重たい身体を励ましながら起き上がると…自分の身体に傷は本当に手当されていることに気が付いた。
(罪人に手当までするの?どんだけ死んでほしくないわけ??)
最後に聞いた、たいこう様だかは、何者なのか?あまりに整った顔過ぎて、まるで印象に残っていないが、まどろっこしいことするくらいなら、助けてくれればいいのに。
さて…ここはどうやら独房のようで、冷たい石畳みの上には、簡素な藁が敷き詰められた布団が一枚だけ。手足は自由に動くので、枷はしていないようだった。
「どちらにせよ…私はわざわざ死ぬ為にここに来たのかな」
確か、直前人生ガチャとか言っていたけど、やはりあれはただの夢だったのかもしれない。もういいや、再び諦めて横になろうとしたら…
「いて」…こつん
何処からか、何かボールのような物が転がって来た。
「ボール…どこから」
手に取ってみると…それは金色の卵のような形で、材質は…触り慣れたプラスチックのようだ。
よくある500円ガチャに似てるような。この世界、ガチャもあるの??
手に持ってみると、からからと音がする。
「まさか、開いたり」
ぱかん、と乾いた音共に卵が割れた…割れた、というよりこれは。
中から、ふよふよと蛍のような弱々しい無数の光が浮かび上がる。それを手に取った瞬間、頭の中で声がした。
『運命ガチャを回しますか?』
「…はい?」
『もう一度聞きます。運命ガチャを回しますか?制限時間は10秒です。10,9,8』
ぽかんと口を開けたままの私は、ふと我に返る。
(え?!今運命ガチャって言った…!)
『3.2』
「あーーーやりますやります!!ガチャ!回します!!!」
ぴたり。カウントが止まった。そして…ふよふよ浮いていた光の粒は、SRと書かれた銀色の卵型になり、私の両手にすっぽりと収まった。ぎゅっと捻ると、どうやら開きそうだ。
「ガチャって…これ?」
さて、ガチャ、というのは…いわゆる一種の宝くじのような物、と認識している。
と、言うのも、私はこういったガチャとかそういうものをあまりやらない。だって思っていたものと違うものが手に入ったら、どうももったいないような、損したような気分になる。
さて、運命の場合は…どうなるんだろう。
「開けるよ…!えい」
ぱきん。
間抜けな音が響き、いよいよ金色の卵が割れる。そして中から飛び出してきたのは…紙切れ五枚。
「紙切れ…五枚…って」
これは外れ?
いや、違う。よく見ると、時間戻し引換券とかいてある。
時間戻し‥‥って、え?
斜め上すぎる景品に、ひとまず紙切れを隅々まで調べてみる。紙質は…厚紙系、書かれた文字は、多分日本語。しかも筆字‥‥そして、大きく「時間戻し引換券」とでかでかと書いてあったのだ。
「……ひい、ふう…うん、五枚」
不親切なのは…どの程度まで時間が戻せて、一枚につきどれ位の効果が得られるのか、時間を戻した後はどうなるのか、など説明が不足している!等々多々あるけれど。
「一枚で一秒とかだったら終わりだけど……」
さて、ここで状況を整理しよう。
私は独房なう、その内処刑される運命、多分。…え、完全に詰んでない?
このまま待ってても、恐らく待つのは――― ダメだ想像したくない。ついでに言うと、万が一そうなったとして、またあの現代の社会になんて戻りたくない。
「ま、まあ…そのまま消えちゃう可能性もあるけどさ…でも」
…これは、一枚一枚ちまちま使うべき?
それとも一気に行っちゃう?
私の決断は…。
「とりあえず!!一枚使おう!!!」
そう叫んだ瞬間…ぱっと私の周りが明るくなり、どこからかカチカチ…という歯車のような音が聞こえた。その音はどんどんどん加速していき、目を開いていられないくらい眩しくなる。そして
「ほぁ?!!」
ビュンっ!!!とジェットコースターにでも乗ったかのような突風が巻き起こると…私の目の前の景色は一変していた。
光が一筋しかないくらいの暗闇に、締め切られたカーテン、そして、ほこりをかぶった家具の数々。
そして私の手には…ほとんど燃え尽きそうな蝋燭に、たっぷりと煮えたぎった蝋の入った入れ物だった…
更には恐ろしいことに、まさにその液体を自分の顔にぶっかけようとしている寸前だった。
(ちょ?!え??!これどういう場面!!?)
「ぎゃあああ!!!!!」
…もう間に合うわけがない。
私は絶叫の後、心の中で必死に祈った。
「時間戻し!時間戻し!!!時間戻し――――!!!!」
そして…また、パッと光に包まれ、場面が変わり…私が次にやって来たのは―――
「!!」
ざく。
「?!」
足元を見ると…ここはどうやら屋外のようだ。
ざああ、ざああ…と雨の音が聞こえてきて、吸い込む空気は湿り気を含んでいる。
「ここは…」
目の前にいたのは…喪服の陳列。
皆、黒い傘をさして100メートルくらい先に見える白い壁の教会に向かって歩いている。
これは、誰かの葬式だろうか。
「何をぼさっとしているの?」
「!」
甲高く、いかにも不快と嫌悪がにじみ出たような…イライラした声。
振り返るとそこにいたのは…弔いの日にそぐわぬ派手な宝石のついたイヤリングに、血のように真っ赤な口紅。金色に輝くブロンドの髪には赤い髪飾りをつけ、喪服らしいと言えるのは、着ている黒いドレスとブラック・へアドレス位なものだろう。
なるほど、これが。
「伯爵夫人…」
「もたもたしないで」
か細くつぶやいた声にかぶせるように話すあたり、私と会話する気がないのだろう。
私は押し黙り、黙々と前を行く人の歩調に合わせる。
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「もしかして…お母さまの、お葬式…?」
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