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第1章 人生、終わった
第3ガチャ 運命ガチャ② R1父の好感度UPチャンス!!券
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さて、この身体に残っている記憶を掘り起こしてみよう。
実母はある日突然の死を迎える。それはリッハシャル=ルドヴィガが5歳の時、原因は…病死。
つまり、これはリッハシャルが5歳の時の出来事。
そしてこの10年後実父の伯爵は逝去し、その後の人生を悲観して煮えたぎった蝋を自分の顔にぶちまける、と。
(なんて極端な。いいえ、発想がぶっ飛んでる?)
よく見れば、私の手足は短いし、歩き方もどこかつたない。
今更5歳かあ…と思いつつも、今自分の意識は律葉のままなので、不幸中の幸いというか、むしろラッキーかも?
これは天才少女の名をほしいままにできて、人生イージーモードに転換できたり…?!
なんて、一瞬小躍りしそうになったけど、今は母の葬式…つまりは、リッハシャルにとっては最大の味方であり、大切な母親を亡くした時でもある。
「…うん、今は」
母を弔いたい。…このリッハシャルの身体である以上、血のつながった親子なのだから。
教会の中に入ると、祭壇の前に棺が置かれている。
中で眠るように横たわっているのは、黒く長い髪の若い女性で、顔は白布がかかっているので見えないけれど…これが、母親になるのだろう。
「おかあ…さん」
見れば、棺の前でうなだれる伯爵の姿が見えた。
…ここで、全身から汗が噴き出す。その理由は…伯爵の横に寄り添うような白い影が見えたから。
「ふぁ?!」
(え?待って。あれは…もしや…)
長い黒髪に、白いドレスの若い女性。
あんなに近くにいるのに、伯爵はまるで気付かない。その女性は、明らかに棺の中で眠っている姿とまるで同じだったのだ。
叫ぶこともできず、かといって誰かに訴えるわけにもいかず…茫然としている私に気が付いたのか、白いドレスの女性はくるりと…こっち見たぁ!!
「!!」
『シャル…!!』
あ、ばっちりと目が遭った。
けれど、女性の表情はさえない、というかむしろ…愕然としている、に近いのかもしれない。
『あなた…だれ?私の子じゃない』
「あ…」
ドン、と別の参列者にぶつかる。
私はさっと端に行き、壁に張り付いた。
「あの…ええと、この子の、お母さん…ですか」
『……』
「ごめんなさい…」
『なぜ、謝るの?』
「その、気が付いたら…リッハシャルは私になってて、その」
『あの子は…運命に負けたのね』
「え?」
思わず顔をあげる。
けれど、母親はゆっくりと首を左右に振ると、弱々しく微笑む。
『名前は?』
「!…ええと、リツハ…です」
『そう…リツハさん。あの人を、お願いね』
「?」
ふわ、と私の額に触ると、そっと撫でた。
瞬間、ビリっ…と、まるで電気が身体を走ったような衝撃を感じる。思わずよろけると、私はうなだれている伯爵の背中にぶつかった。
「!」
「あ…おとう、さま」
「リッハシャル…!」
それだけ言うと震える手で、小さな私の手をぎゅっと握った。
同時に、ひやりとした空気がまとわりつくのを感じる。―――きっと、お母さんが私と伯爵を抱きしめているからかもしれない、と思った。
その後もずっと伯爵は母の棺に土が被さるその瞬間まで、私の手を握っていた。
それからしばらくして。
あれから例の運命ガチャに動きはなく、次の日に目覚めてもその次の日も5歳のままだったので、もうこれで人生リスタートとなるらしい、と諦めた。
ここで、一つの仮説を立てる。
この転生…確か、実験とか言っていた。リッハシャルと私の運命が入れ替わったのかもしれない。
神様のきまぐれかはたまた、私如きでは想像できない理由があるのか…とにかく私の人生はまた始まったということになる。どの程度ガチャが干渉してくるのか、それが不安要素でもあるけれど。
(それよりあの時間戻し券…もしや一枚五年の計算で戻れるってことなんじゃあ?)
だとしたらあと一枚残っている気がする…ケド、これもあったらラッキーくらいな気持ちでいようと思った。
そして…リッハシャルの記憶では、この後すぐに弟、つまりは伯爵と夫人の間に子供がひとり授かることとなるのだけど。
最近、このルドヴィガ伯爵家には不穏な噂が流れている。
「お二人がうまく行っていないというのは、本当なのでしょうね」
「伯爵さまのふさぎようは見ていられませんわ…夫人には目もくれていないのに」
それが夫人と伯爵の不仲説、である。
…メイドや使用人たちは、私が子供と知っているからか、目の前で噂話やら影口をぽろぽろこぼす。おかげで情報収集は滞りなく、私の今後に利益をもたらすような情報が湯水のように入ってくるのだ。
こんな寒々しい関係性で、どうやったら子供ができるのだろう?
(よくある話だと…いわゆる義務の話で、ああなってそうなるのかな?)
もしかしたら、いっそ生まれたばかりの時に戻ってやり直した方が?と、考えたりもしたけど…残っているかどうかわからないガチャ券を使うほどの勇気を私は持っていない。
それに、この身体の持ち主の記憶を全部塗り替えるみたいで気が進まなかった。
いっそのこと、これがよくある小説の中だの、ゲームの中であるなら話は簡単かもしれないが、残念ながら…私が過去、読み漁った物語の中にはどれも当てはまらないのである。
(頼れるのは、身体に残る記憶だけ…かあ)
それよりも当面の問題は。
「!」
「……」
廊下ですれ違うだけでも、婦人は私を物凄い目で睨んでくる。
(フン。誰がおじけづくものですか!)
「ごきげんよう、伯爵夫人」
「……」
そう。この、伯爵夫人――ロザベーリ・ルドヴィガ。
私の母の葬式にこれ見よがしに派手な化粧してきた鬼畜女である。
ロザベーリは…視覚的な情報としては、婦人と呼ぶには若く(だってまだ20代前半だし)、化粧もスタイルも何時もばっちりで、一般的に美女とされるのだろう。
ただ、心がブスなだけだ。
(この内面ブスに権力持たせたら、リッハシャルはどのみち破滅への道をまっしぐらになる)
今の私の武器は、リッハシャルの持つ未来の記憶と、まだ弟ができていない状態ということ。それと…父親との親子関係の修復が可能な状況にある、ということ。
「…うん!これが一番現実的だよね…って痛!」
こつん。
決意を新たにした瞬間…突如また何かが上から落下し、私の頭を直撃した。
「もうなあに…」
ころころと転がるそれは…金色の卵。それってつまり‥‥
(運命ガチャ!!!)
ころころ、ころころ…と、楕円形の卵は不規則な軌道を描いて転がっていく。まるで、意志を持ったかのように。
「ちょ…逃げんな!!」
ばたばたと通りゆく使用人やらメイド達の間をすり抜け、ガチャの卵を追いかけていく。
「お、お嬢様!?」
「きゃあ」
「ゴ、ごめんなさ…!!あ―――もおお!」
か」身体が小さい!思うように動かないもどかしさを感じつつ必死に追いかける。
やがてそいつは誰かの足元にぶつかり、転がるのを辞めた。
「見つけた!」と、がばりととびかかるのだけど。
「何の騒ぎだ?」
…突如頭上から聞こえた冷たい声にさっと血の気が引く。
こ、この声は。
「あ…ええと」
「リッハシャル…」
「お。おおお おとーさ ま」
何でここに公爵うう?!
口をふがふがいいながら、後ずさる。嘘でしょ―――?!
お父様と仲良くするのが大前提!とか思った矢先にこんな!
『運命ガチャを回しますか?』
「は!!」
パチンコよろしく、てかてか光る台が眩い光と共に上から降ってくる。
(ま、ままじもんの、ガチャ台、来たーーー!!)
は!これは、もしや私にしか見えない演出?
ばっとお父様の顔を見るけど…ダメだ、眉間についた皺は険しく目つきも鋭くて…何考えているのかさっぱりわからない!!!
「どうした、リッハシャル?」
わざとか?と言いたくなるくらい、子供のリッハシャルの目線からは父の顔面の前でガチャ台で揺れている。
『運命ガチャを回しますか?10,9,8---』
(ひく!とりあえずひいとく!)
うんうんと頷くが、機械的なカウントダウンの音は止まない。
『7,6…警告、掛け声がないと、ガチャは発動しません』
この状況で出せるか!!
全力で叫びたいのをこらえ、私は逡巡する。
(引くか、引かざるか―――)
ペナルティはあるのか、それともないのか。
「リッハシャル?」
「お、お父様…」
『5,4,3』
どうする?引く?!
『2,い』
「私!やります!!!!!」
賭け声など知るか。
とりあえずそれっぽいことを叫んだ瞬間、光るガチャ台は膨らんで…ボン!と自爆した。そして無数の光がはじけて、その一つが私の手元にそっと降りる。
(演出が無駄に派手!!)
出てきた景品は…レア1父の好感度UPチャンス!!と、書かれた…筆字の紙だった。
「何を…する気だ?」
「え?!」
「今、やりますと」
「やりま…は!」
言った。私やりますって言った!!
どうしよう、な、何を。そうだ、このガチャ券使おう!使ってしまおう!!
「い、いい…いい子に!なります!だから…元気出して!!!」
「!」
ぱっと周りが光って、手元の券が消えた。
これは…好感度上がった?!恐るおそる目を開けてみると…
「…そうか」
優しい、お父様の笑顔。
「だが、リッハシャル…目的を持つのは大事だが、何を明確にするか、プランを考えねば」
「プ…プラン??あの…お父様が、思ういい子って…?」
「そうだな…自分で考え、行動でき、良いことと悪いことが区別できるような人間かな」
「えっと」
五歳の子供にそんなうんちくを言われても。
ちょっと固すぎる気もするけど…この人はとてもまじめで、誠実な人なんだろうな。
「わ、わかりました!」
「…よし」
すっと出された手をぎゅっと握る。
「……」
これは、好感度ガチャの効果になるの?でも…こういうのは、悪くない、かも。
ふと、視線を感じ、視線だけを動かすと…あ、いた。
壁の向こうで、恨めし気にこちらを睨む継母の姿。
(見てなさいよ、くそばばあ。クソみたいな会社で年上からいびられ続けた社畜マインドのこの私が…お前ごときのいびりなんざ、へでもないわ!!)
こうして…私とロザベーリの静かなる戦いが幕を開けたのだ。
実母はある日突然の死を迎える。それはリッハシャル=ルドヴィガが5歳の時、原因は…病死。
つまり、これはリッハシャルが5歳の時の出来事。
そしてこの10年後実父の伯爵は逝去し、その後の人生を悲観して煮えたぎった蝋を自分の顔にぶちまける、と。
(なんて極端な。いいえ、発想がぶっ飛んでる?)
よく見れば、私の手足は短いし、歩き方もどこかつたない。
今更5歳かあ…と思いつつも、今自分の意識は律葉のままなので、不幸中の幸いというか、むしろラッキーかも?
これは天才少女の名をほしいままにできて、人生イージーモードに転換できたり…?!
なんて、一瞬小躍りしそうになったけど、今は母の葬式…つまりは、リッハシャルにとっては最大の味方であり、大切な母親を亡くした時でもある。
「…うん、今は」
母を弔いたい。…このリッハシャルの身体である以上、血のつながった親子なのだから。
教会の中に入ると、祭壇の前に棺が置かれている。
中で眠るように横たわっているのは、黒く長い髪の若い女性で、顔は白布がかかっているので見えないけれど…これが、母親になるのだろう。
「おかあ…さん」
見れば、棺の前でうなだれる伯爵の姿が見えた。
…ここで、全身から汗が噴き出す。その理由は…伯爵の横に寄り添うような白い影が見えたから。
「ふぁ?!」
(え?待って。あれは…もしや…)
長い黒髪に、白いドレスの若い女性。
あんなに近くにいるのに、伯爵はまるで気付かない。その女性は、明らかに棺の中で眠っている姿とまるで同じだったのだ。
叫ぶこともできず、かといって誰かに訴えるわけにもいかず…茫然としている私に気が付いたのか、白いドレスの女性はくるりと…こっち見たぁ!!
「!!」
『シャル…!!』
あ、ばっちりと目が遭った。
けれど、女性の表情はさえない、というかむしろ…愕然としている、に近いのかもしれない。
『あなた…だれ?私の子じゃない』
「あ…」
ドン、と別の参列者にぶつかる。
私はさっと端に行き、壁に張り付いた。
「あの…ええと、この子の、お母さん…ですか」
『……』
「ごめんなさい…」
『なぜ、謝るの?』
「その、気が付いたら…リッハシャルは私になってて、その」
『あの子は…運命に負けたのね』
「え?」
思わず顔をあげる。
けれど、母親はゆっくりと首を左右に振ると、弱々しく微笑む。
『名前は?』
「!…ええと、リツハ…です」
『そう…リツハさん。あの人を、お願いね』
「?」
ふわ、と私の額に触ると、そっと撫でた。
瞬間、ビリっ…と、まるで電気が身体を走ったような衝撃を感じる。思わずよろけると、私はうなだれている伯爵の背中にぶつかった。
「!」
「あ…おとう、さま」
「リッハシャル…!」
それだけ言うと震える手で、小さな私の手をぎゅっと握った。
同時に、ひやりとした空気がまとわりつくのを感じる。―――きっと、お母さんが私と伯爵を抱きしめているからかもしれない、と思った。
その後もずっと伯爵は母の棺に土が被さるその瞬間まで、私の手を握っていた。
それからしばらくして。
あれから例の運命ガチャに動きはなく、次の日に目覚めてもその次の日も5歳のままだったので、もうこれで人生リスタートとなるらしい、と諦めた。
ここで、一つの仮説を立てる。
この転生…確か、実験とか言っていた。リッハシャルと私の運命が入れ替わったのかもしれない。
神様のきまぐれかはたまた、私如きでは想像できない理由があるのか…とにかく私の人生はまた始まったということになる。どの程度ガチャが干渉してくるのか、それが不安要素でもあるけれど。
(それよりあの時間戻し券…もしや一枚五年の計算で戻れるってことなんじゃあ?)
だとしたらあと一枚残っている気がする…ケド、これもあったらラッキーくらいな気持ちでいようと思った。
そして…リッハシャルの記憶では、この後すぐに弟、つまりは伯爵と夫人の間に子供がひとり授かることとなるのだけど。
最近、このルドヴィガ伯爵家には不穏な噂が流れている。
「お二人がうまく行っていないというのは、本当なのでしょうね」
「伯爵さまのふさぎようは見ていられませんわ…夫人には目もくれていないのに」
それが夫人と伯爵の不仲説、である。
…メイドや使用人たちは、私が子供と知っているからか、目の前で噂話やら影口をぽろぽろこぼす。おかげで情報収集は滞りなく、私の今後に利益をもたらすような情報が湯水のように入ってくるのだ。
こんな寒々しい関係性で、どうやったら子供ができるのだろう?
(よくある話だと…いわゆる義務の話で、ああなってそうなるのかな?)
もしかしたら、いっそ生まれたばかりの時に戻ってやり直した方が?と、考えたりもしたけど…残っているかどうかわからないガチャ券を使うほどの勇気を私は持っていない。
それに、この身体の持ち主の記憶を全部塗り替えるみたいで気が進まなかった。
いっそのこと、これがよくある小説の中だの、ゲームの中であるなら話は簡単かもしれないが、残念ながら…私が過去、読み漁った物語の中にはどれも当てはまらないのである。
(頼れるのは、身体に残る記憶だけ…かあ)
それよりも当面の問題は。
「!」
「……」
廊下ですれ違うだけでも、婦人は私を物凄い目で睨んでくる。
(フン。誰がおじけづくものですか!)
「ごきげんよう、伯爵夫人」
「……」
そう。この、伯爵夫人――ロザベーリ・ルドヴィガ。
私の母の葬式にこれ見よがしに派手な化粧してきた鬼畜女である。
ロザベーリは…視覚的な情報としては、婦人と呼ぶには若く(だってまだ20代前半だし)、化粧もスタイルも何時もばっちりで、一般的に美女とされるのだろう。
ただ、心がブスなだけだ。
(この内面ブスに権力持たせたら、リッハシャルはどのみち破滅への道をまっしぐらになる)
今の私の武器は、リッハシャルの持つ未来の記憶と、まだ弟ができていない状態ということ。それと…父親との親子関係の修復が可能な状況にある、ということ。
「…うん!これが一番現実的だよね…って痛!」
こつん。
決意を新たにした瞬間…突如また何かが上から落下し、私の頭を直撃した。
「もうなあに…」
ころころと転がるそれは…金色の卵。それってつまり‥‥
(運命ガチャ!!!)
ころころ、ころころ…と、楕円形の卵は不規則な軌道を描いて転がっていく。まるで、意志を持ったかのように。
「ちょ…逃げんな!!」
ばたばたと通りゆく使用人やらメイド達の間をすり抜け、ガチャの卵を追いかけていく。
「お、お嬢様!?」
「きゃあ」
「ゴ、ごめんなさ…!!あ―――もおお!」
か」身体が小さい!思うように動かないもどかしさを感じつつ必死に追いかける。
やがてそいつは誰かの足元にぶつかり、転がるのを辞めた。
「見つけた!」と、がばりととびかかるのだけど。
「何の騒ぎだ?」
…突如頭上から聞こえた冷たい声にさっと血の気が引く。
こ、この声は。
「あ…ええと」
「リッハシャル…」
「お。おおお おとーさ ま」
何でここに公爵うう?!
口をふがふがいいながら、後ずさる。嘘でしょ―――?!
お父様と仲良くするのが大前提!とか思った矢先にこんな!
『運命ガチャを回しますか?』
「は!!」
パチンコよろしく、てかてか光る台が眩い光と共に上から降ってくる。
(ま、ままじもんの、ガチャ台、来たーーー!!)
は!これは、もしや私にしか見えない演出?
ばっとお父様の顔を見るけど…ダメだ、眉間についた皺は険しく目つきも鋭くて…何考えているのかさっぱりわからない!!!
「どうした、リッハシャル?」
わざとか?と言いたくなるくらい、子供のリッハシャルの目線からは父の顔面の前でガチャ台で揺れている。
『運命ガチャを回しますか?10,9,8---』
(ひく!とりあえずひいとく!)
うんうんと頷くが、機械的なカウントダウンの音は止まない。
『7,6…警告、掛け声がないと、ガチャは発動しません』
この状況で出せるか!!
全力で叫びたいのをこらえ、私は逡巡する。
(引くか、引かざるか―――)
ペナルティはあるのか、それともないのか。
「リッハシャル?」
「お、お父様…」
『5,4,3』
どうする?引く?!
『2,い』
「私!やります!!!!!」
賭け声など知るか。
とりあえずそれっぽいことを叫んだ瞬間、光るガチャ台は膨らんで…ボン!と自爆した。そして無数の光がはじけて、その一つが私の手元にそっと降りる。
(演出が無駄に派手!!)
出てきた景品は…レア1父の好感度UPチャンス!!と、書かれた…筆字の紙だった。
「何を…する気だ?」
「え?!」
「今、やりますと」
「やりま…は!」
言った。私やりますって言った!!
どうしよう、な、何を。そうだ、このガチャ券使おう!使ってしまおう!!
「い、いい…いい子に!なります!だから…元気出して!!!」
「!」
ぱっと周りが光って、手元の券が消えた。
これは…好感度上がった?!恐るおそる目を開けてみると…
「…そうか」
優しい、お父様の笑顔。
「だが、リッハシャル…目的を持つのは大事だが、何を明確にするか、プランを考えねば」
「プ…プラン??あの…お父様が、思ういい子って…?」
「そうだな…自分で考え、行動でき、良いことと悪いことが区別できるような人間かな」
「えっと」
五歳の子供にそんなうんちくを言われても。
ちょっと固すぎる気もするけど…この人はとてもまじめで、誠実な人なんだろうな。
「わ、わかりました!」
「…よし」
すっと出された手をぎゅっと握る。
「……」
これは、好感度ガチャの効果になるの?でも…こういうのは、悪くない、かも。
ふと、視線を感じ、視線だけを動かすと…あ、いた。
壁の向こうで、恨めし気にこちらを睨む継母の姿。
(見てなさいよ、くそばばあ。クソみたいな会社で年上からいびられ続けた社畜マインドのこの私が…お前ごときのいびりなんざ、へでもないわ!!)
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